新型コロナウイルスという脅威は、日本のみならず世界が直面している大きな危機だ。国内各社が「新しい生活様式」への対応が迫られているように、世界中の組織が、場所を問うことなく滞りも生じさせない新しい業務の在り方へと変化することが求められている。ここで重要となるのは、「つなぐ技術」である。
著者自身、2020年5月現在自宅でこれを書き、社内にあるCMSへリモートアクセスして本記事を公開しているが、安全かつ生産性を阻害しない形でアプリケーションへアクセスできなければこうした作業は進められないとつくづく感じる。そんな「つなぐ技術」の最新動向を知るべく、今回、世界的なネットワーク企業ジュニパーネットワークスが5月14日に世界で同日開催したバーチャルサミット「Juniper Virtual Summit – Where AI Gets Real(AIでリアルがわかる)」を聴講した。本稿ではそのレポートをお届けしたい。
世界をつなぎ続けるための新たな変革「AIドリブンネットワーク」
「Juniper Virtual Summit – Where AI Gets Real(AIでリアルがわかる)」でまず注目すべきは、同社CEOのラミ・ラヒム氏、Senior VPのスジャイ・ハジェラ氏によるキーノートだ。内容を簡単にレポートしよう。
ラミ・ラヒム氏のキーノートでは、「AIドリブンネットワークを導入して次の 10 年に備える」と題し、同社が提唱する「AIドリブンネットワーク」の概要とそのビジョンが語られた。
ラヒム氏は冒頭、「世界をつなぎ続けることはかつてないほどに重要性を増しています」と述べ、これを達し続けるためには変革の力を加速させねばならないと言及。では、ネットワークの世界では今、どんな変革が進められているのか。キーノートのタイトルにある「AIドリブンネットワーク」がその解になるわけだが、これを理解するには "今まで遂げられてきたネットワークの変革" を知る必要があると同氏は語り、順を追って説明する。
管理と転送、制御、システム管理。この3つで構成されたベーシックなネットワーク アーキテクチャは、SDN(Software-Defined Networking) の登場によって、大きな変革を迎えた。SDNの考え方は「制御」と「管理」を分離し、ハードウェアの外へこの機能を置くこと。効率性や耐障害性に優れたネットワークが約束される点で、SDNは大きな反響を呼んだ。そして次に大きな波となったのが、企業ネットワークのクラウド化とこれを実現するためのSD-WAN(Software-Defined WAN)である。
ラヒム氏は「『制御』と『管理』を分けたのなら、それをさらに進めるとどうなるでしょう?クラウドが登場してこれらの層がオンプレミスからクラウドデータセンターへと移行します。それが望まれる理由は、シンプルに導入できるからです。オンプレミスへの(システムの)導入は不要になりますし、オペレーションはよりシンプルになります。これは結果としてイノベーションを加速させ、セキュリティと品質全般も向上するわけです。」と述べる。そしてこの変革が、「AIドリブンネットワーク」という同業他社と比べて優れたサービスを生み出す力となったのだと語った。
ラヒム氏はここで、1つのある疑問を投げかける。ネットワークの仮想化やクラウド化を進めてきたジュニパーネットワークスが、なぜ今「AI」なのか? その答えは明確だ。ジュニパーネットワークスがAIに取り組むことで、人間が介在することなくアクセシビリティやセキュリティが担保される「Self-Driving Network : 自律型のネットワーク」が実現されるからである。
「当社のAIプラットフォームの基礎作りは数年前からはじまりました。膨大にあるテレメトリデータにAIを適用して学習させ、自律型の有効な運用機能を製品へ実装してきました。一例がJuniper ATPです。ここでは、ファイアウォールの内外問わず、ネットワークを構成するすべてのエレメントにおいて、インフラとユーザーのセキュリティを保護します。さらに、我々は2019年、クラウド管理型ネットワークソリューションやAIドリブン仮想ネットワークアシスタントを提供するMist Systemsと提携をしました。これにより、セキュリティとアクセシビリティを自律化した『セルフドライビングネットワーク(Self-Driving Network)』が実現可能となりました。」(ラヒム 氏)
ジュニパーネットワークスは無線LAN、有線LAN、ルータ、WAN、データセンター(クラウド)と、あらゆるレイヤーのネットワークソリューションをポートフォリオに用意している。ラヒム氏は、このポートフォリオ全体にMist SystemsのクラウドプラットフォームとAI技術を適用すれば、エッジデバイスからデータセンター・クラウド上のサービスまでを包括した、エンドツーエンドの「セルフドライビングネットワーク」が実装できると強調する。これは、冒頭で同氏が述べた「世界をつなぎ続ける」ための大きな変革といえるだろう。
