デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現してイノベーションを創出するには、最新技術を採用したITインフラの活用が不可欠です。2021年6月15~18日に開催されたオンラインイベント「Lenovo Tech Week Spring 2021」では、企業のITプロフェッショナル/ITリーダーに向け、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(以下、レノボ)が展開する最先端のテクノロジーやソリューションの魅力が紹介されました。本稿では、レノボのストレージ製品「ThinkSystem Storage」の特徴とラインナップから、ストレージOS「ONTAP」の仕組み、データ中心のハイブリッドクラウド環境を実現する「Lenovo BCP Solution Package」まで、ストレージをテーマにした3つのセッションをレポートしていきます。
高性能ストレージ「ThinkSystem DM」「ThinkSystem DE」シリーズの実力とは
ThinkSystem Storageの初級セッションでは、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 製品・パートナー営業統括本部 ストレージ事業開発マネージャーの白川 琢朗氏が登壇。「Lenovo ThinkSystem Storage Solution ラインアップ及び最新導入事例」と題して、レノボが提供するデータセンター・ソリューションの1つとなる「ThinkSystem Storage Solution」のラインナップと、それぞれの製品の特徴について解説しました。
「レノボのデータセンター・ソリューションは、サーバー製品となる『ThinkSystem IA Server』、HCI製品『ThinkAgile』、ストレージ製品『ThinkSystem Storage Solution』などで構成されています。これらのハードウェア製品と保守サポート・プロフェッショナルサービスを“One Lenovo”として提供することで、どのようなお客様のニーズにも対して柔軟な提案を行っています」(白川氏)
特にストレージ製品となるThinkSystem Storage Solutionsに関しては、ユニファイドストレージからテープ製品まで、フルポートフォリオでお客様のストレージ環境をサポートしていると白川氏。多様なラインナップのなかからThinkSystem DM&DE シリーズをピックアップして紹介します。
「ThinkSystem DM&DE シリーズはどちらも共有ストレージ製品で、DMシリーズはユニファイドストレージ、DEシリーズはブロックストレージ(SANストレージ)となります。これらの高性能な共有ストレージ製品を総合インフラストラクチャベンダーとして提供できることが、レノボの強みだと考えています」(白川氏)
マルチプロトコル対応で、NAS/SAN/Objectを統合できるユニファイドストレージであるThinkSystem DMシリーズは、企業向けストレージ市場で高いシェアを持つNetApp製品のOEMとなり、専用ストレージOS「ONTAP」を搭載。トップクラスのデータ管理と容易なクラウド接続を実現しています。白川氏は、DMシリーズの特徴として「高いパフォーマンスと可用性を実現していること」、「ONTAPの多彩な機能を利用できること」を挙げます。
「ONTAPには、重複排除やデータ圧縮機能といったストレージ効率化テクノロジーをはじめ、バックアップやDRなどのデータ保護機能やクラウド連携機能などが搭載されています。DMシリーズのONTAPには、運用を効率化する『ThinkSystem Intelligent Monitoring』機能も備わっています」(白川氏)
DMシリーズは、ハイブリッドモデルのDM3000H/DM5000H/DM7100Hと、オールフラッシュモデルのDM5000F/DM5100F/DM7100Fで展開しており、一部のモデルではONTAP Fundamentals(ファンダメンタルズ・オファリング)というエディションを選択することができます。「ファンダメンタルズ・オファリングは利用できる機能を絞ったエディションで、SnapMirrorの非同期環境を低コストで構築できます」と白川氏。コストを抑えながらBCP対策を講じたい場合に有効な選択肢になると解説します。
一方、ThinkSystem DEシリーズは、業務アプリケーションで必要とする性能・信頼性を備えたうえで、シンプルな管理、シンプルな構築に対応したブロックストレージ(SANストレージ)製品です。ストレージ業界の主要企業が参加する業界団体SPCのベンチマークテストで業界最高クラスの価格性能比スコアを出すなど、容量と性能のバランスは抜群。シンプルな製品でありながら、NVMe/RoCEや32Gb FC、25Gb iSCSIなどの高速インタフェースに対応しています。DMシリーズと同様、ハイブリッドモデルとオールフラッシュモデルを用意。白川氏は「SSDの低価格化が進んでいる現在は、オールフラッシュモデルを選択すると価格性能比をより高めることができます」と語り、オールフラッシュモデルを推奨します。
