MATLAB®/Simulink®のユーザーカンファレンス「MATLAB EXPO Japan 2020」が9月28日 (月)より5日間にわたりオンラインで開催される。
前編となる前回は、基調講演や全体テーマである「実用的なデジタルトランスフォーメーション」の意味することを紹介した。今回は、各日程のテーマにおけるセッションの注目ポイントを、MathWorks Japanアプリケーションエンジニアリング部 部長の宅島 章夫 氏にガイドしてもらおう。
MATLAB EXPO Japan 2020総力特集
【前編】
今年のテーマは、実用的なデジタルトランスフォーメーション
【後編(本記事)】
"DX=実用段階" を感じさせる23のユーザー講演
ダイキン工業、ダイハツ工業、コーセー、理化学研究所、京セラ、JAXAなどが登壇
初日と二日目「機械学習とディープラーニング、ロボティクスと自律システム」
初日のテーマは「機械学習とディープラーニング」、二日目のテーマは「機械学習とディープラーニング、ロボティクスと自律システム」だ。研究レベルから現場適用に至るまで、幅広い分野での事例が紹介される。
宅島 氏は「ダイキン工業様による『PI System™連携による化学プラントの予知保全』や、ダイハツ工業様による『パワートレイン開発での新しいデータサイエンス活用と展望』などは、現場への機械学習とディープラーニングを適用した好例です。研究レベルという点からは、コーセー様の『口元のエイジングケアの開発に向けたディープラーニングの活用』や理化学研究所様の『Deep Insight法による、非画像データへのディープラーニング適用』が用意されています」と話す。
このほかにも、防衛装備庁による「遠赤外線画像へのGANの適用と自律移動ロボットの制御」や、三井化学による「Keras modelのMATLABでの活用」がある。また、ワンスターによる「デジタルマーケティング分野におけるディープラーニング活用」は、マーケティングの観点からMATLAB/Simulinkを活用したユニークな事例だ。
また、二日目には「ロボティクスと自律システム」として、マニュピレーター、ドローンなどを対象にどのように開発が行われてきたかを包括的に紹介する。ユーザー講演として、京セラ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が登壇する。
京セラは「ロボティクスの技術開発における仮想環境の活用」をテーマに、ロボットアームをどう最適に動かしていくかを紹介。JAXAのセッションでは「ドローンの運航・交通管理シミュレーション」をテーマに、200機以上のドローンを飛ばして相互にインタラクションしながら運行管理や管制を行うロジックの開発事例が語られる。
トヨタ自動車、いすゞ中央研究所、ヤマハ発動機、日本車輌製造が登壇
三日目「自動運転、パワートレイン開発、ロボティクスと自律システム」
三日目の「自動運転、パワートレイン開発、ロボティクスと自律システム」は、本田技研工業 横山氏の基調講演からはじまり、先進技術やモデルベースデザインだけでなく、各要素のデータ解析に関するものを含めて、自動車にかかわる広範な事例を凝縮したアジェンダとなっている。
まず、トヨタ自動車からは「ガスタービンエンジン制御向けマルチコアマイコン向けコード実装」「モデル予測制御を用いた『上手い運転』を実現する自動運転制御」という2つの講演が行われる。また、ヤマハ発動機のセッションは「静止自立する二輪車の運動特性とその制御」がテーマになる。日本車輌製造は大型のAGVを対象に、自分の走行位置を推定して誘導システムをどう構築するかを「MATLAB/Simulinkを活用した大型重量物自動搬送車(自動位置推定)」と題して講演する。
「トヨタ自動車様は、マルチコアマイコンへの実装事例と、自動運転での制御技術がテーマです。ヤマハ発動機様は自分で起き上がるバイクについてどのような制御を行っているかがテーマです。いずれも、自動車業界の皆様にとって有益な情報になるでしょう。」(宅島 氏)
ローム、東芝インフラシステムズ、日立AMS、静岡理工科大が登壇
四日目「パワーエレクトロニクス」
四日目の「パワーエレクトロニクス」では、モーターやバッテリーシステムの制御開発における企業の最新動向を知ることができる。
4セッションがユーザー単独講演となり、具体的にはロームによる「新トポロジーACDCコンバータのMBD手法を用いた開発事例」、東芝インフラシステムズによる「Simscapeを活用したSCiB™伝熱シミュレーション」、日立オートモティブシステムズによる「車載ECU周辺回路の故障注入のシミュレーション検証技術」、静岡理工科大学による「これからのモーター制御システム構築~産学連携の開発事例~」で構成される。