「AIドリブンネットワーク」と「セルフドライビングネットワーク」は何をもたらすのか
「AIドリブンネットワーク」およびそれによって実現される「セルフドライビングネットワーク」によって、組織はどのような恩恵を得ることができるのか。ハジェラ氏のキーノート「AI を導入する:今後のビジネスに対応するネットワークを今すぐ構築する」から、具体的にみていこう。
ハジェラ氏は、Mist SystemsのクラウドプラットフォームであるMistとAIドリブン仮想ネットワークアシスタントのMarvisについて、提携から1年の間で、有線スイッチ、ルータ、WAN、データセンターソリューションへとこれを適用してきたと言及。そうして開発した "エンドツーエンドでアクセシビリティやセキュリティを可視化し自律的に運用する仕組み" について、現在、全世界に3,000以上の拠点を展開するエンタープライズ企業で実証実験を行っていると述べた。
「この実証実験では、『AIドリブンネットワーク』および『セルフドライビングネットワーク』の重要性を示すいくつもの成果が得られています。一例を挙げましょう。実証実験の中である日、Marvisから、正常に接続しているネットワークの数が減少しているアラートが発せられました。Marvisで問題の原因を切り分けることで、その問題がルータにあること、前日の夜に実施したサービス側のアップグレードが原因で.1xペイロードを正常に処理できなくなっていたことがすぐにわかりました。デバイスからサービスにいたるネットワーク全体のデータをAIによって解析したからこそ、早期かつ容易に問題を特定し解消することができたのです。スイッチもAPも稼働しルータにも問題はない、けれどもエンドユーザーがアクセスできない、そんな問題は発生しなくなります。」(ハジェラ 氏)
ハジェラ氏によれば、「AIドリブンネットワーク」を適用することで、従来発生していたトラブルの75%を人間が介在することなく改善させた実績もあるという。さらに、キーノートの中では、全米の大学の中で13番目に長い歴史をもつ米ダートマス大学における活用例についてもムービーで紹介。そこでは、Marvisによってトラブルの発生件数が10分の1にまで削減されたこと、これにより解決までのプロセスが一変したことが述べられた。
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キーノートの内容を簡単にレポートしてきたが、いかがだっただろう。私たちがこれまで以上に安全に、ストレスなくアプリケーションを利用できる。そこへアクセスできる。そんな期待を抱いていただけたと思う。
同バーチャルサミットは5月14日に開催されたものだが、ジュニパーネットワークスはこのあと4週間ほどオンデマンドで同じセッションを配信する。セッションは本稿でレポートしたキーノートに加え、顧客事例や技術者によるデモなど、トータルで30セッションを超える。そのうち、AIを活用したユーザー体感の改善、SD-WAN、セキュリティ、データセンター管理といった国内の企業も関心の高いセッションについては、日本語で視聴が可能だ。具体的には、日本人エンジニアによる6つのセッションが日本語で提供されている。また、「Featured Demos」については日本語字幕がついている。
Featured Demos (日本語字幕)
・Boost User Experiences with the Mist AI-Driven Campus
・Get Real and Get Started with Juniper SD-WAN
・Operational Simplicity for Data Center Fabric
・SecIntel Powers a Threat-Aware Network
・Learn to Automate NetOps in NRE Labs
and more
日本人エンジニアによる日本語セッション
・AIドリブン、クラウド対応、そして俊敏性
・テレワーカー向けソリューション
・現在および未来のネットワークを保護
・セキュリティにメタデータを活用しよう
・暗号化されたトラフィックの分析
・SD-WANとセキュリティどちらが先ですか?
世界同日開催でこれだけのコンテンツが日本語に対応しているのは、日本人にとってはありがたい。ぜひ視聴してみてほしい。
さらに、ジュニパーネットワークスでは6月11日よりクラウド&サービスプロバイダに向けたJuniper Virtual Summitも開催を予定している。関係各社は、こちらにも注目いただきたい。
[PR]提供:ジュニパーネットワークス