新型コロナウイルス感染症は、ビジネスの姿を大きく変えた。政府が「新しい生活様式」と標榜するように、企業は今、一時的な "しのぎ" ではなく "永続的なもの" として、働き方を変えることが迫られている。

社会の働き方改革が突如として加速したことを受け、新しい業務環境、新しい仕組みづくりに試行錯誤している企業はきっと多いだろう。こうした背景から、働き方改革を主題にマイナビニュースが2020年6月10日にオンライン配信した「マイナビニュース フォーラム 働き方改革 Day 2020 Jun.」は、およそ900名もの方が聴講した。本稿では同フォーラムより、「テレワークに必要なITの整理」をテーマに講演した日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)のセッションの模様をお届けする。

社外からOA業務が行える環境が不可欠。そこで考慮すべきこととは?

「テレワークとIT」と聞いて、思い浮かべるものは何か。おそらく、多くの方がZoomやSlack、Teamsなどをイメージするだろう。

働く環境が分散する中、離れた場所にいる人を繋ぐコラボレーションツールは確かに "テレワークにおける重要なIT" だ。ただ、誤解してはならないのは、コミュニケーションが業務の全てではないということ。企業が利益を上げていくためには、社員一人一人がそれぞれの端末で生産性を上げていく必要がある。ものを作ったり、プレゼンテーションを用意したり、文章を書いたり、……職種、業界によって内容は違っても、企業で行われる業務の大多数が「OA業務」であるのは変わりない。

  • コラボレーションツールでは社外での「会議・会話」が可能になる。ただ、それだけでは企業活動は継続できない。社外からOA業務が行える環境も用意していく必要がある。

HPEのセッション「テレワーク対応のために必要なITとインフラの考え方(基本編)」では、社外でOA業務を行える環境づくりをテーマに、手法や持つべき考え方が提示された。スピーカーを務める同社 テクノロジー・エバンジェリストの小川 大地 氏は、"永続的なもの" としてテレワークを根付かせたい場合、環境づくりにあたって様々なことを考慮する必要があると指摘。具体例を交えてこのように説明した。

日本ヒューレット・パッカード株式会社
ハイブリッドIT事業統括本部
テクノロジー・エバンジェリスト
小川 大地 氏

「社員が会社支給のノートPCを持ち帰ってVPNから社内システムにアクセスすれば良い、という発想があります。これは決して間違いではありません。ただ、仮に自宅でその社用PCが故障したら、サポートすることは困難です。また、スマホ中心で自宅にネット環境が無いという社員も一定数いるでしょう。故障した方、ネット環境がない方は、どうしても出社を余儀なくされます。こうしたトラブルがなくても、多くの企業はまだ "全社員がテレワークすること" を想定していないため、VPNの回線容量が不足する懸念があります。VPNを例に話をしましたが、リモートデスクトップでも同じことを考慮しなくてはなりません。どのように解決していくか。一つ一つ整理していきましょう。」(小川 氏)

「ハイブリッドモデル」が、考慮事項をクリアにするカギ

小川 氏は、ユーザー側と管理側の2つに分けて、環境構築に際し考慮すべきことを整理する。

ユーザー側:
 (1)作業端末となる社用PCの故障や社用PCを持ち帰れない社員の対応
 (2)自宅にインターネット環境がない社員の対応

管理側:
 (3)"全社員がテレワークすること" を想定した環境づくり
 (4)生産性とともにセキュリティも担保できる環境づくり

  • 社外端末から社内ネットワークに接続するVPN(左)と、社外端末から社内の仮想デスクトップにアクセスして業務システムを利用するリモートデスクトップ(右)。それぞれ手法は異なるが、考慮すべき事項は共通している。
    ※画像クリックで拡大

  • テレワークに必要なITは、「コミュニケーション&コラボレーション」「クライアント&デスクトップ」「セキュアアクセス」「ネットワーク」「オペレーション&ユーザサポート」「ID&アクセスマネジメント」の6領域に分けられる。セキュリティは、このすべてを横断して考えるべき最重要事項だ。

上に挙がった(1)~(4)の考慮事項は、どのようにしてクリアしていけばよいのか。HPEはここで、ある1つの考え方を提唱する。アクセスのしやすさ重視の商用クラウドとセキュリティ・コンプライアンス重視のオンプレミス(データセンター)を複合した、「ハイブリッドモデル」だ。

小川 氏は、「汎用化が可能な業務システムは商用クラウドサービスへ移す。そして、スクラッチで移行が難しい、あるいは扱う情報の機密性から社外に置けないシステムのみ、データセンターに置く。このうちクラウドサービスについてはインターネットで直接接続することで、先ほど説明した考慮事項の多くをクリアすることができます。」と述べ、詳細について説明する。

(1)(2)についていえば、今日のクラウドサービスはほとんどがスマホ利用に対応しており、対応アプリケーションがリリースされている。自宅で利用するPCが破損した、あるいは自宅にネットワークがない、そういった場合でも、自身のスマホでLTE接続すれば、業務を継続することができる。

「コロナウイルス感染症に際し、HPEでもこのハイブリットモデルを採用して対応しました。よかったのは、VPNの負荷を平時並みに抑えられたことです。今日の業務は、クラウドサービスで行えるものが大半です。実際、当社では、業務全体のおよそ8割をクラウドサービスで行っています。全社員がテレワークを実施しましたが、VPNを介して行われる業務は全体の2割程度に過ぎません。これにより、大規模なシステム整備を行うことなく、テレワークに対応することができました。守るべき情報があるシステムにはVPNを介してアクセスする形式をとったため、セキュリティも堅持されています。」(小川 氏)