セッション後半では、ThinkSystem Storage Solutionsの導入事例を紹介。DMシリーズを採用したファイルサーバー統合や、ファイルサーバーと仮想環境の共有ストレージをDMシリーズに集約した事例、医療情報システム向け基盤にDM/DEシリーズを提案しているパートナーの事例が語られ、レノボのストレージ製品を導入メリットが語られました。
「ONTAP」を理解して、ThinkSystem DMシリーズを最大限に活用
続く中級セッション「今さら聞けない!? ONTAPストレージのいろは(Lenovo ThinkSystem DMシリーズ 超初級編)」では、ThinkSystem DMシリーズのストレージOSであるONTAPについて、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ ストレージ・ソリューション・スペシャリストの土屋 直貴氏により解説されました。
「ONTAPは、ThinkSystem DMシリーズすべてに標準搭載されており、どのモデルでも同一の操作性を提供します。CIFS/NFS/iSCSI/FCPなど主要なストレージプロトコルをサポートし、ファイルシステムとしてWAFLを採用することで高いパフォーマンスを実現しています。専用OSのためサイバー攻撃の標的になりづらく、汎用OSの製品と比べてセキュアに運用できることも大きなメリットです」(土屋氏)
土屋氏は、ONTAPのストレージアーキテクチャ、ストレージ管理についても以下のように解説します。
「物理層ではRAIDグループを構成し、RAIDグループを束ねたストレージプール『アグリゲート』を作成。ここからボリュームを切り出して、ユーザーにアサインする領域『FlexVol』を作ります」と土屋氏。ONTAPで利用可能なRAIDグループをの種類としてRAID4、RAID-DP(DualParity)、RAID-TEC(Triple Erasure Coding)の3つを挙げます。さらに、管理用のクラスタ管理SVM/ノードSVMなど、ONTAPで作成される仮想ストレージ(SVM)も紹介され、クライアントやホストにデータを提供する場合はデータSVMを手動で作成する必要があることを説明。このほか、物理ポート/論理ポート/LIFで構成される、特徴的なONTAPのネットワーク設定についても語られました。
セッション後半では、ONTAPの主要な機能を紹介。対象データの特定の状態を保存する機能である「Snapshot」をはじめ、Snapshot取得時の状態にボリューム全体をロールバックする「SnapRestore」や仮想化/VDIで高い効果を発揮する「重複排除/データ圧縮」。さらに、ONTAPの代表的な機能となる「SnapMirror」(バックアップやDRサイト向けのレプリケーションソフトウェア)について説明されました。
最後に、DMシリーズの基本的なセットアップ手順が紹介され、セッションは終了しました。
「クラスタをセットアップする際には、装置のラッキング及びケーブル接続、ノードのセットアップと構成といった『設置』から、ノードにONTAPソフトウェアをインストールしたり、ディスクを初期化したりする『初期化』。そして、クラスタのセットアップ、アグリゲートの作成、SVMの作成、データ用ボリュームの作成と使用プロトコル用の設定といった『設定』までの手順を踏む必要があります。ただし、新規クラスタセットアップの場合は基本的に『初期化』の手順は不要です。また、DMシリーズでは『ThinkSystem Storage Manager for DM Series』を用意しており、クラスタ全体のリソース管理、SVMの作成と管理、ロールベースのアクセス制御、リソースの割当などをGUIで行えるようになっています」(土屋氏)
ハイブリッドクラウドの第一歩として好適な「Lenovo BCP Solution Package」
ThinkSystem Storage最後のセッションでは「ウィズコロナ時代のBCP Solution Packageのご紹介 -Lenovo Hybrid Cloud Service Small Start Solutions-」をテーマに、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ エンタープライズ事業部 ソリューションコンサルタントの松本 健氏が、レノボが提供する最新のソリューションパッケージを紹介しました。
「これまでレノボでは、ハードウェアを中心に製品・サービスを展開してきましたが、現在は『ThinkからSync』をコンセプトに、ソリューションパッケージの提供を加速させています」(松本氏)
