2020年9月17日、富士通株式会社および株式会社セールスフォース・ドットコムにて共催したオンラインセミナー「富士通が実践するニューノーマル時代のDX ~Salesforceによる現場改革の取り組み~」が開催され、好評につき2021年2月18日には本セミナーの再配信も行われた。

コロナ禍の影響を受けて営業では対面の機会が著しく減少しており、ニューノーマル時代には顧客接点をデジタルトランスフォーメーション(DX)でいかに解決していくかが重要なテーマだ。本セミナーでは、富士通株式会社がSalesforceを活用して取り組んでいる社内DXや、株式会社セールスフォース・ドットコム自身がSalesforceをどう活用しているかが語られた。

まずは富士通自身のデジタル変革を進める

本セミナーでは用意された3つのセッションの前に、まず富士通CIO(最高情報責任者)兼CDXO(最高デジタル変革責任者)補佐の福田 譲氏と、セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 アライアンス事業責任者の井上 靖英氏が登場し、開会の挨拶を行った。井上氏は「日本の生産性は先進国中で最下位。デジタルの力で生産性を劇的に高め、日本をもう一度押し上げたい」と話し、福田氏も「失われた20年といわれますが、“失われた”ではなく“失った”だと思っています。失ったものは取り戻せばいい」と力強く語った。

最初のセッションは「富士通が取り組むDX」。福田氏は、まず同社を取り巻く市場環境とそれに対応する方針について「従来型ITが今後縮小していく一方で、DXは大きく伸びていきます。その中で富士通は、従来型ITを深化させて強みを維持しつつ、DXのビジネスを探索する、いわゆる“両利きの経営”への転換が必要です。そしてそのために、富士通自身のDXが求められていると考えます」と話した。

この進化に向け、富士通では時田 CEO自らがCDXO(最高デジタル変革責任者)に就任したほか、自らの存在意義を再定義するため、パーパス・大切にする価値観・行動規範といった「Fujitsu Way」の刷新を行ってきた。また、今後は社会課題解決を支える最先端技術とDXビジネスの成長を支える領域に投資してソリューションを強化し、社外とのコラボレーションも深め、社内を全面改革していくことを宣言した。 福田氏は、DXとは単にデジタルツール導入やクラウド化を意味するのではなく、Dはあくまで手段であり、目的はXすなわち変革であるとしたうえで「日本企業が得意とする改善ではなく、企業の競争力を強化するため、制約を設けずにプロセスや組織、風土を変えていくのがDXです」と語った。

こういった認識のもと、富士通は全社DXプロジェクトをスタートさせた。そのポイントとして福田氏は「経営のリーダーシップ」「現場の叡智の結集」「カルチャーの変革にフォーカス」の3点を挙げた。具体的には、経営がリーダーシップを発揮するとともに「現場が主役」との発想でさまざまな課題を解決していくため、トップダウン型とボトムアップ型の両軸で機能する体制を導入している。

  • 2020年9月17日のオンラインセミナー福田氏の講演より

同プロジェクトは2020年7月1日付で始動し、経営戦略、ビジネス変革、マネジメント変革、人材・カルチャー変革のすべてで課題解決に取り組んでいるという。解決方法として、デザイナーが各プロジェクトに参画する「デザイン思考」、プロジェクト進行のフレームワークとしての「アジャイル」、データドリブンに向けた「データサイエンス」、社員の声を集めて分析する「VOICE」、新しい働き方を追求する「Work Life Shift」、そして外部とコラボレーションする「エコシステム」の6つを挙げた。

福田氏は最後に「顧客が『こうあって欲しい』と期待する富士通、社員が『こうありたい』と想う富士通を目指し、今一度私たちが何者なのか、未来志向で何を変えるべきかに注目しながら、デジタルを有効に活用した変革を進めていきます」と締めくくった。

富士通の社内DXを担当者目線で紹介

続くセッションは、富士通株式会社 産業ビジネス本部 シニアマネージャーの喜多 昌之氏による「営業/SE一体化による顧客フロント業務の変革 ~富士通の社内DXの取り組みと今後について~」。DX企業への変革に向け社内で進める取り組みの実践例が紹介された。

入社から15年、一貫して製造業担当の営業としてキャリアを歩んできた喜多氏は、営業部門全体の働き方改革や全社DXのプロジェクトのリーダーを担当。営業の現場から見たCRMの取り組みや全社DXの中で今後目指していることなどを語った。 富士通では顧客フロント(営業とSEの部門)変革において、営業とSEが一体化して基盤再編も含め業務全体を見直す「営業/SE一体のフォーメーション」、DXビジネスをドライブしていく営業人材を作るための「ビジネスプロデュース」、そして「ニューノーマル時代に向けた営業プロセス変革」という3つの改革を進めている。

