日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」などのプラットフォーム開発・構築を手がけるZOZOテクノロジーズ。同社では、増え続けるZOZOTOWNのトラフィック要求に対応するため、主にオンプレミスでのサーバ増強を続けてきましたが、セール時のピークに合わせた設備投資が非効率になるなどの課題も抱えていました。そこで、既存インフラとの親和性が高いクラウドサービスである「VMware Cloud on AWS」を採用。2020年1月のセールより稼働を開始し、ベアメタルインスタンス約100ノードをクラウドに展開して、通常時の約3倍のトラフィックを処理しました。今後もVMware Cloud on AWSを活用しながら、サービスを安定して提供できるインフラの構築と運用のノウハウを確立していく方針です。
ソリューション
サービス開始時からオンプレミスで拡張を続け、VMwareによる仮想化基盤で稼働してきた「ZOZOTOWN」のサービスインフラを、VMware Cloud on AWSへ拡張。セール時などに急増するトラフィックへの対応を、VMware Cloud on AWSに振り分けられる構成とすることで、より効率的なシステム投資を可能にするとともに、将来的な変化にも柔軟に対応できるサービス基盤を実現した。
導入前の課題
・「ZOZOTOWN」のサービスの成長に合わせてオンプレミスで物理サーバを増強し続けるやり方に限界
・ピーク時に合わせて購入した物理的なリソースが通常時に有効活用されず非効率
・物理サーバの故障対応、運用保守にかかる人的コストの増大
導入効果
オンプレミスからクラウドへのリソース拡張ができる環境を迅速に実現 |
クラウド上で必要なときだけリソースを追加して急増したトラフィックを処理 |
既存のアプリケーション、インフラへの投資を生かしつつ将来的な変化にも対応 |
Electronic Commerce
カスタマープロフィール
ZOZOテクノロジーズはZOZOグループの技術開発全般を担う会社で、日本最大級のファッション通販サイト"ZOZOTOWN"のITシステム運用も担っています。"ZOZOTOWN"は7,600以上のブランド数を取り扱い、1日あたり平均3,000点以上の新着商品を掲載しています。
ユーザーコメント
「VMwareの仮想化基盤上で稼働してきたZOZOTOWNにとって、VMware Cloud on AWSは、アプリケーションの改修が不要であり、仮想マシンのポータビリティが高いといった点で、最も親和性が高いクラウドサービスでした」
株式会社ZOZOテクノロジーズ
渡邉 宣彦 氏
導入サービス
VMware Cloud ™ on AWS
【課題】オンプレミスで拡張してきたサービス基盤をクラウドの活用でよりスケーラブルに
2004年のサービス開始から、現在(2020年6月)までの間に、常時73万点以上のアイテムを取り扱う日本最大級のファッション通販サイトへと成長を遂げた「ZOZOTOWN」。そのサービス開発や、システム基盤の構築・運用を手がけているのがZOZOテクノロジーズです。
同社は、ZOZOグループにおける技術・デザイン・分析などの制作業務全般を一手に担う企業として2018年に設立されました。現在は400名以上の社員がおり、エンジニア・デザイナーなど、グループのプロダクト開発に携わる技術者が集結し、ZOZOTOWNのほか、ファッションコーディネートアプリ「WEAR」などの開発運用も行っています。そうした中、ZOZOテクノロジーズでは、数年前からZOZOTOWNのアーキテクチャ刷新を検討していました。
「長く提供されているWebサービス全般に言えることですが、どこかのタイミングで、インフラやアプリケーションの作り方をよりスケーラブルなものへとマイグレーションしていく必要に迫られます。もちろん、サービス開始から15年が経過したZOZOTOWNも例外ではありません」
そう話すのは、ZOZOテクノロジーズ技術開発本部 SRE部 ZOZO-SREチームでチームリーダーを務める渡邉宣彦氏です。
ZOZOTOWNでは、サービス開始当初からオンプレミスでの運用と拡張を続けてきたといいます。しかし、さらなる成長を視野に入れたとき、クラウドを活用してより柔軟なインフラを構築する必要性が、年々高まっていました。
