グローブライド株式会社(以下、グローブライド)は、「ライフタイム・スポーツ・カンパニー」をビジョンに、釣り用品、ゴルフ用品、テニス用品、サイクルスポーツ用品等を製造・販売しているスポーツ用品メーカーです。「ダイワ」ブランドをはじめ、ゴルフ用品の「ONOFF」(オノフ)、テニス用品の「Prince」(プリンス)、サイクルスポーツの「Corratec」(コラテック)・「FOCUS」(フォーカス)ブランドを展開しています。
グローブライドは、約10年以上に渡り、製品開発に3DSYSTEMS社製の3Dプリンターを使用しており、現在は最新機種である「ProJet2500Plus」を使用しています。当事例では、ProJet2500Plusならではの特徴や、旧機種(ProJet3500シリーズ)との違いについて、フィッシング生産本部リール製造部の城氏と山口氏に伺いました。
■お客様に釣りの楽しさを提供する製品開発 ~より軽く細い竿で大きな魚を釣り上げるお客様のロマンを追求~
イグアス:設計するときに心がけていることは何ですか?
山口氏:軽さや使いやすさ、強さを兼ね備えた綺麗なデザインを心がけています。
城氏:1日中お客様が持つ道具なので、軽さに対してのお客様の欲求は強いです。恐らく日本は、仕掛けの進化において世界一です。細い仕掛けだと魚からは見えないので釣りやすい。細い仕掛けで大きな魚を頑張って釣り上げる……魚との駆け引きは釣りの楽しみでありロマンです。
イグアス:軽さは大事なのですね。
城氏:そうですね。軽さのためには設計上ギリギリまで削ったモデルの強度等を解析にかけますが、それだけでは不十分なこともあります。
山口氏:造形してみて「薄すぎる!」と気づくこともありますしね。
城氏:それ以外にも、触感や手触りも非常に大事です。握り心地や、長く持ってみて痛くなる部分がないかなど、データでは分からない部分を確認するには3Dプリンターが非常に役に立っています。
イグアス:手触りや重さは、確かに持ってみないと分からないですよね。
城氏:その他には機構の確認にも役立っています。
城氏:リールはこのように回しますので、構造的にアンバランスなデザインになります。そして回してみると、回っている感覚が手に伝わってきます。振動がぶれる感覚があるとだめですので、ぶれないように重心をとってバランスを取りながら、なおかつ手触りを良くします。
イグアス:右利きの人や左利きの人によって持ち方は変わってくるのですか?
山口氏:はい、握り方が人によって違いますし、右利きの方や左利きの方によっても違うので、社内でいろいろな人に握ってもらっています。利き手もそうですが、手の大きさや指の長さなども違いがありますので、社内でデータを取って設計に役立てています。
城氏:外観はお客様ターゲット層に合わせて色やシルエットを変えていますし、中身はメカ構造物が全部入ってくるので、設計はそことのせめぎあいです。前よりちょっと良く、ちょっと良く……の繰り返しです。
城氏:その他には、釣り用品などもいろいろなジャンルで、かなり細かなことに取り組んでいます。
山口氏:たとえばこれはイカを絞める棒です(笑)。
城氏:これは釣ったイカを美味しく家まで持ち帰っていただくために突き刺す棒で、イカの急所、神経の通った所に突き刺す「イカシメスティック」というのですが、使う人が安全にケガしないように気を使いながら設計しています。
■3Dプリンターの活用でコミュニケーションが円滑に、設計開発の時間を大幅短縮
イグアス:お客様ターゲットに合った綺麗なデザインと使用者の触感を意識して、なおかつ軽さやバランスを求めた機構設計をするとなると、デザイナーや製造部門との製品開発に関わる打ち合わせに3Dプリンターは欠かせない存在だと思いますが、そもそも3Dプリンターがなかったころはどうされていたのですか?
