「データ活用」というワードが盛んに用いられるようになって久しい。勘や経験ではなくデータを根拠にした意思決定を行うために、各社がこぞってデータ活用への歩みを加速させている。ただ、残念ながらその活用主体は、依然として経営層やデータサイエンティストなど一部に留まっている状況だ。

いうまでもなく、あらゆる人が日々のビジネスの中で意思決定を行っている。活用対象を拡大しなければ、データの持つ真価は発揮されない。データ活用を民主化するにはどうすれば良いのか。アナリティクス業界を牽引する1社であるマイクロストラテジーに話を聞いた。

「民主化」の気運は高まるばかり

データを分析して「洞察」や「気づき」を獲得し、現場業務の改善や新しい事業の創出に結びつける──。ビジネスのデジタル化が進む中、データ分析やアナリティクスの重要性はますます高まっている。特に、ここ数年は「データ活用の民主化」や「AIの民主化」を目指す "現場の社員自らがデータを活用できる仕組み・ツール" の提供が活発化している。

アナリティクスプラットフォームの提供で知られるマイクロストラテジーのシニアセールスエンジニア 棟方 一成 氏はこう話す。

マイクロストラテジー・ジャパン株式会社
シニアセールスエンジニア
棟方 一成 氏

「これまでデータ分析やアナリティクスの世界では、知識やノウハウを持つ専門部隊が分析を行い、その結果をデータの消費者である事業部門のユーザーに提供する形でデータ活用が進められてきました。ただ、提供者と消費者が分かれるこのような形式では、『Time to Information (必要な情報にたどり着くまでの時間)』が長くなってしまいます。ビジネスは日々変化していきますから、ここへ俊敏に対応していくためには、信頼できる情報をいち早く入手する仕組みや、瞬時に意思決定を行い具体的なアクションを起こすための支援が必要です。こうした理由で、セルフサービスBIなどの仕組みによってTime to Informationを最短化する取り組みが活発化しているのだと思います。」(棟方 氏)

セルフサービスBIは、2000年代から存在するアプローチで、企業の持つデータをデータウェアハウス(DWH)などの統合基盤に集約し、業務部門がここにあるデータを自身の業務へ活かすことを指す。一般的にデータの分析には専門的な知識が必要となるが、セルフサービスBIは "高度な知識なしにデータが取り扱える仕組み" を持つため、プロフェッショナルでなくともデータを活用することが可能となる。

セルフサービスBIでは「データ活用の民主化」は不十分?

このセルフサービスBIは、専門家に頼りきりだったデータ分析の間口を広げた。ただ、棟方 氏は、「セルフサービスBIによってデータ活用の民主化やAI活用の民主化につながっているかというと、必ずしもそうとは言い切れません。」と言及。このように続ける。

「セルフサービスBIは確かにデータ活用の敷居を下げました。ただ、そこで分析をしたりダッシュボードを構築したりするためには、まだまだデータの取り扱いに対する知識が必要です。また、利用にあたっては専用のBIツールにアクセスする必要があります。データアナリストやデータサイエンティストはBIツールで分析し意思決定を行うことが本業ですが、一般ユーザーは異なります。ほとんどの一般ユーザーにとってデータとは『見るもの』であり、分析したりBIツールへアクセスしたりという発想がありません。このことから、一般ユーザーの業務にセルフサービスBIを組み込むことは困難と言えるでしょう。」(棟方 氏)

たしかに、仮に20人で構成される組織があったとして、セルフサービスBIを使いこなすことができる担当者はそのうち1人程度だ。。たとえその1人がデータ担当者として組織内にインサイトを還元したとして、残る一般ユーザー19人の業務に大きな変化はない。

「『データ活用の民主化』とは一般ユーザー含む誰もが瞬時にデータに基づいた意思決定を行って具体的なアクションを起こすことですから、セルフサービスBIの導入だけでは不十分だと考えています。」(棟方 氏)

ここで棟方 氏が提唱するのが、一般ユーザーが日々の業務で利用するアプリケーション上でデータから得た洞察をオーバーレイするというアプローチだ。本業を中断してBIツールへアクセスするのではなく、日々の業務にデータ活用の要素をシームレスに繋ぎこむ。これにより、従業員への特別な教育や、新しい業務を無理強いすることなく、「データ活用の民主化」が推進できるという。

「当社ではMicroStrategyというアナリティクスプラットフォームをもって企業のデータ活用を支援しております。2019年にはHyperIntelligenceと呼ばれる機能をここへ実装。データから得られる洞察が、一般ユーザーの業務の中にシームレスに加えられるようになりました。」(棟方 氏)

