三菱UFJファクターは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の一員として、顧客のモノやサービスの動き、資金の流れといった"商流"を、与信管理や債権保全、売上代金回収、支払事務合理化といったさまざまな形でサポートしている。

同社では、さまざまなシステムをクラウドに集約して統合することを目指し、まずは顧客管理システム(CRM)を「Salesforce」に移行。さらに、社内情報共有のポータルシステムをSalesforce上にリプレイスするため、テラスカイが提供するコミュニケーションプラットフォーム「mitoco(ミトコ)」を採用した。

本記事では、「mitoco」導入の理由や経緯、効果、今後への期待などについて、三菱UFJファクター 事業支援本部のシステム部長 暦本文哉 氏と同社 事業支援本部 システム部の上席調査役 幸田丈二 氏に話を聞いた。

分散されていた営業支援、情報系システムをクラウドに集約

1977年創業の三菱UFJファクターでは、現在、商流・決済のスタイルが激しく変化する中にあって、MUFGが培ってきた長年のノウハウに加え、新たな潮流に迅速に対応し、時代を先取りするような発想力を持った人材開発にも力を入れている。

三菱UFJ銀行の子会社として約600人の従業員を抱える同社には、ビジネスを担う営業本部が大きく分けて3つ存在する。ファクタリング事業本部は売上債権の支払い補償サービスを提供し、決済事業本部はコンビニなどと提携し代金の回収サービスを提供、電子債権事業本部は三菱UFJ銀行が提供する電子記録債権を用いた決済サービスを支援している。

そんな三菱UFJファクターでは、2016年頃にはミッションクリティカルな業務システム──いわゆる基幹業務システムの基盤整備を完了した。しかしその一方で、営業支援系や情報系のシステムは独自開発のオンプレミス形式のシステムが分散しており、取引先の検索などが、一律に行えないといった非効率な状況にあった。そうした問題意識から、各種データの統合やアカウントの共通管理、セキュリティの一元化が可能なインフラ整備を目指して、SaaSへのリプレイスプロジェクトを2016年にスタートしたのだ。

「顧客管理や掲示板、文書管理、ワークフロー、勤怠管理、経費精算など、さまざまなシステムが個別に存在していましたが、それらをクラウドに集約して統合することを目指しました」(暦本氏)

そこでまずは、最優先するシステムとして2017年に顧客管理システム(CRM)をSalesforceに移行したのだ。

「基幹システムは従来どおり社内でしっかりと開発を続けつつ、社内全体の業務をサポートするシステムについては自分たちでつくるのではなくSalesforce基盤で使える機能を活用していくようにしました」(幸田氏)

  • 三菱UFJファクター株式会社 事業支援本部 システム部長 暦本文哉 氏

    三菱UFJファクター株式会社 事業支援本部 システム部長 暦本文哉 氏

  • 三菱UFJファクター株式会社  事業支援本部 システム部 上席調査役 幸田丈二 氏

    三菱UFJファクター株式会社 事業支援本部 システム部 上席調査役 幸田丈二 氏

社内ポータルに続き、独自のワークフローもmitocoへ

こうした方針に従い、CRMに続いて掲示板や文書管理といった社内情報共有のポータルシステムをSalesforce上にリプレイスすることを目指した。そこで同社が選んだのが、テラスカイが提供する、Salesforceと標準で連携できるクラウド型のコミュニケーションプラットフォームmitocoだった。

mitocoの選定理由について、暦本氏は「もともと使用していた社内情報基盤が使いにくかったのですが、mitocoの掲示板などのUIは直感的でとても使いやすく、これなら社内でもすぐに受け入れてもらえるだろうと確信できました。すぐに気に入ったので、ほかの製品との比較は早々に切り上げました。そもそもSalesforce上で使える良いソリューションが見つかったのですから、それ以外の製品を検討する必要はないと考えました」と、語る。

