現在、新型コロナウイルス感染症の拡大により、4~5月のような全面的なテレワークが要請される状況ではなくなっているものの「突発的に生じた出社を制限されるような事態に対して、何とか対処して乗り切った」ということで終わってしまってよいのだろうか、という疑問を感じている人は少なくないと思われる。
今後、企業ではBCP(Business continuity planning:事業継続計画)対策の観点から一時的に需要が高まったテレワークなどの柔軟な働き方が中長期的に継続される体制として、検討すべき段階となってきた。
災害大国とも言える日本では、これまでも地震や水害、津波など、さまざまな自然災害に見舞われており、こうした災害に備えた対策としてBCPやDR(Disaster Recovery:災害などによる被害からの回復)について検討を重ねてきた企業は多いだろう。
しかし、今回の感染症拡大のような事態では従来の災害対策が主に対象としていた「設備/施設に対する被害」だけではなく、「社員や関係者がこれまでのように集まって働くことが不可能になる状況」についても対策が必要だという新たな視点をもたらした。
では、この先どのような取り組みが必要なのだろうか。それは、個々の災害に対する個別的な対策の積み上げという形ではない、もっと根本的なレベルでの「強靱化」ではないだろうか。ここでは、最新の知見をふまえてまとめられたフレームワークにならい、将来を見据えてどのような対応を検討すべきか、その指針について紹介していきたい。
予測不可能な未来にテクノロジーで備えるための「Future Ready Workforce」
“New Normal”にどう備えるかについては、さまざまな提言が行われているが、デジタル化の最先端をリードし、さらにデバイスや場所を問わず業務に必要なアプリケーションに安全にアクセスできる環境「デジタルワークスペース」の実現を目指すヴイエムウェアは、その知見を活かしたソリューション「Future Ready Journey」の一環として「Future Ready Workforce(将来起こりうるあらゆる可能性への備えを考えた業務環境)」の取り組みを進めている。
この取り組みでは、「Respond(対応)」フェーズ、「Adapt(適応)」フェーズ、そして「Accelerate(推進)」フェーズの3段階を定義している。
Respond(対応)では、短期的な視点で起こった状況に反応し、ビジネス継続性を保つことが重要だ。今回の新型コロナウイルス感染症拡大は、緊急事態宣言に際して急遽テレワーク環境を整備したことが該当するだろう。
次のAdapt(適応)フェーズでは、中期的な視点でビジネスの回復力を高めることが重要になってくる。初期対応では、ある程度の非効率さに加え、セキュリティ上の不備も許容せざるを得ないが、中長期的な視点に立てば、やはり生産性を維持し、コスト効率を高めて競争力を確保するとともに、セキュリティ対策をしなくては企業としての存続が危うくなる。今回の事態で、現在は多くの企業がこの段階にあり、この先どうするかを考え始めていることと思われる。
そして、さらに長期的な視点で取り組まれるAccelerate(推進)フェーズでは、将来のビジネスモデルを策定していくことになる。世界が変わったことをふまえ、自らも変わっていくことを考える段階だ。これは一度実施すれば終わる話ではなく、刻々と変化し続ける世界の中で、不断の取り組みとして繰り返し継続されていくことになる。
New Normalに向けて、それぞれの企業でこうした取り組みを推進していく必要があるのだが、それには相応の時間を要するだろう。そこで、まずは具体的な個別の取り組みとして、現状において有用なソリューションについて見ていき、その活用を通じて現状からのステップアップを図ることからスタートするのが良いのではないだろうか。
より実践的な仮想デスクトップインフラ環境の構築
新型コロナウイルス感染症の流行により多くの企業が急遽在宅勤務/テレワークの実施を迫られる形となった。全社規模での在宅勤務という状況を想定していない企業が多かったことから混乱もあったようだが、Future Ready Workforceのフェーズで言うRespond(対応)フェーズの対応が行われ、さまざまな知見が得られることになった。
現在は緊急的な状況が沈静化し始めたことで多くの企業が緊急対応の段階を脱し、やや落ち着いて中期的な展望についても考えられるようになっているのではないだろうか。
