止めてはならないMicrosoft 365へのネットワーク。IIJの情シスは、より安定した通信を求めて2度の切り替えを経験しました。その経緯を詳しく聞きました。
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■Microsoft Azure Peering Serviceで実現するOffice 365へのダイレクト接続
(PDF:7ページ)
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登場人物
IIJ 情シス関 一夫氏
IIJグループの社内ITインフラを統括。
インフラからアプリケーションまで豊富な知識と経験 を備える。
IIJ 情シス井内 悠氏
IIJ社内のネットワーク、外部サービスとの接続ゲートウェイの 企画運用を担当。
Microsoft 365へのネットワークアクセス更新プロジェクト を推進。
(聞き手)IIJマーケティング担当 向平氏
インターネット経由からExpressRouteへ
――― 今回は、Microsoft 365までの通信についてお聞きします。 今やIIJ社員にとって必要不可欠なMicrosoft 365ですが、よく他社で聞く 「スケジュールの表示が遅い」「Teamsが遅い」といったストレスを 感じたことがありません。 IIJ自身のMicrosoft 365ネットワークについて教えてください。
関氏 IIJのMicrosoft 365までの通信は、最初はインターネット経由、その後「Azure ExpressRoute」、そして現在の「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure Peering Service」へと変化してきました。
――― 最初はインターネット経由の通信だったんですね。
関氏 はい。2017年4月からOffice 365(現在のMicrosoft 365)サービスの利用を開始したんですが、最初は普通にインターネット経由でした。Office 365の中でもSkype for Businessをメインに利用する想定で、当時はIIJ社内でも利用者が少なかったんです。この時は、インターネット通信でも問題ないと判断していましたし、実際課題もありませんでした。
――― そこからExpressRouteに切り替えたんですね。
関氏 当時、IIJで利用していたスケジューラのリプレース時期を迎えたこともあり、リプレース先としてExchange Onlineを検討し始めました。ただ、Exchange Onlineは特にスケジュールを利用するとセッションをたくさん張ることが分かっていました。そうなるとプロキシや回線がひっ迫して、ほかのインターネット利用に影響が出るかもしれない。社内で色々と検討した結果、「高品質で快適に利用するにはExpressRouteを利用するのが一番」という結論になりました。そのタイミングでExpressRouteの導入を企画し始めました。苦労はしつつも無事に承認が通り、導入できる目途が立ちました(※現在、Microsoft 365用途でのExpressRouteの利用にはMicrosoft社の承認が必要です)。
――― SkypeからExchangeへと利用サービスが広がるなかで、 通信の安定性を狙ってExpressRouteを導入した、ということですね。 いざ導入する時に大変だったことはありますか?
関氏 IIJの場合、グループ内の企業と共有のネットワークがあります。ExpressRouteをその共有ネットワークと接続することで、他のグループ企業でもExpressRoute経由でアクセスできるようにしたいと考えていました。ただ、設備的な問題で共有ネットワーク経由でアクセスできない企業もいくつかあって、それらの企業は従来と変わらず各社のインターネットゲートウェイ経由でアクセスする構成にしました。
グループ内でExpressRoute経由とインターネット経由の2種類が混在する構成は、当時他社でも事例がなかったようです。ネットワークの全体設計に苦労しました。
――― そんな苦労を乗り越えて切り替えに至ったんですね。切り替え作業自体はスムーズでしたか?
井内氏 ExpressRoute側からの経路情報がIIJのゲートウェイに細かいセグメントでたくさん降ってくることが分かり、その経路情報の反映によってゲートウェイ機器の負荷が大幅に上がってしまったんです。それが切替直後に発覚した課題でした。
機器自体が1世代前のものでスペックが足りないことも原因の1つだったので、機器のリプレースを行いました。併せて各拠点への経路情報配信を見直したりして、ポイントとなる機器だけをリプレースすることで解消できました。
品質には満足していた。それでも切り替えを決断
――― そこから更に、現在の 「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure Peering Service」へ 切り替えを行ったんですよね。 きっかけはなんだったのでしょうか?
関氏 Microsoft社の「Microsoft Azure Peering Service」は、業種や用途にかかわらず、すべてのお客様にご利用いただけるサービスです。IIJでも、これに対応したオリジナルサービス「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure Peering Service」を提供する予定がありました。サービス担当部門から「サービス提供に先駆けてIIJ社内に導入したい」と打診されたのがきっかけです。
ExpressRouteの品質にはまったく問題がなく満足していたのですが、IIJ自身が最初のユーザーになることで、お客様に安心してご利用いただけるなら、という気持ちで移行することにしました。
ExpressRouteからIIJのサービスへ移行する1つのケーススタディとして、お客様に情報を提供できるというのもモチベーションでした。
――― ExpressRouteで既にダイレクト接続は実現していたわけですが、 「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure Peering Service」へ 切り替える時の苦労はありましたか?
井内氏 基本的にIIJの情シス側としては、サービスからの経路情報を受け取るのみでした。サービス部門に動いてもらったこともあって、大きな苦労はなかったですね。
――― IIJでは、Teamsで社内の内線通話ができるシステムを導入していますね。
井内氏 はい。ExpressRouteを使っている時も、Microsoft 365からTeams内線サーバに向けてSNATして通信するようにオプションを契約していました。「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure Peering Service」で同じSNATのオプションを提供しているのでそれを利用する想定だったんですが…切替後にその通信がうまく疎通できなくなりまして。ExpressRouteの時はMicrosoft 365のグローバルアドレスで通信していたものが、切替後はプライベートアドレスにNATされる仕様になったということで、ファイアウォールで通信がブロックされていたんです。ファイアウォールの設定を変更して、対応しました。
関氏 ただ、切り替えて以降はまったく問題ないですね。ユーザーからの品質に関するクレームはゼロです。
Microsoft Azure Peering Serviceを使ってみて
――― ExpressRouteから 「IIJクラウドエクスチェンジサービスfor Microsoft Azure Peering Service」へ 切り替えて効果を実感することはありますか?
井内氏 「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure Peering Service」だと経路情報がある程度集約したセグメントで配信されるので、機器の負荷が減ったことが大きいですね。リプレースしてスペック的に余裕はできたものの、やはりルーティングテーブルの見やすさなどを考えると少ない方が管理上も楽ですし。
――― 新型コロナウイルスの影響でリモートワークが増えたと思います。何か対応をされましたか?
関氏 やはりTeamsの利用が大幅に増えので、通信帯域拡張や、追加ライセンスを購入してルータのスループットを上げる対応をしました。副次効果ではありますが、Microsoft 365への通信がインターネット通信とは別の経路になっていることで、負荷分散の観点でも良かったと思います。グループ企業のMicrosoft 365への通信も、今回導入したIIJ本体のネットワークから出るので、負荷はすごく上がったはずですし。
井内氏 私は普段、ネットワークに関する社内からの問い合わせを受ける立場なんですが、Microsoft 365への通信に関する問い合わせはまったくないんです。管理側からすると、とても助かりますね。他社の事例でよく聞く「Teamsがつながらない」とか「遅い」とか、そんな話は一切ないです。グループ会社からの問い合わせやクレームもないですね。
――― IIJにとって、Micorosoft 365は超ミッションクリティカルシステムになっていますよね。 それへの通信に関する問い合わせやクレームがないのは素晴らしいですね。
関氏 はい、その点は本当に良かったと思っています。
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