「情報技術で、新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」を企業理念に、幅広いサービスをグローバルで展開するNTTデータグループ。連結売上高は2兆1636億円、連結従業員数は12万3884人(いずれも2019年3月末)にも及ぶ同グループは、国内はもちろん、世界でも有数のシステムインテグレーターだ。
創業以来30年にわたって増収を続けるNTTデータだが、近年のデータ活用に対するニーズの高まりや、目まぐるしく変化するビジネス環境などを背景に、NTTデータを支える社内システム向けプライベートクラウドである「社内システム共通基盤」のバックアップにある課題が生じたという。
国内最大規模のシステム基盤を有するNTTデータの課題に対し、同グループのNTTデータ先端技術はどのような課題を見出し、それをどう解決しようとしているのか。「社内システム共通基盤」の構築運用を支援するNTTデータ先端技術、バックアップソフトウェアベンダーのCommvault Systems JapanとNTTデータ 技術革新統括本部 ITマネジメント室による鼎談から、ビッグデータ時代のバックアップのあり方を探る。
鼎談参加者
大石 宙人 氏 : NTTデータ先端技術 プラットフォーム事業部 プロフェッショナルサービス担当 課長代理
相澤 喜信 氏 : NTTデータ先端技術 プラットフォーム事業部 テクノロジーサービス担当 課長代理
常松 浩樹 氏 : Commvault Systems Japan 営業部 シニアアカウントエグゼクティブ
水内 祥晃 氏 : NTTデータ 技術革新統括本部 ITマネジメント室 システム開発担当 部長
川戸 祐介 氏 : NTTデータ 技術革新統括本部 ITマネジメント室 システム開発担当 課長代理
2次バックアップに求められる要件が広がりをみせている
NTTデータITマネジメント室では、NTTデータグループが利用する130以上もの社内システムを稼働させる環境として、「社内システム共通基盤」を2009年に整備。独自に構築したプライベート環境でこれを運用している。この環境について、同グループは2016年、バックアップ環境を刷新。2次バックアップをテープからディスクによるものへ移行することで、ネットワーク回線越しに遠隔地でもデータを保存できるようにした(※参考:Commvault Case Study: NTTデータ グループ)。取り組みでは輸送にかかるコストの削減、バックアップ作業のための工数軽減を実現したが、3年を経て新たな課題が浮上したという。
──「社内システム共通基盤」におけるバックアップに課題が生じつつあったと伺っています。どのような課題だったのでしょうか。
まず挙げられるのはスケーラビリティです。「社内システム共通基盤」では日常的なバックアップ運用を行う1次バックアップと、長期保存や万が一の場合のデータ復元するための2次バックアップをとっています。1次バックアップは、システムによって多少の差異はあれ、おおよそが1か月ほどのデータ保存期間で統一されています。一方、2次バックアップは、法令対応などによって保存期間が延長されるなど、従来以上のスケーラビリティが必要になってきているのです。 |
長期バックアップで保存したログに求められるニーズが広がってきたことが理由としては大きいですね。例えば、昨今求められている働き方改革では、システムのログを分析すればファクトデータをもとにして社員の作業効率にメスを入れることもできると考えています。リスクマネジメントの視点でもログ情報には大きな意味があります。万が一インシデントが発生した場合、トレーサビリティを確保していなければ問題の原因を突き止められません。 |
ITマネジメント室は、ITシステムをただ運用するのでなくITシステムを通して事業を加速させることを命題としており、今は「バックオフィスの効率化」「イノベーティブな働き方の促進」「セキュリティやリスク・コントロール」が注力分野となります。このいずれにおいても2次バックアップにあるデータは重要で、長期保存し続けること自体に意義がある。また、国が特定文書データの保存を義務付けている法定保存期間には定期的に改定が入ります。そこでは保存期間が延長されることもあり、こうした面でも2次バックアップのスケーラビリティは重要なのです。 |
──復旧だけでなく、データを活用するという視点からもバックアップのあり方を見直す必要があったのですね。従来環境ではスケーラビリティ面でどんな課題があったのでしょうか。
