土木・建設をはじめ、港湾、高速道路、鉄道、各種屋外施設など多種多様な“現場”において、リアルタイムで映像を活用したいというニーズが高まっている。そこで注目されているのが、遠隔地から写真や動画を配信できるネットワークカメラだ。近年ではクラウドと連携できるネットワーク対応のカメラも数多く提供されているが、屋外の現場に導入する場合は選択肢が限られてくる。Wi-Fiも届かない屋外では高速モバイル通信への対応が不可欠で、季節や天候はもちろん、日中と夜間でも異なる環境の変化に対応できる耐久性も求められる。さらに、高度なITスキルを持たない現場担当者が設置することを考慮すれば、複雑な設定や操作が必要な製品は実用的ではない。極端にいえば「現場に設置して電源を入れるだけですぐに使える」ソリューションが最適解といえる。
これらの条件を満たしたソリューションが、株式会社アシストユウが開発した移動式ネットワークカメラ「モニタリングミックス」だ。1994年に宮崎県で創立され、電気設備業に特化したITシステムの開発を中心にビジネスを展開している同社では、10年以上前から「モニタリングミックス」事業を進めてきた。本事業を統括する株式会社アシストユウ 専務取締役 MICSソリューション部統括 小幡 祐己氏は、その経緯を語る。
「13年ほど前にモニタリングミックス事業を立ち上げた当時は、カメラを設定するには有線工事を実施する技術者が必要となり、手軽に行えるものではありませんでした。そのためモニタリングミックスは『難しい技術を必要とせず、誰でも簡単に使えるものがあれば便利だ』と発想して生まれた商品でした。その後、電気設備事業を展開していくなかで経営者 や複数の現場を兼任している現場責任者の方から『現地に赴かずに現場の様子を見たい』という声が増え、そういった現場ニーズに応えるべく、モニタリングミックスの開発に注力してきました」(小幡氏)
開発を開始した当時は、モバイル通信サービスは3Gしか提供されておらず、定額制のプランもなかったため、高解像度の映像を配信することが困難だったと小幡氏。これまでにない独創的なソリューションだったことで、国土交通省の新技術情報システム(NETIS)に登録されるなど技術的評価は得られていたものの、実用性に欠けてしまい実際に導入する企業は少なかったと振り返る。
それでもアシストユウはモニタリングミックスの有用性に確信を持っており、最新のテクノロジーやサービスを取り入れながら開発を継続。4Gの高速モバイル通信が普及し、MVNO各社がサービスの提供を開始したことで実用性の高いソリューションに仕上げられたため、日本全国から海外までを視野に入れ本格的な展開を開始した。そこで採用されたのが、IIJが提供するフルMVNOの法人向けモバイル通信サービスとなる。
「もともとメイン事業でIIJとはつながりがあり、モニタリングミックスの開発初期からいろいろとサポートしてもらいました。4Gの高速モバイル通信サービスを導入するにあたっては、他の主要MVNOのサービスも検討したのですが、契約数・帯域・セキュリティなどすべての面で優れていたIIJのサービスを導入することを決定しました」(小幡氏)
通信速度や安定性はもちろん、「こんなことがしたい」といった要求に対して柔軟かつ迅速に対応してくれたことが採用の決め手になったと小幡氏は振り返る。
「ライブ映像をリアルタイムで配信するモニタリングミックスは使用するデータ容量も多く、屋外の現場で使うため契約・解約なども迅速に行えることが求められます。IIJの担当者は、こうした要求に対してスピーディに対応してくれました。クラウド周りのセキュリティ確保なども含め、現場に寄り添う提案を多数いただきました」(小幡氏)
高速モバイル通信サービスの採用で、活用シーンが一気に拡大
IIJの法人向けモバイル通信サービスを採用したことで、モニタリングミックスは非常に実用性の高いソリューションへと生まれ変わった。現場に設置して電源を入れるだけで使えるようになる利便性の高さはそのままに、クラウドに配信する動画・静止画の品質が大幅に向上。リアルタイムに近い高精細なライブ映像を確認したり、進捗レポートに利用する高解像度の写真を撮影したりできるようになったという。特許ハウジングを利用した耐久性の高さもブラッシュアップされ、過酷な現場での運用にも対応。クラウド保存型の「標準タイプ」、本体にも動画を保存できる「録画タイプ」、さらにはカメラ(エッジ)側にAI機能を搭載した「AIタイプ」といったラインナップを展開している。
デジタルトランスフォーメーション(DX)や働き方改革が官民共に推進されるといった追い風もあり、契約数は一気に増加。土木・建設現場はもちろん、 養殖場や災害現場など多様な現場で活用されるようになった。2019 年には国土交通省によりバスタ新宿で実施された先進的警備システムの実証実験(カメラを用いた不審行動者・不審物の検知など)で、協力事業者の1社に選ばれるなど高い評価を得ている。こうした実績により、モニタリングミックスは「IIJ Partner of the Year 2020」においてビジネスイノベーションアワードを受賞。小幡氏は「IT目線ではなく、現場目線で磨き上げられたソリューションであることが評価されたのでは」と喜びを口にした。
5Gモバイル通信と組み合わせて、現場の課題解決を幅広く支援
ライブでの現場状況確認から災害対策、テロ対策まで、さまざまなニーズに柔軟に対応できるモニタリングミックスは、多くの現場から熱視線を集めている。現在はオーソドックスな「標準タイプ」を採用する企業が多いが、今後は「AIタイプ」が選ばれるケースが増えていくと小幡氏は予測している。
「現在市場に出ているAIカメラの多くは、撮影・録画したデータを送信してクラウド上のAI基盤で分析するといった仕組みで、屋外での利用には向いていません。それに対しモニタリングミックスはカメラ側にAI機能を備えており、モニタリングミックスで不審者を検知し、アラートを送信することもできます。現場に設置して電源を入れるだけでAI分析を活用できるのは他の製品にはないメリットといえます」(小幡氏)
小幡氏は、今後の展望としてAI活用の拡大と「5G」モバイル通信の導入を挙げ、IIJの5Gサービスに期待していると力を込める。
「5G環境が整備されることで、AIの活用シーンが拡大し、クラウドを利用する価値も高まっていくと考えています。2025年の大阪・関西万博開催までには、5Gを法人利用できる環境が実現すると予測し、それに合わせた製品開発テストを開始しているところです。これまでの4Gと同様、5Gモバイル通信サービスについてもIIJの密接なサポートを期待しています」(小幡氏)
誰でも簡単に使える利便性の高さと、過酷な環境でもノーメンテナンスで運用可能な耐久性を兼ね備えたモニタリングミックスは、クラウドやAIといった先進技術を積極的に取り入れ、現場の課題解決を支援するネットワークカメラの最適解といえるほどの完成度を誇る。「難しいことはまったくわからない」そのような方にこそ、「設置して電源を入れるだけですぐに使える」モニタリングミックスをぜひ使ってもらいたい。
アシストユウとIIJの高速モバイル通信サービスとの連携がどのような相乗効果を生み出すのか、今後も注視していく必要があるだろう。
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