2020年に新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大した影響で、テレワークを本格的に導入した企業も多いだろう。しかし、オフィス内で偶発的に起きていた雑談や相談が減ってしまったと感じ、出社に戻した企業も少なくないのではないだろうか。 そうしたテレワークでのコミュニケーション不足を解消し、仲間と「一緒にいる感」を得られるツールを開発したのが、oVice株式会社だ。同社が開発・提供するバーチャル空間「oVice(オヴィス)」。2020年8月にサービスリリースしてから1年で、オフィスやイベントで1200を超える企業・団体に利用されており、今や物理的なオフィスに代わるバーチャルオフィス(仮想オフィス)として注目されている。そのサービスの開発の裏側や急成長を追った。
テレワークで失われてしまった「一緒にいる感」
oViceとは、ウェブ上で自分のアバターを自由に動かし、相手のアバターに近づけることで簡単に話しかけられる新感覚のバーチャル空間で、テレワークやオンラインイベントで活用が進んでいる。そんなoViceの開発のきっかけは偶然だった。同社の代表取締役CEOのジョン・セーヒョンが2020年3月にチュニジア出張中、新型コロナウイルス感染症が急激に拡大した影響を受け、突然ロックダウンに巻き込まれテレワークを余儀なくされたのだ。さまざまなツールを使って仲間とコミュニケーションを取っていたものの、なぜかしっくりこない。考えた末たどり着いた結論が、「オフィスに出社しているときのように『みんなと一緒にいる』という感覚がないこと」だった。
「私はもともとオフラインが好きな人間。これまでに何度も起業してきたが、そのたびに立派なオフィスを構えて仲間とコミュニケーションをとっていた。オフィスで当たり前のようにしていた何気ないやり取りができなくなったことがすごく不便だった」とジョンは振り返る。オフィスに出社していれば、仲間の声が自然と聞こえてくる。そしてその何気ない話から、仲間が何で悩んでいるのかに気づくことができるだけでなく、偶然始まった会話から思わぬアイデアが生まれ、それを形にすることもできる。テレワークで欠けていたのは、オフィスに出社していた時は当たり前のように起こっていた偶発的なコミュニケーションだと気づいたのだ。
テレワークでも大事にしたい、仲間と一緒にいられる「空間」
そんなテレワークでの課題感を解決するために開発されたoVice。そのため、現実世界で自然に起きていることをoVice上で再現するということを念頭に開発が進められた。例えば、自分のアバターに近いアバターの声は大きく、遠いアバターの声は小さく聞こえ、現実の空間で話しているような感覚を味わうことができる仕組みになっている。遠くから聞こえてきた会話に簡単に参加でき、偶発的なコミュニケーションが可能で、新たなアイデアを生み出しやすい環境が整えられているのも、現実空間を意識して設計されているためだ。
「なるべく現実世界に近づけるために、人の声や気配をあえて取り入れようとしている」と話すジョン。oViceの社員も毎日oViceに出社しており、業務のやりとりはすべてそこで行われている。普段の勤務中、社員同士が会話しているところに別の社員が近づいて行ってその話を「立ち聞き」したり、新人同士が話しているところに寄って行って会話を始めたりと、現実空間と同じように仲間とのコミュニケーションを楽しんでいるという。「自分たちがoViceの『ヘビーユーザー』だからこそ、製品の改善すべき点を探し出すことができ、必要な機能をいち早く実装することができる」という徹底ぶりだ。
「一緒にいる」と感じられることで高められる心理的安全性
そうした現実空間と同じコミュニケーションが実現できる点が喜ばれ、テレワークを行っている企業のバーチャルオフィスとして、展示会などのバーチャルイベント会場として急速に広がっている。なかには東京の一等地にある実オフィスの3分の2を解約して一部の部署がoVice上で勤務している企業や、oViceを全社導入して約30のフロアをつなげてバーチャルビル化し、1300人ほどの社員が勤務している、いわば「働き方改革の最先端企業」もあるという。
最近では、開発当初は想定していなかったような場所での活用も進んでいるという。oViceを活用してバーチャルオープンキャンパスを行い、日本全国からアクセスしてきた参加者に在校生が大学のカリキュラムや受験対策の方法を解説した大学や、バーチャル選挙事務所を構えて有権者の交流を行った候補者、アーティストたちの作品を展示したバーチャル夏祭りを行う団体など、oViceが活用される場面は多岐にわたっている。
さまざまな場所で活用され、多くの反響を得ているが、その内容は一つに集約される。それは「コミュニケーションの問題が解消された」というものだ。「同じオフィスに出社していても、何も話さない人たちは一定数いる。そうした人はoViceを使う意味がないと思われがちだがそれは違う。そういう人たちにも『この場に一緒にいる』ということを感じてもらえることで、心理的安全性を高めることができる」。oViceでは誰かと話すことができるだけでなく、ただ隣にいる、不安を感じたらいつでも声をかけられる環境にいる、誰かとつながっていて同じ空気を共有できていると感じられる点が、これまでのオンラインツールにはなかった魅力なのかもしれない。
サービスリリース1周年。「バーチャル不動産」としてさらなる飛躍を
oViceは2020年8月にサービスリリースしてから、1年が経過した。有料でoViceを導入している企業・団体は1200を超え、oViceで勤務する人は毎日約3万人と、急激な成長を遂げている。最近では日本国内のみならず、韓国など日本国外での利用も増えてきたという。コミュニケーションに課題を感じ、それを解消する方法を探しているのは日本だけではないのかもしれない。
「私たちが提供しているのはoViceという『空間』。その空間を誰と使うのか、何のために使うのか、どう飾るのかは各ユーザーにゆだねている。そのため、私たちは自分たちのことを『バーチャル不動産』企業だと言っている。今後は国内でさらにoViceの認知度を上げ、今年中にARR(年間経常収益)10億円を目指す。国外にも積極的に展開し、競合を抜いてシェア世界一を目指したい」と、ジョンは野心をのぞかせる。テレワークをしている企業のバーチャルオフィスとしてだけでなく、「バーチャル不動産」として日本国内のみならず国外でもさらなる発展を目指すoVice。今後の展開にさらに注目が集まりそうだ。
oVice株式会社代表取締役CEO ジョン・セーヒョン
1991年韓国生まれ。中学・高校でオーストラリアに留学。韓国に帰国後、貿易仲介事業を起こす。東日本大震災をきっかけに日本の大学に進学し、IT企業のインターンを経て、大学在学中に大阪で起業し、越境関連IT事業を行う。複数のベンチャーキャピタルから資金調達を行い、2017年に、東証一部上場企業に会社を売却。2019年からはAI・ブロックチェーン・RPAなど、先端のIT技術のコンサルティングを行い、2020年において新たな技術を創造するためのNIMARU TECHNOLOGY(現oVice)を設立した。
関連情報
>>oVice公式ウェブサイト
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