近年、インフラとアプリケーションの領域は重なりつつある。インターネットイニシアティブ(IIJ)とソフトクリエイトは協業を進化させ、セキュアなネットワークと、既存資産を活かした新たなクラウドアプリケーションの提供を開始する。

もともとIIJは、パブリックとプライベートの両方を選択できるクラウドサービス「IIJ GIOインフラストラクチャーP2(以下、IIJ GIO)」を展開していた。また、ソフトクリエイトは、サイボウズ ガルーンや奉行シリーズといった、オンプレミスで使っているアプリケーションを既存のライセンスのままクラウドへ移行できる「SCCloud」を提供している。

これらの両サービスを融合させることによって、IIJとソフトクリエイトの両社は、日本のクラウド市場にどのような新展開を起こしていくのだろうか。本記事では、インターネットイニシアティブ システムクラウド本部 本部長 染谷 直氏と、ソフトクリエイト 上席執行役員 事業戦略本部 本部長 引間 賢太氏への同時インタビューをお届けする。

―IIJとソフトクリエイトの協業の経緯について

  • 株式会社インターネットイニシアティブ システムクラウド本部 本部長 染谷 直氏

    株式会社インターネットイニシアティブ
    システムクラウド本部 本部長 染谷 直氏

  • 株式会社ソフトクリエイト 上席執行役員 事業戦略本部 本部長 引間 賢太氏

    株式会社ソフトクリエイト 上席執行役員
    事業戦略本部 本部長 引間 賢太氏

ソフトクリエイト 引間氏:もともとは、2016年に弊社ソフトクリエイトのインターネット回線およびWAN回線をご提供するサービス「SCLINE」にIIJさんのクラウド閉域接続サービス「IIJ Omnibus」を加えたことが両社の最初のつながりでした。

IIJ 染谷氏:そしてほぼ同時期に、サイボウズ ガルーンをSCCloudとIIJ GIOで提供する「サイボウズ ガルーン SaaS SCCloud with IIJ」もリリースしています。

これは非常に好調だったのですが、アプリの構築・運用・保守をしていくとなると、アプリケーションエンジニアを多く抱えなければなりません。我々IIJが得意とするのはインフラですから、かなり悩ましい課題でありました。

引間氏: アプリケーションのクラウド移行を検討されているお客様は、アプリケーション単位ではなく、社内インフラ全体の運用を移管されたいといった課題を抱えられているケースが多いです。実際にSCCloudを利用いただいている多くのお客様が「サイボウズ ガルーン」と「LanScope Cat」と「奉行シリーズ」というように、複数サービスでご利用されています。一方で、サービス提供視点においては、グループウェアからセキュリティ対策、IT資産管理、業務アプリケーションまで、各守備範囲のエンジニア確保が課題になります。弊社としてはこのアプリケーション領域でIIJさんのお手伝いをしながら、どのような協業が可能なのか、この2年間さまざまな視点で議論してきました。

染谷氏: インフラはどんどんコモディティ化しており、この領域だけで戦うことは厳しくなっています。アプリケーションの領域にどうやって進出すればいいのか。検討してきた結果、アプリケーションエンジニアの自社部隊を拡大するのではなく、サイボウズ ガルーンSaaSの実績やフットワーク・対応力のあるソフトクリエイトさんとタッグを組むのが最適だと判断したのです。

―2020年4月に予定されている新サービスについて

  • IIJが持つ閉域網ネットワークを介し、セキュアにクラウドファイルサーバーを利用可能

    IIJが持つ閉域網ネットワークを介し、セキュアにクラウドファイルサーバーを利用可能

染谷氏: 2020年4月に、新たなサービスとして「SCCloud with IIJ/ファイルサーバサービス」をリリース予定です。これは、オンプレミスで稼働しているWindowsのファイルサーバーをそのままクラウドで使えるソリューションです。Active Directoryのアクセス権なども、既存資産の設計そのままに移行することができます。

引間氏: 「既存資産の設計そのままに」ということがポイントですよね。中堅中小規模の企業においては、SharePointやGoogleドライブを一部利用しているかもしれませんが、基本的にはオンプレミスでWindowsサーバーの機能を使っているところがほとんどでしょう。しかし、こうした自社運用には大きな負担がかかるものです。ストレージの保守や入れ替えはもちろん、セキュリティの確保も自前で用意しなければなりません。また、昨今は画像や動画など、ファイルが大容量化していますから、オフィスITにとってファイルサーバーは悩ましい課題になっていると思います。

染谷氏: もともとIIJ GIOには「オフィスのITをクラウドにもっていきましょう」というコンセプトがありました。この新サービスは、Windowsサーバーに手間をかけているユーザーに対して、クラウドシフトの一歩目をご提供するものです。慣れ親しんだ使い勝手はそのままに、運用の手間をクラウドによって大きく削減することができます。

引間氏: 現在、「IIJ GIO」の基盤上で安定稼働させるためのあらゆる検証を行っているところです。ファイルサーバーはお客様によって多様なニーズがあるものですが、IIJ GIO上でガルーンを構築したノウハウを元に、コストパフォーマンス含めて極力ご要望を反映できるようにしていきます。

染谷氏: 多様なニーズの中でも、日本企業はとくにセキュリティへの関心が強い傾向にあります。「インターネットは経由したくない」というお客様であっても、IIJが持つ閉域網ネットワークを介して接続できるので、セキュアにクラウドファイルサーバーを利用することが可能になります。

―アプリケーションクラウドの展望について

  • IIJとソフトクリエイトの同時インタビュー

染谷氏: 引間さんは、アプリケーションクラウドの将来像をどのように描いていますか?

引間氏: 実は最近、「SCCloudにこのアプリケーションを加えてほしい」というオファーが増えています。小さな企業でも優れたアプリケーションを作ることはできますが、運用や監視まで含めて、それをSaaSとして提供することは難しい。染谷さんは「アプリケーションの領域にどうやって進出すればいいのか」と悩まれていましたが、アプリケーション側としても、インフラに近づいていきたいという意識が強まっているのです。

染谷氏: クラウドサービスとは、インフラに加えて回線サービスとアプリケーションビジネスが互いに融合することで高付加価値を提供できるのかもしれませんね。

引間氏: 共創によってアプリケーションサービスをしっかり運用している会社は少ないですから、「SCCloud with IIJ/ファイルサーバサービス」から始まる未来に大きく期待しています。

染谷氏: IIJは「One Cloud(ワンクラウド)」というコンセプトを掲げています。これは、ネットワーク、クラウド、セキュリティをひとつのプラットフォームで提供することで、お客様の業務変革を支えていこうという想いから生まれたものです。今回の新サービスは、まさにこのコンセプトを実現するための大きな取り組みになります。今後はファイルサーバーだけでなく、Active DirectoryやWSUSといったWindowsサーバーの機能を使ったコンポーネントをクラウドに載せていくことで、デジタル技術を最大限に活用した仕事環境「デジタル・ワークプレイス」の実現に貢献していきたいと思います。

[PR]提供:インターネットイニシアティブ