レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(以下、レノボ)が主催するカンファレンス「Lenovo Tech Week Spring 2021」が2021年6月15〜18日にオンラインで開催。スペシャルコンテンツとして「Lenovo、Microsoft、Nutanixのエバンジェリストが語る『これから目指すDXの理想像とは?』」と題する特別対談が実施されました。レノボの小宮敏博氏をモデレータに、日本マイクロソフトの高添修氏、ニュータニックス・ジャパンの島崎聡史氏ら経験豊富なエバンジェリストがパネラーとして参加。DXを実現するシステムから、テクノロジー、導入障壁の乗り越え方まで白熱したトークを繰り広げました。

コロナ禍でテレワーク対応を求められた企業が直面する「7つの課題」

対談ではまず、議論を整理するために、コロナ禍でテレワーク対応を求められたある企業の事例がアニメーションで紹介されました。この企業では、意欲を持ったIT導入担当者がコールセンター部門の働き方を改革するためにテレワーク利用を想定したVDIの導入提案を行っていましたが、予算の関係から上司に却下されていました。そんな折り、コロナ禍で社長直々にテレワーク対応を求められ、大きく7つの課題に直面することになる……というストーリーです。

直面した課題は「1. 既存のオンプレ設備とクラウドを活かしつつテレワーク用にVDIを即時に用意したい」「2. オンプレのインフラ構築期間を短くしたい」「3. 半導体不足で機材が調達しにくい」「4. 管理をシンプルにしたい」「5. セキュリティも考慮しつつ遅延の少ない方法を実現したい」「6. コロナ終息後もリソースを活かしたい」「7. 工場データを即時分析するDX計画も推進したい」です。これらの課題をどう解決すればいいのでしょうか。

  • 3者のディスカッションの様子

    3者のディスカッションの様子

これに対し、ニュータニックスの島崎氏は「1.のテレワーク向けVDIや4.のシンプルな管理だけなら、従来通りに全部オンプレで構築することで対応は可能です。ただ、2.のように構築期間を短くしたり、3.のような事情のなかでスピーディーに調達したりしたい場合は難しい。そこで提案したいのがハイブリッドクラウドです」と解説します。

インフラとしては、まずオンプレミスのx86サーバ上にニュータニックスのHCIソフトウェアを稼働させます。そのうえで、もしリソースが不足する場合などは、パブリッククラウド上にNutanix Clustersというソリューションを導入し、ハイブリッドクラウド環境を構築します。 「これにより既存のシステムの最適化をしつつ、パブリッククラウドのリソースを利用できるようになります。VDIの場合、オンプレのVDI管理の仕組みを使いながら、展開先としてクラウドを選択してシステムを拡張することができます。マスターイメージの共通化や管理の統合も可能です」(島崎氏)

VDIとNutanixを組み合わせるメリットは、VDIシステムを拡張しても基盤となるNutanixのI/Oが低下しないため、スモールスタートしやすいことにあるといいます。これにより、6.のコロナ後のリソース活用も可能になります。

実際にCitrixのVDIソリューションをニュータニックスのハイブリッドクラウド環境で利用し、成果を出している企業も多いとのことです。また、Nutanix Clustersは現在AWS上で提供されており、Azureへの対応も予定されているとのことでした。

  • 島崎氏とスライド

    島崎氏とスライド

ハイブリッドクラウド環境を構築してさまざまな課題に対応する

一方、日本マイクロソフトの高添氏は「いきなりハイブリッドは敷居が高いかもしれません。まずは環境をつくることが大事です」と指摘し、クラウド上で利用する仮想デスクトップサービスであるWindows Virtual Desktop(WVD:現Azure Virtual Desktop)を紹介しました。 「WVDの画面を利用者から見ると、普段から利用しているWindowsの画面と変わりません。スタートメニューやタスクバーから『リモートデスクトップ』をクリックするだけで、アプリケーションのなかでWindowsがいつも通り立ち上がってきます。テレワークに慣れていただくためにも、まずは、こうした世界観を見せるのがいいでしょう」(高添氏)

ただ、この場合、クラウド上にデスクトップ環境があり、その管理システムや他の業務システムなどがオンプレに残るため、敷居が高くなるといいます。データをコピーするときなどにユーザーは両方の環境を考える必要がありますし、システム管理者もVPNや閉域網接続などを考慮する必要が出てくるためです。

  • 高添氏とスライド

    高添氏とスライド

そこで高添氏は「このあたりの課題については手がけているベンダーさんがたくさんいるので、相談すればすぐに解決できるはずです。VDIはこれまで数カ月という時間感覚で構築していましたが、クラウドを利用することで数時間といった単位にまで短縮できるようになります。また、ハイブリッド環境でのVDIについても、ニュータニックスのように、CitrixやVMwareの製品と組み合わせて実現できるソリューションがあるので活用してほしいと思います。マイクロソフトでも、Windows Serverの機能を用いてオンプレミスでHCI環境を構築できるAzure Stack HCIソリューションを提供しています」と話し、1.や2.や4.の課題に対応できることを解説しました。

