8月4日に開催されたWebセミナー「在宅ワーク成功の手引き ― 業績アップに向けた対策とツール」。新型コロナウイルス流行により広まった在宅ワークについて、会社同様に業務を継続するためのポイントや効果的なツールについて紹介された。

本記事では、NTTコムウェア ビジネスインキュベーション本部 ビジネスインキュベーション部 統括課長の島田智子氏による「デジタルワークプレイス ~快適・安全の両立で創る新しい働き方~」と題した講演について解説する。

NTTコムウェアが考えるデジタルワークプレイス

島田氏はまず、同社が働き方改革やDXの流れに沿い、“いつでも・どこでも”使えるコミュニケーションツールとそのプラットフォームを「デジタルワークプレイス」というくくりで提供してきたことを話した。コロナ禍への対応でデジタルワークプレイスの重要性が増してきたとともに、必要な機能や利用シーンも大きく変化したと指摘。そのうえで、同社ではデジタルワークプレイスを「業務遂行上必要なツール類を集約するデジタル空間」と定義していると語った。

  • NTTコムウェア株式会社
    ビジネスインキュベーション本部 ビジネスインキュベーション部
    統括課長 島田 智子氏

島田氏が焦点を当てたのが、同社が2013年から提供しているコラボレーションツールだ。ビジネスにおいて使われるコラボレーションツールの提供に際し、同社が留意したのは「コンシューマーアプリのUI/UXがもたらす利便性と、企業に求められるガバナンスおよびセキュリティの両立」。たとえばチャットでいうなら、ビジネス向けアプリも数々登場しているものの、使い勝手でいえばLINEなどコンシューマー向けアプリのほうがはるかに上をいくというのが一般的な印象だろう。「企業ユースにおいてもこの使いやすさは必要であり、同時に安全性や管理性の課題も満たさなければならない」と島田氏は語る。

「当社はこうしたコンセプトに基づき、コラボレーションツールを提供しています。たとえばチャットで社内と現場に出ている営業担当がやり取りする中で、同じUIのまま在庫確認ができたり、簡単なレポートを作成したり、進捗管理ができるとうれしい、といった業務利用のニーズをいただきました。また、在宅勤務などのリモートワーカーとオフィスで働く社員たちがチームとしての一体感を高められる利用方法がないか、というニーズも聞いています。こうしたニーズを解決するものとして、AIとチャットボットがあると考えています」

  • AIとチャットボット

例として、営業からの問い合わせにチャットボットが回答候補を示す、チャットボットからの報告依頼に対して営業が報告をするとそのままSFAにつながり、管理側ではそのSFAで進捗状況を確認できるといった、チャットボットとAIがさまざまな業務を代行するシーンをイメージとして挙げ「AIとチャットボットを組み合わせることで、業務を進める上で必要な複数の作業を、一つの使いやすいコラボレーションツールで誰もが利用できるようになります」と語った。

ツールとAI/チャットボットの組み合わせにより実現している取り組み事例として、島田氏は現場からの問い合わせ対応や業務ノウハウの検索、営業報告、窓口支援、社員の所在確認、申請、スケジュール調整などを挙げた。

コラボレーションのベースとなる2つのコンセプト

続いて島田氏は、同社が提供するデジタルワークプレイスの土台にある2つの基本機能のコンセプトとして、オフィスと現場をつなぐコミュニケーションと作業管理の基盤となる「シームレス・コラボレーション」、AI/チャットボットが業務に必要なあらゆる情報の検索・遂行をサポートする「おまかせアシスタント」を説明した。

まず「シームレス・コラボレーション」は、個人ワークからプロジェクト管理まであらゆるコミュニケーションを一つのツールにまとめ、そこに集まったものをチームのナレッジベースにするという考え方だ。