幸田氏も「メンテナンスにかかる運用負荷をできるだけ低減したかったので、ノンカスタマイズでも標準機能だけで十分に活用できる点も魅力でした」と続ける。

こうして三菱UFJファクターでは、社内ポータルとして2018年6月からmitocoの全社利用をスタートする。そして期待通りスムーズに全社員に受け入れられたのが確認できたことで、次のステップとしてスタートしたプロジェクトが、ワークフローシステムのmitocoへのリプレイスだった。

一般的な申請系のワークフローというのは、ある程度、形が決まっていてシンプルだ。しかし同社は単純な申請だけでなく、非定型な決裁事項も全てワークフロー化を望んでいた。申請者があらかじめ承認者を設定して申請書類を回し、承認者が稟議する中で必要があれば承認ルートをさらに変更したりするケースもある。最終的に社長が決裁するまでの合議は、多くの部署をまたいで行わなければならない。

「そんな当社ならではの特殊なワークフローに、SaaSで対応するというのは難しいと思っていましたが、テラスカイにお願いしたところ『実現までかなり作り込みが必要ですが、貴社のニーズを満たせれば国内の大半の企業のニーズを満たせるはずです。mitocoを育てるためにやってみせます』と言ってもらえ、正直驚きました。その後は、何度もmitocoの開発者が直接いらっしゃって話を聞いてくれて、使いたい機能やシーンを理解したうえでシステムに落とし込んでいってくれました」(幸田氏)

  • 本プロジェクトで追加された申請ユーザーが承認ステップを指定できる機能(2019年9月実装)

    本プロジェクトで追加された申請ユーザーが承認ステップを指定できる機能(2019年9月実装)

1週間かかっていた申請が翌日に完了

こうして2019年12月、mitocoワークフローの利用を開始した三菱UFJファクターでは、まずは既存システムにあるコンテンツを移行したうえで、当初、目指した機能を段階的にリリースしていった。全社員を対象にした説明会も実施しているが、これまで特に不満の声などは寄せられていないという。

「紙の文化が根強く残っていたので、ちゃんと使ってもらえるか心配していました。ITの利用を敬遠する社員も一定数おり、IT化を進めにくい面もありました。実際、ワークフローは以前のシステムにも機能としてはあったのですが、使いづらかったため、こちらからは強く使用を訴えないようにしていました。しかし、ふたを開けたところ、コロナ禍で働き方が変わったこともあってスムーズに受け入れられています。UIが直感的でわかりやすいことも貢献しているのでしょう」(暦本氏)

ワークフロー機能では、社長や事業部長などトップの承認者を選べば、中間承認者のモデルが表示されて、そこから選択できるようになっている。

「このシステムが完全に受け入れられれば、さらにコンテンツを拡大できるはずと、今期取り組んでいるところです。現在は申請系が中心ですが、管理業務などの集約系も盛り込もうとしています。これには全社的な業務効率化の効果が期待できますから」(暦本氏)

全社的にmitocoのワークフロー機能活用が浸透したことで、特に支社から本社への回付については、以前であれば1週間かかっていたものが、現在は、早ければ翌日に完了できるようになった。

「決裁によっては期限が決まっている案件もあるので、そうした場合には中間承認者のところで紙の決裁メモが止まっていると気が気ではありませんでした。それが今は、承認ルートのどの段階にあるのか可視化されるので、可能な場合はある承認者をバイパスして飛ばすなど、臨機応変に対応できるようになっています」(幸田氏)

信頼できるITパートナーとして、今後のシステム成長にも期待

三菱UFJファクターでは、これまで利活用する中で社内から寄せられている新機能の要望や、改善ポイントなどについて、優先順位の高いものからテラスカイに開発を相談していく構えだ。

「mitocoの開発者たちは、無駄なことはやってはいけないという、しっかりとしたポリシーを持っていて、要件を正確に理解するまできちんと付き合ってくれたうえで、新規開発が必要かどうかを判断してくれるのでとても信頼できます」(幸田氏)

こうして培ったテラスカイへの信頼感から、査定事務に関するシステムのスクラッチ開発も委託することとなった。

「すでに開発に着手してもらっています。テラスカイには、我々の業務のパートナーとして、今後もさまざまなニーズに応えてくれるものと期待しています」と、暦本氏は笑顔で語った。

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