ヴイエムウェアは2009年の「仮想デスクトップ時代の始まり」から10年以上にわたり、製品/テクノロジーを磨き上げてきた経験をふまえ、リモートワーク/テレワークの環境として「ハイブリッド&マルチクラウドVDIおよびアプリケーション」を提唱している。
基本的なアイデアは仮想デスクトップインフラ環境をハイブリッド・マルチクラウド環境で実現するというものだ。今回の事態では急遽、全社規模のリモートアクセス環境が必要となったことでオンプレミスのVDIのキャパシティ不足に直面した企業が多かったが、直接的に影響を受けたサプライチェーンの混乱もあってオンプレミスインフラ用のハードウェアなどを調達できなかったところも多い。
このような状況をふまえ、ヴイエムウェア株式会社 ソリューションプロダクトマーケティングスペシャリストの林超逸氏は「そこで、ヴイエムウェアが推奨しているのがハイブリッド&マルチクラウドVDI・アプリケーションです。ユースケースとしては、必要最低限の稼働が必要な部分に関してはオンプレミスで構築して、ピーク時にはクラウドを使う『クラウドバースト』が有効となります。変動するニーズに柔軟に対応すると同時に、コストも最適化する必要があるので、オンプレミスとクラウドを組み合わせて“良いところ取り”をすることでVDIのスケールアップ/ダウンを実現できます」と語る。
VPNについても、キャパシティ不足から一気にクラウドの注目が高まったのも事実だ。クラウドへの移行を推進するヴイエムウェアでは、単一プラットフォームの「VMware Workspace ONE」により、サイロ化された複雑なIT環境を必要としないデジタルワークスペースの実現を可能としている。
最新のエンドポイント管理
仮想デスクトップインフラ/VPNと同様に多くの企業が直面した課題として、PCなどのデバイスの運用管理体制が追いつかなかったという点も挙げられる。
本質的には同様の課題と言えるが、従来の企業システムは「社員がオフィスに出勤して業務を行う」ことを大前提に運用管理やセキュリティを考えていたため、今回の出社を制限される事態で突如として事実上、全社員が社外/ファイアウォールの外側に出てしまったことに対応できなかったのである。
従来型の運用管理体制では、例えばWindowsデスクトップであれば、社内のActive Directoryドメインに登録したうえでグループポリシーやデバイスの管理ツール、アップデートサービスなどを利用して管理することが一般的だった。つまり、社内のネットワーク環境にデバイスが接続されていることを前提にIT管理者がPCのキッティングやOSの適用、アプリケーションのアップデートなどに対応していた。
New Normalに求められる「モダンマネジメント(最新の管理)」について林氏は「これまでのような、常にVPN経由で社内ネットワークに接続するという形ではなく、“どこにいても仕事ができる”新しい働き方をサポートできるような、分散環境に対応した運用管理体制が必要になってきています」という。
こうした環境で有効なのは、モバイル端末管理(MDM)やPC管理なども含む統合エンドポイント管理(UEM)だろう。従来の企業システムの考え方では、オフィス内に固定的に設置されたPCを業務端末として管理する一方で、モバイル端末を「特殊なデバイス」として別途管理するというやり方で対応できていた。しかし全社規模でのテレワーク体制では、PCも含め業務端末がすべてモバイルデバイスであると考える必要があり、従来の運用管理体制ではカバーしきれなくなる。
Workspace ONEが実現するモダンマネジメントは、クラウドからのキッティングやOSパッチ適用、アプリケーションアップデートなど分散環境のデバイス管理に必要な機能を備えているため、デバイスがどこにあろうが、インターネット経由でクラウドからの管理を可能としている。
今後は在宅勤務やテレワーク、ワーケーションなども広範に導入され、働き方が変わっていくことはほぼ確実とみられるため、ITシステム側での対応が必要だろう。
ゼロトラストに基づくセキュリティ
そして「ゼロトラストセキュリティ」も最近注目が高まっているキーワードだ。従来の「境界防御型」のセキュリティは、社内ネットワークを「安全な領域」と位置づけ、危険な領域である社外/インターネットからのアクセスを重点的にチェックすることで内部の安全を維持するという考え方に基づいている。
守るべき重要な情報や資産が「内部」にあることを前提にした考え方だが、企業のITが外部のクラウドサービスやSaaS(Software as a Service)に依存し、さらに今回のように出社を制限される事態でリモートワーク/テレワークが拡がると、デバイスやアプリケーションが従来の境界線の外に出てしまう形になり、防御が行き届かなくなる。
