新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、ニューノーマル(新しい生活様式)なビジネスの在り方が求められるようになり、あらゆる領域でデジタル変革が一気に加速した。

これまでDXを牽引してきた通信業界にも変革の波が押し寄せており、これまでの通信サービスだけでなく、多様化する顧客のニーズに対応した新たなビジネスモデルを構築するための取り組みが進められている。

こうした状況のなか、2021年3月2日に通信業界を対象としたWebセミナー「5G/IoT時代、「通信」の提供だけでは生き残れない『今求められる通信業界の新たなサービス提供のあり方とは?』」が開催された。

本稿では、このセミナーで行われた講演「新しいビジネス環境における通信事業のチャレンジと方向性」についてレポートしていく。

品質中心のビジネスから、スピードやコストも意識したビジネスモデルに

本講演に登壇したServiceNow Japan合同会社 ソリューションコンサルティング事業統括 第一SC統括本部 通信SC本部 本部長の新谷 卓也氏は、現在の通信業界のトレンドとして「新しい技術」「新しい競争環境」「新しい顧客要求」「新しい標準」の4つを挙げる。

  • ServiceNow Japan合同会社
    ソリューションコンサルティング事業統括
    第一SC統括本部 通信SC本部 本部長
    新谷 卓也氏

  • 「通信業界は今まさに転換期にあります。5G/IoT/クラウドなど新しい技術が台頭し、これまで国内の通信事業者が競合相手だったものが、今後はグローバルかつ、多様な業種の企業が競合となってきます。顧客は単に“つながること”だけでなく、新しい顧客体験を求めるようになり、サービス全体のユーザーエクスペリエンスにフォーカスしなければなりません。さらに昨今のコロナ禍や、政府による携帯料金の値下げ要求などもあり、通信事業者は新しい標準に合わせたビジネス環境を構築する必要があります」

    このようなビジネス環境下において、通信事業者にはCSP(通信サービスプロバイダ)からDSP(デジタルサービスプロバイダ)への転換、すなわち通信というモノ(プロダクト)中心のビジネスモデルから、エンドツーエンドでのプラットフォーム型のビジネスモデルへの変革が必要になると新谷氏。さらに、“つながる”という品質中心のビジネスから、スピードやコストも重要視される時代に入ったと解説する。

    「2020年のCSPは8兆円規模の市場でしたが、2030年のDSP市場は170兆円規模にまで拡大すると予測されています。この変化は通信事業者にとって非常に大きなもので、これまでのB2Cを中心したビジネスが、パートナーも含めたB2B2Xのビジネスに変わっていくことを意味しています」

    新谷氏は、こうした状況を踏まえ、通信事業者は“プラットフォーマー”になることが期待されており、その実現には「品質」「コスト」「スピード」の3つのバランスを意識したデジタル変革が必要と語った。

    通信事業者がプラットフォーマーになるためのデジタル変革、その方向性とは

    続いて、通信事業者がプラットフォーマーになるために必要なデジタル変革の方向性が語られた。まずは品質・コスト・スピード(QCD)の実現を阻害する要因として「サイロな業務」と「品質を優先した開発モデル」の2つが挙げられた。前者について新谷氏はこう解説する。

    「コールセンター、実際のサービスオペレーション業務、OSS/BSSといった基幹業務は、それぞれが社会インフラとしての通信品質を担保するために構築されています。個別の業務としてサイロ化されていることで、プラットフォーマーとして考えたときには、コストやスピードの観点で、要因となります」

    新谷氏は、サイロ化された業務を解消するための方向性として「エンドツーエンド(E2E)型サービス提供モデルの構築」を提示。例として検索サービス、決済サービス、配送サービスがプラットフォーム上で連携し、消費者にはE2Eでシームレスなサービスが提供されるAmazonのサービス提供モデルを挙げる。

    「日本の通信事業者は、今後Amazonのようなプラットフォーマーと比較されるようになるはずです。そのため、E2E型のサービス提供モデルを構築することが重要となります」