「2018年に営業の働き方改革と連動する形でSalesforceを導入し、CRM強化も含めて営業の課題解決を加速させました。その中で営業活動のパイプラインマネジメント定着は進んだと自負しています」と喜多氏。しかし一方で、課題はまだまだ残っているとの認識を示した。

喜多氏が挙げる未解決の課題は「経営判断/事業判断にデータが使われていない」「多重プロセス/二重管理でデータの精度が低い」「営業とマーケティングに閉じた使い方をしておりデータ活用の範囲が狭い」の3点だ。喜多氏は「現場の課題解決=改善という意識が強く、部分最適の集まりになってしまっています。また、システムを作るだけで、現場のカルチャーやトップの意識は変えられていないので、行動様式を変えていかなければなりません」と課題の本質を指摘した。

  • 2020年9月17日のオンラインセミナー喜多氏の講演より

こうした視点で富士通が推進する顧客フロント業務のDXが「業務フロント統合(システム)」「ワークカルチャー変革(意識改革)」「データドリブン・営業プロセス変革(働き方)」の3つである。

業務フロント統合については「現場の嬉しさ」を重視し、現場にわかりやすくメリットのあるテーマから取り組むことが重要だと話す。またワークカルチャー変革では、まず会議のあり方を抜本的に見直すことで行動様式・組織風土変革につなげる考えだという。そしてデータドリブン・営業プロセス変革に関しては、営業とマーケティング部門の仕組みを全社基盤に展開するため、全関連分門と営業/SEのやり取りをSalesforce上に集約しようとしている。

さらにはニューノーマル時代における対応として、商談と活動を紐付けて見える化し、マネジメントを高度化するため、Salesforceを活用する取り組みが始まっているという。 喜多氏は最後に「現場目線を重視したうえで、経営から現場まで全員のマインドチェンジを進めることが重要であり、さまざまな課題を素早く解決していくための基盤となるのがSalesforceです。富士通はこれからも自社の課題解決の中で実践知を蓄積し、それを提供することでお客様のDXに貢献していきます」と語った。

Salesforceを顧客接点改革に役立てる

最後のセッションは「ネクストノーマル時代をリードする営業マネジメントとは ~セールスフォース・ドットコムが成長を続けられるワケ~」と題して、セールスフォース・ドットコムの井上氏が再度登場。同社自体がSalesforceをどのように活用して成長を実現し、現在直面するコロナ禍と今後のニューノーマルに向けどういった営業マネジメントを展開しているかについて紹介した。

井上氏は冒頭「当社は顧客の変革を支援し続ける企業でありたい」と述べた。では、同社はどのような変革を支援したいと考えているのか。井上氏はそれを「顧客接点改革」だとし、「事業運営の中心に顧客を置き、顧客に関わる全情報を一元的に把握して、顧客に提案型で接していく。当社はこのような変革を支援しています」と語った。

同社にとって、Salesforceは商品として成長の原動力であると同時に、社内においても自らSalesforceを使い倒しているという。

社内活用のポイントとして、井上氏は3つ挙げた。「1つ目は、専門分野ごとに部署を設置し、部署ごとに担当者を配置していること。一人の営業が開拓からクローズまで一人で担当するモデルではありません。2つ目は、リードを次の部門にどんどんパスしていき、パス先の部門のKPIに前の部門が責任を持ちます。そして3つ目は、すべてがデータドリブンであることです」と井上氏。あらゆるデータがSalesforceに蓄積されるので、それをもとに予算の効果的配分や営業活動改善が可能になると話した。

  • 2020年9月17日のオンラインセミナー井上氏の講演より

実際、同社は今回のコロナ禍において外勤営業が客先に赴けない中、デジタルにシフトして予算を配分し、顧客接点を数多く作ることで、対前年度比30%増の引き合いが生まれ、結果的に多くの顧客のDXを支援できたと井上氏は振り返った。

さらに井上氏は、Salesforceを使いこなすうえで「営業を管理するツールにしない、営業をサポートするツールにする」ことを徹底、SalesforceのAI「Einstein」の予測を商談におけるリスクの事前把握と対応に役立てていることを紹介した。「こうした社内活用が当社の継続的成長につながっていると実感しています」と井上氏は話した。

このあと、Salesforce活用のデモンストレーションが行われた。営業、マーケティング、アフタサービス各部門の実践例を基に、顧客を中心にあらゆる部門のデータとコミュニケーションがつながっていく様子が紹介された。

最後に井上氏は「Salesforceを使いこなすことで業務が効率化され、結果的に『お客様との接点時間』『お客様のことを考える時間』『チームプレー』『プライベート時間』の4つが生まれたと考えています。これらのおかげでお客様への高いサービス提供を実践できています」と話し、セッションを締めた。

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