こうした状況に対して林氏は「保護対象が増え、その場所もさまざまになってきていることから、どこにセキュリティリスクが存在するかを的確に把握して保護する必要がでてくるほか、状況の変化に対応するスピードも大切になります」と指摘する。
ゼロトラストは、「すべての構成要素、ユーザー、デバイス、ネットワーク、アプリケーション、データの安全性を常に検証・確認する」という考え方に基づく。これはまだ新しい概念であり、市場ではゼロトラストに必要とされる機能を部分的に実装したソリューションがようやく出回り始めたタイミングとなる。
シンプルにソリューションを導入するだけでゼロトラストを実現できるような状況にないため、ユーザー側でも「現段階でまず何を実現したいか」を考え、適切な製品/テクノロジーを選択していく必要がある。
ヴイエムウェアは、VMware Secure Access Service Edge(SASE)、デジタルワークスペース、エンドポイントセキュリティ機能を組み合わせることにより、優れた従業員体験、エンドツーエンドのゼロトラストセキュリティ制御、管理の簡素化を実現するVMware Future-Ready Workforceソリューションを今後提供していく予定だ。
また、統合的なデジタルワークスペースの可視化と問題への対応フローの自動化をはじめとした機能を提供する「VMware Workspace ONE Intelligence」では、個々のデバイスの状態をチェックして可視化できるなど、この分野で一日の長があり、現段階で最も包括的なプラットフォームを提供できるベンダーの1社だ。
SC1125:「デジタルワークスペース Zero Trust への旅」
従業員の業務環境の視点
ここまで、感染症拡大による緊急事態の経験をふまえた業務継続の方法や、ITを活用して強靱かつ柔軟な基盤を構築する取り組みの具体例を見てきたが、実際に構築された基盤を活用して業務を行う現場の「働く人」の視点、いわゆる「Employee Experience(従業員の業務環境の視点)」についても考えておく必要がある。
これは別の言い方をするなら、企業側が用意した「新しい働き方をサポートする環境」が本当に働きやすい環境となっているかどうかは働く人が評価すれば明確になる、ということでもある。さらに言えば現場で働く人がメリットを見いだせないような“改革”は定着しないと考えられ、現場視点でメリットが得られるソリューションであることが重要だということだ。
林氏は、現状で浮き彫りになった課題として「PCに問題があったとして、今までならオフィス内でIT担当者にすぐ相談できるなど緊密なコミュニケーションが可能でしたが、在宅勤務ではちょっとしたコミュニケーションが難しかったり、細切れの時間を上手く活用できなかったりといった問題が意識されるようになっています」と語る。
こうした課題に対して「VMware Workspace ONE Intelligent Hub」ではコミュニケーション面でリモートワーク/在宅勤務を支える機能を提供し、「VMware Workspace ONE mobile flows」では個別の業務アプリケーションに移動しなくても1つのアプリケーション内で通知を受け取り、承認を行うなど一連のフローをワンストップで完結でき、業務効率を高めることが可能だ。
企業としての強靭化を目指すための「VMworld 2020 Japan」
ヴイエムウェアは、11月10日~12日にオンラインイベント「VMworld 2020 Japan」を開催する。
そこでは、最新のフレームワークである「Future Ready Workforce」について語られるほか、具体的な落とし込みとして「ハイブリッド&マルチクラウドVDIおよびアプリケーション」「モダンマネジメント(最新の管理)」「ゼロトラスト セキュリティ」「Employee Experience(従業員体験の向上)」のブレイクアウトセッションなどが用意される予定だ。
危機を経験した企業として、将来的に起こりうるさまざまな状況に柔軟に対応可能な体制、すなわちFuture Ready Workforceを構築するための情報が収集できる、この機会をぜひ活用していただきたい。
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