2020年4月15日、デル株式会社は中堅企業向けにインターネットのWeb会議システムを使ってバーチャルオープンオフィスイベントを開催した。これは、オフラインでも開催されたリアルなセミナーをインターネットに移して実施されたものだ。デルはこれまで情報を得られる機会が少なかった企業も含め、中堅企業に対して平等にタイムリーな情報を届けるためにオンラインでのセミナーを企画している。かつ昨今の事情から情報へのアクセスが更に困難になることも加味して、バーチャルなイベントとして実施された。

内容はデルが2017年より行っているIT投資動向調査の結果を解説するセッションとリモートワークの実践をデル自身の経験から紹介するセッション、デルのインサイドセールスチームが自社で開発し利用している音声マイニングシステムの概要を解説したものだ。同時にデルのパートナーであるヴイエムウェア株式会社から最新のvSphereの技術解説も行われた。

中堅企業IT投資動向調査2020のポイント

最初のセッションはデルが行ったIT投資動向調査に関するもので、2019年末から2020年初頭に1300社の中堅企業(従業員数100名以上1000名未満)に対して行われたアンケート調査の結果を解説したものだ。アンケートの設問は、ビジネス動向やIT担当者数、年間IT投資額、データ保護、セキュリティ、デジタルトランスフォーメーションの実情など多岐にわたるもので、日本の経済を支える中堅企業のITに関する実情が浮き彫りにされた。特に大企業と比べてIT担当者の数が少ないという現状については、約37%が1人で社内のIT管理を担当する「ひとり情シス」であるという厳しい現状が明らかになった。

またデルが作成した「ひとり情シスレシオ|適正チェック」というツールを紹介し、自社のIT人材数、IT投資額、セキュリティ投資額、BCP投資額などを入力することで今回の調査結果と比較してITの投資が平均以上なのかどうかを評価することが可能であると解説した。これは自社のIT投資がほかの中堅企業と比較してバランスが取れているのかを客観的にみることを可能にするツールであるという。実際に他社と比較した評価結果を知りたいという企業は、デルにお問い合わせいただければ、無償で提供を受けられる。

  • 適正予算チェック例

また働き方改革の調査項目では、ペーパーレス化、テレワークの導入などが大きく上昇したことを紹介。ここではITの設備投資によって仕事の進め方が大きく変わることを実証するかたちになった。

  • 働き方改革・進捗実態

IT基盤の構築・保守運用に関しては、クラウドサービスの利用が着実に拡がっていることとも重なるが、6割が外部のサービスに委託されていることが紹介され、外部サービスの利用のなかで保守やヘルプデスクサービスなどについても自社社員以外での提供のニーズが強いことが明らかになった。

デジタルトランスフォーメーション(DX)については、推進したいという意向は強いものの、デジタル化に関連する「学びと共有の場」の不足が障壁となっていることから、「基礎的な技術要素を学ぶ勉強会」「情報共有のためのコミュニティー参画」などを実現できる場として、中堅企業DX分科会、オープンオフィス、バーチャル オープンオフィス(オンラインコンテンツ)を開催している。

デルが実践するリモートワークの7ステップ

次のセッションでは、デルの広域営業統括本部が実践しているリモートワークに関する経験を紹介するものとなった。いきなり「全社テレワーク」となったときにどうやって実践したのか? を解説する生々しい内容だ。オフィスでのPCや電話、プリンターの利用、会議室での集合ミーティングなどに慣れた社員がテレワークに移行するまでのステップを解説するもので、デバイス、通信、コミュニケーション、セキュリティの4つのカテゴリーにおける7つのチェック項目を詳細に解説した。

  • 検討7ステップ

デバイスのカテゴリーではPCやWi-Fiの利用について、最新のOSにアップグレードすること、ネットワークの暗号化に留意すること、VPNの設定など社員自身と部門で行うべきことが詳細に解説された。最新のインテル® Core™ vPro® プロセッサー・ファミリーが搭載されたノートPCを導入することでOSは必然的にWindows 10を選択することになり、ランサムウェアへの対応も進む。ひいてはこれらがモバイル化を促す要因となる。

また、ビジネスユース向けに開発された様々な先進テクノロジーが採用されたIntel vPro® プラットフォームは、PCのログインをハードウエアベースで多要素化できたり、バッテリーの消費が抑えられていたりとテレワークに利用するのにうってつけの機能を有する。

またWeb会議の利用ではZoomやチャットツールの利用などについても言及し、WebExと比べるとZoomは遅延が少ないなどという実際に利用した人ならではの経験則なども紹介された。またよりセキュアなシステム環境としてリモートデスクトップやシンクライアントの利用などについても解説を行った。

  • Web会議

そしてIT投資動向調査でも明らかになった「ひとり情シス」環境におけるテレワークの盲点としてヘルプデスクへの需要が急増することを指摘。通常のオフィス環境であれば、分からないことがあっても身近な同僚に聞いていたということもあるだろう。しかし、テレワークでは「身近な同僚に聞く」ことができず、結果としてヘルプデスクへの問い合わせが増えるという。問い合わせとしてはMicrosoft OfficeやWindowsに関する内容が半数以上を占めるとして、ネットワークやハードウェア以上にニーズが高いことが明らかになった。またOSや環境を刷新した後の1週間に通常時の約7倍の問い合わせが殺到することを紹介。ここでは環境を変えた直後にIT部門の支援が急増することに備えることを強調した。

