DXとは、単なるデジタル化ではなく、データおよびデジタル技術を活用してビジネスモデルやプロセスを変革し、競争優位を確立することこそが本質である。一方で、何から手をつければよいのかわからず、DXが一向に進まないという悩みを抱える企業も多い。
Denodo Technologies ソリューション・コンサルタント 菊池智功氏は、8月27日に開催されたビジネスフォーラム事務局×TECH+フォーラム「DX Day 2021 Aug. DXの要は経営者の視座」において、DXを進めるためのデータ統合基盤について、多数のユースケースとともに解説した。
企業の意思決定における3つの課題とは
ビジネスを取り巻く環境が大きく変化するなか、企業経営における変革に向けて自社のコアコンピタンスを見出し、PDCAのサイクルを回して事業を拡大させていくためには、データドリブンな意思決定が重要な鍵を握る。
一方で、多くの企業は意思決定において大きく分けて3つの課題を抱えているといえる。
まずは、意思決定までの時間だ。中長期計画のような全社横断的な意思決定が必要な場合は特に、データが部署ごとに分かれて存在していることで根拠となるデータが見つけづらく、時間が掛かってしまう。また、リアルタイムのデータが扱えるかどうかという点も、迅速な意思決定のためには重要な要素となる。
2つめは、直感や経験による意思決定が行われていることだ。この場合、企業全体でノウハウが蓄積していかず、意思決定はどうしても勘に頼ったものになってしまいがちだ。客観的な合意形成のためには、根拠となるデータおよび適切なデータ管理が必要となる。
そして3つめは、顧客中心ではない意思決定プロセスになってしまっていること。顧客のニーズを把握した意思決定をするには、自社製品・サービスの購入者はもちろん、サプライヤや販売代理店、株主、従業員等すべてのステークホルダーも含めて考えていく必要がある。
解決策は「即時性」「一貫性」「完全性」のあるデータを活用できる基盤
上記3つの課題の原因は、データが適切に利活用されていない状況にある。課題を解消するには、多種多様なデータから意味のあるデータを抽出して活用できるデータ基盤が必要だ。特にデータドリブンな意思決定のためには、データの「即時性」「一貫性」「完全性」が確保されている基盤が求められる。
「リアルタイムのデータを即時に扱えること、意思決定の重要要素であるマスタデータの一貫性を保つことは重要。さらに、セルフサービス型のデータ利用が主流になるなかでは、データ管理の完全性も求められるようになってきている。メタデータの管理、アクセスコントロール等によって、完全性を確保できる」(菊池氏)
この3要素を満たすのが、データ仮想化である。データ仮想化について菊池氏は、「データ仮想化レイヤーにおいて論理的にデータを統合しリアルタイムにデータ利用者及びデータ活用先の各種アプリケーションへ配信するソリューション。データベースやクラウドのデータストア、Hadoop等のビッグデータ、Excel等の構造化・非構造化データといった各種データソースを連携し、利用者へシームレスにつないでいくもの」と説明。データを物理リポジトリに複製することなく、蓄積されたデータだけではなくリアルタイムの生データを利用者が活用できることに仮想化のメリットがあるとする。
データ仮想化の定義をそのまま再利用したビジネスユーザー向けのツール「Denodo データカタログ」では、カテゴリとタグ付け、データ属性、説明等を整理する従来のカタログ機能に加え、キーワードベースのメタデータ検索、データの検索や関連性の確認等も行うことができる。
さらに、Denodoのプラットフォームでは、セキュリティポリシーとガバナンスの一元的な適用も可能。Active Directory等のLDAPサーバーを使用してユーザーを認証することもできる。
Denodoのアーキテクチャパターン別ユースケース
菊池氏は、Denodoのユースケースを4つのアーキテクチャパターン「論理データファブリック」「データサービス」「統一ビュー」「セルフサービス」に分けて紹介した。
論理データファブリック
論理データファブリックとは、多様なデータへのスムーズなアクセスを可能にする、即時性に関連したアーキテクチャだ。
既存のデータレイクやDWHに静的データを蓄積して分析に活用していた自動車部品メーカーは、各拠点ごとの生産計画や販売計画のリアルタイムデータを分析に活かしきれていないという課題を抱えていた。そこで、Denodoで拠点ごとのリアルタイムデータを統合。それらを活用できる環境を構築し、リアルタイムでの需要予測を行いPDCAサイクルを回すことで、機会利益の向上につなげた。
オンプレミスからクラウドサーバーへの移行時、オンプレミスのサーバにもデータが存在している過渡期において、双方のサーバに散在しているデータを扱いたい場合にもDenodoは有効だ。業務継続性を保ちつつ、ユーザーはクラウド・オンプレミスを意識することなくデータを利用することができる。
データサービス
多種多様なアプリケーションにシームレスに連携するアーキテクチャが、データサービスである。データサービスのユースケースとして、菊池氏はまずグローバルの精密機械メーカーの取り組みを紹介する。同社では、ERPやクラウドデータストア、Excel等グローバルのデータソース、および機械学習ツールを含めたアプリケーションが多種存在しているなか、散在しているデータを各アプリケーションにいかに連携するかが課題となっていた。
そこでDenodoを導入してグローバルのデータソースを統合。さらに、各マスタデータ、ビジネスユニット、プロジェクト等向けにデータをマイクロサービス化して、API連携によりアプリケーションに提供できるようにした。その結果、データの提供スピードが大幅に向上。機械学習における学習スピードも上がったという。
クラウドデータレイクやDWH等のデータソースを持つグローバルの物流倉庫では、ECの活況によって物流量が増えるなか、リアルタイムでの物流量の増減にいかに対応するかが課題となっていた。そこで、Denodeでデータソースを統合しつつ、各物流のコストをビジネスビュー化して分析ツールに提供することで、リアルタイムの物流量の需要予測によるコスト削減につなげたという。
統一ビュー
あらゆるマスタデータの一貫性を保ちながら意思決定の質を高めることができるアーキテクチャが、統一ビューである。マスタデータの一貫性が保たれていない場合、これらをDenodoで統合しつつ、データの品質をチェックしたうえで必要なデータ変換を行い、重複のないゴールデンレコードビューを構成することが有効である。
約3000人のエージェントを有するコールセンターでは、従来CRMやインシデント管理等の多数のバックエンドシステムからエージェント個々人がデータを取得していたために、サービスの質にばらつきがあったという。そこで、エージェントが扱うアプリケーションを統合。この統合アプリケーションを通じてエージェント自身が顧客データを閲覧できるようにした。バックエンドシステムを統合し、同アプリケーションの土台となっているのがDenodoである。
セルフサービス
Denodoが公開する「Denodo Coronavirus Data Portal」では、新型コロナウイルスの感染率と死亡率、医療施設の状況等新型コロナウイルス感染症に関するグローバルでのデータをDenodoによって統合。Tableau等の分析ツールで利用できるようなフォーマットでダウンロード可能な状態となっており、セルフサービス型の分析を実現している。
あらゆるデータソースが散在していた生命保険会社では、かつてセールス担当者が必要な商品の情報やデータを把握しきれていないという課題を抱えていた。そこで、自社でDenodoがベースとなったデータマーケットプレイスポータルを設置。顧客への最適な商品をセールス担当者自身で見つけられるようにしたという。
上記で紹介した各ユースケースはすべて、「即時性」「一貫性」「完全性」のいずれかと密接に関連したものだ。データドリブンな意思決定を実現するツールとして、Denodoのデータ活用・可視化ソリューションをぜひ検討してほしい。
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