ヨーロッパの通信キャリアとして発足したColtグループは、データセンター(DC)事業においてもその高い技術力により顧客の支持を得ている。日本においては、Coltデータセンターサービス(以下、Colt DCS)が、東京圏・大阪圏にハイパースケール・データセンターを急速に展開し、新たに京阪奈データセンター(DC)を建設中だ。そんな同社に、国内DC事業の最前線について話を聞いた。
東京圏・関西圏におけるハイパースケールDCの展開
Colt DCSは、米コンサルティング企業のフロスト&サリバンより「2021年 ジャパンデータセンターサービス カンパニーオブザイヤー」を受賞するなど、日本におけるDC事業を先駆的に進めてきた。現在建設中の「京阪奈DC」は、8月30日に地鎮祭が行われ、2023年よりサービス開始予定だ。関西で自社設備としてDCを建設するのは初めての試みとなる。1.6ヘクタールの敷地で45MWのIT電力を供給し、稼働電力密度は3kW/平方メートルに達する。関西地方のエンタープライズ企業のみならず、東京圏の事業者に対しても災害復旧(DR)サイトとして、キャリアニュートラルなDCサービスを提供する。
Colt DCSのバイスプレジデント APAC代表 ポードレイグ・マコーガン氏は、日本における展開を次のように語る。
「日本におけるハイパースケールDCの市場は、この10年で急激な伸展を見せています。我々は10年前、メガクラウドベンダーを対象にしたDCを千葉県印西市で立ち上げ、2020年までに三棟を建設しました。日本におけるDCの設計・構築・運用ノウハウについて、既に豊富な蓄積があるわけです。フィディリティと三井物産との合弁事業において、Colt DCSは設計・運用を担いますが、京阪奈DCの建設はこの事業の一環です。今後はさらに東京圏でも建設を計画しています」(マコーガン氏)
同社のDCの特徴の一つは、ハイパースケールに対応した高い電力密度だ。Colt DCSは、3kW/平方メートルという高密度を早い段階で実現したDCプロバイダの一社である。印西市のDCでは、配線に有利なフリーアクセス床は使わず、コンクリートスラブに直接サーバーラックが設置されている。フリーアクセス床では、冷気が熱源に届く効率が低くなってしまうからだ。こうした工夫を積み重ねることによって空調効率が高まり、高密度は達成された。
Colt DCSの顧客満足度は高く、2020年に開設した「印西3」DCでは、サービス提供前から94%の事前契約を獲得したという。
なぜ日本でハイパースケールDCの新設が相次いでいるのか?
アジア太平洋地域の中でも、近年は日本に力を注いでいる同社だが、その背景には「クラウドへの移行」があると、Colt DCSのバイスプレジデント グローバルアカウント&ソリューション クイ・グエン氏は答える。
「シンガポールや香港と比べて、日本はクラウドの普及が遅れていました。それが近年になって『柔軟なスケーラビリティ』や『保守チームを抱えなくてもよい』といった利点が見直され、社内の専用インフラをクラウドに移管する動きが加速しています。日本はクラウドサービスに対するポテンシャルを大いに秘めているわけです。当然、クラウドの実体となるDCの需要も大幅に伸びています。さらに、単なるシステム移行だけでなく、5Gの登場や、フィンテックやゲームの発展などによって、ユースケースは拡大し続けているのです」(グエン氏)
事実、外資系のハイパースケールDCが続々と日本へ進出している。このようにDC建設が過熱する中で、Colt DCSは長期的な需要と供給のバランスをどのように見極めているのだろうか?
「印西3の成功が示している通り、当社はお客様と長年に渡って密接な関係を築いてきました。それはDCに対する要件や需要、つまり『お客様の将来』をきちんと理解しているということです。だからこそ、適切なタイミングでサービスを拡張し、提供できるのです。10年前、印西市に初めてハイパースケールDCを建てたとき、『なぜあんな遠いところに?』とよく言われたものです。しかし、私たちはハイパースケールDCへのお客様ニーズをいち早く察していました。後になって同地区に他の事業者も進出してきましたが、京阪奈でも同じことが起きるでしょう。このような『顧客中心』の実践が、大規模事業者とはいえない私たちが成功してきた重要戦略なのです」(マコーガン氏)
今後のDC選定に必要な"SDGs"の観点
AI、IoT、VRといった先端技術の発展にともない、DCは大量のデータを高速で処理することが求められている。そのためには莫大な電力が必要だ。SDGs(持続可能な開発目標)の達成が企業に求められるようになった昨今、Colt DCSはサステナビリティという視点においても先進的に取り組んでいる。
「Colt DCSではSDGs戦略担当官を設けており、事業をサステナブルにしていくために取り組んでいます。既にヨーロッパでは、全17箇所のDCにおいて、100%再生可能エネルギーの利用を始めました。太陽光発電所への直接投資も、先日の取締役会で承認を得ています。5年前は『サステナビリティ? そんなことより安くしてくれ』という風潮でしたが、今は『再生可能エネルギーを使っているならば料金が高くてもいい』『再生可能エネルギーをX%以上にしてほしい』と、お客様側から求められるようになったのです」(グエン氏)
ヨーロッパだけでなく、日本においてもSDGsの影響が現れ始めていると、グエン氏は続ける。
「日本の場合、再生可能エネルギーを大量に売買できないため、まだDCで利用することはできません。そこでColt DCSでは、データセンター建設の設計段階から環境負荷を考慮するとともに、電気自動車の導入やリサイクルを推進するなど、多方面での取り組みを進めています。近年では、日本のお客様の意識も変化してきており、RFP(提案依頼書)の中でDCのCO2排出量を問われることが増えてきました。とくにハイパースケールのお客様は高い意識をお持ちです。我々はITインフラ提供者として、今後もDCの冷却技術や建築工法を革新していくことにより、お客様のサステナビリティ・マネジメントを手助けしていきたいと思います」(グエン氏)
最後に、マコーガン氏は「DX推進に貢献していきたい」と、日本でのDC事業を次のように展望した。
「在宅勤務が増えたことによって、デジタル技術の便利さにあらためて気付いた方は多いと思います。テレワークならば、毎朝7時に家を出る必要もなくなり、通勤時間を有効に使えるのです。しかし、どんなに優れたコラボレーションツールを導入しても、遅延してばかりではストレスが溜まる一方でしょう。真に新しい働き方を実現するためには、強固なデジタルインフラが必須なのです。高速処理や低遅延ネットワーク、セキュリティ、サステナビリティなどの要件は今後ますます求められていくはずです。我々は業界最高レベルのハイパースケールDCを提供していくことによって、これからも日本のDX支援を続けていきます」(マコーガン氏)
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