昨今、世界中のほぼすべての業界がデジタライゼーションを通じて再定義されようとしています。そしてそのデジタライゼーションの中核を担うのが半導体です。
近年さまざまな企業のプレスリリースを見ても、デジタライゼーションやデジタル・ワールド、デジタル・エンタープライズ、あらゆるものをデジタルによって再構築する試みが急速に展開されています。これは企業が半導体技術を活かして自社のビジネスモデルや物流、財務を変革する道を探り、半導体業界にとってかつてないチャンスを推進していこうとしているためだと考えられます。 スタートアップ企業か設計チームを社内に抱える大規模なシステム・ハウスかはともかく、半導体設計市場には日々、新たなプレーヤーが参入しており、これがEDA事業の大きな成長をさらに推進させていくことは間違いありません。
1つの見方として、データ・トラフィックの動向に目を向けてみると、データ・トラフィックはこの先数年で400倍に増加すると予測されています。最終市場がゲーミング、ビデオ、IoT、自動車、医療分野のどの分野の製品になるにしても、今後、この領域が生成するデータ・トラフィックは、現在のあらゆる業界で生成される通信量より大規模になると予測されています。 しかもこうした膨大なデータがトラフィックとして認識される以前の段階で、予め大量なデータ処理が必要とされます。
このような大規模なシステムにおいては、半導体自体が非常に複雑なプロセスになり、もはや単に半導体を開発して検証するだけでは十分とは言えなくなります。
そこで必要とされるのは、実際のソフトウェアを実行し、物理的世界とのやり取りを行う電子システム全体の構築、検証、妥当性確認、シミュレーションを行うことのできるデジタル・ツインです。設計者はデバイスを仕様通りに動作させるだけでなく、システム・コンテキストの中でアプリケーション・ソフトウェアを実行する際の性能特性を確実に把握できる必要があります。
このようなビジネスニーズに応えるべく、シーメンスでも、今年1月よりメンターをシーメンスEDAとし、新たな体制でのサポートを開始します。これにより、研究開発投資レベルの引き上げを実現し、新製品開発に加えてベスト・イン・クラスのEDA企業の買収も可能になりました。さらには、電子設計と大規模システムをつなぎデジタル・トランスフォーメーションというビジョンを実現していきます。
デジタル・ツインによるEDAの再定義
IC設計者はすでに35年以上にわたりデジタル・ツインを構築して最先端のチップを開発してきました。彼らと共に歩んできたシーメンスでは、その知見をシーメンスEDAに凝縮し、時代のはるか先を見据えたデジタル・ツインを提供しています。
シミュレーションが行える設計のデジタル・ツインだけでなく、設計を実現する製造工程のデジタル・ツインもあり、デバイスそのもののデジタル・ツインも活用されています。これらがすべて、フィードバックが得られるような形で結びつき、下流から継続的に改善を行い、さらなる前進のための洞察を提供することが可能です。フィールドで実際に製品が運用されると、問題が発生する可能性があります。そうしたデータをマッチングする設計のデジタル・ツインにフィードバックし、このデータを利用して設計の改善や、フィールドの製品のソフトウェア・アップグレードのためにデータを送信することもできます。
こうしたデジタル・ツインのコンセプトに基づいて構築された優れた例がPAVE360です。PAVE360はシステム・レベルでモデル化された完全自動運転車の検証と妥当性確認のための環境を構築し、物理的な車両と走行環境の両方のイメージを表示します。
このデジタル・ツインは シーメンス EDAのソリューションと、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのツールを一体化します。Simcenter PreScanが走行シナリオや付随するセンサーデータを生成し、Veloceプラットフォーム上で動作する車両のE/Eアーキテクチャーと計算システムのモデルに供給します。そして、Simcenter AMESimはマルチドメインのメカトロニクス・システムのシミュレーション・プラットフォームを提供し、機械、電気、油圧のサブシステムを含めたクローズド・ループ型の環境を形成します。設計段階での自動運転車の妥当性確認の実現が、非常に現実味を帯びたものになりました。
シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアは市場リーダーであり、自社のツールと統合して独自のデジタル・ツインを業界に提供できる企業の買収を検討することができます。シーメンスがSarokalを買収した際には、検証コミュニティー内に衝撃を与えました。その時点では、いささか妙な組み合わせのように思われたからです。当時、業界各社にはSarokalが5Gの検証におけるリーダーであり、経験豊富な人材によるチームを擁して大手通信企業と密接に連携してフロントホール・システムの検証のためのハードウェアやソフトウェアを提供してきたことが認知されていませんでした。しかしこうした5G通信製品のカギを握るのはカスタムSoCの設計と検証であり、それこそが私たちが輝ける場所です。
5G SoCには、5G無線アクセス・ネットワークの持つ柔軟性やコンフィギュラビリティーの可能性によって、必要とされるテストが指数関数的に増加するという難題に対応できる新たな検証アプローチが求められます。そんな中、 シーメンスEDAは、プリシリコンとポストシリコンの両方でSoCの設計と妥当性確認を可能にする独自のデジタル・ツインを提供します。この双方向のフローによって、シリコンが提供可能な場合でも、Veloce Stratoでのテストを再利用してシステムが確実に設計通りに動作することを確認できます。
ラボ内でシステムが利用可能な場合は、X-STEPを使って同様のテストを実行できます。X-STEPを使用することで、パートナーはフロントホール・テストのコンフィギュレーションを実行可能なフォーマットに交換することができます。これにより、エコシステム全体を通じた連携や徹底した妥当性確認、異なるベンダーのデバイス間における相互運用性が可能になります。
まさにEDAにとって画期的な時代がやってきます。デジタル・ツインの提供は驚くほど複雑であるものの、私たちはそうした複雑さこそ、新しく シーメンス EDAとして、広範な製品ポートフォリオを活用して電子システムのこれからの課題に対応するチャンスととらえ、着実にビジョンを実現しお客様をサポートしていきます。
[PR]提供:シーメンスEDA