働き方改革やデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れはあらゆる分野に押し寄せており、多くの企業がクラウドサービスを活用したITシステムの刷新に取り組んでいる。本稿では、クラウドネイティブな環境構築を熟知したソフトバンクが提供する「Microsoft Azure サービス」に注目。多くの企業のクラウド移行を支援してきた同社 クラウドエンジニアリング本部の3人に話を聞き、コンサルティング・導入支援・マネージドのサービスを統合したトータルソリューションの実力を確認していく。
クラウドサービス導入を妨げる3つの課題と、マルチクラウドの必要性
日本政府は政府情報システムの整備にあたり、クラウドサービスの利用を第一候補とする「クラウド・バイ・デフォルト原則」を2018年6月に提唱し、クラウド移行を検討する際のプロセスを示している。このプロセスは各府省のシステムにだけでなく、一般企業におけるクラウド移行でも有効な指針となる。
これはクラウド移行において、もっとも負担の少ない「SaaS(パブリッククラウド)」から検討するという考え方で、それが難しい場合は「SaaS(プライベートクラウド)」→「IaaS/PaaS(パブリッククラウド)」→「IaaS/PaaS(プライベートクラウド)」と検討し、どうしてもクラウド移行に適さないものをオンプレミスに残す。このプロセスはクラウドサービスの利用を前提としたシステム構築手法として、現在のトレンドとなっている。
とはいえ、すべての企業がスムーズなクラウド移行を行えているわけではない。総務省の「令和元年版情報通信白書」によると、2018年において全社的にクラウドを導入している企業は33.1%で、部分的な導入を含めても6割未満のクラウド利用率に留まっている。つまり4割の企業はクラウドサービスを利用できていないことになる。
クラウドサービスの導入を妨げる課題としてあげられるのは「セキュリティ」「コスト」「リソース」の3項目。特に導入後の運用までを考えると、「リソース」すなわち人材の不足が深刻な問題で、自社でクラウド移行と運用が行えるほどの人材を確保できている企業はほとんどないのが現状だ。
ソフトバンク株式会社 クラウドエンジニアリング本部 インテグレーション部 部長の石田 貴史氏はこう語る。
「IT業界において人材不足は問題となっており、このような状況において、お客様側で十分なクラウド人材を確保しているケースはほとんどありません。しかもクラウドのテクノロジーは加速度的に進化を続けており、常時触れていなければすぐに対応できなくなってしまいます」(石田氏)
さらに、クラウドサービスを導入した企業の約8割は複数のクラウドサービスを活用しているという調査結果も出ており、「マルチクラウド」が企業の求めるクラウド活用の主流となってきている。前述した「セキュリティ」「コスト」「リソース」の課題をクリアしながら「マルチクラウド」の構築・運用までを実現するのは非常に難解なミッションといえるだろう。クラウドベンダーの導入フレームワークを参考にしたところで膨大な検討事項が提示されることになるため、システムに関する考え方自体をクラウドネイティブなものにシフトする必要がある。
そこで注目したいのが、ソフトバンクの「Microsoft Azure サービス」だ。
最高位のパートナー認定を取得し、Azureの導入・運用を全方位から支援
そもそもマイクロソフトが提供する「Microsoft Azure」は、Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud Platform(GCP)に並ぶクラウドコンピューティングサービスで、主にIaaS/PaaSとして、コンピューティングやデータベース用途で活用されている。法人利用に寄り添ったアプローチが特長となっており、Windows 10、Officeといったマイクロソフトソリューションと密接に連携できるのも大きな魅力だ。
通信キャリアとして知られるソフトバンクだが、データセンターの各種サービスやVMwareベースのサービスなど、ネットワーク以外の法人向けサービスも幅広く展開。自社のクラウド移行も早く行い、そのノウハウを活かしたクラウドサービスも以前より提供している。ソフトバンクはマイクロソフトとの付き合いが長く、ソフトウェア流通の時代から、さまざまな分野で協業を行ってきた。2019年には次世代コミュニケーション環境の構築に向けた戦略的パートナーシップを締結し、日本初となる「Microsoft Teams」向け音声通話サービス「UniTalk」の提供を開始するなど、現在も密接な連携を続けている。
また同社では、Azureパートナー認定の最高位となる「Microsoft Azure Expert MSP」および「Microsoft Azure Networking MSP」の認定を2020年2月に取得した。技術はもちろん、組織や考え方までクラウドネイティブなものにする必要がある難解な認定で、これを取得したことはグローバル基準のクラウドサービスプロバイダーであることの証明となる。
同社が提供するAzure サービスにも、認定取得で培われたノウハウが反映されていると語るのは、ソフトバンク株式会社 クラウドエンジニアリング本部 クラウドエンジニアリング統括部 PaaSエンジニアリング部 第4課 課長の和田 正紀氏だ。
「Microsoft Azure Expert MSP/Microsoft Azure Networking MSPを取得する過程で多くの気づきが得られました。その内容はAzure サービスの中心的ソリューションである『MSPサービス』に反映されています」(和田氏)