「業界も電気、自動車、アカデミアなど様々な分野のお客様からご講演いただきます。ローム様は、PFC制御の用途で用いるIC開発にモデルベースデザインを適用した事例です。東芝インフラシステムズ様にはリチウムイオンバッテリーの熱マネジメントへの応用例を、日立オートモティブシステムズ様には仮想シミュレーションで安全性を検証する手法を包括的にご紹介いただきます。また、静岡理工科大学様には、センサレス制御など高度化するモーター制御にまつわるシステム構築事例を幅広くご紹介いただきます。」(宅島 氏)
日立製作所、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ、オリンパス、富士通QNET、Lily MedTech、横河電子機器が登壇
最終日「医療・産業機器のモデルベースデザイン、AI/IoT応用事例」
最終日の「医療・産業機器のモデルベースデザイン、AI/IoT応用事例」は、産業・医療に関するミッションクリティカルな機器のシステム開発に関するモデルベースデザインを適用したユーザー講演と、業界問わずAI/IoTにおける幅広い領域での先進的な応用事例、実際の製品機器への実装適用に関わる事例を紹介する。
ロボットアーム、モデルベースデザイン、強化学習などに関する技術としては、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズによる「医療機器開発におけるMBD導入プロセス」、オリンパスによる「内視鏡ビデオプロセッサ開発におけるMBD適用事例報告」がテーマとなる。
「日立製作所様のセッションは日立のIoTプラットフォームとMATLABの連携事例で、工場内物流におけるITとOTの融合に活用できるソリューションを、デモを交えて紹介いただきます。富士通九州ネットワークテクノロジーズ様のセッションは、シマフクロウの鳴き声を識別して生物の生息調査に活かす技術にディープラーニングを適用した事例となります。」(宅島 氏)
また、GPU/HDL実装の事例として、Lily MedTechによる「超音波を使用した、革新的な乳がん用診断装置 "リングエコー" の開発」、横河電子機器による「FPGA回路規模の見積もり精度向上と実機デバッグの高機能化」の講演がある。
「Lily MedTech様は、医療現場での画像解析にGPUを実装した事例、横河電子機器様はMathWorksのHDL関連製品をどう活用いただいているかを紹介いただきます。」(宅島 氏)
宅島 氏は続けて、「モデルベースデザインの有効性は分かるけれども開発プロセスを変えねばならず中々これを適用できない。そんな悩みをよく耳にします。午後はこうしたプロセスの変革について踏み込んでいきます。ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ様の事例では、医療機器開発におけるモデルベースデザイン導入プロセスをゼロからどう作っていったかをご紹介いただきます。オリンパス様は、もう少しアプリケーションを絞って、医療用内視鏡のビデオプロセッサ開発へのモデルベースデザイン適用事例となります。」と語った。
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5日にまたがって開催されるMATLAB EXPO Japan 2020について紹介してきたが、いかがだっただろうか。宅島 氏はここまでを振り返り、「本年もお客様講演をできるだけ多くご紹介したいと考えて企画しました。『実用的なデジタルトランスフォーメーション』を目指すうえでは、異なる様々なアプリケーション、技術を融合させる必要があります。実際の取り組みでは、お客様自身が課題意識をもって能動的にこれを解決していかねばなりません。MathWorksはMATLAB EXPOのような場で有用な情報を数多く提供し続けるとともに、コンサルティングやエンジニアリングサポートを通してお客様のプロジェクトの成功を支える存在になっていきたいと考えています」と述べる。
同氏が紹介したように、セッションはほとんどすべてがユーザー講演となっている。ユーザーとして、実感をもってここで得た情報を自社の取り組みに応用できるはずだ。ぜひ時間の許す限り、ライブでオンラインセッションに参加いただきたい。
MATLAB EXPO Japan 2020
オンライン| 9月28日(月)から10月2日(金)
MATLAB/Simulinkユーザー様による事例紹介やMathWorks社員による技術講演を通して革新的な最新技術をご紹介いたします。
MATLAB EXPO Japan 2020総力特集
【前編】
今年のテーマは、実用的なデジタルトランスフォーメーション
【後編(本記事)】
"DX=実用段階" を感じさせる23のユーザー講演
[PR]提供:MathWorks Japan