コロナ禍によりICT活用の波が加速し、企業におけるWebアプリケーションの重要性が増している。さらに5Gの普及に伴い、動画配信、ゲーム、ライブコマース、Eラーニングなどさまざまなサービスが登場するなか、Webサイトや配信コンテンツの容量は予想を超えて増え続けている。こうした状況では、予期せぬトラフィック増によるネットワーク遅延や顧客体験の劣化、配信コストの増大、セキュリティリスクへの対策などが課題となる。
これらの課題に対し、どのような取り組みを⾏っていけばよいだろうか。ルーメン・テクノロジーズ株式会社(以下、ルーメン)は7月29日、オンラインイベント「CXとセキュリティを最優先! 5G時代の理想のコンテンツ・アプリ配信とは-【ZOZO×カテノイド】先進企業登壇!-」を開催。先進企業の事例を紹介しつつ、自社のソリューションについて紹介した。
通信事業者としての実績を活かしたサービス提供
イベント冒頭に登壇したのは、ルーメン 代表取締役社長 田所 博文氏。同社の事業概要について説明した。 ルーメンは、ネットワーキング、ホスティングクラウド、セキュリティ、コラボレーションの4領域をコアビジネスとしてさまざまなサービスを提供している。各分野においてアワードを受賞するなど高く評価されており、GigaOmレポートではエッジコンテンツ配信プラットフォームが「リーダー」に位置づけられた。ルーメンのCDNを利用する、ある海外のコンテンツ事業者は、VODコンテンツのキャッシュとして米国で2Tbps、欧州で1Tbps程度の配信を行っている。グローバルな国内のあるゲーム事業者においては、そのゲームコンテンツとして1exaバイトの配信を行うなど数々の導入実績がある。
こうした状況を受けて田所氏は「通信事業者として長年培ってきた技術をもとにしたサービスを提供し、日本の顧客からの信頼も集めている。また、安心して使っていただけるように日本語による24時間365日のサポートサービス体制も整えているので、ぜひこれから長いお付き合いをさせていただきたい」とコメントした。
5G普及が進む韓国の現状と活用事例
続いて登壇した株式会社カテノイド 営業・マーケティング部 部長 杉岡 仙一氏は、韓国における5Gの普及状況や活用事例について紹介した。
世界に先駆けて5Gが商用化された韓国。現在では5Gの契約数が約1,514万と、モバイル契約全体の21.25%を占める。5G契約の割合が10%程度の日本市場と比べて普及が進んでいることがわかるだろう。ダウンロード/アップロード速度も安定しており、インタラクティブな大規模ライブ配信やインターネット放送、ゲーム内動画配信といった反応速度が求められるようなコンテンツ提供のための土壌が整っているといえる。
杉岡氏は、韓国における5G活用事例の代表例として、韓国最大の携帯電話事業者SKテレコムによる野球観戦客に向けたARコンテンツ配信を挙げた。プロ野球チームのSKワイバーンズ(現SSGランダーズ)の試合で、ワイバーンズのキャラクターが球場の上を飛び回っている姿が5G端末上に映し出されたという。
5Gの普及に伴い、新たなデバイスも続々登場している。韓国の通信事業者LGU+は、5G対応のARグラスを販売開始した。88gという超軽量だが、約100インチの画面表示することができる。また、3つのアプリケーションを同時に実行できるマルチタスク機能なども注目されている。
韓国に本社を置き動画配信ソリューションなどを手掛けるカテノイドでも、100Gbps/日以上のトラフィックを処理、月間平均1.2億以上の動画が再生されており、韓国における5G普及の様子が伺える。杉岡氏は「カテノイドは日本でも展開している。5G環境に対応した動画配信には自信を持っている。日本では韓国と比べ5Gの普及が遅れているが、インフラ環境が整ってくれば関連サービスが一気に登場してくるものと考えられる」と語った。
5G時代にふさわしいコンテンツ配信とは
高速、大容量、低遅延な通信を実現する5Gだが、全体の通信速度のボトルネックとなるのはインターネット内のミドルマイル間であり、5Gの恩恵を受けるにあたってはCDNの重要性が見直されている。ルーメン エンタープライズセールス アカウントディレクター 小暮 佳也氏は、同社のCDNと配信技術について紹介した。
小暮氏によると、ルーメンのCDNには大きく分けて4つの特長があるという。
1つめは豊富な帯域のCDNであること。120Tbpsを超えるグローバルIP容量を備えた世界最大級の相互接続を誇るIPバックボーン(AS3356)上に構築されている。日本では東京と大阪にPOPがあり、1顧客あたりの利用制限がないことも注目すべき点だ。
2つめは、優れたパフォーマンス。ホップ数が少ないことがパフォーマンスの高さにつながっているという。また、多段化されたキャッシュサーバ構成により、コンテンツの可用性が向上。SSL、オリジンシールドなど一般的なCDNの機能も兼ね備えている。
3つめは、日本語による24時間365日のサポートサービスが付帯している点。NOCによるネットワーク監視により、障害予測とレポートも提供している。
そして4つめは、柔軟な契約形態により業界最安値を実現している点だ。
さらにルーメンでは、クライアントサイドCDNロードバランシングという独自のビデオ配信向けマルチCDN対策を提供している。トラフィック管理を自動化するCDNオーケストレーターを用いることで、CDNが障害を起こした際でも再生を止めずに切り替えられるもので、小暮氏は「視聴者がCDNの障害に気づかず配信を視聴できるような環境を構築可能」と説明する。
