9月28日(月)から10月2日(金)、世界最大級のMATLAB®/Simulink®のユーザーカンファレンス「MATLAB EXPO Japan 2020」がオンラインで開催される。今年のテーマは「実用的なデジタルトランスフォーメーション」。そのテーマが意味するものとは何なのか。キーノートの内容を中心に、紹介していこう。
MATLAB EXPO Japan 2020総力特集
【前編(本記事)】
今年のテーマは、実用的なデジタルトランスフォーメーション
【後編】
"DX=実用段階" を感じさせる23のユーザー講演
デジタルトランスフォーメーションは "実用" の段階に
デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みが様々な組織で活発化している。
DXは、AIやIoT、ビッグデータ、クラウドなどの様々なデジタル技術を駆使して、業務や組織、ビジネスの在り方を変革していく取り組みだ。先行例として、自動車会社が従来式の自動車製造のみならずモビリティをサービスとして提供する企業へと変革したケースが挙げられる。ビジネスモデルそのものが変わることにより、業界の変革はもとより、社会をも変革する取り組みへとつながっていく。
DXという言葉は最近になってキーワードとして使われ出したが、MathWorksでは以前から、DXに求められる技術を提供してきた。同社が兼ねてより提唱してきたモデルベースデザイン (MBD)は、その1つといえるだろう。現実世界を仮想的に描き出した "モデル" を用意し、設計段階からシミュレーション機能を活用して製品の検証を重ねていく。こうしたMBDのアプローチは、「デジタルツイン」とよばれるような現実と仮想空間をつなぐそれと本質的には同じものだ。また、データアナリティクスや機械学習、ディープラーニングなどの技術についても、MATLAB/Simulinkのツールボックスやブロックセットのかたちでいちはやく提供。設計製造、制御などの現場では、既に数多くの取り組み例が生まれている。
今年のMATLAB EXPOも、そうした地に足の着いたDXの取り組みをあらためて一望することが大きな狙いとなる。MathWorks Japan インダストリーマーケティング部 部長の阿部 悟 氏は、こう話す。
「EXPO全体のテーマは『実用的なデジタルトランスフォーメーション』です。MBD、データアナリティクス、機械学習、ディープラーニングといった要素技術はそれぞれが独自に進化してきましたが、ここにきてより融合が進み、様々な現場で実用化される段階になっています。それらを『実用的なデジタルトランスフォーメーション』と定義し、お客様の実例として紹介したいと思っています。」(阿部 氏)
キーノートは本田技研工業 上席研究員 横山 利夫 氏が登壇
モノづくり、コトづくりの現場ではどのように「実用的なDX」が進展しているのか。その一例として、3日目(9月30日)のキーノートでは本田技研工業 上席研究員の横山 利夫 氏が登壇。「自動運転実用化に向けたホンダの取り組み」と題して、ホンダにおける自動運転の事例を紹介する。
「自動運転では、車体を制御する技術だけでなく、安全性を担保するためのシミュレーションの役割も非常に重要です。どのような技術でこれを実現しているのか、どんな課題があり、それをいかにして解決したのか。こうしたお話を、具体的な開発プロセスも交えながら解説いただく予定です。」(阿部 氏)
横山 氏は一般社団法人日本自動車工業会の自動運転検討会のなかで、国連のワーキンググループやISO(国際標準化機構)などへの提案活動も行っている。DXを目指した実用化の動向はもちろん、それが社会にどんな変革を生むかを、業界動向、標準化動向という視点から理解できる興味深い講演になりそうだ。
また、初日のキーノートでは米MathWorksのJim Tung氏が登壇し、「実用的なデジタルトランスフォーメーション(Pragmatic Digital Transformation)」と題した講演が行われる。
MathWorksではユーザーの生産性を支えるための様々なサポートを行う一方、ユーザーコミュニティにおいても幅広く活動している。DXを実現するための実用的なアプローチとはどのようなものであり、どう取り組んでいけばよいのかをアドバイスする予定だ。
R2019bとR2020aの機能強化や新機能のポイント
4日目にはMathWorks Japanの担当者による「MATLAB and Simulink 最新情報」がある。R2019bとR2020aの機能強化や新機能のポイントを振り返る。
MATLAB/Simulinkは、AI、機械学習、ディープラーニング分野で、継続的に機能拡張がはかられている。R2019bでは、ディープラーニングについて、GAN(Generative Adversarial Network)やシャムネットワーク(Siamese Neural Network)といった新しいネットワークアーキテクチャがサポートされた。また、機械学習についてはベイズ最適化と組み合わせて学習器の性能を上げていく仕組みがアプリに組み込まれるようになった。
続くR2020aでは、ディープラーニングにおいて複数試行したモデルのプロジェクトを一括管理する「実験マネージャー」の機能実装、ディープニューラルネットワークの処理を向上させる「ディープ ネットワーク デザイナー」の機能改善が施されている。さらに、モーター制御のアプリケーションに特化したMotor Control Blockset™において、一般に制御が難しいとされるブラシレスモーターの制御開発と組み込み実装をサポートする新製品を提供。セッションではこうした新機能や新製品のポイントを振り返る予定だ。
DXの進展を実感できる、23のユーザー講演
5日間を各テーマに分けて、「実用的なデジタルトランスフォーメーション」の現状を体感できる構成となっている。具体的には、初日は「機械学習とディープラーニング」、二日目が「機械学習とディープラーニング、ロボティクスと自律システム」、三日目が「自動運転とパワートレイン開発の先進的アプローチと、ロボティクスと自律システム」、四日目が「パワーエレクトロニクス」、そして最終日が「医療・産業機器のモデルベースデザイン、AI/IoT応用事例」となる。
「いずれの日程も例年どおりユーザー講演が中心ですが、今年は過去最大の23のユーザー講演を用意しています。講演後に講演者と直接コミュニケーションされる方は年々増えており、領域をまたがってユーザー同士、知見やノウハウが共有されていることを実感しています。多くのユーザー講演から、自社の取り組みに生かせるヒントを皆様に提供できると考えています。」(阿部 氏)
一昨年から開催されているライトニングトークやポスター発表については、形態を変えて今年も実施される予定だ。また例年イベント会場で行っていたデモ展示は「バーチャルデモ展示」として、昼休みの時間帯と夕方に時間枠を設けて、ライブ形式で実施されるという。
「例年のMATLAB EXPOがそうでしたが、お客様自身が体験して、自らコミュニケーションを図って様々な知見を持ち帰っていただくことに力を入れています。今回はオンラインの開催ではありますが、Q&Aの時間を設けておりますので、皆様にも積極的に参加いただくことで、イベントを盛り上げたいですね。」阿部 氏は終わりにこう述べて、インタビューを締めくくった。
MATLAB EXPO Japan 2020
オンライン| 9月28日(月)から10月2日(金)
MATLAB/Simulinkユーザー様による事例紹介やMathWorks社員による技術講演を通して革新的な最新技術をご紹介いたします。
MATLAB EXPO Japan 2020総力特集
【前編(本記事)】
今年のテーマは、実用的なデジタルトランスフォーメーション
【後編】
"DX=実用段階" を感じさせる23のユーザー講演
[PR]提供:MathWorks Japan