奈良市では文部科学省 GIGAスクール構想の「1 人 1 台端末」「児童生徒の自宅学習環境整備」の実現に向け、県とも強く連携した各種 ICT ツールや端末の共同調達などにより 2023 年度内の配備計画を進めていました。
そのさ中、COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大が発生。前倒しで 2020 年度中の配備完了を目指す緊急対応を迫られることとなり、新たな着想のセキュリティサービスとして Cisco Umbrella を採用しました。
GIGAスクール構想実現への安全の備えとして、
確かな手ごたえを感じています。
―奈良市教育委員会事務局
教育部 学校教育課 情報教育係 係長
谷 正友 氏」
課題
全国一斉の小中学校の休業という緊急事態を受け、国から GIGA スクール構想に向けた整備を一気に前倒しする方針転換が示されました。奈良市教育委員会事務局 教育部 学校教育課 課長 伊東幹子氏は、「4 年かけてやる予定を 1 年で前倒しというのは異例かつ不安だらけでしたが、子どもたちの学びの機会を奪うわけにはいきません。できることはすべてやろうという思いで、費用面を含め市や関係各所と協議を重ね、総力を挙げて取り組みました。」と語ります。
学校教育課 情報教育係 係長の谷正友氏は、この間の経緯と課題を次のように話します。「3 月は突然の休校で、卒業式や年度末をどう迎えるかの対応に追われました。状況が刻々と変化し、4 月の休業も余儀なくされる見通しとなった 3 月中旬に検討を本格化しますが、時間の猶予がありません。奈良市では 4 月 6 日に登校日を設けており、この日に受け渡しが可能で利用開始できるサービスを探しました。
まずはオンラインを活用した学習支援が可能となるビデオ会議サービスを導入。並行して家庭の端末と通信環境のアンケート調査を実施。公教育として不公平を少しでも是正する配慮として市内 64 校に 40 台ずつ整備していたタブレット PC を貸し出し機として使えるようメンテナンスを施し、1,600 台のモバイル Wi-Fi ルータも確保しました。次に課題となったのが、従来は学校ネットワーク側で担保していたセキュリティです。自宅からのインターネットアクセスにおけるセキュリティ対策も教育行政の使命であると捉えて、どんな支援ができるかを模索しました。」
GIGA スクール構想向けサービスの中で Cisco Umbrella を見つけ、シスコや構築パートナーに話を聞く中で谷氏は「これなら学校ネットワークに加え、家で、あるいは公衆 Wi-Fi でも安全にインターネットに接続できる。」との確証を得たと話します。
「有害サイトにアクセスさせないフィルタリング機能もDNSレイヤで実行でき、さらにクラウドサービスの強みで立ち上げも早く、機器の整備も不要。今すぐ利用でき、将来の GIGA スクール構想実現を見据えても、我々の求めている要件をすべて満たしているサービスは Cisco Umbrella だけでした。」
Cisco Umbrella が最適でした
ソリューション
シンプルに安全性を高める DNS レイヤのセキュリティを選定
谷氏はDNS レイヤによるセキュリティの効果を、次のように話します。
「従来型のフィルタリングソフトは手厚く細かく設定できる半面、URL リスト運用の負荷が高く、いたちごっこが続いていました。Cisco Umbrella は従来のフィルタリングソフトのように子どもに見せたくない有害サイトへのアクセスに対するポリシー制限を、面倒なメンテナンス作業不要でもっと手軽に、高精度で実施できます。さらに、マルウェアサイトやフィッシングサイトなど、これまで校内ファイアウォールで実施していたセキュリティ対策も実施可能。家庭に貸与する PC がマルウェアに感染するリスクも最小限に抑えられることが、従来との大きな違いです。」
学校教育課 課長補佐の松井恵子氏は、Cisco Umbrella のコスト効果について、次のように評価します。
「事前に想定しやすい教職員の人数に紐づき、すべての児童生徒分は無償という教育機関向けライセンスプログラムの料金体系も大きな魅力でした。加えて、従来型製品のサーバなどの機材調達、ソフトウェアのインストールや保守費用も削減できるメリットは、非常に大きいです。」
1人1台端末環境でも通信パフォーマンスを劣化させず学校内での本番運用も安心
1 人 1 台端末となった際にセキュリティが通信のボトルネックになる懸念も解消された、と谷氏は語ります。
「授業で全員が一斉に端末を利用する際、従来型のセンター集約型や Proxy サーバでは、過負荷による通信速度の劣化を懸念していました。Cisco Umbrella の仕組みであれば通信パフォーマンス劣化の心配もなく、GIGA スクール本番への備えとしても安心です。将来的には各学校から直接インターネットへ接続するローカルブレイクアウトも、機器を増やさず実現できる期待があります。」
結果と今後
その後、段階を経て 5 月末まで休業となる中、奈良市では中学生を皮切りに小学 4 年生までを対象とした必要な家庭への機器の貸し出しを実施。 5 月には教育向けクラウド プラットフォームの導入と、全校でのオンラインを活用した学習支援を試行しました。そのセキュリティは、Cisco Umbrella により保たれています。ポリシー適用なども標準の学校向け設定でほぼ問題なく、導入の手間はほとんどかからず、利用開始後もトラブルもなく順調に推移しています。今後は年度内の 1 人 1 台端末配備に向け、引き続き対応していくとのこと。今回、在宅でのオンラインを活用した学習支援を試行したことは、来る GIGA スクールの本番に向けて確かな手応えとなりました。
また、今回の導入に際し、シスコのカスタマー エクスペリエンス チームが支援しており、「業務に追われる中でも施策がやりっ放しにならず、振り返りと今後の継続した活用に向けて新たな気付きを得られる、非常に有意義な機会」(谷氏)と好評です。
最後に谷氏は今、大きな転換期を迎える中でセキュリティに対しても従来型からの発想の転換が必要、とシスコへの期待を次のように話します。
「YouTube など危ないものはすべて利用禁止、という発想はもう時代に合わなくなっていると感じています。明らかに危険なセグメントはシンプルかつ適切に排除した上で、現場の教師によるICTの使い方の指導も行い、子ども達の新たな着想を育てるのが、これからの教育機関に求められることではないかと思います。シスコにはこれからも、教育における ICT 利活用のソリューション提供に期待しています。」
奈良市教育委員会とは
所在地:奈良市二条大路南一丁目1-1
学校数:奈良市立小学校(43校)、中学校(21校)、高等学校(1校)
URL:https://www.city.nara.lg.jp/site/kyouiku/
奈良市では教育憲章「教育のまち-奈良」に基づき、学校が家庭や地域と連携し、世界遺産のあるまち「奈良」の特色を生かした教育を行ってきました。
また、近年はICTの活用も積極的に行い、5 月の臨時休業中には学校や市教育委員会と家庭とを結ぶオンラインを活用した学習支援も行い、在宅の中での学習の保障にも努めてきました。
こうしたICTを活用した学びの姿は新型コロナウイルスの第二波、第三波に備えるためだけのものではなく、Afterコロナと呼ばれるこれからの新しい生活様式の中で、子どもたち一人一人の主体的な学びを支えるための教育の形として推進していきたいと考えています。
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