オンライン領域における顧客接点の重要度が増している現在、人々の生活の中で生み出されるさまざまなデータを活用し、マーケティングなどに役立てる取り組みはあらゆる企業で必須となっている。その商品の特性から人々の暮らしのきわめて身近なところで事業を展開するライオン株式会社は、データ活用の取り組みをさらに高度化させ、新たな価値の創造に向けてさらなる一歩を踏み出した。ひとりひとりの生活に新たな価値を提供するサービスは、どのように作られるのか――ライオン株式会社でマーケティング領域の分析を担う米谷氏と、その取り組みを支えるNTTデータAI&IoT事業部の担当者に話を聞いた。
デジタル技術を活用したデータ分析で、顧客にとっての新しい価値を創造する
「新たな顧客体験価値の創造」により、ひとりひとりの「心と身体のヘルスケア」を実現する。これはヘルスケアカンパニーたるライオン株式会社(以下、ライオン)の目指す姿だ。
新たな顧客体験価値を創り出すには、顧客にとって真の価値とはなにか、顧客はなにを望んでいるのかを正確に理解する必要がある。ライオンでは顧客の生活から生み出されるさまざまなデータや生の声に着目し、蓄積したそれらのデータをもとにマーケティング領域での分析を実施している。そのために同社ビジネス開発センター コンシューマーナレッジでは顧客理解の深化に向けたデータ活用の高度化に向け、大きく2つのミッションに取り組んでいるという。
米谷:一つはデータマネジメントプラットフォーム(以下、DMP)の開発。もう一つは、DMPに購買データやソーシャルメディア、商品レビューなどで得られるお客様の生の声を広く集め、データを通じてお客さまの理解を深め、新しい提案価値につなげていくことです。
デジタル化の進展により、日々の生活から多くのデータが生まれ、数年前よりも入手しやすくなっています。これらのデータを有機的に活用し、関連部門のメンバーともディスカッションしながらDMPを活用したデータ分析を実践し、データの裏にある真実を読み解くことでお客様の理解を深めることが、我々の重要な役割と考えています。
また、DMPに蓄積されるデータは、これまでリサーチ部門が扱ってきたデータと比較しても、データ量が格段に多いビッグデータになります。そのため、人手の作業では難しいデータ間の関係性、構造を探索的に掴むことにAI(機械学習)も活用し、アナリスト×AIのハイブリッドな分析アプローチにも取り組んでいます。
「お客様が日々の生活の中で解決したい課題や、本当に必要としているものは何か」これをデータから読み解き、新しい価値提案につなげていく。これは、生活に身近な製品を提供する当社だからこそ、取り組む意義があることだと考えています。
機械学習の自動化とユーザーフレンドリーなデータ加工ツールで
必要な人が必要な時にデータ分析を行える環境を実現
データ活用高度化の取り組みにおいて、パートナーとなったのがNTTデータだ。
ライオンの目指す道程を支えるため、NTTデータが提案したのは、データを取り扱う過程に適合する複数のツールを組み合わせたソリューションの提案だった。
羽田:まず、ライオンさまが実施している顧客データ分析の高度化に向けて、機械学習を自動化するツールであるDataRobotの導入を提案しました。機械学習を用いることで、これまで人手の分析だけでは気づけなかった顧客像や製品の使われ方、志向を発見したり、それを精緻化したり、有効なデータを見極めたりすることが可能になると考えたためです。
藤墳:ライオンさまの課題・目的をじっくりヒアリングし、まずはDataRobot(※1)を提案、続いてデータの加工処理が重要な要素になると考え、データ加工ツールのAlteryx(※2)も追加で提案しました。専門的な分析組織でなくても活用できるツールを希望されていたことから、さまざまなツールを比較した結果、予測理由の確認までスピーディかつシンプルな操作で完了できるツールとして選びました。もちろん、ただツールを導入するだけではなく、DataRobot/Alteryxの習熟から活用の浸透まで、結果に繋げるためのさまざまな支援も提案に含めました。
また、導入前には実際の活用シーンやアウトプットのイメージをより具体的につかんでいただけるように、汎用データではなく、ライオンさまが所有する実データを用いたカスタムデモも実施しました。
ライオン側ではNTTデータの提案をこう評価する。
米谷:昨今、利用可能なデジタルマーケティングツールは多様化し、テクノロジーの進展もより早くなっていると感じています。一方、それぞれのツール間の機能差は埋まりつつあり、細部までの機能の見極めは自社だけでは難しいと感じていました。
