突然ですが、みなさんはWi-Fiを使っていますか? Wi-Fiはスマートフォンやノートパソコンを使ううえで欠かせない通信インフラです。たくさんの方が日常的にお使いになられていることと思います。
そんな身近なWi-Fiですが、ひとことでWi-Fiといっても、複数の電波の規格があることをご存知でしょうか。Wi-Fiが私たちの生活に浸透して久しいですが、動画などの大容量の通信ができるようになったのも、年月をかけてWi-Fiの規格が進化してきたからなのです。
Wi-Fiの規格に関する詳細については、改めて別のコラムで紹介させていただきますが、本日は数あるWi-Fiの規格のなかでも、ちょっと変わった規格である「802.11ah」を紹介したいと思います。
802.11ahは920MHz帯の周波数帯を利用する通信手段のひとつで、特にIoT (モノのインターネット)の通信システムとして活用が期待されている新しいWi-Fi規格です。別名「Wi-Fi HaLow」とも呼ばれています。その802.11ahの実用化と将来の普及促進に向けた活動に取り組んでいる団体が「802.11ah推進協議会」です。近い将来、規格が承認された際に、11ahが社会の中でどのように使われ普及していくかというテーマでさまざまな検証を行っており、定期的に報告会を開いています。
2020年12月に開催された802.11ah推進協議会の第三回総会の様子を、フルノシステムズのマスコットキャラクター兼PR担当部長にゃんこの「アセラにゃん」が取材してきました。11ahが将来どのように使われていくのか、アセラにゃんの目線で紹介してもらいます。Wi-Fiの規格というちょっと難しいテーマを、アセラにゃんはどのように解釈したのでしょうか?
Wi-Fiの新規格についてお勉強にゃ!
年の瀬迫る師走のある日、アセラにゃんはお供のフルノシステムズ社員を連れて802.11ah推進協議会の定例総会会場に向かいました。この会は11ahのユースケースに関する一年間の活動報告の場となっており、2020年が三度目の開催となりました。11ahとはいったいどのような規格なのか? アセラにゃん、しっかりとマスクをして講演に耳を傾けます。
11ahって普通のWi-Fiと違うの?
日常生活において、スマートフォンなどの端末をネットワークにつなぐ通信インフラとしてWi-Fiは利用されています。普段私たちが使っているWi-Fiは画像や動画などの大容量通信が可能ですが、電波が届く範囲が限られるといった特徴があります。その点、11ahという規格はどうなっているのでしょうか?
11ahと同じ920MHzの周波数帯を利用するLPWA (Low Power Wide Area)という通信システムは、IoTの通信手段として実際に使われているそうです。LPWAとは、消費電力を抑えて長距離の通信を可能にする通信方式なのだそうです。LPWAと同じく920MHz帯を利用する11ahは、従来の私たちが使っているWi-Fiよりも通信の範囲が大幅に広く、数百メートルから1キロメートル以上先まで電波が届くという特徴があります。通信範囲が広いと、活用できるケースも従来のWi-Fiとは異なってきそうですね。
11ahはどんな場面で使われるの?
普通のWi-Fiとは別の、ちょっと変わった活用シーンが見込まれる11ah。では、いったいどのようなケースでの活用を見込んでいるのでしょう? アセラにゃんも首をかしげます。
802.11ah推進協議会では、どのような場面で11ahを活用できるか、11ahのユースケースを技術的に検証する試験を行っています。実際にどのような場面での検証が行われているのでしょうか?
電波の届く範囲が広いという特性上、屋内だけではなく屋外での使用も想定されます。現在、日本各地で活用に向けた検証試験を実施しており、2019年12月から2020年11月の一年間では、6つのテーマで技術検証が進行しているようです。
6つの検証内容は次の通りです。千葉県木更津市では山間部での検証を実施しており、鳥獣害対策をテーマにしています。石川県加賀市では屋外樹林での検証を実施しており、果樹園管理がテーマとなっています。神奈川県小田原市では海上伝搬の検証をしており、海中映像の伝送をテーマにしています。北海道岩見沢市では屋外平地での検証を行っており、防災ネットワークがテーマです。高知県高知市でも屋外平地での検証が行われており、こちらは農業支援がテーマとなっています。そして、神奈川県横須賀市では集合住宅での検証を実施しており、家庭での利用をテーマとしています。
いずれも広範囲をカバーできる11ahの特性を生かした検証となっています。加賀市の場合、梨を育てている広大な果樹園での検証が進んでいます。11ahに接続したネットワークカメラや計測機器を果樹園内に配備し、梨の育成状況や天候・動物などによる作物被害の状況をリアルタイムに観測できるようにしています。これにより定期点検の労力を省けるといったメリットが生まれます。
果樹園のような広大な敷地にネットワークカメラを設置する場合、従来では建物の回線を使っていたため、遠く離れた場所にカメラを設置することができませんでした。11ahを利用することで、広い敷地でネットワーク機器の設置が可能になるのはもちろん、Wi-Fiであることからネットワークの設置や管理運営を果樹園の所有者自身でできることが利点となります。
さて、アセラにゃんは、6つのテーマのなかでどのテーマに興味を持ったでしょうか? アセラにゃんの関心を惹いた分野について掘り下げてみましょう。
漁業の現場で期待される11ahの活用
神奈川県小田原市の小田原漁港において、11ah活用の検証が実施されています。アセラにゃんも大好きな魚を、この先も継続して効率よく獲ることができるよう、ネットワークを活用したモニタリング技術の導入が課題となっているそうです。
小田原港をはじめとする全国の漁場では漁獲高が減少傾向にあり、海洋資源の管理と生産性の向上がテーマとなっています。海洋資源の管理と生産性の向上の両立を目的とするために、2018年には70年ぶりに漁業法が改正されました。また、世界的なテーマとして掲げられているSDGsにおいても、海洋資源の持続的な開発は17ある目標のうちのひとつとして課題になっています。
新鮮でおいしい魚がこの先も食卓に並ぶために、11ahが大きな役割を果たす可能性を秘めているようです。魚が大好きなアセラにゃんにとっては、とっても気になるテーマです。
小田原漁港では定置網漁が盛んです。しかし、定置網漁では魚の成長具合や種類に関係なくたくさんの数を獲ってしまうこともあり、海洋資源に優しくないという指摘がありました。
海洋資源の持続性と、漁獲の生産性の向上というテーマを両立させるために、11ahを活用して水中ドローンなどネットワーク機器をつなぎ、定置網漁場周辺の水温や、潮の流れる向き・速度、そしてどのような魚がどれだけ網に入っているかなどを見える化し、総合的にモニタリングできる仕組みづくりの検証に取り組んでいます。
11ahが本格的に実用化されれば、海洋資源の持続的な確保と、漁業従事者の生産性の向上の両立が期待されます。この先もお魚がちゃんと食べられるよう、アセラにゃんの期待も高まります!
11ahの実用化に期待にゃ!
11ahは、2021年度の商用化に向けて秒読み段階に入っているそうです。たくさんの検証試験を通して、農業や漁業、産業や住民サービスなど幅広い分野での活用が期待されています。広域で高速な通信が可能となる特性を生かし、IoTや防災ネットワークなどに活用されていく可能性を秘めています。
アセラにゃんが大好きな魚を確保するためにも、11ahは重要な役割を果たしていきます。 私たちの生活をもっと豊かにしてくれるかもしれない11ah、今後の進展に期待ですね!
◇802.11ah推進協議会の情報はこちら
https://www.11ahpc.org/
◇フルノシステムズのホームページはこちら
http://www.furunosystems.co.jp/
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