2次バックアップのデータは失うことのできない「最後の砦」です。2016年の取り組みでは、バックアップ製品の持つ信頼性や機能性に注視し比較検討を行い、その結果Commvaultを選択しました。この製品自体は期待通り機能しているのですが、実は稼働環境でサーバとストレージの2 Tier構成をとっていたことが課題を生んでいました。 |
このプライベートクラウドはオンプレミスで構成されておりますが、メインとなる環境はHCIを導入して拡張要求への俊敏性を高められています。一方のバックアップシステムとしては、ストレージの拡張容量上限が要求より低い部分や、追加のハードウェアを調達してからもすぐに拡張ができるわけではなく、構築や試験の作業にも日数を要してしまうなど、課題となっているスケーラビリティへの追従性が低い状態にありました。 |
また、バックアップ環境の障害対応をすばやく行う仕組みにしたいという思いもありました。仮に不具合が発生した場合、2 Tier環境では原因がサーバなのかストレージなのかソフトウェアなのか、その切り分けや解析をしている間に時間が過ぎていってしまう。大石さんも言ったように2次バックアップは「最後の砦」ですから、停止する時間は最小にとどめたいのです。 |
バックアップアプライアンスのCommvault HyperScale™ Applianceを国内で初めて導入
バックアップ環境のスケーラビリティと可用性の引き上げを検討したNTTデータグループ。同グループは2 Tier構成をとっていた従来の2次バックアップ環境について、2019年、バックアップアプライアンス製品であるCommvault HyperScale™ Applianceへの移行を実施した。本番環境におけるCommvault HyperScale™ Appliance導入は、国内ではこれが初の事例だ。
──2016年の取り組みに続いてCommvault製品を選んだ理由を教えてください。
Commvaultはバックアップ/リカバリから、レプリケーション、アーカイブ、検索/分析まですべての機能を単一ソフトウェアで行うことができ、運用を簡素化・標準化できる点を非常に気に入っていました。 |
働き方が多様化し、ITを運用管理する人材は流動的になっていきますから、こうした簡素化・標準化できるという点は "安定して運用する" という視点で非常に重要となります。バックアップ環境を変更することで運用を変えることは避けたいという思いがあり、同じCommvault製品であるCommvault HyperScale™ Applianceを採用しました。 |
こうしたお声を頂けるのは非常にありがたいですね。川戸さんに仰っていただいた運用の簡素化で言うと、Commvault製品は、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドを含めて、サーバからクライアントPCまでデータがどこにあってもひとつの製品で完全に網羅でき、この点はお客様から多く評価頂けているポイントです。圧縮・重複排除の効果が高いことや、重複排除したまま遠隔地にデータをコピーするDASH Copy、仮想マシンを異なるクラウド環境間で変換する機能など、他にも特徴的な機能を備えています。 |
圧縮・重複排除の効果は本当に高いですよね。PoCでは、「社内システム共通基盤」のバックアップ元データに対しCommvault HyperScale™ Applianceで圧縮や重複排除などを行うことで約1/6~1/7になることが示されて、かなり驚きました。圧縮精度が高いほどストレージ容量を最大限に活用できるわけですから、重要なポイントだと思います。 |
予測の困難なデータの増大に対してスケールアウトで即時対応できる点も高く評価していただいております。アプライアンスの購入についてもサブスクリプションモデルが利用できる点は新しいのではと思います。バックアップストレージとしての必要容量と利用期間で採用モデルを決めることができ、スモールスタートにより多大なイニシャルコストも発生しない。また、ハードウェアとソフトウェアが一体のアプライアンス製品ですのでハードウェアとソフトの保守サポートもまとめることができますし、すべての機能がオールインワンなので新たな機能要求に対して追加ライセンスが必要となることもありません。 |
NTTデータ先端技術様はCommvaultの販売代理店でもあるため、こうしたコメントは非常に心強く感じます。Commvault HyperScale™ ApplianceはNTTデータグループ様での採用が国内で初めてのケースとなりますが、この規模の実績ができたのは、今後の製品の広がりへの大きな弾みになると思っています。 |
