グローバルな市場で半導体関連事業や電子デバイス事業を展開するフェローテックが好調だ。2021年3月期は売上高が913億円で過去最高、営業利益も前期比60.3%と大幅増の96億円だった。2022年3月期も、前期比で売上高 25.9%増、営業利益 107.4%増を目指す。
好調の背景には昨今の半導体市場の活況があるが、必ずしもそれだけではない。中国国内での新しい資金達調が奏功していることに加え、これまでの先行投資が実を結びはじめたことが大きい。さらに、日本流の品質管理やデジタル投資による効果も現れつつある。フェローテックホールディングス代表取締役社長の賀賢漢氏に話を聞いた。
中国国内の拠点を活用し、半導体市場で成長を持続するフェローテック
──業績が好調です。昨期を簡単に振り返っていただけますか。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で巣ごもり需要が拡大し、5G通信基地局、PC、サーバー系の投資が重なりました。半導体の需要が逼迫していて、その影響を受けています。特に、当社が扱っている石英、シリコン、セラミックス、CDV-SiC(炭化ケイ素)などの半導体製造装置向けマテリアル製品が好調でした。また、2020年には中国国内での半導体製造装置市場が初めて世界首位になりましたが、中国国内に特化した装置部品洗浄も好調に推移しています。
──御社は中国に拠点を置き、半導体マテリアル製品や部品洗浄のほか、パワー半導体用基板やサーモモジュール、半導体用シリコンウエーハなどを取り扱っていますが、そちらの状況はいかがですか。
脱炭素社会に向けて電気自動車(EV)の生産が活発です。中国ではEVが月産25万台に達しています。EVに用いるパワー半導体用基板は大きく伸びています。また、サーモモジュールはPCR検査機器にも採用されており、こちらも伸長しました。
市場の動向としては、AI(人工知能)の影響も大きく受けています。デジタル化に向けてシステム関連のハードウェア投資やビッグデータ向けのデータセンター投資が増えており、半導体マテリアル製品やシリコンウエーハの増産にも取り組んでいます。
──半導体関連市場の成長はさらに加速しそうです。今後のトレンドをどう見ていますか。
半導体は限られた分野で使われる先端技術というより、市民の生活に近いところで利用される製品になってきました。EVやスマホがそうですし、身の回りにはさまざまなセンサーがあり、さまざまな半導体や電子デバイスが使われています。かつては4〜5%あれば高い成長率でしたが、今では30〜40%が当たり前という状況になっています。少なくとも2025年までは2ケタ成長を持続すると見ています。
融資に頼らない資金調達を実現、「今まで見た工場のなかで一番」との声も
──中国でのビジネスがうまくいっている背景は何でしょうか。
成長投資に必要な資金を新たなスキームで調達できるようになったことが大きいと思っています。我々も以前は日本の金融機関から融資を受けて生産設備などの投資を行ってきました。しかし、近年ではさまざまな方法で、中国国内で資金を調達できるようになっています。昨年から、中国のグループ企業各社で複数回の第三者割当増資を行い、1000億円を超える規模の資金を調達しました。連結子会社3社、および持分法関係会社1社において、中国市場へのIPOも視野に入れています。もちろんこれまで長い年月をかけて中国国内で半導体関連市場に種を蒔いてきたものが、今実を結びはじめているという状況もあります。
──実際に、取引先からはどんな評価をされているのですか。
今はコロナ禍で難しくなっていますが、以前は取引先の多くが我々の各製品の拠点への見学もよく行なっていました。工場を訪れたお客様からは「フェローテックの工場は素晴らしい」「今まで見た工場のなかで一番」とお褒めの言葉をいただくことも少なくありません。清潔で管理の行き届いた工場運営を心掛けていますので、お客様からこのような声を頂けることは、大変有難いことです。
「中国企業がつくることができるものは、我々はやらない」という考え方
──新中期経営計画では「品質強化」を掲げています。工場への高い評価は、品質を強化し続けてきた結果でもあるのでしょうか。