ソフトバンクのMSPサービスは、単なるクラウド移行ソリューションではない。通信キャリアでもある同社は、インターネットバックボーン、閉域ネットワーク、自社データセンターを活用したサービスを展開。ダイレクトアクセスで閉域網とつながるセキュアな環境と自社やパートナークラウドのサービスをワンストップで提供できることを特長としている。Azure サービスにおいても、クラウドとの親和性が高い同社の閉域網サービス「SmartVPN」とのダイレクト接続などにより、快適かつセキュアな環境の構築が可能。さらに、Azure認定を取得した際の経験が盛り込まれた「MSPサービス」を提供しているのも大きなポイントだ。
「従来のマネージドサービスは『監視』と『運用』がメインでしたが、常に進化を続けるクラウドサービスの場合、それだけでは通用しません。従量課金制のサービスでは適切に使われているかを常時監視しないと運用コストの最適化が図れません。そこでソフトバンクでは、アセスメントからシステムの設計・構築、運用管理までをトータルで支援するMSP サービスを用意しました」(石田氏)
MSP サービスは、クラウド化の検討段階から企業を支援し、システム構築や導入後のモニタリング、オペレーションマネジメント、ライフサイクルマネジメントにも対応するなど、企業のクラウド導入を全方位からサポートする。加えて、各種クラウドサービスの管理を一元化するセルフサービスツール「クラウドマネジメントプラットフォーム(CMP)」も用意。マルチクラウド環境を自社で管理したいという企業のニーズに応えている。
「CMPは各サービスにAPI経由でアクセスし、単一のインタフェース上ですべてのサービスを一元的に管理できます。IT管理者の負担を大幅に軽減できるほか、マルチクラウドの利用状況を一元管理することでコストの可視化も行えます。利用状況を分析して仮想マシンのリソース最適化をレコメンドする機能なども備わっており、運用コストの削減を実現できるでしょう」(石田氏)
CMPでは細かなポリシーを定義でき、全体的なセキュリティ向上も図れると石田氏。マルチクラウドで課題となりやすいセキュリティ・ガバナンスの強化や、運用コストの最適化を実現できると語る。
このように、導入・運用全体をサポートするMSPサービスや、企業のIT管理者のマルチクラウド運用を効率化するCMPを活用することで、クラウドサービス導入における「セキュリティ」「コスト」「リソース」の課題を解決。さらにマルチクラウドの運用も効率的に行えるようになる。今後はマルチクラウド、ハイブリッドクラウド対応をより進めていきたいと和田氏は力を込める。
「現在はAzure向けにCMPを提供していますが、マルチクラウド戦略に合わせて対応クラウドサービスを拡大していく予定です。最終的には、オンプレミス、プライベートクラウドも含めてワンストップでマネージドしていきたいと考えています」(和田氏)
マイクロソフト純正VDIとAzureの組み合わせも推進
このAzure サービスでは、マイクロソフトが提供するVDIである「Windows Virtual Desktop (WVD)」にも注目したい。労働人口減少や長時間労働といった社会課題の解決や災害・流行病対策の観点から働き方改革を見ると、テレワーク(リモートワーク)の実現によるワークスタイル変革が不可欠。そこで重要な役割を担うのがVDI(デスクトップ仮想化)サービスだ。WVDはWindows OSやOffice 365といったマイクロソフト製品と高い親和性があり、もちろんAzureとの相性も抜群。ソフトバンク株式会社 クラウドエンジニアリング本部 クラウドエンジニアリング統括部 PaaSエンジニアリング部 第4課の深井 実紅氏はWVDの特長を解説する。
「WVDはWindows 10 マルチセッションに対応する唯一のVDIサービスです。1つの環境を複数ユーザーで利用することができ、仮想マシンの台数を減らしてコストの削減が実現可能です。それだけでなく、これまではコストの都合でリモート環境を用意することができなかった派遣や時短勤務などさまざまな働き方に対応することができます。また、MSPサービスを利用すれば、導入検討から運用管理までをトータルでサポート。ソフトバンクのセキュリティサービス、ネットワークサービスと組み合わせることで、情報漏えいリスクを低減しながら、社内と同様の環境を外出先でも実現できます」(深井氏)
ソフトバンクは自社で取り組んだデスクトップ仮想化のノウハウを活かし、以前よりVDIサービスを提供してきた。そんな同社はAzureとWVDを組み合わせたサービスをこれからの中核サービスと位置付け、強力に推進していく予定という。和田氏は、WVDのメリットとしてユーザビリティの向上を挙げる。
「プロファイルをコンテナ化する『FSLogix』という技術が採用されており、プロファイルをロードではなくマウントする形の実装で高速なログインを実現します。これまでのVDIサービスでは、ログイン時のプロファイル読み込みに時間がかかっていましたが、WVDではこの時間が大幅に短縮され、その結果ユーザビリティが向上しています」(和田氏)
このようにソフトバンクのAzureサービスには、MSPサービスの導入・運用支援やCMPでのマルチクラウド管理をはじめ、ネットワークやWVDなど企業のニーズに対応できるソリューションが集約されている。同社では、Office 365、Microsoft 365、Azure ADといったマイクロソフトソリューションをワンストップで提供できるようにしたいと考えているという。今後はAzureの機能を活用してAI、IoT、ビッグデータ分析といった、ビジネス変革につながる用途にも対応していく予定だ。クラウド活用の最適解を知るソフトバンクならではのトータルソリューションに、今後も注視していく必要があるだろう。
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