  • エンドユーザーは日々の業務で様々なアプリケーションを使用している。この中にシームレスにデータ活用の要素を組み込まなければ、「データ活用の民主化」は果たされない。

HyperIntelligenceが、日々の業務にインサイトを加える

HyperIntelligenceは、アナリティクスプラットフォームの最新バージョン「MicroStrategy 2020」で提供されるブラウザプラグインだ。

HyperIntelligenceをブラウザで起動させ業務アプリケーションにアクセスすれば、画面に表示される顧客や取引先、製品などの文字情報にマウスカーソルを置くだけで、当該項目に関連する詳細な情報やKPIなどが「カード」の形式で表示される。

もう少し具体的に説明しよう。SalesforceやMicrosoft 365、Outlookなど、一般ユーザーが日々の業務で利用するアプリケーションがあるとする。HyperIntelligenceを利用すると、例えばこれらの画面に表示されている自社商品の名前にマウスオーバーすれば当該商品の販売実績や店舗別売上高などを表示させることができる。

  • HyperInteligenceでは、一般ユーザーが日々利用しているアプリケーションに、データによるインサイトを加えられる。単にデータベースから情報を読み取って表示するのではなく、格納されたデータを必要に応じて分析したうえで、その結果を表示することも可能。

表示される情報は、部署や役職、担当業務などに応じて変化させることができ、自分が知りたい必要な情報だけを効率的に得ることができる。Web化されたアプリケーションであればSaaS、スクラッチ開発問わずHyperIntelligenceを実装することが可能だ。

カード上に別アプリケーションへのリンクを設置して異なる業務を繋いだりすることで、意思決定だけでなくその先にあるアクションにつなげられることもポイントだ。

「クイックな意思決定を行い、実際にアクションを起こせる仕組みを提供する。それがHyperIntelligenceです。」(棟方 氏)。

  • 意思決定だけでなく、その先にあるアクションも支援してくれる。

「データ活用の民主化」はどれほどの効果を生むのか

HyperIntelligenceでデータ活用が民主化できたとして、そこではどんな効果が生まれるのだろうか。棟方 氏は先行事例として、2つの海外企業の取り組みを紹介する。

1つは米国の中古車販売業者Sonic Automotive社がバイヤーの仕入れ業務にHyperIntelligenceを活用した試みだ。同社では中古車の仕入れ業務について、オークションサイトや入札状況などさまざまなデータソースにある情報をカードに集約。AIも活用したさまざまなパラメータを参照し、仕入れるべき中古車の意思決定を行っている。同社はHyperIntelligenceの導入により、これまで1台の購入有無を決定するのに要していた時間を、3〜4分から十数秒にまで短縮した。毎日50,000台もの車両を確認する同社にとって、意思決定に要する時間が短縮されたのは絶大な効果だ。

また、イギリスのある大手小売店チェーンでは、マーチャンダイジング(MD)担当者が自社ECサイトの画面上にPOS、行動履歴、気象情報など複数のシステムをまたがったデータとこれらデータを駆使しAIが提示した推奨価格、推奨アクションをカードで呼び出している。担当者は、自身の経験とAIの知見を活かして迅速に最適価格の検討ができ、カードのリンクからMDシステムに直接ジャンプし、シームレスに価格変更のアクションも実行できるようになる。これにより、業務効率を大幅に高めることに成功した。

  • Sonic Automotiveと大手小売業チェーンの実例。
    ※画像クリックで拡大

マイクロストラテジーの社内でも、人事給与システムやパフォーマンス管理システム、営業管理システムなど複数システムにある情報をHyperIntelligenceに集約。アプリケーション間にあった壁を排除することで、意思決定や作業に要する時間を削減しているという。

「カードはGUIからノンコーディングで作成することができます。セルフサービスBIでダッシュボードやビジュアライゼーションを作るよりもはるかに簡単に作成できますから、データサイエンティストのような専門家でなくとも、ビジネスに直結した分析とアクションを行うための仕組みが実装できます。」(棟方 氏)

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HyperIntelligenceは2019年にリリースされ、日々機能強化が図られている。カードを表示するための機能「HyperCard」を、既存のWebサイト/アプリケーション全般で利用する「HyperWeb」、モバイルデバイスで利用するための「HyperMobile」、Microsoft Outlookとの連携によりメール内で利用する「HyperOffice」が提供されている。

「データ活用の民主化」を推し進める上で、HyperIntelligenceは有力な武器となるだろう。同機能がこれからどのような進化を遂げるのか、注目していきたい。

[PR]提供:マイクロストラテジー・ジャパン