そうです。さらなる業績拡大を実現し、持続的な発展を図るためには、品質強化と人材強化が欠かせません。先日もオンライン上で全社員に集まってもらい、「品質は命だ」と30分かけて説きました。企業活動はすべて品質です。品質がなくなったら、会社としての存在価値はないに等しい。だから、まず品質を念頭にいいモノをつくる。品質はモノをつくるだけにとどまりません。財務体質も品質が重要ですし、事業成長でも品質が重要です。人材もまた品質です。質の良い人材なくして、いいモノは絶対に作れません。これまでよりもさらに品質を強化し、取り組んでいきます。
──品質を強化するために、どのような施策を行う予定ですか。
1つの考え方として「中国企業がつくることができるものは、我々はやらない」ということです。誰がつくってもできる製品で品質を競っても成長は見込めません。先進国の先端企業が取り組んでいる製品のなかで品質を強化していく。それが我々の付加価値になります。いま取り組んでいる持分法適用関係会社での8インチ、12インチウエーハも高い品質力が求められる製品ですが、できるだけ早く黒字にしたい。そのうえでさらに大口径ウエーハの収益拡大に取り組んでいきたいと考えています。
──自動化やデジタル化も推進しているのでしょうか。
4年ほど前から、工場と基幹システムのIoT化・AI化を進めています。人は間違いをおかすものですから、いつまでも人手に頼っていては、品質は向上しません。センサーを使って工場内のさまざまな状況を見える化し、AIによる検査など、自動で管理できる仕組みを整えています。また、基幹システムもERP(財務管理)、WMS(倉庫管理)、QMS(品質管理)、CRM(顧客管理)、PLM(設計製造管理)などの統合と刷新に取り組んでいきます。
経済的に立場が逆転した日本と中国、フェローテックが取り組みたいこととは
──新中期経営計画では「人材強化」も注力分野に挙げています。どのような施策を実施するのですか。
1つは、優秀な人材の獲得です。中国で人材を獲得する場合、地方出身の若者が仕事を求めて都市部や工場地帯に集まるという構造をよく理解する必要があります。そこでの「三大革命」は「寮(住まい)」「食事」「トイレ」です。寮はビジネスホテルのように設備が完備されていて、食事は3食おいしいものを手軽に食べることができ、トイレは5つ星ホテルのようにキレイな状態を維持する。これらの革命を成し遂げた企業は、良い人材を獲得し続けることができます。フェローテックでも、まずはそうしたハードの充実に力を入れ、そのうえで、社員教育や個人の成長を助けていくソフトの充実に取り組んでいます。
──人材育成や成長でのポイントは何でしょうか。
社員一人ひとりが自分で勉強し、成長していくことができる環境を整えることが重要です。大学との連携した教育プログラムの提供や、入社後のトレーニングセンターでの研修、必要なときに自分で勉強できるeラーニングの仕組みなどを充実させています。社員一人ひとりが「この会社にいれば成長できる」「自分が出した知恵によって貢献できた」と考えてくれれば、それが会社の成長につながっていきます。重要なことは、社員一人ひとりが勉強し、成長し、仕事によって満足感を得ること。そうした自己実現をいかに支えていくかが経営の役割です。
──社員のエンゲージメントを高めつつ、人に頼らないモノづくりをすることが、結果的に付加価値の高い事業につながっていくということですね。
付加価値を考えるうえで重要になってくるのは、日本の役割です。半導体分野では、半導体製造装置や素材をはじめとして、高い技術力を持った企業や工場、研究施設が数多くあります。フェローテックでも、グループ内のそうしたモノづくりの拠点を強化していきます。日本本社の機能強化や日本の人材強化がこれからはより重要になってきます。
──最後に、今後に向けての意気込みを聞かせてください。
30年前、経済発展を続ける日本は、中国にとっての先生でした。今では、経済的に見れば中国が逆転をしました。しかし、だからと言って勉強をやめることはできません。また、フェローテックは日本の会社として、中国より優れていることをやっていかなければなりません。中国と日本が力を合わせ、今までできなかったことを実現していくことこそが大事です。
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