働き方改革の一環として、場所や時間を問わない業務環境「テレワーク」に取り組む企業が増えている。とはいえ、単にデジタルテクノロジーを導入するだけでは、効果を十分に得ることはできない。

2020年2月19日(水)にJR新宿ミライナタワーで開催されたセミナー「テレワークで始める働き方改革! ~社員が力を発揮できる企業を目指す~」では、働き方改革の取り組みで成果を出すためのマインドセット、実際の成功事例、テレワーク環境の実現を支援するITツールについて3人の登壇者が講演した。

  • テレワークで働き方改革

「伝えるプロ」が語る、働き方改革のリアルと必要なマインドセット

最初に株式会社圓窓の代表取締役 澤 円氏が「働き方改革のリアル~本当にやりきるために必要なマインドセット~」と題して、基調講演を行った。

株式会社圓窓 代表取締役 澤 円氏

株式会社圓窓 代表取締役 澤 円氏

「働き方改革について考える際には、どのツールを使えばよいのか、どんな制度を整えればよいのかといった手段に囚われがちですが、実際は時間をどう使うかが重要になってきます」

澤氏は、ものごとに対する取り組み方や姿勢、心の持ち方などを総合的に表す「マインドセット」が整っていれば、意識せず働き方改革を実現できると伝えた。

現代の生活やビジネスで日本人が1日に触れる情報量は、江戸時代の日本人が1年で触れる情報量に等しく、平安時代の日本人が一生で触れる情報量に匹敵するという。こうした爆発的な情報量の増加は、「高速移動手段」の獲得と「情報交換手段」の向上、すなわち情報のデジタル化と通信インフラの進化に要因があると澤氏は語る。

いまやデータを活用しなくてはビジネスや生活は成り立たず、たいていの企業はすでに「テクノロジーカンパニー」になっていると強調した。その反面、働き方は昭和の時代から変わっておらず、膨大な紙資料を使った長時間の会議が横行し、データ化が進んでいないと警鐘を鳴らした。こうした旧態依然の働き方を変えるには、ビジネスの基本である「報告・連絡・相談」のうち、過去の話である「報告」と現在の話である「連絡」にかける時間を短縮し、未来の話となる「相談」に時間をかけることが重要になるという。

その「相談」においても、電話や会議のような時間を費やす手法が使われるケースが多いという。もはやメールすら効率的とは言えず、実際に澤氏は「Microsoft Teams」などのコラボレーションツールを活用し、「報告・連絡・相談」すべての自動化・効率化を実現。無駄な時間を大幅に削減することに成功しているのだ。

澤氏は、働き方改革を実践するために必要なマインドセットについて語って講演を締めくくった。

「働き方改革を実践するためには『どうありたいのか』を考え、これまで当然で普通だったものを疑ってみる必要があります。たとえば『ミーティングをしない』『できるだけ通勤をしない』など、やめることを決めることで使える時間を増やすことができます。仕事は自分が幸せになるためにするものというマインドセットを持ち、どんな世界にしたいかをひとりひとりが当事者として考えていくことで未来が創られていくと思います」

テレワーク導入から制度活用の“常態化”までを社内で徹底取材。
日本HPの成功要因とは

続いて、株式会社日本HP クライアントソリューション本部 マネージャーの松本 英樹氏が登壇した。「日本HPはどのように働く環境を変えたのか?」と題し、13年も前からテレワークを進めてきた日本HPの取り組みについて解説した。

株式会社 日本HP クライアントソリューション本部 マネージャー 松本 英樹氏

株式会社 日本HP クライアントソリューション本部 マネージャー 松本 英樹氏

社員が持つ多様な価値観と創造性を尊重する創業者の信念「HP WAY」を規範とし、ワークスタイル変革を常に続けてきた日本HP。まだその言葉すら定着していなかった1977年という早い段階でフレックスタイム制を導入。また、2001年には全社でフリーアドレスを導入し、さらに2007年からは“フレックスワークプレイス”、いわゆるテレワーク制度の導入に踏み切っている。

「よく外資IT企業だからテレワークをすんなり導入できたのでは? と質問されますが、日本HPは社員のほとんどが日本人で、日本企業との合弁企業だった歴史的背景もあり、極めて日本企業的な風土が強い会社です。外資系だから、ということではなくHPの規範といえる『性善説』、すなわち従業員を信頼するというマインドセットによるものだと考えています」