松本氏は、ウィズコロナ時代の到来にともない、BCPの要件に変化が生じていると話を展開。「これまでは災害対策を目的にBCP対策を進める企業がほとんどでしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけにパンデミック対策が急務となり、テレワーク制度の整備やデータの電子化、システムのクラウド移行などが求められるようになりました」と現状を分析します。
こうしたニーズに応えるため、レノボは「スモールスタート可能なハイブリッドクラウドソリューション」のパッケージ化に着手。クラウド接続ストレージ「Neutrix Cloud」を提供するNeutrix Cloud Japanとの協業により、「Lenovo BCP Solution Package」というソリューションパッケージの提供を開始しました。
「これまでのBCP対策では、遠隔地に自社でデータセンターを借りて機器を調達していましたが、この部分にパブリッククラウドを活用できないかと考えました。そこでNeutrix Cloud Japanと協業し、オンプレミス環境とNeutrix Cloudでハイブリッドクラウドを構成するというサービスをパッケージ化しました。インフラ部分に関しては、オンプレミスであってもクラウドと同じ課金形態、技術サービスを提供しており、資産として持たず課金方式で経費として運用することができます」(松本氏)
従来のハイブリッドクラウド/マルチクラウド環境では、各クラウドサービスやオンプレミス環境にデータが散在する“サイロ化”が発生し、料金体系の複雑化や情報漏えいリスクの増大といった課題が顕在化していました。Neutrix Cloudを活用したLenovo BCP Solution Packageでは、オンプレミス/複数クラウドの混在環境でもデータを一元管理することが可能なうえ、オンプレミス環境も含めて月額課金・従量課金で利用できるため、スモールスタートで利用できます。保守窓口もハイブリッドクラウド全体で一元化でき、運用の負荷も大幅に軽減されると語ります。
セッションの後半では、クライアントサービス/ファイルサーバーに関してのサービスとなる「Lenovo BCP Solution Package -Client Service(Fileserver)-」と、アプリケーションに向けたサービス「Lenovo BCP Solution Package -Apps Service(Whole)-」という2つのソリューションパッケージが紹介されました。
これまでオンプレミスと遠隔地のデータセンターそれぞれにThinkSystem DMシリーズを導入していたBCP環境に前者を導入すると、遠隔地のデータセンターが不要となり、コストや運用管理の負荷が大幅に軽減。有事の際には、オンデマンドで契約しているクラウドリソースに切り替えて、運用を継続できます。さらにBCP対策だけでなく、繁忙期でサーバーリソースが足りない場合に、一時的にクラウドリソースを利用するといった使い方も可能です。松本氏は「オンプレミスと遠隔地のデータセンターによるBCP対策環境と比べ、5年間で約25%のコスト低減が見込めます」と力を込めます。
一方、後者の「Lenovo BCP Solution Package -Apps Service(Whole)-」は、バックアップソフト「Veeam」とThinkSystem DEシリーズを組み合わせたソリューションパッケージとなり、サーバー仮想化基盤上のすべてのアプリケーションを一元的にバックアップすることが可能です。こちらも有事の際には、オンデマンドで契約しているクラウドリソースに切り替え、サービスの運用を継続させることができます。
今回紹介された2つのソリューションパッケージでは、ハードウェア、ソフトウェア、構築サービス、ハードウェア保守、ソフトウェア保守、運用支援サービス、Neutrix Cloudのサービスを組み合わせて、月額課金で利用可能。必要に応じてAWS、Azure、GCPなどのパブリッククラウドをダイレクト接続サービス経由で利用できる、新しい形のハイブリッドクラウドソリューションといえます。
最後に松本氏は、ワンストップ保守サポートやオンサイトバージョンアップサービス、簡易システム監視サービス、BCP訓練支援サービス、情報漏えい事前防止通知サービスなどのオプションサービスを紹介。「ハイブリッドクラウド環境構築の第一歩としてLenovo BCP Solution Packageを活用していただければ」と語り、セッションを締めくくりました。
▼Tech Weekオンデマンド配信はこちらからご視聴いただけます。
https://www.lenovo-techweek.jp/
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