「これまで、サービスの成長や繁忙期となるセールイベントのピークなどを予測しながら、その都度オンプレミスに物理的なサーバを追加して、キャパシティを増強してきました。以前はそれで良かったのですが、長く事業を展開する中で、このままのやり方では、将来にわたってサービスをスケールさせ続けていくことが難しいと判断し、インフラとアプリケーションを徐々にクラウドへとシフトさせていく方針が決まりました」(渡邉氏)
ファッション通販サイトであるZOZOTOWNでは、年間を通じて数多くの「セール」が開催されています。中でも、毎年元日からスタートする冬のセールは、1年を通じて最も多くのトラフィックが発生するイベントです。このとき、サイトへのユーザーアクセスに伴うトラフィックは、通常時の3倍~4倍に達します。セール時の機会損失を防ぐためには、ピークとなるトラフィック量を予測し、対応可能なキャパシティを持ったリソースを事前に準備する必要があります。しかし、オンプレミスでそれを実施しようとすれば、セール以外の通常時には不要なリソースも購入することになり、投資効率は下がります。また、所有する物理サーバの台数が多くなるに従い、ハードウェアの運用保守に必要な人的コストも増えていきます。こうした問題を解決するためにも「クラウドサービスの活用を検討することは、自然な流れでした」と渡邉氏は言います。
【ソリューション】サービス基盤をVMware Cloud on AWSに拡張、L2延伸を使って既存環境の変更は最小限に
大きく変動するトラフィックに柔軟に対応できるサービスインフラの実現、規模が増し続ける物理サーバ運用管理の合理化などを検討していた同社が注目したのが「VMware Cloud on AWS」でした。VMware Cloud on AWSは、VMwareとアマゾン ウェブ サービス(AWS)が共同開発したクラウドサービスで、「Amazon EC2」のベアメタルインスタンス上で「VMware vSphere®」による仮想化環境を利用できます。
同社では2016年より、オンプレミスに vSphereによる仮想化基盤を導入し、物理リソースの効率的な活用に取り組んでいました。vSphereと親和性の高いVMware Cloud on AWSは、検討したクラウドサービスの中でも最有力の選択肢となりました。
VMware Cloud on AWSの採用で中心的な役割を担ったZOZO-SREチームの横田工氏は「採用の最大の決め手となったのは、VMware Cloud on AWSがL2延伸に対応していたことでした」と話します。
「L2延伸が利用できれば、既に稼働しているオンプレミス環境のIPアドレスを変更せずに、サービス基盤をクラウド上に拡張できます。検討段階で、われわれの要件に合う形でL2延伸が利用できたクラウドサービスはVMware Cloud on AWSだけでした。常にサービスを動かし続ける必要がある中で、これまで稼働してきたZOZOTOWNのアーキテクチャそのものを一からクラウド向けに刷新することは容易ではありません。ビジネスへの影響を最小限にとどめながら、サービス基盤の柔軟な拡張、改善を続けて行くにあたって、VMware Cloud on AWSは最善の選択肢だったと思います」(横田氏)
同社は、2019年5月に行われたVMwareによるVMware Cloud on AWSのハンズオンセミナーに参加。そこから具体的な構成を検討し始めました。同年7月にはPoC(概念実証)を実施、2020年元日スタートの冬セールを視野に入れた構築作業を2019年11月にスタートしました。構築の実作業にかけることができた期間は、実質で1カ月もなかったそうです。
ZOZOTOWNのオンプレミス環境では約400台以上のサーバが稼働しており、ロードバランサーを通じてユーザーからのリクエストを振り分けています。セールなどで集中したリクエストがオンプレミスの処理能力を超えると、超えた分のリクエストは、「VMware HCX」のL2延伸を利用して、VMware Cloud on AWSに回されます。2020年の冬セールでは、最終的にベアメタルインスタンス約100ノードをVMware Cloud on AWS上に展開し、通常時の約3倍に達するトラフィックを処理しました。
