栃木県足利市の株式会社オオヤマは、外構・エクステリア工事をメインに、造園、外壁塗装工事なども手掛ける専門業者だ。代表取締役の大山博志氏のもと、13人の従業員が地域に密着した質の高い仕事に携わっている。同社は2016年12月の法人化をきっかけに、自社HP(ホームページ)を立ち上げた。その制作を担ったのが、中小企業のための「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進に向けて多彩なソリューションを提供するBRANU株式会社である。

  • 鼎談メンバーの集合写真(家入氏・大山氏・片山氏)

中小建設業にとってDXという言葉は馴染みがないかもしれないが、オオヤマの身近な取り組みには、ITによる課題解決のヒントがたくさん詰まっている。今回は中小建設業の立場からDXを進める大山氏と、BRANU株式会社 パートナー推進室 室長 兼 ブラニューメディア株式会社 代表取締役の片山雄輔氏、さらには建設ITジャーナリストの家入龍太氏にも加わっていただき、オオヤマとBRANUの取り組みについて建設業界のDXという視点から語り合ってもらった。

■鼎談メンバー

  • 株式会社オオヤマ 代表取締役 大山博志氏の写真

    株式会社オオヤマ 代表取締役 大山博志氏

  • BRANU関連会社 パートナー推進室 室長 兼 ブラニューメディア株式会社 代表取締役 片山雄輔氏の写真

    BRANU株式会社 パートナー推進室 室長 兼 ブラニューメディア株式会社 代表取締役 片山雄輔氏

  • 株式会社建設ITワールド 代表取締役 建設ITジャーナリスト 家入龍太氏の写真

    株式会社建設ITワールド 代表取締役 建設ITジャーナリスト 家入龍太氏

身近なところから始める中小のDX

--まずは「建設DX」というキーワードについて、考えをお聞かせください。

家入氏 :建設DXは、DXをいかに実行するかではなく、デジタルの導入の結果として生産性が上がる状態を表す言葉だと考えています。建設業界はこれまでにも地道な改善を続けてきましたが、DXの成果は「何割」というレベルではなく、従来の業務スタイルをガラリと変えることで「何倍」もの変化を目指すものだと思います。基本はまず何よりも生産性の向上。そして、その延長線上で働き方改革や新しい価値の創出につながっていきます。

  • 株式会社建設ITワールド 代表取締役 建設ITジャーナリスト 家入龍太氏の写真

片山氏:BRANUの顧客は99%が中小の建設業者です。中小の建設業者にとって、DXを大手のものと捉え、自社には関係がないと考えている方が多いのが実情ですが、大山さんのように現状に課題を感じ、デジタルで変えていこうとする経営者も着実に増えてきているという印象です。

家入氏:日本には人口減少という重大な問題があり、建設業界は今後縮小していくことは明らかです。その中で、大手こそは建設DXを大きなチャンスと捉え、DXをベースとしたエコシステム構築の動きを始めています。一方で中小は、どうしても大手の下請けが多いという構造があるため、大手の動きについていく意識が強いのではないでしょうか。

大山氏:私の周囲でDXを意識している経営者はほぼおらず、話題にも出ません。私自身は最近になって取り組みを進めていますが、2014年に独立した当初は何をすればいいのか悩み、FAXをメールやインターネット に変えたり、書類をコンビニでPDF化したりといった小さなところから始めていました。

片山氏:中小では、現場の効率化の余地はまだまだあります。大山さんの言うFAXのデジタル化もその一つ。そうした細かい部分からできる改善も、まぎれもなくDXの一部でしょう。

株式会社オオヤマが取り組んだDXとは

--中小建設業界でDXが進まない要因はどこにあるのでしょうか。

片山氏:建設業に従事する多くの方は、職人としての腕一本で仕事をしてきた方々なので、デジタルという新しい要素を必要だと感じていないところがあります。一方で、建設業界、とくに中小向けにソリューションを提供しようという企業が少ないのも大きな要因だと思います。中小建設業の状況は外部の業界からはつかみにくく、何が課題でどんなソリューションが必要なのか、また有効なマーケティングについても掴みにくいのかもしれません。

