(当記事はアドビ株式会社のAdobe Blog『大学のデジタルトランスフォーメンションで世界へのアピール力を高める〜Adobe Education Forum 2021レポートDAY3』掲載記事からの転載です)

2021年8月10日(火)~12日(木)、アドビが教育分野でのデジタルクリエイティビティの未来を考えるイベント「Adobe Education Forum Online 2021」が開催されました。新しい価値を創造する力を育む大学・専門学校教育~ Consumer から Creator へ ~」をテーマに三夜連続で開催されたイベントのうち、大学のDX(デジタルトランスフォーメーション)について掘り下げたDAY 3の様子をご紹介します。

コロナ禍に後押しされた日本の大学のDX

DAY3は、NUCB Business School, Senior Associate Dean、立命館アジア太平洋大学名誉教授の
横山研治先生と、立命館アジア太平洋大学アドミッションズ・オフィス(国際)課長補佐の
垰口広和氏を基調講演に迎えました。新型コロナへの対応に関する様々な報道を通じ日本のDXがいかに世界から立ち遅れていたかが露呈した2020年、大学もその例外ではありません。

横山先生は、日本の大学が新型コロナ以前にはオンライン授業の経験がほとんどなく、コロナ禍で一気にオンライン化を実現したことを示し、「手探りの中でやった割にはどの大学も見事に成し遂げたのではないか」と評価します。

  • 横山研治先生(右)とDAY3のモデレーター伊藤聡子氏(左)

一方、世界に目を向けると、すでに10数年前から、世界中の有名大学の授業をオンラインで受けられるMOOC(Massive Open Online Course)のブームがありました。しかし当時から日本の大学がMOOCに積極的に参加している例はほとんどなく、日本では新型コロナ対策というやむをえない理由に強く後押しされ、授業のオンライン化が進んだわけです。

横山先生は、自らも未経験からオンライン授業を重ねてきた経験をふまえ、そのメリットを示します。学びたいというモチベーションが高い学生にとってはメリットの多い有効な手段である一方で、意欲が低い学生をどう引き込むという課題も見えてきました。また、コロナ禍が長期化する中、「知識」だけでなく「知恵」や「情緒」など経験や人との関わりから身に付ける要素をどう育むのか、学生同士の距離を縮め関係性をどう構築するのかなどは、今後の課題です。

  • オンライン遠隔授業のメリット

オンライン授業以外に目を向けると、DXの余地はたくさんあります。大学全体での徹底したペーパーレス化や、英語圏で実現しているオープンライセンスの無料講義テキストの活用、大学IR(Institutional Research)と呼ばれる学内蓄積データの有効活用などが例としてあげられました。

世界を相手にする強い危機感から進めた国際入試のDX

続いて、立命館アジア太平洋大学の国際入試を担当する垰口氏が、同大の入試業務のDXを紹介しました。同大は、学生のおよそ半分が世界中からの留学生という国際色豊かな環境で、2000年の開学以来世界159カ国・地域からの学生を受け入れ、日英二言語で教育が行われています。

世界中から大勢の志願者が集まる同大では、郵送や紙を中心とした出願や選考では世界に立ち遅れるという危機感が高まり、2018年よりオンライン化を進めてきました。現在では、募集、選考、入学に関する手続きのほぼ全てをオンライン化して運用しています。

  • 出願書類や入学手続きを徹底してオンライン化した

国際的なアピール力を高め世界の標準に合わせるため、国内では前例のない技術の導入も多数行っています。

  • 垰口広和氏がDXの全体像を解説

国内初導入例のひとつが、公的な電子署名である「Adobe Sign」です。「Adobe Sign」により、ブラウザからのアクセスで法的根拠のある書類の作成から電子署名、提出までを一貫してオンラインで行えるようになりました。コロナ禍で活動制限の高まる2020年、紙の書類原本に先生からサインをもらうといったフローが非現実的になる中、志願者のメリットを最優先に考え異例のスピードで導入を実現しています。

  • 3ヶ月という異例のスピードで導入し、志願者の利便性と業務の効率化を実現

電子署名サービスの選定にあたっては、世界中の学生を相手にするので、アドビの世界でのブランド力や各国言語への対応力などが決め手になったということです。

オンライン化が整ったことで、同大では募集や選考に関わる情報や在学中の実績等の様々なデータを集約できるようになりました。データを可視化、分析してさまざまな傾向を読み取り、今後の戦略に生かすことができます。これはまさに横山先生が指摘した大学IR(Institution Research)の実現と言えるでしょう。

大学校務のDXを実現するアドビのソリューション

立命館アジア太平洋大学の事例を受け、大学のDXに貢献するアドビのソリューションを、アドビGTM・市場開発部の昇塚淑子が紹介しました。

大学がかかえる多彩な申請業務のフローをオンライン化し、必要に応じて厳密な本人確認や法的に有効な電子署名を組み合わせられるのが、アドビの統合ドキュメントプラットフォームAdobe Experience Formsです。

  • Adobe Experience ManagerのコンポーネントのひとつであるAEM FormsをAdobe Signと連携して運用

直感的な方法で各種フォームを作成できるのはもちろん、既存の外部データと連携させられるので業務全体の効率化が可能です。すでに米国のさまざまな大学で活用されていて、リモートでも信頼性の高い申請処理が可能になっています。

日本でも2020年より押印の見直しや一部廃止などが行われ、校務のオンライン化が現実的になりました。DXは、学生、職員の利便性を上げ効率化を図るだけでなく、「大学自体の価値を高めることにつながります」と昇塚は結びました。

データサイエンス教育のニーズに応える

立命館アジア太平洋大学の事例からもわかるように、DXにより企業や教育機関が集約できるデータは増加し、データの分析力と活用力が求められています。社会のニーズが高まる中、アドビではデータサイエンスの学習カリキュラム「Adobe Analytics for Higher Education」の提供をグローバルで開始しました。

アドビデジタライゼーションマーケティング本部長の小池晴子は、このカリキュラムを紹介し、データサイエンスが、クリエイティビティとならびデジタルリテラシーの大切な要素であることを示しました。

  • アドビ小池晴子がデータサイエンス教育のカリキュラム「Adobe Analytics for Higher Education」を紹介。現在、先生向けのラーニングコース等が英語で利用できる

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大学・専門学校教育におけるDXのインパクトを共有したDAY3。デジタルリテラシーをクリエイティビティの観点から見てきたDAY1、DAY2に加え、DAY3でデータサイエンスの要素を加えた全体像を確認することができました。

世界の変化を捉え、デジタルリテラシー教育の価値と、教育現場におけるデジタルトランスフォーメーションの実際を共有した「Adobe Education Forum Online 2021」、多くの教育関係者にとってヒントとなる内容が詰まった3日間となりました。

参考リンク

Adobe Education Forum Online 2021 DAY 1,Day 2レポート
Adobe Education Forum Online 2021 アーカイブ配信
参考資料:Adobe Document Cloud 今求められる、教育DXの実現にむけて

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