従来ではオンプレミスサーバーしか選択肢がなかった用途にも、クラウドを利用するケースが増えています。本稿では、業界を問わず、情報システム部門のご担当者や意思決定者の皆さまに、クラウド移行に関するポイントについて、組織と人材にフォーカスをあててご紹介いたします。
結論から申し上げると、移行作業をクラウドインテグレーターに任せてしまえば、クラウド移行自体はそれほど難しいことではありません。
日本は業界構造として事業会社とSIerが棲み分けられており、今までどおり難しく考えず、わからない部分は丸投げしてしまえばよいという考え方もあります。しかし、今後はすべての企業がテック企業になっていくとまでいわれるほど、事業会社もSI能力を持つ必要に迫られており、内製化できる体制を作ることがDXとともにトレンドとなっています。
その理由として、開発におけるスピード感がいまや勝負のわかれ目となっている点や、事業会社とSIerの今までの関係性が「2025年の崖」と称される大きな技術的負債を作り出した点が挙げられます。これらの課題を解決するためにも、SI能力を内製化することで、スキル面の向上と開発のスピードアップが期待できます。
ここでは、クラウド移行とその先までを見据えた話を紹介していきます。その際は3つだけ明確にしておきたいことがあります。
①誰にとってのメリットか
②社内にクラウド人材はいるのか
③クラウドベンダーとパートナーの選定基準
①誰にとってのメリットか
クラウド移行といってもさまざまなパターンが存在します。オンプレにあるシステムをそのままクラウドへ移行するだけで済むものもありますが、それだけではクラウドのメリットが発揮されていない場面も多く見られます。また、クラウド移行を機にコンテナ化を進めるなど、レガシーシステムのモダナイゼーションによって得られる価値もはかりたいところです。いきなりマルチクラウドで構築するのはハードルが高いと思われますが、新たにクラウドを利用するにあたり、中長期的な目線で考えれば、ベンダーロックインを回避する予防策としても有効です。
これを例として、メリットとスキルのアンマッチが起きていないか見極める必要があります。コンテナ化の一般的なメリットとして、コンピューティングリソースの利用効率向上、ポータビリティの向上、強力なオーケストレーション、依存性明確化などが挙げられますが、これらは主にインフラ側のメリットです。つまり、恩恵を受けるのはインフラエンジニアだけになります。
しかし、適切なコンテナ化推進のために必要なスキルは、アプリケーションの適切な分割やスケール可能な作り方など、インフラエンジニアが手を出せない領域にあります。 また、依存性を明確にするには、既存のシステムの情報整理が行われているかどうかが課題に上がります。こうした場面で「ドキュメントが存在しない!」という悲鳴がよく聞かれるわけです。このような場合は、まずアプリケーションレイヤーから情報整理を開始して、最適なインフラストラクチャを考えたうえでクラウドを採用するという順序をふむことが重要になります。
クラウド移行する際のメリットが誰のためであり、誰のコストやリソースを使い、誰のスキルが必要なのか。プロジェクトを推進するためにも、組織をあらかじめ整理しておくべきでしょう。
②社内にクラウド人材はいるのか
「2025年の崖」で顕在化するといわれている課題のなかに「IT人材の不足」があります。そして、このIT人材の不足はクラウド導入時だけでなく導入後においても課題となると考えられます。実際にクラウド人材を確保する必要に迫られた場合、「クラウド人材はどこにいるのか?」「クラウド人材の採用競争で勝つには?」「クラウド人材の育て方とは?」といった問題が持ち上がるでしょう。これはシンプルですが、非常に難しい問題です。
もし自社にクラウド人材が足りないと考えているなら、まず社内のエンジニアからを探してみてはどうでしょうか。そもそもエンジニアは技術に対して期待と不安を抱えています。新しい技術への好奇心、それを扱えるようになる喜びが期待です。逆に、古い技術へ依存し新しいスキルの取得に遅れることで、エンジニアとしての将来に不安を覚えます。そんななか、事業会社に勤めているエンジニアは、会社が採用した技術を使うという制約を受けています。
しかし、個人としては学び続ける意欲を持つ人が多く、エンジニアのイベントなどでも個人的に参加している方が多くいます。会社が採用しない技術は評価されづらいため、実はクラウドの知識を持っていてもそれが周囲に知られていないケースが見受けられるので、まずは自社に本当にクラウド人材がいないのかを確認しましょう。そのうえで、スキルのレベルに応じて適切な関係をSIerと築き、必要な部分は内製化して、社内にもナレッジを溜めていくことをおすすめします。
エンジニアとして働く側の理想としては、クラウド人材が社内のどこにでもいて、その企業が事業会社であれば新しくて人気のある技術を積極的に採用しており、エンジニアとして成長し続けられる環境が整っているかどうかが、クラウド人材を確保するうえで重要なポイントになると考えられます。すべての企業がテック企業になっていくとまでいわれる今、エンジニアをひきつけるための「デベロッパーエクスペリエンス」を考えていく必要があるでしょう。
<参考>採用コストと教育コスト
- 資格保有者の市場価値が高騰している。