大山氏:当社もBRANUにお願いしてHPを作るときに、周りの建設業者には「そんなものを作っても効果があるのか」と、なかなか理解されませんでした。地方の中小は大手の下請けがほとんどですから、情報も大手からもらうもの、あるいは居酒屋などでのコミュニケーションから得るもの(笑)という意識が根強く、一気に変わるのは難しいところがあります。

--しかしオオヤマは法人化を契機としてHP制作に踏み出しました。

大山氏:独立して個人で仕事を始めてからの3年は、やはり下請けばかりでしたし、仕事をもらうのも大変でした。私としては、このままではダメだという危機感があったのです。個人で始めて3期目に法人化したのですが、そのタイミングでいろいろな会社の営業からHP制作の話がきました。その中にBRANUもいたわけですが、BRANUは営業担当の人柄がよく、ネットで調べてみると建設業界専門の実績と業界への理解があることがわかりました。ここにならお願いしてもいいかもしれないと肌感覚で直感し、何度か話を聞いてほぼ即決に近い形でBRANUに決めました。

私としては、下請けから脱却し、元請けの仕事を増やすことを目指していました。そのためには会社にブランド力が必要ですから、BRANUには「外構仕事のことならオオヤマに」とアピールできるHPを作ってくださいとお願いしました。

--2017年のHP公開から4年。成果はいかがですか。

大山氏:よかったです。法人化直後は100%下請けでしたが、いまは元請けが増え、半分を超えています。本当にガラリと変わったので、効果はやはり大きかったのでしょう。HPがなかったら、いまの状況はまったく考えられません。当初理解しなかった同業者も「すごい」と言ってくれるようになりました。

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施工管理ツール導入で第2ステージへ

片山氏:当社は建設業界全体のDXを推進するという大方針を掲げています。HP制作・運用はその中の一サービスで、建設業界のビジネスマッチングをサポートするプラットフォーム「CAREECON」をはじめ、ほかにも建設業界に向けたさまざまなソリューションを提供しています。その一つが、建設業のデスクワークをサポートし、現場の効率化を図る施工管理ツール「CAREECON for WORK 施工管理」です。HP制作でお付き合いが増える中でオオヤマ様の課題を聞き、このツールを提案しました。

大山氏:はい。提案を受け、1年ほど前に導入しました。従来の施工管理は手書きやホワイトボードへの記入のみでしたが、導入後は案件や顧客の情報を入力し、工程の作成・管理に活用しています。現場写真を取り込み報告書作成に役立てる機能など、まだ使い切れていないところもあるのですが、今後に向けて大いに期待しています。

実は工事情報の一元化が以前からの悩みで、施工管理ツールも気になっていました。そこでいくつかの製品をチェックしたのですが、当社の現場にフィットするものが見つかりませんでした。その点、BRANUならこちらの声を反映して機能を追加・改善してくれそうだったので、提案を素直に受けてみることにしたのです。

片山氏:CAREECON for WORK 施工管理は機能をお客様が必要なものに絞り、使いやすさを重視したシンプルなツールです。施工管理で現場の生産性を上げる取り組みは、まさにDX。これからも現場の管理業務の手間を省き、職人さんが現場に集中できる環境づくりのサポートに力を入れていきたいと考えています。もちろんその延長線上では、安全面の配慮や未経験者が入ってきやすい職場づくりにつなげ、業界全体が変わっていく契機にしたいと考えています。

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家入氏:大山さんはしっかりと「経営」をしているという印象を持ちました。経営で最も大事なのは、顧客と製品・サービスを結び付けること。HPを作ったことで、それまでとは異なり、顧客がオオヤマを直接知る機会が生まれました。やはりHPを始めてから顧客層が広がったのではないですか?

大山氏:以前は個人的なつながりの中でしか仕事を得られなかったのですが、HPを立ち上げてからは思わぬところから依頼がくるようになりました。

家入氏:それはある意味、いままでノーマークだったところに対して営業が自動化されたということ。これもDXの大きな効果だと思います。大山さんは自社の困りごとをよく認識しているので、それをITで解決しようという意識が生まれ、熱心に研究し、恐れずに試せる。だからこそ、DXを一歩一歩着実に実現していったのでしょう。