NTTデータ様にはITとデータサイエンス領域のプロフェッショナルな知見をもとに、当社の目的・ビジネスゴールに合わせ、最適なソリューションを提案していただいたことから、一緒に取り組んでいくことを決めました。
また、せっかくDMPを起点にマーケティング領域で活用できるデータを拡張できても、そのデータが可視化され、必要な人が必要な時に活用できなければその価値は半減してしまいます。
データ活用を高度化するためのソリューション選定時には、「より多くの人がデータ活用できること」にこだわりました。
その点、ノンコーディングでのデータ加工・集計機能を持つプレパレーションツールであるAlteryx、スピーディに高精度の予測モデルが作成可能なAI(機械学習)ツールであるDataRobotは、当社の要望にマッチしていました。
ツール導入後の活用浸透や、データサイエンスに関するナレッジ蓄積の部分でも支援いただけることも評価が高かったですね。
実際の製品例を用いたワークショップで、ナレッジを蓄積
2017年に提案と比較検証が行われ、2018年に導入が決定。まずはDataRobotが稼働開始し、続いて2019年からはAlteryxも実運用をスタートする。
藤墳:ツールを使いこなしていただくため、使用時のよくある間違いをドキュメントにまとめたほか、ワークショップを集中的に行ってツール活用の習熟をサポートしました。ワークショップではライオンさまの製品を例にツールのアウトプットのサンプルを提示し、ツールの設定のこの部分を変えれば他製品でも利用できるということを、実際に手を動かしてもらう形で経験していただきました。社内でも効果を説明しやすいように、NTTデータ側でライオンさまの業務をきちんと意識した上で、ある分析結果が実際の業務のアウトプットにどう使われていくのかなどを丁寧に伝えることを心がけました。導入当初の数カ月、1回2時間程度で週に1、2回開催していたので、かなり密にコミュニケーションを取っていたと思います。
米谷:Alteryxのナレッジ蓄積のためのワークショップのおかげで、データ活用プロセス全体から見た、データ加工、集計処理の工程を効率的に、かつ深く理解できました。
我々のチームは、解くべき課題(目的)の設定⇒分析設計⇒データ加工・集計⇒分析⇒レポーティングと、カバーする業務範囲が比較的広いため、データエンジニアリングの領域で外してはいけない重点ポイントを効率的にレクチャーいただけたことで、組織的なナレッジ蓄積にもつなげることができています。
その後もライオン側のチームメンバー交代などのタイミングに応じて、継続的にワークショップを開催しているという。
NTTデータでは、分析のためのデータを蓄積するDMP(デジタルマーケティングプラットフォーム)の運用も担っている。
柏原:正確な分析を行うために必要なデータマートの構築や、分析結果に基づくユーザーの皆さまへの発信のためのデータ整備など、インフラからアプリケーションまで、幅広い範囲の運用を任せていただいています。もちろんデータ活用・分析が実施できるように基盤を安定稼働させること、データ連携を確実に実施することは重要ですが、ライオンさまのビジネス・スピード感を重視し、より効率的に使い勝手を良くすることを考えながら取り組んでいます。今回導入いただいた分析ツールとDMPの効率的な運用を組み合わせ、ライオンさまのデータ分析の高度化、効率化を通じて、ユーザーの皆さまへの魅力的な体験価値提供に貢献していきたいです。
データ活用プロセスを整備した先に目指すのは、お客様への新しい価値提案
米谷:DataRobot/Alteryxの導入によるデータ分析・活用の成果として、顧客理解のスピードと質の向上が進んでいると感じています。また、分析を通じて社内にデータ集計や分析のナレッジが継続して蓄積されています。
従来であればマーケティング課題を調査課題に落とし込み、外部調査会社と連携し、設計、実査、レポーティングというプロセスを経てアウトプットまでは最短でも2カ月ほどの時間がかかっていました。いまではデータ加工・集計⇒分析⇒レポーティングのプロセスを、その時の課題、状況に応じてインハウス化することで、最短3週間程度にまで短縮することができています。
一方で、データから生活文脈を読み解き、これまで気づけていなかったお客様のインサイトをより多く見つけていくことは、課題と認識しています。新しい提案価値につながるアウトプットをより増やしていきたいと思っています。これに向け、お客様の深い理解につながる新たな分析手法の開発は、常に意識して行っています。デジタルとリアルで分断されがちであったお客様理解のアプローチを融合し、デジタル×リアルによる新しい顧客分析手法の確立にも取り組んでいきたいと考えています。