両者の話を受けて、小宮氏は、5.のセキュリティについても「テレワークを推進すると、どこからアクセスが来るかわからなくなり、悩まれているお客様もいらっしゃいます。また、端末をシンプル化したいというニーズから営業担当者を中心にChromebookを採用したいという声も聞きます。どういった仕組みでこうした環境を整備していけばよいでしょうか」と意見を求めました。

これに対し高添氏は「ゼロトラストの考え方で言うと、マイクロソフトではAzure Active Directory(AD)認証をベースに成立させようとしています。背景には、ネットワークの境界の限界が見えていることや、サイバー攻撃を完全に防いだり情報漏えいを100%防いだりするのが不可能になってきたことがあります。そこで攻撃されたときに直ちに検知し対処できる仕組みをAzure ADでつくることを提案しています」と回答しました。

  • 小宮氏とスライド

    小宮氏とスライド

工場データを即時分析するDX計画を推進、理想的なプラットフォームとは

続いて、7.の工場におけるデータ分析とDX推進をテーマにディスカッションが行われ、まず小宮氏が、レノボが提供するエッジコンピューティング向け小型サーバ「ThinkSystem SE350」を紹介しました。 「特徴は、小型でどこでも使えること、埃のあるところでも使えるような頑丈なボディであること、有線だけでなく5Gの無線ネットワークでも管理できること、クラウドまでデータを持ってこなくてもエッジで処理できるパフォーマンスを備えていること、盗難時もデータを保護するセキュリティ機能があることなどです。さらにニュータニックスやマイクロソフトのHCI環境にも対応しています」(小宮氏)

  • 小宮氏のSE350のスライド

    小宮氏のSE350のスライド

さらにニュータニックス対応モデル「ThinkAgile HX1021」、マイクロソフト対応モデル「ThinkAgile MX1020」のほか、VMwareのvSAN ReadyNodesに対応したモデルが提供されています。

これを受けて高添氏は、こうしたHCIに対応したエッジサーバを使って、AI/IoTの取り組みを進める方法を紹介しました。 「SE350はとても面白いハードウェアだと個人的に思います。HCI上で仮想マシンやKubernetesが動くので、IoT EgdeやAI Egdeとして活用できます。またマルチクラウドマネジメントツールのAzure Arcを使って、オンプレミスのHCI環境とAzureのクラウド環境を連携させることができます」(高添氏)

  • 高添氏のAI/IoT Egdeのスライド

    高添氏のAI/IoT Egdeのスライド

一方、SE350を小脇に抱えて「これ家にほしいです」と述べる島崎氏は、新しいエッジ/IoT向けの取り組みとして「Karbon Platform Services(KPS)」を紹介しました。KPSは、Kubernetesをベースにしたマルチクラウド環境でPaaSを構築するソリューションです。 「IoTの取り組みでは、エッジで必要なデータを処理してクラウドで分析したり、クラウドで処理するがセンシティブな情報だけはエッジでフィルタリングしたりといったように、クラウドとエッジを連携させるシーンが多くあります。KPSはクラウドだけでなく、エッジ側デバイス管理やエッジ上にデプロイしてコンテナ化されたアプリケーションの管理も含めて集中管理する仕組みを提供し、データ処理のパイプラインを効率良く管理できるようにします」(島崎氏)

KPSで用いられているNutanix Karbonは、ニュータニックスが提供するKubernetes環境です。このため、Nutanixハードウェア上のKarbonをAzure Arcで管理することができます。また、Nutanix HCI上でGoogle AnthosなどのクラウドベンダーのKubernetes環境を稼働させたり、ニュータニックスのプラットフォームをパブリッククラウド上で稼働させたりできるとのことです。

  • 島崎氏のKPSのスライド

    島崎氏のKPSのスライド

小宮氏は「マルチクラウド、ハイブリッドクラウド環境でさまざまなソリューションが利用できるようになっています。単独では考えずトータルでものごとを考えていく必要があると思います」と今後の方向性を整理しました。

これを受けて島崎氏も「マルチクラウド、ハイブリッドクラウドを活用すると、コロナ後に緊急構築したシステムやリソースの利用をやめることも容易です。オンプレかクラウドか、どのベンダーか、ではなく、お客様自身が何をしたいかを決め、自由にソリューションを選んでいくことが大切です」とアドバイスしました。

最後に高添氏が「コンテナのように新しい技術が登場してきています。インフラエンジニアは仮想化基盤だけでなくもう少し上のレイヤーまで勉強していってほしいと思います。また、コロナ後に『元の姿に戻る』のではなく、コロナ禍をうまく乗り切れたことをふまえて『いま最適なものは何だろう』という感覚で新しいITに向き合うと、想像以上に選択肢が多くあることに気づくはずです」と述べました。

SE350のようなHCIに対応したハードウェアから、KPSやAzure Arcなどのマルチクラウド、ハイブリッドクラウド管理のソフトウェアまで、テクノロジーをうまく活用しながら、理想のDXを実現していきたいところです。

[PR]提供:レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