- Top-Paying IT Certifications for 2020 で Google Certified Professional Cloud Architectが 2 年連続が 1 位に。アメリカではその価値が年収にして約1,800万円以上($175,761)にもなると言われる。
- Google Cloud のトレーニングは基礎コース 5 万円から。専門コースでも40万円以下
③クラウドベンダーとパートナーの選定基準
世界のクラウド市場はAmazon Web Services(AWS)が牽引し、Microsoft AzureやGoogle Cloudが追随するかたちが続いています。それぞれ特徴はありますが、基本的な性能や安全性、サポートされる範囲など、かなり高い水準で差がなくなりつつあります。それゆえに単純比較しづらい状況ではありますが、シェア自体はサービス開始時期や戦略によるところがあり、よいものだから売れているという考えに陥らず、自社に最適なクラウドは何かをしっかり判断しましょう。
クラウドベンダーが採用される基準をピックアップします。
- エンジニアが多い(自社にいる、市場に多い、市場にナレッジが豊富)
- 指名のプロダクトがある(データ分析基盤や機械学習分野で多いケース)
- 価格や料金体系が合っている(試算ツールを用いる)
よく事例があるかどうか気にする人がいますが、まったく同じ構成でない限り、事例だけにこだわらないほうがよいでしょう。もちろん参考にはなりますが、新しいプロダクトのリリースもあるうえ、既存のプロダクトも目まぐるしくアップデートされています。最新情報と本当のところどうなのか?をよく知っている実績のあるパートナーに相談するのも手です。
また、クラウドは単なるインフラではなく、ビジネスに武器を持たせてくれるプラットフォームです。デジタル競争のなかで、自社はどんな武器を持って戦いたいのか、それを実現できるプロダクトを持っているクラウドを採用するべきです。
次に、パートナーの選び方ですが、実績、得意分野、サポート内容などを確認しましょう。クラウドベンダーとの直接契約も可能ですが、基本的に海外の企業なので、商習慣やサポート面で不便に感じるところがあるのではないでしょうか。契約自体でも国内のパートナーを経由することできめ細かいサポートや割引などのメリットが得られたり、SIなどをワンストップで依頼したりすることができます。クラウド関連にはさまざまな連携ツールがあるので、それらの利用も含めて全体的に任せられると便利です。パートナーは比較的新しい会社が多いため、公開されている既存顧客や協業関係なども含めて評価するとよいでしょう。
移行計画を立てましょう
組織と人材に見通しが立ったら、移行計画を考えます。ここからは移行計画の立て方について、簡単に説明します。
既存のアプリケーションを分析し、全体像を把握したうえでコストを試算します。一部のシステムだけでなく、デジタル資産のポートフォリオを作成しましょう。一部のシステムだけでなく、デジタル資産のポートフォリオを作成しましょう。 | どれが移行できるか、どれを移行するべきか、どのパターンで移行するか、どの順番で移行するかを計画します。移行パターンはひとつではありません。 | チームとベンダーが連携して移行を行います。必要に応じてツールも活用しましょう。 | |
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アセスメントツール
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GCAF
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Migrate for Compute Engine
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JDXランチャー
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コンサルティング
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クラウドブースター
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【お問い合わせ先】
クラウドエース株式会社
本社 : 東京都千代田区大手町 2-6-2 日本ビルヂング 11F
代表取締役社長 : 青木 誠
ウェブサイト:https://www.cloud-ace.jp/
事業内容:クラウドエースは Google Cloud を専門としたクラウドインテグレーターで、クラウドの導入設計から運用・保守までをワンストップでサポートいたします。Google Cloud のマネージド サービス プロバイダとして、技術サポートをはじめ、コンサルティング、システム開発、Google Cloud 認定トレーニングを提供しており、国内 4 都市と海外 5 ヶ国で拠点を持ち、120 社を超えるパートナー企業と共に DX を行う企業の多様なニーズにお応えいたします。クラウド移行はもちろん、DX の戦略策定、Google Cloud 活用に関して、いつでもご相談ください。
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