大山氏:たしかに、恐れというよりは、いまに見ていろという思いのほうが強かったですね。あとは危機感でしょうか。不透明な時代になり、現状に疑問を持って「いままでと同じ」から脱却することが大事だと感じます。そのためにも、まずは先のことを想像し、可能性をイメージしていくことが必要なのではないかと思います。

片山氏:中小事業者が抱える課題をしっかりヒアリングし、それに対して使いやすく効果の見込めるソリューションを提供することが当社の役割です。建設事業者の皆さんが最初の一歩を踏み出すにはやはり高いハードルがあるでしょうが、そこに当社がアプローチし、少し背中を押してあげることが大切だと考えています。

建設業界の未来を語る

--建設業界、とくに中小は人材不足に悩む企業も多いと思います。

大山氏:私も常に人手不足を感じています。CAREECON for WORK 施工管理をもっと使いこなせば、その対策にも効果が期待できると考えています。

片山氏:建設業界はHPを活用できていない企業がまだまだ多いのが現状です。いまや若い世代に限らず就職先をスマートフォンで探すので、HPがなかったら人が来ないのは当たり前かもしれません。人材不足への対処という観点でも、HPは取り組みやすい一歩といえるでしょう。もちろんCAREECON for WORK 施工管理の導入による生産性の向上も、人材不足解決への効果が期待できるでしょう。

家入氏:現場写真を登録できる施工管理ツールは、将来的に建設業界のテレワークのプラットフォームになり得ると考えています。現場に行かなくても状況がわかりますし、進捗レポートは施工管理ツールを見ることで書けてしまう。移動時間・コストの無駄もありません。たとえば介護などがありフルタイムで働けない潜在的労働力を、施工管理ツールによって建設業界に引き入れることも可能ではないでしょうか。建設業界にはどうしても人間がいなければできない作業がありますが、それ以外の部分でデジタル技術を使うことで、人的リソースを最大限活用できます。あらゆる情報をデジタル化してCAREECON for WORK 施工管理に入れる業務体制を推し進めていけば、オオヤマさんの生産性もますます上がるでしょうね。

--最後に、あらためて建設業界全体のDXについて未来像をお話しください。

家入氏:労働力の減少に対応するため、DXはやらざるを得ません。AIやロボットができる仕事はそれらに任せ、一方でどうしても人間が必要な仕事はテレワークの活用も含めて人間ができるようにする。最近は遠隔操作できる建設機械が登場しているので、離れた場所に住むオペレーターが運転することも可能になっています。人の数が少なくなる時代に、建設という仕事をいかに続けていくか。その解決策がDXだと思いますね。

大山氏:私も、若い世代から働きたいと思われるようにHPを活用し、会社の魅力をもっとアピールするとともに、省ける無駄はデジタルの力で極力省いて、創出した時間をサービス向上と働きやすい現場づくりに費やしていきたいと思います。

片山氏:BRANUは一部の建設事業者だけでなく、建設業界全体のDXをミッションとして掲げています。ただ、約50万社あるといわれる建設業界全体を変えていくには当社だけではとても時間がかかり、その間に多くの事業者が衰退してしまう恐れもあります。そこで、大手建設事業者やメーカー、ディーラー等、業界に関わる皆様と連携を図っていくことが近道になると考えています。

家入氏:DXを進めるにはどのような人材が必要かとよく聞かれますが、私としては、夢を持って未来を語れる人材をたくさん育ててほしいと思います。困りごとに気づくためにも想像力は大切で、そこから生まれた視点がDXの原動力になります。建設業に夢を語れる人がもっと増えれば、業界全体が大きく変わっていくのではないでしょうか。

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■BRANU株式会社について
BRANU株式会社(ブラニュー)は、建設業の業務効率を向上させるクラウド型ワークマネジメントツール「CAREECON(キャリコン)」の開発を通じて、建設業界のDXを加速させるサービスを提供しています。

BRANU株式会社の企業ロゴマーク


・社名:BRANU株式会社
・本社所在地:東京都港区六本木6-1-24 ラピロス六本木4F
・設立:2009年8月18日
・代表者:代表取締役CEO 名富達哉
・資本金 :7,103万円
・事業内容:建設業向けデジタルトランスフォーメーション事業
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■サービスについて
・ノーコードWebサイト管理ツール「CAREECON Sites」
・クラウド施工管理ツール「CAREECON for WORK 施工管理」

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