城氏:我々の他に、デザイナーや金型屋さんも一同に集めて、電極承認から進めておりました。皆同じ思いで製品開発に取り組んでおりますので、納得した製品の試作を作りあげるには、非常に時間が掛かりました。金型屋さんがピカピカに磨いた電極に、デザイナーが細かく修正指示を加えて、それに対して金型屋さんが一生懸命削ってくれたりしていました。しかし、あまりにも削りすぎると「あっ、ここはパーティングが……」と我々が意見を伝えたり、非常に大変でした(笑)。本当に物があるのとないのでは大違いですね。
城氏:以前、3Dのグラフィックをかなり高精度にしてリアルな3Dを作り、承認をとろうと動いたことがありました。
山口氏:あのときも大変でした。かなり作りこんだ3Dグラフィックにしたのですが、ある段階で「物が無いとわからない」という意見が出て来てしまって……。
城氏:ある程度進んだ段階でしたので、今から削るのか~!と泣きそうになりながら、塊を用意してマシニングで削ったりと、苦労しましたね。
イグアス:3Dプリンターが有るのと無いとでは大違いですね。
山口氏:今ではお客様ターゲット層や商品コンセプトをデザイナーに伝えて、スケッチしてもらったデザインを3Dモデリングしています。3Dプリンターでモデルを作成して塗装を施し、デザインレビューをしていきます。
城氏:3Dプリンターがあるので、各所の承認工程は大幅に早くなりました。以前とは比較にならないほどかなり前倒しです。色の決定も塗料を調達する関係がありますので、そこまで全てやります。
山口氏:色の決定はギリギリまでします。先程もお話した通り、塗料を手配する関係上、色の決定も必要な工程ですので部位ごとにマスキング塗装なども行います。光沢塗料やマット系の塗料を使い分けて、小さな部品も塗装したり、かなり手の込んだことをしていますね。
■ズバリ! 3DプリンターProJet2500Plusの感想は?
山口氏:3DSystemsの製品はProJet3500HDPlusも使用していますが、3500と比べると造形時間がかなり早いですね。マテリアルにも色がついているので、デザイン確認時にそのまま塗装なしでできるのも良いですね。使用している材料がVisiJet M2R-TNを使っているのですが、熱に強いので変形しにくいです。
山口氏:3Dプリンターに求めるのは、デザインがしっかりと、意匠を再現できていることが一番大事です。
<3Dプリンター選定ポイント>
- デザインの再現性
- 細かい所の形状再現性
- 一度にたくさんつくれる効率性
イグアス:ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。
城氏:その他にも、薄物を作ったときの反りが随分なくなりましたね。
山口氏:そうですね。また最近では生産設備として置き治具を造形することがありますが、その際にカタカタ反らないように造形配置に工夫したりして、反りがずいぶんなくなりました。
城氏:もう1つ3Dプリンターに求めることは、寸法精度ですね。できれば100分台になる様に配置を工夫しています。特にゴルフの部門はフェース面の微妙な角度の違いにこだわりがありますね。
山口氏:もちろん多少のずれはありますけど許容範囲で納まっています。
山口氏:メンテナンス性も良くなりましたね。ProJet3500Plusはユーザーメンテナンスできない装置だったので「ここ拭きたいな~」と思っても自ら清掃が出来なかったのですが、ProJet2500Plusは、ユーザー側で清掃できるので綺麗に使用できています。
イグアス:有意義に活用いただいているようで、我々も嬉しいです。ありがとうございます。
イグアス:最後に当社や3DSystems(メーカー)に期待することはありますか?
山口氏:私達は意匠や細かい所の再現性、寸法精度を非常に大事にしていますので、もっと綺麗な造形をする工夫がありましたら教えてください。
城氏:DSystemsの製品は良い製品ですので、長く使っていきたいです。新しい製品開発を進めていると思いますが、良い製品を長く使えるようにお願いしたいです。
城氏:今後はアルミニウムダイカストができる3Dプリンターが出るのを期待しています。釣りに持って行ける試作がそのままできてしまう。一歩進んだ設計開発の前倒しができるので期待したいですね。
イグアス:城様、山口様、このたびは誠に有難うございました。我々も引き続き、お客様に便利に活用いただけるように、メーカーと一緒になってサポートさせていただきたいと思います。
「ProJet®2500Plus」 |
[PR]提供:イグアス