  • ヘルプデスクが増大

ここでデルとして急増するヘルプデスク業務に対するソリューションとして紹介されたのが、「PCマルチベンダーサポートプログラム」だ。これはハードウェアベンダーとして自社製PC以外の他社PCも含めてヘルプデスクの一次対応を行うもので、Microsoft OfficeやWindowsなどの設定についての問い合わせをデルが代行するサービスとなる。

  • ヘルプデスクが増大する課題への具体的な対応

またIT投資を支援する政府の取り組みとして中小企業生産性革命推進事業の補助金特別枠についても紹介し、これまで対象となっていなかったPCやタブレットなどのハードウェアに対するレンタル費用についても補助の対象となることが解説された。これはテレワークを推進する上で快適に業務を実行するための追い風となるだろう。また講師が実際に宮崎からこのセッションを行っていることも紹介され、実際にテレワークによるプレゼンテーションが可能であることを実証したことにも注目したい。

  • 中小企業生産性革命推進事業特別枠

音声マイニングを使ったデジタルトランスフォーメーションの実践

最後のセッションでは、デルのテレセールスチームが利用している電話でのコミュニケーションでどのような会話をしているのか? それが営業成績にどう影響しているのか? を分析するツールを紹介した。

  • 音声マイニングとは?

これは、デル自身がデジタルトランスフォーメーションの実践として機械学習を使って音声からテキスト抽出、使われた単語と営業成績との相関を分析し、今後の営業活動に活かそうという事例だ。デルが何故音声マイニングに取り組むのか? という部分では「科学的な営業の推進」を目標に挙げ、営業トークと成績の相関分析、トラブルの水際対策、中途採用の加速などをポイントとして説明した。

  • 音声マイニングの実務活用に向けたプロセス

具体的なソフトウェアの選定や処理フローの説明では試行錯誤したプロセスも解説され、デル自身が実際にさまざまなツールを試して苦労した裏話なども交えて、2018年から2019年に掛けて行われた開発と試行プロセスを解説した。特に事前に設定された営業トークと成績の分析では成績の良いセールストークにはお客様に寄り添う「親しみ」がキーポイントであること、製品などに関する提案や情報提供についてはあまり営業成績とは相関が低かったことなどを解説した。

  • 音声マイニングから得られた実務への示唆

まとめとしてオープンソースソフトウェアや外部サービスを積極的に使うこと、事業部門と情報システム部門が共通認識を持って推進すること、アジャイル的なアプローチで試行錯誤を躊躇わないこと、などをあげてデル自身のデジタルトランスフォーメーションの取り組みを、実践を通して解説した内容となった。

  • 音声マイニングの実務活用のサマリ

加えて、中堅企業支援のための勉強会、奈良先端大学と協同で行うエンジニア養成講座やアクセラレーションプログラムなども紹介され、人材養成に悩む中堅企業を側面からサポートするデルの姿勢を強調した。デルが実施する中堅企業分科会では、今回の音声マイニングの事例のようなデルの社内取り組みを参加者に紹介しているという。

  • 中堅企業DXアクセラレーションプログラム

そのほか、ヴイエムウェア株式会社からは仮想化基盤のデファクトスタンダードであるvSphereの最新バージョン、vSphere 7について詳細な解説も行われ、ヴイエムウェアが考えるアプリケーションのコンテナ化についての動向を解説した。

今回はインターネットを活用したWeb会議システムを使って、デルが実践する中堅企業を支援するさまざまな取り組みをテレワークや音声マイニングなどを例に解説するセミナーとなった。デルとしては中堅企業へのIT支援に対し製品やサービスなどの情報を届けるだけではなく、デジタルトランスフォーメーションに取り組むための勉強会や教育機関やパートナー企業と協同で行うメンターシッププログラムの提供など多角的な施策を実施する予定であるという。「ひとり情シス」で悩みを抱える担当者をあらゆる側面から支援するために、デル自身がデジタルトランスフォーメーションを推進しているといえるだろう。今後のデルのアクションに注目して欲しい。

関連情報

デルが主催するバーチャルオープンオフィスでは、今回取り上げたLiveセッションのほか『中堅企業IT投資動向調査2020』で明らかとなった課題を解決するデルのソリューションを紹介するソリューションセッション、顕在化した課題にいち早く取り組んだ企業の取り組みを紹介するお客様事例セッションが、オンデマンドセッションとして常設されています。

ソリューションセッション

  • "安定期に突入" HCI:ハイパーコンバージドインフラストラクチャー vSAN のご紹介
  • クラウドとオンプレミスを上手に使うAzure Stack HCI
  • その災害対策、ほんとうに"合ってますか?"
  • SD-WAN by VeloCloudソリューションのご紹介
  • ■お客様事例セッション

  • VxRail導入事例のご紹介~コムテック株式会社
  • Azure Stack HCI Ready Nodeの導入~株式会社メディアフォース
  • ストレージ初心者が取り組んだUnity導入と今後の展望~株式会社サボハニ
  • ロココ 仮想デスクトップ X HCI事例ご紹介~株式会社ロココ
  • vSANを採用した基盤システムの構築~日本テレネット株式会社
  • 2ノードvSANによるサーバー統合と考慮事項~株式会社電業
  • 中堅企業バーチャルオープンオフィス【オンデマンドセッション】の詳細はこちら


    なお、中堅企業バーチャルオープンオフィスは、今後もコンテンツを増設しつつ開催される予定とのこと。最新情報は、デルのHPよりご確認ください。

    中堅企業バーチャルオープンオフィスの最新情報はこちら

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