検証すべきポイントと、これからのバックアップの在り方
NTTデータ先端技術は2019年11月にPoCを実施。ここでCommvault HyperScale™ Applianceの有効性が認められたのを受け、同年内で2次バックアップ環境の移行を完了させている。PoCでは具体的にどんな項目について検証され、移行の結果どんな成果が出ているのだろうか。
──PoCではどのような点に重きをおいて検証を行ったのでしょうか。
主に「性能(耐障害性や拡張性)」「運用性」「データ移行の際のセキュリティ」の3つに重きを置いて、細かく項目を分けて検証を行いました。以前Commvault製品を導入する際には66項目の検証項目でチェックしたのですが、今回はさらに検証項目を増やした形です。 |
例えば拡張性という点では、単に拡張が容易というだけでなく、拡張に伴って運用性が落ちたりしないようにすることが必要です。バックアップ容量は年々増えていき、成長を予測することは出来ますが、外的要因の予測は難しいと考えています。必要になったときにすぐに容量をスケールできるか、追従してバックアップサーバ側もきちんとスケールできるかなどをチェックしました。 |
運用性という点では、運用チームでのオペレーションが複雑化してしまうなど、日々の負担を増大させてしまうような要素がないか、セキュリティという点では、暗号化などのデータの機密性、バックアップ環境やデータに対するアクセス権限管理が緻密に行えるかなどの観点を細かく見ていきました。 |
──この結果Commvault HyperScale™ Applianceの正式導入を決定されたわけですが、導入後にはどのような効果が得られていますか?
プライベートクラウド環境では、仮想マシンが年100台ペースで増えることもあります。これまではバックアップ対象の台数が増えれば必要なライセンスも増えていたのですが、Commvault HyperScale™ Applianceでは重複排除で仮想マシンのOS部などを効率的に削減できます。6〜7倍重複排除が効いたとして、単純計算でコストは6分の1~7分の1にまで圧縮されると考えています。また、運用を変えずに柔軟にスケールできることの効果も大きいです。運用が変わることで教育コストやオペミスの発生などの対応コストも増えますが、それがないため、トータルコストを大きく削減できるはずです。 |
どんなデータでも容易にバックアップできるようになったことも大きいと思っています。業務システムがメインでバックアップはそのサブという位置づけになりがちですが、データ量が増大していった際に、水内さんが言ったコストメリットには大きな意味があると思います。今後データ活用を加速するための先駆け的な製品導入になったのではないでしょうか。 |
販売代理店でもある身から言いますと、今回、製品検証から複数の環境への導入に携われたことを通じて、すでにCommvaultのバックアップソフトウェアをご利用いただいているお客様に対してCommvault HyperScale™ Applianceを最適な形で導入させていただくためのノウハウを得られたことも大きな成果だと考えています。 |
──終わりに、これからの展開に期待されていることを教えてください。
Commvault製品は、パブリッククラウドなどを含めたマルチクラウド環境にも対応しています。同じ操作で複数の環境を管理できることは、これからの展開で大きなメリットになると思います。現在はプライベートクラウドで「社内システム共通基盤」を運用していますが、決してここに固執しているわけではありません。より最適なプラットフォームを目指してマルチクラウド化も検討しています。この検討にあたってバックアップ環境が制約とならないのは、地味ながら重要なことだと思います。 |
クラウド活用やデータ活用の動きの中で、NTTデータグループ様と同様の構想を抱くお客様は増えていくと考えています。製品ベンダーとして、NTTデータグループ様を含む各企業様の取り組みをサポートしていきたいと思っています。 |
当グループでは、ITの導入を「自社の課題の解決」だけにとどめていません。最新の製品、技術をまず社内で試し、実装し、検証して確認できた有用性を、ノウハウとともに顧客へサービス還元する。我々が「ショーケース」と呼ぶサイクルのもと、顧客価値を追求しているのです。今回の取り組みは、当社の課題を解決すると同時に良いショーケースにもなると期待しています。 |
[PR]提供:NTTデータ先端技術、Commvault Systems Japan