  • 創業者の信念"HP WAY"を規範とし、先進的なワークスタイル変革を続けている日本HP

    創業者の信念"HP WAY"を規範とし、先進的なワークスタイル変革を続けている日本HP

フレックスタイムをはじめ、裁量労働、在宅勤務など柔軟な勤務体系を取り入れている日本HPは、社員に「自由」を与えるが、一方でそれに伴う「責任」を求めているという。同社では、テレワーク制度を「時間拘束や身体的・精神的負荷を軽減させながら生産性向上を実現し、優秀な人材を確保するための制度」と位置づけ、正社員は週4日まで、派遣社員は週2日までテレワークを利用することを可能だ。松本氏は、社内での取材を通じて、同社のテレワーク活用が進んだ秘訣をこう語る。

「対象は全従業員、申請は前日までに上司・チームにメールで連絡、勤務時間は5~22時の間で自由に使えます。場所は自宅+半休や直行直帰など自由に選択可能で、クラウド上から自分のタイミングで勤怠入力ができるなど、一般的な在宅勤務制度に比べてはるかに柔軟なルールにしています」

日本HPにテレワーク制度が根付いた大きな要因は『適用』ルールにあったという。同社のテレワーク制度は「権利」ではなく、あくまで上司が判断するというルールにしているため、部署ごとの業務特性に合わせて柔軟に運用できる。また、先駆けて導入したフリーアドレス制度の成果も、テレワーク導入の後押しをしたきっかけだったという。

2001年からオフィス環境の改革を実施し、他部署とのコミュニケーションも活性化された 「日本HPでは、アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)と呼ばれるオフィス環境の改革を2001年から段階的に進めてきました。ABWはフリーアドレスを発展させた考え方で、1日の仕事内容の変化に合わせて最適な環境を提供するという考え方です。これにより、それまでつながりが弱かった他部署とのコミュニケーションが活性化されたり、仕事上のアウトプットをしやすい基盤が構築できました」

2007年に導入されたテレワーク制度は前年の2006年に検討されていたが、実は当時の日本法人の経営陣は諸手を挙げて賛同しているわけではなかった。「チーム協業が非効率化する」「さぼる人が出るのでは?」「勤怠管理はどうするのか?」「オン/オフがなくなり自己管理が大変」「業績が落ちても元に戻せないのでは?」など、議論そのものがかなり紛糾したという。

こうした状況のなか、ある役員から「数年前からフリーアドレス化されていて、同じ部署のメンバーがどこにいるのか私は把握できていない。その状況でもうまくいっているため、社内にいようが社外にいようが本質的には同じでは?」という発言があり、この一言がテレワーク導入の推進力になったという。日本HPでは“どこにいるかわからない”ことを前提としたITインフラを構築し、時間管理型から成果管理型に発想を切り替えるなど構造改革が行われ、前述した経営陣の懸念を次々と払拭。導入効果の高い部署からスタートして徐々に横展開、13年後の現在ではテレワーク制度が全社的に完全に定着した。

松本氏は、「実は最初の数年間、制度はあるが活用は進んでいなかった」と告白している。その上でテレワーク活用が進んだ大きなきっかけとして「東日本大震災」「ワークライフバランス改善とダイバーシティ推進プロジェクト」、そして最後に「クラウドやLTEなど、テクノロジーの劇的な進化」を挙げる。東日本大震災のような大規模災害や新型コロナウィルスなどの感染病で出勤が難しい状況に柔軟に対応したり、働き手不足の解消や女性・高齢者の採用といった時代の要請により、今やテレワーク導入は企業の大小を問わず不可欠なものとなった。日本HPがテレワーク導入企業のためにゼロから開発したというLTE対応の最新モバイルPC「HP Elite Dragonfly」や、マイクロソフトの提供する「Teams」などのクラウドで利用できる業務アプリを採用すれば、これまでできなかったワークスタイルが実現できると解説し、数多くの参加者に迅速なテレワークの導入を促した。

LTE対応PCとコラボレーションツールの活用がテレワークの実現を後押し

本セミナーの最後に登壇したのは、KDDIまとめてオフィス株式会社 プロジェクト営業本部 営業支援センターの樋口 菜穂氏。「『イキイキ働く』を支えるITツール~どこでも仕事場に、テレワーク環境の実現~」をテーマに、働き方改革を支援するITツールについて解説した。

