新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界のあらゆる企業に対してビジネスの変革を強制した。テレワーク環境の整備、Web上の商談、AIによる自動化、工場の遠隔操業、デリバリーサービスへの転換……激変していくポストコロナの市場で生き残るためには、過去の働き方に戻るのではなく、こうした変化をチャンスとして捉えなければならない。
2020年6月10日にWeb開催された「マイナビニュースフォーラム 働き方改革 Day 2020 Jun.」では、変化する社会で躍進していくための、さまざまなウェビナーが開催された。そのうち、延べ362名が視聴した、富士通のシニアエバンジェリスト 松本国一氏による講演のエッセンスをお届けする。
プライベートではデジタル化が進んでいる。一方、ビジネスでは?
改めて、なぜ働き方改革が必要なのだろうか? もちろん、コロナ禍の中では、直接対面しないビジネススタイルへの変更は急務だった。しかし、もう少し長期的な視野に立つと、デジタルトランスフォーメーションの必要性はさらに切実なものとなる。
日本の生産人口は急激に減り始めており、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2030年には現在の8%減、2060年には26%減となる。わずか10年後には、1割少ない人数で仕事を回していかなければならないのだ。介護離職者が増せば、現実はこの見通しよりもシビアとなる。
こうした状況を見据えながら「選択と集中によって、働き方を変えていかねばなりません」と松本氏は言う。
オフィス環境改革は、決して前代未聞のことではない。1995年、Windows95の登場によって、オフィス環境にパソコンが導入され、手書きの業務が置き換わっていった。問題は、25年経っても大きな変化がないことだ。
この時から日本はデジタル化が進んでいないのだろうか? 決してそうではないと、松本氏は強調する。
「家族とLINEでコミュニケーションをしたり、調べものを検索することは当たり前になりました。ポケベルはスマホに、年賀状はSNSに、レンタルビデオは動画配信サービスにと、プライベート環境ではデジタル化が進んでいるのです。しかし、オフィスでは相変わらず『検索せずに聞きにいく』『棚から過去の資料を探す』といったことをしていて、デジタル目線がありません」(松本氏)
プライベートがデジタル化によって便利になったのだから、業務もデジタル化によって効率化できることは、言うまでもない。
「世界はアフターデジタルへと突入しつつあります」と、松本氏は続ける。
「モバイル端末やセンサーが遍在し、すべてがオンラインになる世界を『アフターデジタル』と呼びます。日本はまだビフォーデジタルですが、身近にアフターデジタル先進国があります」(松本氏)
その先進国とは、中国だ。
V字回復を見せるデジタル先進国、中国
中国では人口の73%、7億人がデジタル決済を利用しており、モバイル端末利用者は8億人を超える。ネットワークに接続された監視カメラは2億台に達し、スマホや車載カメラの情報を集約することで、ひったくり事件を30分で解決するようなスマートシティもすでに存在している。
COVID-19による都市封鎖と外出禁止は、中国のデジタル化をさらに推し進めた。完全在宅勤務ができたホワイトカラーはオフィスワーカー4億人中2.5億人。学校の90%はオンライン教育を提供した。デリバリーを始めたレストランは5万軒以上。病院内には配達のためのロボットが動き回り、街を無人消毒車や無人販売車が走る。こうした車は、高速な5G通信網を介して、ドライバーが在宅で遠隔運転をしている。
もともと、ハンコ決裁の習慣がなく、ビジネスチャットで仕事を進める文化があった中国は、こうした「オンライン社会実験」によって、デジタルトランスフォーメーションを急加速させているのだ。営業提案はチャット。カーディーラーが動画配信で実車を売る。小売業はアプリを使って余剰人員をシェアする。ECの売上げは昨年対比4倍になった。
経済活動の指標となる、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、5月時点でV字回復を見せている。
「中国からワンテンポ遅れて、日本でも1ヶ月間の緊急事態宣言と自粛がおこなわれました。この経験を通じて、日本でもまた、アナログな業務手法からデジタルへの移行が可能となったはずです」(松本氏)
業務に応じたテレワークツールを使いこなすことが重要
物理的に集合せずとも、自宅やサテライトオフィス、あるいは移動中に仕事をするテレワークは、デジタルを駆使した働き方の代表例だ。松本氏は、効率を落とさずにテレワークをするための秘訣を次のように説明する。
「生産性の高いテレワークをするには、何よりもまず『仕事の仕分け』が必要です。大別すると、会議や会話、承認などの『関係者ワーク』と、資料作成や情報収集、設計開発作業といった『個人ワーク』があります。それぞれの仕事の特性を理解して、ふさわしいツールを使っていきましょう」(松本氏)
関係者ワークのうち、報告や情報共有ならば、会議をせずともSNSやファイル共有を使うことで効率化できる。逆に、ディスカッションやワークショップなどをWebで実施する場合は、カメラを使って表情や身振り手振りを伝えたほうが盛り上がる。
個人ワークの場合、自宅のリビングや外出先のカフェを、いかに「仕事場」にできるかが重要だ。富士通はテレワークソリューション向けのノートPCを提供しており、松本氏はLIFEBOOK U9310Xを使っていると言う。
「薄くて軽いので持ち運びやすく、さらにペンが付属しているので、デジタルホワイトボードでWeb会議中の情報共有がしやすくなっています。ちなみに、富士通ではデジタルオフィスプラットフォームとして"Microsoft Teams"を、資料共有には"Box"を利用しています」(松本氏)
松本氏自身は、コロナ禍以前から月に半日ほどしかオフィスにいなかったという。デスクに「テレワークor講演中です。急ぎの依頼はメッセンジャーで」と立て札を置いている。 松本氏は、仕事の7割をスマートフォンで済ませている。情報共有・相談・雑談はTeams、通話や会議はSkype、講演資料の修正はPowerPoint、スケジュール調整やメールの確認はOutlook。すべてスマホアプリで可能だ。パソコンを使うのは、基幹システム関連の作業やプレゼン資料の作成など、どうしても必要な場合だけでいい。
予測できない時代に対応していくために、必要な視点
緊急事態宣言は解除されたものの、今後はどうなっていくのか、予断を許さない状況だ。再び外出自粛となる可能性もある。予測できない時代に対応していくためには、「働き方への意識」を根本的に変える必要があると、松本氏は主張する。
「これまでは、客先への訪問は営業にとって当たり前でした。しかし、これからはお客様が自宅にいるかもしれません。そこまで押しかけるわけにはいかないでしょう。古い働き方の常識に囚われることなく、デジタルを活用した新しい視点を持つことが重要なのです」(松本氏)
新型コロナウイルス感染症に対して、柔軟に変化することでチャンスを掴んだ企業がある。デジタルで働き方を変えていけるかどうか。今まさに、ポストコロナ時代への岐路に立たされているのだ。
FUJITSU Notebook LIFEBOOK U9310/X
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