「たとえば個人がメモをする、その中からピックアップして上司に報告する、上司はそれを基に情報を加工して業務報告していく、といった一連の作業を、別々ではなくシームレスに行える環境を実現します。チームの業務で発生するチャット、音声、画面共有、映像といったさまざまなコミュニケーションを一つのツールに集約するだけでなく、AIとチャットボットが介在することで簡易的な報告や進捗確認をサポートし、作業履歴もデジタルで残すことで、その分析からBPRやDXにつなげていくことが可能だと考えています」と島田氏は話す。

そしてもう一つの「おまかせアシスタント」は、業務上のあらゆる情報検索をアシストするもので、AI検索とチャットボットにより現場からの質問に自動回答するだけでなく、専門家の回答が必要なものについてはサポートの人間につなげる機能も実現する。

「あらゆる場所にある情報を横断検索できる基盤を提供していこうと考えています。現在はキーワード検索だけでなく、文脈から意味を推定して検索するところにまで到達しています」

  • 「おまかせアシスタント」の利用イメージ

この機能により、現場は必要な情報を探す手間を軽減できるメリットがあり、サポート側にも電話で一つの問い合わせに拘束されるのではなくチャットで同時複数対応できるメリットがある。また、最近はどの業種でもベテランのノウハウ継承が課題だと聞く。定型作業の継承には解決方法があるものの、非定型なベテランのノウハウを残すことはやはり難しい。そこで同社では検索ログをナレッジとして蓄積し、ベテランが情報をいかに検索しているのか、そのログをトレースすることで、情報の探し方を提供することも今後のテーマとしている。

コロナで変わるニーズとソリューションがもたらす可能性

講演の後半では、コロナ禍の影響発生後の同社における活用の実例と顧客の声から、デジタルワークプレイスのニーズがどのように変化してきたのかを語った。

まず同社では、コロナ前の在宅勤務には月当たりの回数や育休、介護といった条件が必要であったのに対し、コロナ後は基本的に在宅勤務が推奨され、打ち合わせ・会議もオンラインが基本になっている。コラボレーションツールを使用することで、コミュニケーションのあり方や会社風土、業務ルール、勤怠管理にも変化が生まれていると島田氏は指摘した。 そのうえでコロナ禍を受けた今後の業務の課題を提示した。

「オンライン会議だけでなく、日頃のちょっとしたタイミングでメンバー間がコミュニケーションをとることが必要です。そのため、常時接続のビデオチャットがあり、チームの臨場感を常に共有できればと考えています。もちろんそこにはセキュリティも絡んでくるので、安全性と利便性の追求を両立させることもテーマです。一方、管理者側から考えると、業務の進捗状況はもちろん、勤怠管理だけでなく、メンバーの心身の健康状態を上司がいかに把握するかも課題です。そのためには、現場のメンバーと管理者、さらに幹部層までをいかにシームレスにつなげるかが今後の企業にとって課題になると考えます」

そしてこうした課題の解決に貢献可能なソリューションとして、同社のデジタルワークプレイスに改めて触れ「チャット、音声、ビデオといったコミュニケーションと業務システムのインターフェースを融合し、スピーディーな情報検索を可能としたうえで、現場の状況をリアルタイムに把握できる環境を提供しています。また、検索や作業のログから得られるデータを今後のDXや風土改革につなげることも可能になります」と語った。

現状、同社では「シームレス・コラボレーション」「おまかせアシスタント」をサービスセットとして提供しているほか、業態・業界に特化したカスタマイズを施す「メンテナンス業務支援」「営業支援」「コンタクトセンター支援」のサービスも提供している。そのほか、これらのサービスの構成要素であるビジネスチャットや社内SNS、ドキュメント配信サービス、ヘルプデスク向けチャットボット、クラウド型PBX、さらにはセキュリティのソリューションなども紹介した。

  • デジタルワークプレイスのサービス

最後に島田氏は「テクノロジーの進化と働き方が多様化する中、デジタルワークプレイスのソリューションは可能性がどんどん広がると考えています」と語り、講演を締めた。

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