「インフラの構築は、これまで外部のパートナーに委託していた部分が大きかったのですが、今回のVMware Cloud on AWSの活用は、社内のチームが中心となって進めてきました。結果として、2020年1月の段階では『100%望んだとおり』とまではいかないものの、急激なトラフィック増加への対応にVMware Cloud on AWSが有効に使えることが分かりました。セール後の検証を通じて、より効果的な構成やL2延伸に関するノウハウも蓄積され、現在では、当時より信頼性の高い状態でVMware Cloud on AWSが活用できる体制になっています」(横田氏)
ZOZOTOWNでは、現在も変動するトラフィック需要に応じて、必要な規模の仮想サーバをVMware Cloud on AWSに展開しています。2020年春には、政府や自治体による外出自粛要請を受け、外出せずに商品を購入できるeコマースサイトへのアクセスが世界的に増加する傾向がありました。その期間中、ZOZOTOWNにも通常時以上のアクセスがあり、急遽リソースの増強が必要になったそうです。その際、VMware Cloud on AWSの活用を先がけて進めていたことは、サービスの品質維持に貢献したといいます。
同社ではVMwareのサポート体制も高く評価しています。今回のプロジェクトに関わったZOZO-SREチームの中道真太郎氏は「自社の構成についてのディスカッションを通じて、VMwareが推奨するVMware Cloud on AWSとオンプレミスとの接続方法などを詳細に教えてもらえたことは非常に役立ちました。また、実際に構築と運用を進める過程でも、チャットなどを通じて、レスポンス良くサポートを受けられました」と話します。
また、横田氏も「これまで、多くのクラウドサービスでサポートを利用してきましたが、その中でもVMwareによるサポート内容はしっかりしており、ユーザーとして心強く感じました」と評価しています。
【今後の展望】オンプレミスとクラウドで共通する技術がビジネス価値を生み出し続けるための基盤に
ZOZOテクノロジーズでは、今後もセールなどで発生する突発的なトラフィック増加への対応に、VMware Cloud on AWSを活用していく方針です。横田氏は、実際に利用した感想として、VMware Cloud on AWSは、既にVMwareベースの仮想化基盤をオンプレミスで活用している多くの企業にとって、クラウド移行にあたっての有力な選択肢になるだろうと話します。
「vSphereをオンプレミスで展開している企業にとって、L2延伸でネットワーク構成を変えずにリソースをクラウドへと拡張できるVMware Cloud on AWSの利用価値は非常に高いのではないでしょうか。オンプレミス側の構成をテンプレートとしてクラウドに適用したり、仮想マシンイメージのインポート/エクスポートが容易だったりという点で、クラウドでの環境構築が大幅に楽になります。また運用においても、『VMware vMotion』による仮想マシンの操作など、これまでオンプレミスで培ってきたノウハウを活用できます」(横田氏)
渡邉氏も「変化することが当たり前」の時代に、システムからビジネス的な価値を生みだし続けていく上で「VMwareの仮想基盤がメリットを生むケースは多いだろう」と言います。
世の中全体で、これまでオンプレミスで稼働してきたワークロードをクラウドへと移行していく動きが加速しています。しかし現実的には、長く稼働してきた実績のあるサービスになればなるほど、アプリケーションやインフラそのものをクラウド向けに作り直し、全面的に移行するのは難しくなります。
「ZOZOテクノロジーズにとって、ZOZOTOWNは『失敗があってはならない』サービスです。その前提で、実績があるオンプレミスの環境と、柔軟性の高いクラウドとをどう使い分けていけば最も大きな価値につながるのかについては、慎重に検討が続くでしょう。VMwareの仮想化基盤で稼働してきたZOZOTOWNにとって、VMware Cloud on AWSは、オンプレミスのネットワーク環境やアプリケーションの改修が不要であり、仮想マシンのポータビリティが高いという点で、最も親和性が高いクラウドサービスでした。VMwareの仮想化技術を利用することで、オンプレミスとクラウドの双方をフレキシブルに移動することが可能となります。この一貫したクラウドインフラストラクチャを利用することで、今後オンプレミスとクラウドの活用スタイルがどのように変化したとしても、ビジネス上の価値創出へ貢献できるのではないかと期待しています」(渡邉氏)
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