    後者の「品質を優先した開発モデル」では、膨大な設備投資を行い開発・保守するといった品質重視の考え方が、コストやスピードも重要なプラットフォーマーとしては阻害要因になると語られた。この要因に対して向かうべき方向性として新谷氏が挙げたのが「開発レス/高速リリースモデルの構築」だ。

    「ビジネスの変化は加速し続けており、プラットフォーマーとして柔軟に対応することが必要となります。そのためには、世の中のテンプレートをうまく使って、その後のビジネス変化にフィットさせていく開発モデルを構築する必要があります」

    新谷氏は、「E2E型サービス提供モデルの構築」と「開発レス/高速リリースモデルの構築」の2つが、通信事業者がプラットフォーマーに変わるためのデジタル変革として取り組まなければならない命題と解説した。

    • 通信業界のデジタル変革を実現するServiceNowのソリューション

      セッション後半では、通信事業者のデジタル変革に必要な2つの方向性に対応するための具体的なイメージが示された。「E2E型サービス提供モデルの構築」を実現するものとして紹介されたのは、ServiceNowが提供している通信業界向けソリューション「Telecommunications Service Management(TSM)」だ。

      「TSMは、顧客からの問い合わせ、申請に対応する『コンタクトセンター』、実際の対応を行う『サービスオペレーションセンター』、実際のBSS/OSSやパートナー企業とのインテグレーションレイヤーをクラウドプラットフォームとしてつなげます。こうしたプラットフォームを提供することで、顧客の観点でシームレスな連携が可能となり、E2Eで優れた顧客体験を提供することができます」

      ServiceNowはTM Forum(電気通信業界のサービスプロバイダとそのサプライヤーのための業界団体)のメンバーであり、Open APIなどを通じてBSS/OSSの各システムとシームレスな連携を可能としていると新谷氏。顧客画面やコンタクトセンター側の画面、ダッシュボード画面などを提示しながら、TSMがE2Eでサービスを提供できる機能を備えていることを説明する。さらに、「ネットワークサービス障害による中断した際のE2Eのプロセスイメージ」を例に「アラートの自動作成→MLで分析→メジャーケースの自動起票→顧客への通知→フィールドサービスエンジニアの訪問調整→実際の修正・確認」といった一連の障害対応業務を一気通貫で実現できることが解説された。

      • 「TSMを導入すると、今までのコンタクトセンターは顧客が起点となっていたましたが、TSMを導入すると顧客から知らされる前に対応できるようになり、顧客から見たときのサービス運用がリアクティブからプロアクティブに変わります。これによって、問い合わせの対応時間やSLA違反を減らすことができるほか、ARPUの向上、NPSの向上も期待できます」

        さらに講演では、TSMの通信事業者向け機能を紹介。より迅速な障害検知とワークフローの開始を実現する「Network Initiated Workflows」や通信事業者向けの構成管理データベース(CMDB)、顧客やパートナーの持つServiceNowインスタンスのデータをシームレスにやり取りすることで、パートナーも含めたB2B2Xモデルでのサービス提供を実現する「eBonding」について解説された。

        そして、2つめの方向性となる「開発レス/高速リリースモデルの構築」を実現するテクノロジーとしては「No Code/Low Code Platform」が提示された。

        「ノーコード、ローコードの技術を活用することで、『開発』と呼んでいたことが『設定』として実行できるようになります。これまでベンダーに開発を依頼していたものを内製化し、最新機能を高速にリリースしていくモデルを実現できます」

        • セッション終盤は、ServiceNowを導入することで大きな成果を得た、グローバルの通信事業者による事例の数々を紹介。新谷氏は通信業界におけるデジタル変革、すなわちプラットフォーマーへの転換に対し、ServiceNowのソリューションがどのような効果をもたらすのかを解説し、講演を締めくくった。

          日本の通信事業者が、これからのビジネスを勝ち抜くためのポイントと、デジタル変革を実現するためのソリューションが確認できる、実践的で有意義なセッションとなっていた。

          ●同セミナーでの「経済産業省」の講演レポート                   
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          ●同セミナーでの「KDDIエボルバ」の講演レポート                  
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