「自動化対象業務の選定に時間がかかるようになった」
「事業部門での開発が進まず、プロジェクトが行き詰まっている」
「接続先サイトの仕様が変更になるたびにロボットがエラーを起こし、その都度対応するのが手間」
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)がブームとなって5年近くが経った現在、業務効率化の手法として定着した一方で、上記のような悩みに直面しているユーザーは珍しくない。「煩雑だった手作業を自動実行に移す」という従来の手法にとどまらない、新たなアプローチが求められる段階に入ったともいえそうだ。
こうした中、コンタクトセンターのオペレーター支援用途で早くからRPA製品を展開してきたNICEは、得意とするデータ分析技術の応用により、ロボットの開発運用プロセスを大幅に効率化。コンタクトセンター以外の分野にも用途を広げつつある。
最新製品のコンセプトと特長、さらに日本での事業戦略について、同社の日本法人であるナイスジャパン株式会社(東京都港区)の安藤竜一社長と、同社ソリューションコンサルタント マネージャーの望月智行氏に聞いた。
個人のスキルレベルに合わせたリアルタイムでの支援が可能
−米フォレスター・リサーチの最新調査で4段階中最高の「リーダー」と評価されるなど、グローバルでトップクラスの地位を確立しているNICEのRPA製品ですが、日本市場では「知る人ぞ知る存在」という印象があります。そこでまず、NICEのRPAのコンセプトと、これまでの国内展開についてお聞かせください。
安藤竜一氏(ナイスジャパン株式会社 社長):NICEは通話録音、音声分析といったコンタクトセンター向けのソリューションで長年の実績を持つ企業です。さる12月から日本法人の代表を務める私も、これまでコンタクトセンター業界で20年以上にわたり業務支援に携わってきました。
RPAの分野でもNICEは主要ベンダーでも有数の歴史があり、デスクトップ型ツールを最初に提供したのは2001年のことでした。まだRPAという言葉もなかった時期で、当時はRTPO(Real-time Process Optimization=リアルタイムのプロセス最適化)と呼んでいました。
私たちのRPA製品は現在、世界各国、また日本でも1,000人規模のコンタクトセンターで日々利用されているほか、放送・航空・携帯電話といった無線局の免許申請を受け付ける総務省では、大量で多岐にわたる入力作業の効率化などにも活用されています。
望月智行氏(同社 ソリューションコンサルタント マネージャー):コンタクトセンターを支援するソリューションとして進化してきたNICEのRPAは、「Automation for the People(人々のための自動化)」を目指し、スキルレベルが異なるそれぞれの従業員に合わせて、作業をリアルタイムで支援することを特徴としています。
この点で象徴的なのは、弊社のデスクトップ型RPA製品「NEVA(ニーバ)」です。「NEVA」はバックグラウンドで稼働し、実行中の端末で他の作業を同時並行できます。コンタクトセンターを例にとると、オペレーターが顧客と会話中に、条件に応じて確認したい情報を即座に画面上に示すだけでなく、登録作業のような後処理を引き受けることが可能です。
ここ数年の日本のRPAブームでは、特にバックオフィスでの活用がクローズアップされ「一連の業務フローから自動化可能な手作業を切り出して置き換える」用途へのニーズが強かったように思います。もっとも、こうした利用法は、私たちのRPAのコンセプトとはやや異なります。そこでミスマッチを避ける観点から「NICEにもRPA製品がある」という積極的なアピールを、日本国内ではあえて控えてきた経緯があります。
−そうした事情や状況が、ここへ来て変わってきたということですか?
