デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を実現するためには、ITに関する知識が欠かせない。そのなかでも未経験者にとって一段ハードルが高いのが、プログラミングに関する知識だろう。このプログラミングを社会人が入門から学べるコースとして、デルは「中堅企業DXエンジニア養成講座」を無償で提供している。
「中堅企業DXエンジニア養成講座」は、中堅企業デジタル化の内製化を支援する産学連携プログラムだ。開発と講習には、奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)、株式会社dToshの協力を受けている。講習は遠隔で行われ、参加者は好きな場所からリモートトレーニングに参加できる。
本稿では、2020年7月から9月にわたって全8回で行われた「中堅企業DXエンジニア養成講座 機械学習実践教育コース」の最終回となる、成果発表会の様子をお伝えしたい。
ディープラーニングの予測モデルを作った最終回
「中堅企業DXエンジニア養成講座 機械学習実践教育コース」は、プログラミング初心者から過去に携わったことのある経験者まで、実際にプログラミングの基礎からデータ処理、深層学習の実践まで学べるオンラインセミナーだ。機械学習にフォーカスしており、プログラミング言語としてPythonが選択されている。先端技術を活用し自社のデジタル化を考える事業部門や情報システム部門の方が参加した。
参加者はdToshが開発したプログラミング教育用のツール「カメレオン」を活用しつつ、リモートトレーニングに参加。講習にはグループワークも取り入れられており、参加者同士が交流し知識を深めあう形で学習が行われていた。
第8回では、機械学習の基礎として第5~7回で行ってきた内容を振り返るとともに、最終課題として、ビッグデータから喫煙者かどうかを予測する機械学習プログラムを作成するという授業が展開された。予測モデルを作成し、パラメータを変更して予測精度を上げることを目標としている。
はじめに、ディープラーニングのモデルを作っていく。ディープラーニングは、人間の神経細胞(ニューロン)を模したニューラルネットワークがもとになっている。今回作るのは、ニューロンの伝達を用いて予測を行うシステムだ。ニューロンが一つひとつつながったものをパーセプトロンと呼ぶ。
複数のパーセプトロンを層にして重ね合わせていくことで多層パーセプトロン(MLP)となり、その中でも「第1層:入力層」と「第3層:出力層(末端)」の間にある「第2層:中間層」を幾重にも重ねていくことをディープラーニングと呼ぶ。
ではディープラーニング、つまりMLPで推論を行う仕組みはどのようなものなのか。ニューロンには入力と出力が存在している。入力層である「第n-1層」のニューロンに重みを掛けた値を入力することで重みを調整し、次の層へ出力。次層では、不要なニューロンから出力させないために、入力の総和に対する活性化関数を通して出力を行う。
予測モデルの正解率は、この推論を行いて予測の正解率を確認したのち、出力側から重みを更新していくことで向上させる。これが学習だ。この推論と学習を何度も繰り返すことで予測に重要なニューロンが定まり、予測モデル生成の構造となる。
機械学習プログラミングの実践と考察
続いて、予測モデルを生成する際のハイパーパラメータを調整しながら、実際のディープラーニングのチューニングに関する説明が行われた。今回、チューニングに用いられるMLP Classfierのパラメータは主に「maxitar」「hiddenlayer_sizes」「activation」の3点。
「maxitar」は、学習の最大反復回数を設定するためのパラメータで、繰り返しても正解率が一定、つまり学習が収束したと判断された時点で学習が終了する。「hiddenlayer_sizes」は、中間層のニューロン数と層の数を指定するパラメータで、各層のニューロン数をまとめたタプル(リストのようなデータセット)で指定する。「activation」はニューロンの活性化関数を指定するためのパラメータで、“identity”、“logistic”、“tanh”といったように関数名で指定する。
仕組みの説明を終えたところで、実際に機械学習プログラムを記述していく。参加者は「カメレオン」を用いてMLP Classfierのパラメータを調整しながら予測結果を考察し、グループ内で情報を共有しながら、さらに予測精度を向上させていった。「カメレオン」ではPythonのソースコードとして書いて実行でき、エラーや結果も即座に表示される。さらに、わからない所があったら時は「助けて!」ボタンを押せばすぐに講師に質問もできる。
こうして最終課題も無事終了。課題からニューロンの数、および層の数がどのように予測モデルの正解率と関連するかが考察された。演習では演算量が多くなりすぎた場合にはタイムアウトが出力される形に設定されているため、正解率を追い求めるのは実は最適解とは言えない。
