ハードウェアベンダーとして全世界で高い実績を持つレノボが、ハイブリッドクラウドやVDI、BCP向けなどの無償ワークショップを無償提供しはじめた。クラウド移行が本格化し、予期せぬ災害や世界的な感染症が蔓延するなか、多くの企業がクラウド活用や事業継続の面で課題を抱えていることが背景にあるという。レノボならではの価値とは何か。レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 野上友和氏に話を聞いた。

テレワークやDXに欠かせないクラウド、しかし課題は山積み

クラウドを利用するための条件が大きく変化している。当初クラウドといえばハードウェア調達が不要になり、従量課金によってランニングコストを削減できることが主なメリットだった。その後、複数のクラウドベンダーから多種多様なクラウドサービスが提供され、コスト削減にとどまらないクラウドのさまざまなメリットを享受できるようになった。たとえば、新しいサービス開発のためにクラウドを活用して柔軟性やスピードを確保したり、レガシー システムをクラウドに移行してデジタル トランスフォーメーション(DX)の道筋をつけたりといったことが挙げられる。

VDIについてもすでに多くの機会で語られてきたものの、一部の大企業や金融系、エンジニアリングCADなど特定の業種や業務での導入は進んでいるが、広く普及しているとはいえない状況だ。このたびの世界的な感染症の広がりを受け、急遽導入を進める企業は非常に多い。

しかし、このように充実したクラウドサービスの利用にあたっては、新たな課題も生まれてきた。まずは複雑性の増加だ。従来の基盤をそのままクラウドへ「リフト&シフト」しただけでは、ほとんどコスト削減できないばかりか、さまざまなクラウドを併用することで複雑性が増し、運用コストがかさんだり、サービス開発が遅れたりすることが目立つようになったのだ。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 プロフェッショナルサービス本部 本部長兼プリンシパルコンサルタント 野上友和氏

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社
プロフェッショナルサービス本部
本部長兼プリンシパルコンサルタント
野上友和氏

既存環境との連携性の不足も課題になりやすい。顧客管理やキャンペーン管理など、業務の一部分だけを切り出してクラウドに移行する場合、既存の環境とは異なる新しい環境が加わることになる。両者を連携できないまま利用を続けると、既存の環境に残っていた課題はそのままに、クラウド側でも新たな課題が追加で発生し、せっかくのクラウドのメリットが活かせないのだ。

VDIについても、数年単位で計画的にPCを入れ替える企業が大半で、一気にVDIへ乗り換えることに躊躇する企業が多いのが現状だ。IT部門としては、既存のモバイルPCとVDIの両方を管理するための工数、たとえばパッチの適応やバックアップ、セキュリティ対策、固定資産の管理、ヘルプデスクの体制など、複数部門にわたる調整が不可欠となる。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 プロフェッショナルサービス本部 本部長兼プリンシパルコンサルタント 野上友和氏は「実際に多くのユーザーがクラウドに移行して複雑性や連携性といった課題に直面しています。特に近年は、テレワークに代表される働き方改革や、AIやIoTなどのデジタルトランスフォーメーションの取り組みにおいて『クラウドファースト』という理解が広がっています。しかしなかには『とにかくクラウドに移行しさえすればいい。クラウド=DX』という誤解も生まれていて、問題をより難しくしています」と話す。

技術論ではなくビジネス視点でのアプローチこそ重要

では、クラウドの課題を解消し、クラウド本来が持つメリットを引き出すためにはどうすればいいのか。そこでレノボが提案しているのが、クラウド技術をITシステムやテクノロジーといった技術的な側面だけで捉えるのではなく、経営課題の解決といったビジネスの視点から検討していくというアプローチだ。

「従来のITシステムの延長でクラウドを捉えてしまうと、システム導入のプロジェクトが終わったときに取り組みもそこで止まってしまう傾向があります。技術論ありきではなく、ビジネス起点で自社にとってのインフラとクラウドのあり方を検討していくことが重要です。VDIについても同様で、PCを置き換えて終わりではなく、本来のビジネス課題がどれだけ解決したのかを定量的、定性的に測定することまでが本来のゴールであるべきです。

具体的には『なぜクラウドを導入する必要があるのか』『クラウド技術をどう活用して、どうやって生産性を高めていきたいのか』『そのために必要となる自社に最も適したインフラ・クラウド活用は何なのか』などについて、経営、業務部門、システム部門が一体となって取り組んでいくことが重要です」(野上氏)

野上氏は、ソリューションアーキテクトやプロジェクトマネージャーの立場で15年以上顧客をサポートしてきた実績を持つ。また、IoT、マシンラーニングを含めたデータレイク基盤・データベース基盤の導入をビジネスコンサルティングの立場からリードしてきた経験もある。そんな野上氏から見て、クラウドプロジェクトを成功に導く重要なポイントのひとつは「経営陣の参画」だという。

「クラウドの利用もVDIの利用も、HCI技術によってオンプレミス側の導入や管理、クラウドとの連携は以前に比べてはるかに簡単になりました。業務部門やシステム部門の担当者の認識さえ共有できれば、明日からでもはじめることができます。ただ、その結果、さまざまなクラウドサービスが社内に乱立し、ビジネスの成果が見えにくくなりはじめています。また、既存のシステム環境との整合性がとれなくなり、セキュリティやガバナンスの問題も起こっています。経営陣や経営に近いマネージャー層がプロジェクトに参画することで、会社全体を見渡し、将来を見据えた取り組みが推進できるようになります。上層部から『クラウドファーストで検討しろ」と雑に命じられて、困った担当者から相談いただくケースが最も多いです。」(野上氏)