安藤:はい。バックオフィス以外でもロボットの活用が進み、また私たちの製品群も充実した現在、NICEのRPAは日本市場においてもふさわしい選択肢になったと考えています。
NICEが得意とするデータ収集・分析の技術にAIを掛け合わせたことで、自動化そのものにとどまらず、自動化する業務の選定や運用管理といったトータルな業務効率の向上を図れるようになった点は、RPAを思うように活用できていないと感じているユーザーにとって、きわめて有用だと確信しています。
自動化対象業務の選定と実装を自動化
−では、現在のNICEのRPA製品ラインアップと、最新機能についてお聞かせください。
安藤:私たちがAPA(Advanced Process Automation)と総称しているRPA製品のパッケージは、完全自動実行のサーバー型RPAツール「NICE Robotic Automation」と、必要に応じて実行できるデスクトップ型RPAツールの「NEVA」、そしてデスクトップデータの分析・可視化と自動化対象の選定を担う「Automation Finder」の3つに大別できます。
ロボットの開発・管理はWebベースで、サーバー型・デスクトップ型のロボットを共通の「Automation Studio」で作成できるほか、実行時の接続エラーをいち早く察知するリアルタイム監視機能「Connectivity Watcher」などが標準機能となっています。
望月:2020年12月にアップデートされたAPAの最新製品「バージョン7.4」では、Automation Finderに「Click to Automate」という新機能が加わりました。
活用のイメージとしては、例えば「いくつものシステムにアクセスして集約した情報を、メールの文面に落とし込む作業」が社内でたびたび行われている場合、Automation Finderはそうしたプロセスが自動化可能なことを検知し、頻度や処理時間も踏まえた優先順位の高い自動化対象を特定します。
ここでさらにClick to Automateを用いると、「情報集約とメール作成を自動化するテンプレート」が、ボタンクリック1つで自動生成されます。あとは生成されたテンプレートをAutomation Studioで適宜編集するだけで、同種の全プロセスをただちに自動化できます。 この機能を使えば、「自動化すべき業務が分からない」「社内で開発ができない」という課題を解決に導くことができると考えています。
また、これまで手作業で特に負担感がなく、自動化したときの短縮効果も「1回数秒」というレベルのタスクは、ほとんどRPAによる自動化の対象にならなかったと思います。しかし、そういった業務を社内の多くの従業員が一日に何度も繰り返しているとすれば、ロボット化のメリットが十分にあるといえます。私たちの製品では、こうした目立たない自動化の“種”を効率的に集め、わずかな効果の積み重ねで大きな成果を狙うという、RPA活用の新たなアプローチが可能となります。
RPAの真価は「まだこんなものではない」
−RPA活用を進める中で直面する、多くの課題を克服しうる製品のようですが、導入にあたって必要となる環境や、コストの目安もうかがえますか。
望月:APAは業務選定や自動化テンプレート作成において最適な結果をもたらすために、導入端末からは「キーボードの一押し」に至るまで、ありとあらゆる作業履歴を収集します。従って、こうしたデータを安全に保存できるサーバー環境を、オンプレミスやパブリッククラウドなどでご用意いただくこととなります。個人情報などを含む作業項目については、解読できない形式に変換して収集・分析の対象から外すことも可能です。
また、2021年7月に日本でのリリースが予定されているクラウド型CXプラットフォーム「CXone」は、オムニチャネルルーティング機能を備え、CX(顧客体験)や顧客のインサイトをさまざまなチャネルを横断して理解・分析し、可視化する機能を備えています。多様化する働き方に合わせて、クラウド上の機能をさらに強化していく方針です。
費用面では、実行ライセンス単位の買い切りまたは月額料金制となっており、デスクトップ型ツールであるNEVAの実行ライセンスが1つあれば、Automation StudioやConnectivity Watcher、Automation Finderなども標準機能として付属します。
実行環境以外でライセンス費用が発生せず、また1端末での導入からコンタクトセンターのように何千・何万人が利用するケースまで想定した価格設定になっており、主要ベンダーのRPA製品と比較してもリーズナブルな運用が実現可能だと思います。
−ここまでのお話で、APAに相当なポテンシャルを感じた読者も多そうです。最後に、RPAの普及に携わる関係者へのメッセージをお願いします。
望月:ブームに乗った導入が一巡した現在、RPA活用のメリットを「大体こんなものか」とやや醒めた目でご覧の方もおられると思います。しかし、進化し続ける最新のテクノロジーは、ロボット活用のサイクル全般を、より簡単で効率的なものにしています。
私からお伝えしたいのは「RPAの真価は、まだまだこんなものではない」ということです。特に「過去にRPA活用でつまずき、リトライの機会をうかがっている」という方々には、Click to Automateをはじめとする最新機能に、ぜひ一度触れていただきたいと思います。
安藤:私たちの製品は自動化する業務の選定や実装、さらに運用面の負担を軽減できる点で、RPAの導入を順調に進めているユーザーが内製化を加速させるフェーズでも大いに役立つと考えています。
既存のツールとAPAを併用し、Automation Finderを生かした新たなアプローチでRPA活用推進に再チャレンジする選択は、十分現実的なものだと思います。こうした方針に賛同いただけるパートナーとの提携を強化しながら、最新のAPAを国内に広げ、持続的な業務改善の仕組みづくりに少しでも貢献できることを願っています。
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