その道筋において、NTTデータには次のステップの期待をしているという。
米谷:データ活用高度化プロジェクトがスタートしたときから、NTTデータ様にはマーケティング×データサイエンスの領域で、当社のビジネス課題に親身に寄り添った提案をしていただき、大変心強く感じています。今後も、さらに当社のビジネスゴールにフォーカスした最適なソリューションの提供とご支援をぜひお願いしたいと思っています。
落合:ライオンさまが行いたい分析から実際のマーケティングまでの流れをスピーディに実行し、効果を実感していただけるように引き続き支援していきます。新しい技術やソリューションはもちろんのこと、ライオンさまが目指すマーケティング部門全体のデータ分析の民主化、より多くの業務・部門でのデータ活用、さらにはDX推進まで含め、これからも多面的な提案をしていきたいと思っています。
柏原:DMPもいままでは安定運用することを重視していましたが、今後はさらにライオンさまのビジネスが加速するように、データ活用の高度化、効率化を目指して機能をフル活用していきたいと考えています。新しい機能や、まだ活用しきれていない部分には、データ活用を実施していくにあたってぜひ使っていただきたいものもあります。これからも積極的な提案を行い、NTTデータをパートナーに選んでよかったと思っていただけるように、日々励んでいきます。
次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーを目指すライオンの多様なデジタルの取り組みを、NTTデータは今後もサポートしていく。
企業紹介
ライオン株式会社
1891年東京・神田に開設された石鹸等の原料取次を行う小林富次郎商店がルーツ。その後、歯磨きや石鹸の製造・販売へと事業を拡大。ライオン歯磨とライオン油脂に分かれ各々成長し、1980年に合併してライオンが発足。現在は歯磨やハンドソープ、洗剤等の日用品からOTC医薬品、健康食品まで広く手がける総合ヘルスケアカンパニーとなっている。
プロフィール
ライオン ビジネス開発センター コンシューマーナレッジ
ディレクター/主任部員 米谷 紘氏
2005年ライオン入社。IT部門でサプライチェーン、基幹業務システム開発を担当後、マーケティングリサーチ部門に所属し、OTC分野のマーケティングリサーチに従事。現在はデジタルデータを軸としたマーケティング領域のデータ分析に取り組む。
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 AI&IoT事業部
デジタルサクセス担当 課長代理 羽田 真也氏
マーケティング領域における分析経験を多数有し、小売・流通業をはじめとして、幅広い業界の分析活用経験を持つ。また、様々な業界・業務に対するDataRobotの導入実績があり、データサイエンティストとしてデータ活用におけるお客様の業務変革に貢献している。
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 AI&IoT事業部
デジタルサクセス担当 課長代理 藤墳 新菜氏
機械学習や自然言語処理などを活用した幅広い業界の分析活用経験を持つ。お客様からデータを預かり分析レポートを提出することはもちろん、機械学習ツールDataRobotやデータプレパレーションツールAlteryxなどの導入支援やお客様の育成などに従事。
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 AI&IoT事業部
コンサルティング担当 課長代理 柏原 豊氏
データ活用基盤の開発・導入・運用において多くの業界にて経験を持つ。近年はNTTデータのクラウド型データ活用基盤サービス「Trusted Data Foundation」の立上げから従事し、クイックな活用基盤構築を精力的に行っている。
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 AI&IoT事業部
営業担当 落合 響子氏
製造業を中心にお客様のデータ活用支援、人材育成提案などを担当。BI領域から基盤構築など幅広い支援に従事し、お客様のデータ活用によるビジネス価値創出までを支援している。
(※1)DataRobotに関するサービス
(※2)Alteryxに関するサービス
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