レノボが満を持して提供しはじめた「ハイブリッドクラウド/VDIワークショップ」

全社的なクラウドの取り組みを推進するうえでは、技術、業務、経営にまたがったさまざまな知見とノウハウを集結させていくことが必要だ。ただ、そのような全社プロジェクトの実施は多くの企業にとってあまり経験がなく、簡単ではない。現場の担当者が声を上げても周りがついてこない場合もあれば、経営トップが指示を出しても現場からの抵抗にあう場合もある。

そこでレノボが力を入れているのが、社内のコミュニケーションを活性化し、クラウドを全社的な取り組みとして推進していくための「ハイブリッドクラウド/VDIワークショップ」によるアプローチだ。

「クラウドやVDIによるリモートワークに課題を抱えているお客様の話をうかがっていると、活用に向けたきっかけをつかめないでいるケースが多いと感じています。導入したくても、既存の課題を整理できていなかったり、クラウドで何をしたいのかはっきり理解できていなかったりするのです。そこで本ワークショップでは、自社の状況を見つめ直し、クラウド活用をビジネスの視点から捉え直します。現状からあるべき姿を導き、それに向けてどのようなクラウド技術が必要かを整理していくのです」(野上氏)

  • レノボのハイブリッドクラウドワークショップで得られるもの

    レノボのハイブリッドクラウドワークショップで得られるもの

サーバやストレージなどのハードウェア提供というイメージが強いレノボが、こうしたハイブリッドクラウド向けのワークショップを実施していることを意外に思う方もいるかもしれない。しかし、レノボはグローバルな巨大クラウドプロバイダーへのハードウェア製品を多数提供してきた実績があり、そうしたクラウドプロバイダーのビジネスをインフラ面からサポートし続けてきた経験を持つ。また、世界のさまざまな業種の企業にハードウェアを提供し、ビジネスをサポートするなかで、豊富な業務知識やノウハウを蓄積している。

「ハードウェアの知識と、ユーザー企業のサポートをとおして蓄積してきたノウハウが、レノボの提供するハイブリッドクラウドワークショップの強みです。これまでも一部の企業向けに提供してきたのですが、今回お客様をよりサポートするために、パッケージ化して無償で提供することにしました」(野上氏)

レノボだからこそ提供できる3つの価値

レノボのハイブリッドクラウド/VDIワークショップは、参加する企業ごとに1日かけて行われる実践的なワークショップだ。参加者同士の役割や共通目的の確認からはじまり、現状のアーキテクチャのレビュー、ビジネス課題に対する現状認識、セキュリティとコンプライアンスの確認などを経て、克服すべき課題の整理、あるべき姿のマルチクラウドインフラ、あるべき姿を実現するための手法などを確認していく。

  • ハイブリッドクラウドワークショップ当日のアジェンダ例

    ハイブリッドクラウドワークショップ当日のアジェンダ例

一例として、ハイブリッドクラウドワークショップのポイントは大きく3点ある。

【ポイント1】 ハードウェアベンダーとしてのレノボの知見とノウハウおよびTruScaleサービスを提供

【ポイント2】 クラウドプロバイダーを問わないマルチ/ハイブリッドクラウド環境を構想

【ポイント3】 ビジネス視点でITインフラの選定から業務アプリケーションの改修、連携までを提供

まず、1つめのハードウェアベンダーとしての知見とノウハウには、当然のことながら技術も含まれる。大手クラウドプロバイダーが採用するような最新テクノロジーを日本国内のユーザー企業にも迅速に提供することができる。

またクラウド型の課金体系に準拠したレノボ製品の新しい利用方法である「TruScale」サービスを利用することで、オンプレミス基盤でも資産を持たないクラウド型の利用も可能となる。消費電力量に応じて課金する方式はレノボ社にしかない大きな魅力だ。

2つめのクラウドプロバイダーを問わないというのは、Amazon、Microsoft、Googleなどの主要なクラウドサービスを必要に応じて組み合わせることが可能であることを指している。特定のベンダーの製品を推すのではなく、さまざまなベンダーの製品を客観的な視点で選定し、提供していく。これは、多くのベンダーとパートナーシップを結ぶレノボだからこそできるメニューだ。

3つめのビジネス視点でのサービス提供とは、これまでユーザー企業に実施してきたビジネスコンサルティングの知見やノウハウを活用するという意味だ。メインフレームのマイグレーションから、SAPシステムやOracleアプリケーションのクラウド移行などを含め、10年先15年先を見据えたマルチクラウド戦略を練っていくという。

これらの3点は、既存のベンダーやコンサルティングファームでは提供できない、レノボだからこそ提供できる価値といえる。

そのうえで野上氏は「クラウド移行は簡単そうに見えてかなり難しくなっています。ワークショップをきっかけにして『そもそもクラウドで何をしたいのか』『本当に必要なクラウドは何か』を見極めてほしいと思います」とアドバイスする。

ワークショップの詳しい内容は下記のリンクを参照いただきたい。クラウドで成果を出せなかった経験のある方、これからクラウド移行を本格化させようという方にとって、大いに参考になるワークショップになるはずだ。

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レノボのクラウドワークショップの詳しい情報はこちら

  • レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 プロフェッショナルサービス本部 本部長兼プリンシパルコンサルタント 野上友和氏

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