3層構造でニューロンの数を「第1層:100」「第2層:50」「第3層:10」とした場合の正解率、2層構造で「第1層:50」「第2層:10」とした場合の正解率は「0.9506172839506173」と同一で、さらに1層構造「第1層:10」とした場合でも「0.9320987654320988」と十分な正解率を得ることができた。この結果から、今回は1層構造が望ましいと判断された。ニューロンの数や層を増やせば正解率は上がるものの、実際の運用では増やすほどに演算量は飛躍的に増す。こういった背景も加味して最適解を探ることが機械学習プログラムでは重要な観点となることがわかった。
修了証明書も発行された修了式
こうして全8回の講習を終えた「中堅企業DXエンジニア養成講座 機械学習実践教育コース」。講師陣からのメッセージとして、参加者が習得した知識・技術が解説された。
1つ目は、Pythonプログラミングを通して得られた「ソフトウェアエンジニア力」で、コンピューターサイエンス領域の幅広い理解につながる。2つ目はデータ整形やモデル構築、性能評価を通して得られた「AI活用に向けた実装プロセスの理解」で、AI技術を活用する勘所を押さえるのに役立つ。3つ目は「AIモデルの実装、ハイパーパラメータ最適化」で、部門横断的なDX人材を目指すことができるだろう。
続いて、デル・テクノロジーズ株式会社 広域営業統括本部 フィールドセールス本部 中部営業部 兼 西日本営業部 部長 木村 佳博氏によって過去7回で行われたアンケートの結果が発表された。
講習には20代後半から50代前半まで幅広い層が参加しており、特に40代の参加者が多かった。また講座全体も高く評価されており、96%が“参考になった”と答えているという。
最後に修了式が執り行われ、参加者には修了証明書が発行されるとともに、優秀者の表彰が行われ、アンケートの結果考察に続き、木村氏の挨拶でDXエンジニア養成講座は幕を閉じた。
「技術的な話から実装のグループワークまで、非常に広範囲な内容を学んで頂けたかなと思います。冒頭、リカレント教育というお話もさせていただきましたが、学びなおされた方も初めて学習された方もいらっしゃるかと思います。今後、さまざまな環境下で今回の学びを思い出していただきつつ、ぜひ活用の場を広げていただければと考えています」(木村氏)
参加者と主催者が自由に語り合う懇談会も開催
修了式を終えた後、会場をWeb会議用ツール「Remo」に移し、主催者であるデル・テクノロジーズと参加者による懇談会が行われた。デル・テクノロジーズの木村 氏は参加者を改めて労った後、今後の活躍を願って乾杯の音頭を取った。
その後はフリータイムとなり、参加者はダブルクリックをして自由に席を移動しつつ、オンラインで親睦を深めていた。参加者は、今回の講座を終えた感想を次のように話す。
「AIに興味があったが、いままでやろうと思わなかった。しかし今回の講座を通して最初のハードルを超えることができたので、良いきっかけになった」
「(18:30~20:00という)この時間帯に(講座を)やっていただけるのが非常にありがたかった。今回学んだ内容をもとに、社内でPythonを広めたい」
「いまはまだAIの知識を直接業務に役立てられる場面はないが、今後の営業支援につなげられれば面白いと思う」
最後に、講師を務めた株式会社dTosh 代表取締役社長 平尾 俊貴氏、研究開発エンジニア 片山 寛基氏は、全8回の講座を終えた参加者に対して、次のようにコメントした。
「今回、全体イメージをつかんでいただいたので、より深い勉強へ進んでいただければうれしいです。AIは楽しいですが難しい一面もありますので、非常にやりがいがあります。ぜひ今後も学習を続けていただければと思います」(平尾氏)
「カメレオンでは、最終的には8割方が約70%の問題を提出しており、頑張っていただいた成果を見て、私自身非常にうれしく思っています。みなさんはAIの入り口に立っています。今回の講習だけではまだまだ何かができるわけではありませんので、今後も勉強を続けてステップアップしていただきたいと思います」(片山氏)
ITに関わる業務を行っている方はITの利活用に関する知見や機械学習について一定の知識をお持ちだろう。だが、業務として何を行っているかは理解できていないかもしれない。こういったすれ違いによって、現場の専門家との間に認識の齟齬が発生することもある。 しかし、仕組みや具体的なプログラミングを学べば、そういった齟齬を減らし、共通した認識を持って業務を進めることができるだろう。
デルは、本セミナーの他にもさまざまな中堅企業向けのセミナーを開催している。 プログラミングに興味にある方、ITに関する知識を深めたい方は、ぜひ気軽に参加して欲しい。
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