  • 新型コロナウイルス感染症に際しての、HPEのテレワーク実例。

テレワークの定着に有効な、HPEのソリューションポートフォリオ

先述した実例も、課題がないわけではない。データセンターにあるシステム、高い機密性が求められるシステムというのは、ゼロにはならない。(1)(2)のような事態に際して、VPNクライアントでないと作業できない業務はどうしても残ってしまう。

「重要なのは、今あるITインフラに何が必要なのかを見定めて、テレワークの定着に向けて整えていくことです。HPEでは、お客様のフェーズごとで、有効なソリューションを用意しています。」こう小川 氏が語るように、同社はアフターコロナに向けたソリューションをポートフォリオとして用意。講演の中では、主に「社内へのアクセス確保」と「リモートデスクトップ環境の確保」の2つのフェーズにおける、同社のソリューションが紹介された。

  • アフターコロナに向けた、HPEのソリューションポートフォリオ。

「社内へのアクセス確保」でHPEが提供するのは、リモート拠点から社内環境へのアクセスを可能にするAruba RAP、クラウドサービスと連携してVPNの負荷を軽減するAzure File SyncとHPE ProLiant MicroServer Gen10 Plusだ。

Aruba RAPは、社内の無線LAN環境をリモート拠点に拡張することができるアクセスポイント(AP)。ネットワーク環境がなくても、APを設置するだけで社内の無線LAN環境をそのまま自宅に持ち込むことができる。セキュリティポリシーを集中管理できるため、セキュアなアクセスが実現可能だ。

もう1つのソリューションは、小川 氏が述べた「ハイブリッドモデル」を体現したものといえる。具体的には、まず社内のファイルサーバーをHPE ProLiant MicroServer Gen10 Plusで構築し、Azure File Syncと連携してインターネットからファイルサーバーにある情報へアクセス可能にする。これにより、VPN回線を枯渇することなく、必要なドキュメントへのアクセスを確保するというものだ。秘匿性の高いドキュメントは連携対象から外すことで、セキュリティも確保できる。

  • Aruba RAP(左)とAzure File Sync、HPE MicroServer Gen10 Plus(右)の詳細。
    ※画像クリックで拡大

仮想デスクトップのあらゆる方式に対応したソリューションを提供

続く「リモートデスクトップ環境の確保」について、HPEは、リモートデスクトップの主要方式すべてについて、それぞれに応じたソリューションを用意している。

リモートデスクトップの主要方式
・SBC:簡易的な方式(限定されたアプリケーションのみをリモートアクセス)
・VDI:本格的な方式(従来のPC業務すべてをリモートアクセスに切り替え)
・HDI、eVDI:ワークステーション利用者などプロフェッショナル業務向けのVDI

  • リモートデスクトップを実現するための方式一覧と、その概要。

1つ目のSBCは、Windows Server 2019が標準で備えるWindows Server Remote Desktop Serviceを利用することで構築が可能。HPEは、先に紹介したHPE ProLiant MicroServer Gen10 Plusをはじめとし、各種サーバーについて、製品を納入するだけでなくSBC環境の構築まで支援する。

2つ目のVDIだが、HPEは3 Tier(サーバー、ストレージ、ネットワーク)でインフラを整えるのではなく、HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー)による環境構築を推奨。小川 氏は「当社は、自社製のHPE SimpliVityから、ヴイエムウェアのvSANやマイクロソフトのAzure Stack HCI、ニュータニックスなど、各社のHCIソフトウェアに対応した幅広いラインナップをご用意しています。利用したVDIソフトウェアやHCIソフトウェアから適切な製品を選ぶことができるのは、HPEの大きな強みです。」とし、同社のHCIをアピール。HCIの価格が気になる場合も、第2世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサーからサポートされたインテル® Optane™ パーシステント・メモリーを搭載したHCIにより、ユーザーにストレスを与えない高性能な環境が廉価に構築可能だと述べる。

「インテル® Optane™ パーシステント・メモリーは、手ごろな価格の大容量とデータの永続性への対応とを独自に組み合わせた革新的なメモリー・テクノロジーです。リモートデスクトップの性能を引き上げたい場合、一般的には、数多くのDRAMを差し込む形になります。必然的に巨額のコストがかかってしまうわけですが、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーを利用すれば、DRAMの容量を抑えつつ、手頃な価格でメモリー容量を拡張しパーシステント・データへの低レイテンシーなアクセスを可能にします。また、一般的なメモリーよりも大幅に安価なところも注目ポイントです。VDIではサーバーに大量のメモリーを搭載しますが、ここでインテル® Optane™ パーシステント・メモリーを利用すると大きなコストダウンを期待できます。」(小川 氏)

  • SBC(左)とVDI(中)におけるHPEのソリューション詳細。HDIやeVDIについても、同社は高性能なリモートデスクトップ環境を構築するソリューションを揃えている。(右)
    ※画像クリックで拡大

  • 各種SDSに対応したHCIをラインナップする点も、HPEの大きな強みだ。

  • インテル® Optane™ パーシステント・メモリー。

*  *  *

社内社外を問うことなく、社員の生産性を100%に近づけていく――このことは、今日のIT担当者に求められる重要な役割の1つだ。「課題軸から当社ソリューションを幾つか紹介しましたが、課題というのは企業様によって様々かと思います。当社ではFAQ形式でテレワークのシステムに関わるお悩みを解決する『HPE テレワーク応援ソリューションサイト』を用意しています。自社の生産性を高める上で、ぜひこちらのサイトも参照ください。」小川 氏はこう語り、講演を締めくくった。

関連リンク: HPE テレワーク応援ソリューションサイト

[PR]提供:日本ヒューレット・パッカード