KDDIまとめてオフィス株式会社 プロジェクト営業本部 営業支援センター セールスエンジニアリング 樋口 菜穂氏

KDDIまとめてオフィス株式会社
プロジェクト営業本部 営業支援センター
セールスエンジニアリング 樋口 菜穂氏

同社は社名のとおり、オフィスで使用するすべての商材を取り扱っており、ペン1本からIT機器、通信インフラ、オフィス環境構築まで、あらゆるニーズに対応する。企業の働き方改革もサポートしており、同社自ら柔軟なワークスタイルの実現に取り組んでいる。

コミュニケーションツールのエバンジェリストレディとして全国を飛び回る樋口氏は、テレワーク導入の機運が高まっていることを感じているという。働き方改革関連法案が施行され、企業のワークスタイルは変革を余儀なくされている。特に「すき間時間の有効活用」は重要なミッションといえ、生産性向上や時短を実現できるITツールが求められており、社外で円滑な業務が行える環境が必要と語った。

こうした状況のなか、注目したいデバイスとして挙げたのが「LTE対応PC」だ。SIMスロットが内蔵され、モバイルネットワークによる通信に対応しているのが特徴で、Wi-Fiや有線LANに接続する必要がなく、PCだけでインターネット通信が可能になる。

また、MDM(モバイルデバイス管理)の機能を利用し紛失・盗難時の情報漏えいを防げるなど、強固なセキュリティ体制が構築できる。同社では、法人契約のモバイルデバイスを一括管理できるセキュリティサービス「KDDI Smart Mobile Safety Manager」を提供している。

今回の講演では、同社が提供しているLTE対応PCとして「Microsoft Surface」+「au SIM」や、前のセッションでも紹介された日本HPの「HP Elite Dragonfly」、さらにレノボの「ThinkPad X1 Carbon」が紹介された。どれも高度な処理能力と長時間のバッテリー駆動を両立した携帯性の高いモバイルデバイスとなっており、テレワークの実現を強力に支援してくれる。

また、2020年10月には「Office 2010」のサポートが終了し、これに合わせてOfficeソリューションを刷新する際にも、テレワークを考慮した選択を行うのがよいと語った。樋口氏は、テレワークを支援するツールが多数用意されたOffice 365を推奨した。

  • テレワークに不可欠な機能を統合したコラボレーションツール「Microsoft Teams」

    テレワークに不可欠な機能を統合したコラボレーションツール「Microsoft Teams」

「Office 365では、PC5台+スマートフォン5台+タブレット5台の計15台までOfficeアプリをインストールできます。クラウドサービスなので常に最新バージョンを使え、ビジネス向けのオンラインストレージ「OneDrive for Business」も最大1TB利用可能です。さらに、チャット、オンライン会議、ファイル共有、共同編集、在籍情報といったテレワークに不可欠な機能を統合したコラボレーションツール『Microsoft Teams』が使えることが、大きなメリットとです」

講演では、実際にMicrosoft Teamsを使って、遠隔地にいる日本マイクロソフトの中森 勇樹氏とのコラボレーションにより、ビデオチャットをしながらファイルの共同作業を行うデモが実施された。ビデオチャットの背景画像編集や、遠隔操作によるサポートなど、テレワークに役立つ使い方が実践され、多くの参加者が熱心に見入っていた。日本マイクロソフトでは、Office 2010/2013を利用している企業を対象に、Office 365への乗り換え時に最大150万円をキャッシュバックするサービスも展開しているという。また、KDDIまとめてオフィスでは、Microsoft Teamsの無料トライアルや、LTE対応PCの無料貸出機も用意しており、実際の業務で試しながら導入を検討することが可能だ。

最後に、福利厚生をアウトソースで行える新サービス「まとめて福利厚生」が紹介された。福利厚生が充実すると、社員の満足度向上はもちろん、企業のイメージアップにもつながる。こちらも企業の働き方改革を実現するサービスといえ、参加者の注目を集めていた。

本セミナーでは、テレワークをはじめとする働き方改革の実現に必要な要素を、あらゆる角度から確認できた。3人の登壇者が口を揃えるように、あらゆる業種・規模の企業で「迅速なテレワークの実現」が重要なミッションとなることは明らかである。企業におけるテレワークの取り組みが、本セミナーによって活性化されていくことは間違いないだろう。

テレワークで始める働き方改革!
~社員が力を発揮できる企業を目指す~


>>本セミナーの動画はこちら

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