また、大規模ビデオ配信向けCDNオフロード対策としては、CDNメッシュ配信を提供している。視聴数の多いVOD配信において近隣で同じコンテンツを見ている端末があれば、同端末をキャッシュサーバ化することでCDNコストを大幅に削減できる仕組みだ。
「2020年の欧州サッカーチャンピオンシップ決勝では、通常の15倍のアクセスがあったが、CDNメッシュ配信により70%のCDNがオフロードされ、CDNコストの削減を実現した」と話し、講演を締めた。
ルーメンが提案する最新のエッジコンピューティング
昨今、データセンター・クラウド外のエッジインフラでのデータ処理が増加している。今後AIによる分析が普及することを考えると、エッジインフラの重要性はより高まっていくだろう。ルーメン エンタープライズセールス CDN担当 セールスエンジニア 中原 嘉隆氏は、同社のエッジコンピューティングについて紹介した。
中原氏はまず、エッジインフラの定義について「エンドポイントとコアインフラの中間に位置する広大な空間で発生するすべてのエッジコンピュート処理」としたうえで、「IoTデバイスとやり取りするための小型サーバのイメージを持つと思うが、必ずしもユーザ宅内のエッジサーバ機器を指しているわけではなく、5Gの普及により事業所内のみならず通信インフラ上など外で活用されている場合もある」と説明する。
そして、ルーメンのエッジコンピューティング関連のサービスのなかでも「CDNエッジコンピュート」を取り上げた。同サービスは、DockerおよびKubernetesベースで必要なサービスをカスタムしてインストールできるEaaS(Edge as a Service)型エッジコンピューティング。配信用途としてプリインストールされたコンテナイメージがウィザードから簡単に利用開始でき、キャッシュ機能、WAF/Bot管理/DDoS対策などのセキュリティ機能、イメージ変換、パフォーマンス情報やログなどの分析機能も備えている。
シングルページアプリケーションをサーバサイドアプリケーションに変えてパフォーマンス向上を目指した事例では、Node.jsによりもともとブラウザ上でしか動かなかったJavaScriptをサーバサイドで実行。キャッシュ可能なコンテンツはVarnishによりキャッシュするなどエッジサイドでの処理を行うことで、パフォーマンス改善・初期表示待ちの軽減を実現した。
また中原氏は、分散型セキュリティの一例として、ECサイトへサードパーティスクリプトを介して侵入する新たなセキュリティリスクへの対応例を紹介する。このような攻撃は、自社ドメインへのWAF適用だけでは防ぎきることはできないが、CDNエッジコンピュートにプリインストールされている「PerimeterX」を活用することで検知可能となる。
PerimeterXは、Webサイト内に設置されたセンサでデータを収集、クラウド上のビッグデータプラットフォームで分析し、脅威の可視化・検知防御をエッジで行なっていく機能で、中原氏は「センサ、エッジ、クラウドそれぞれを余すことなく活用した対策」と説明。リアルタイムの収集分析を行うという意味でも垂直型・分散型の重要性を訴えた。
垂直分散アーキテクチャで「NoOps」を実現
株式会社ZOZOテクノロジーズ ソフトウェアアーキテクト 岡 大勝氏は、NoOps(=嬉しくない運用をなくすため)のアプローチとしてWebアプリケーションの垂直分散アーキテクチャの設計ポイントについて解説した。
岡氏は、NoOps Japan Community発起人として、システム運用の“嬉しくないこと”をなくす活動に取り組む。ここで重要となるのが、クラウドネイティブだ。岡氏の所属するZOZOでもクラウドネイティブ化に向けて各システムのリプレイスを進めているという。
CDNのクラウドネイティブ化について考える際には、Webアプリケーションの構成を考えるとわかりやすい。静的コンテンツであれば無制限にスケールできるが、一般的なアプリはデータベースがあるためスケーラビリティの制約がある。岡氏は「キャッシュサーバ(CDN)をうまく活用することで、静的コンテンツのスケーラビリティと動的コンテンツのデータベースのよいところを組み合わせた使い方ができる」と説明する。
「キャッシュをエッジという言葉に置き換えて考えてみると、エッジコンピューティングは、コンテンツを配信する存在ではなく処理能力を持ったノードとして扱うという考え方を実現している。軽量なエンジンを載せてキャッシュサーバで処理し、エッジはクライアントに必要最低限のレスポンスを返すことで、コンテンツサーバの負荷は低下し、リソースを削減できる可能性がある」と話した。
特に回復性に着目すると、ワークロードは水平分散に加え、垂直分散も考慮する必要があるという。岡氏は「クラウドネイティブの技術はすでに揃ってきているので、適切な責務の配分が成功への鍵を握る。1つのベンダーに閉じるのではなく、水平・垂直方向へうまく運用していくことがユーザ体験コストとのバランスを保つための近道」と語り、セッションを締めくくった。
<問い合わせ先>
HP:https://www.lumen.com/ja-jp/home.html
電話:03-6435-9658
メール:jpncdnsales@lumen.com
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