長時間労働の解消だけを目的に据えると、事業が衰退し社員の士気は下がってしまう。テクノロジーを有効活用して業務の効率化や新たな挑戦を進め、労働時間を圧縮しつつも会社の成長を達成する。それが "改革" のあるべき姿だ。2019年11月27日にマイナビニュースが開催した「マイナビニュースフォーラム2019 Autumn for 働き方改革」では、今挙げた "改革" について語れるスピーカーが集結した。本稿では、述べ300名を超える方が来場した同イベントより、「管理部門主体の生産性向上」をテーマとしたエフアンドエムのセッションを、ダイジェストでお届けする。
労働時間を短くするだけでは意味がない
エフアンドエムは、「人事」「総務」「財務」というバックオフィスに特化したコンサルティングサービスを創業から30年にわたって提供している。2016年にはバックオフィス業務の生産性向上に特化したクラウド型の労務・人事管理システム「オフィスステーション」をリリース。同サービスは、現在アクティブユーザー数6,000社を数える人気サービスだ。
そんなエフアンドエムのセッションでは、同社オフィスステーション事業本部 本部長 渡辺 尚人氏が登壇し、「人材不足を業務のペーパーレス化による生産性向上で乗り越える!」と題した講演が行われた。
渡辺氏はまず、現在の日本が置かれた状況について、GDPの国際比較や生産年齢人口の推移、OECD加盟国の時間当たり労働生産性、日米の職業別比率などのデータを示しながら提示。働き方改革などによって生産性を向上させていくことが急務だと指摘した。
「残業をしない。有給をしっかりとる。その上現状維持ではなく事業の成長を求めるならば、労働生産性の確保は各社必須事項です。単に労働時間を短くするだけの表面的な対応は、日本の国際競争力をどんどん落とし、日本の産業全体が弱くなる可能性があるのではないでしょうか。」(渡辺氏)
働き方改革の鍵は管理部門
生産性の向上で欠かせないのがテクノロジーの力だが、日本ではその活用も十分ではない。例えば、米国ではFAXがスミソニアン博物館に展示されるほどの骨董品的な扱いのテクノロジーであるのに対し、日本はまだまだ現役で使われている。しかし、渡辺氏はこのことは「テクノロジーを活用する余地がまだ十分に残されていることの証でもある」とする。
「日本はまだアナログでバックオフィスが動いています。そこにICT投資をすれば、きわめて高い確率で効率が上っていくと考えられます。効率化を進めると、その業務をしている人の仕事がなくなるのではという声が上がることもあります。しかし、効率化を進めても業務はなくなりません。なぜなら、効率化してもなくならないほど、複雑で対応が難しい業務が多いからです。」(渡辺氏)
かつてバックオフィス業務といえば、労務管理や給与管理が中心だった。しかし現在は、人材の採用から教育研修、人事評価、メンタルヘルス、福利厚生、コンプライアンス、法規制対応まで、業務領域が広がっている。渡辺氏は「業務が多岐に渡るからこそ、今日の管理部門は、企業全体の働き方や利益に深く関与できる立場になってきています。」と述べ、こう続ける。
「バックオフィス主体で働き方を変えていく上で、『助成金や補助金などの情報提供』『働きやすい環境整備』『業務の生産性向上指導』、少なくともこの3つの取り組みは、企業の利益に繋がると考えています。ただ、そのためにはここへ割り当てるためのリソースやコストを、仕組み化やシステム化によって捻出しなくてはなりません。では、どこを仕組み化、システム化すればいいか。私たちは、効率化すべき視点として、『本業への売上・利益貢献できない業務は効率化してみては?』と企業にご提案しています。すると多くの企業でほぼ100%に近い確率で該当する業務が「社会保険や雇用保険関連の手続き」なんです。これらは本業ではなく国が作った制度ですから、手続き作業にどれだけ時間を費やしても本業の売上や利益にはつながりません。こうした業務を見直すことが、利益に繋がる取り組みに向けた第一歩となります。」(渡辺氏)
オフィスステーションで、本業に集中するためのリソースを確保
生産性向上にあたって重要なのは、全ての社員が本業に専念できる環境づくりだ。渡辺氏は、「ここへ管理部門のリソースを集中させるための手段として私たちが提案しているのが、オフィスステーションを利用した社会保険・労働保険申請の効率化です。」と語る。
社会保険や労務手続きは、社員やその家族のライフイベント、入退社や人事情報の変更、会社情報の変更など、人・組織・企業に変化がある度に発生する。「1つの社労手続きだけでも、手作業で行う場合には書類作成から行政窓口への提出まででおよそ半日ほどかかります。ただ、実はこれを電子化し、最初の情報発信者である社員の情報を専用フォーム「マイページ」で入力すれば、所要時間を10分前後にまで縮めることが可能なのです。」こう渡辺氏は述べ、同社の顧客例を挙げながら詳細を説明した。
「オフィスステーションでは、強固なセキュリティのもとで社会保険・雇用保険の申請データを作成できます。仮に社員全てにマイページ機能を配布し、情報の発信源からデジタル化を進めた場合でも、手続きに必要なセキュリティ水準が確保できるのです。行政機関のシステムとAPI連携しているため、窓口に書類を提出することなくオンライン上で全ての手続きを完結させることが可能です。実際に当社の顧客実績の中には、月あたり400以上もの労務手続きをオフィスステーションで完全ペーパーレス化した例もあります。」(渡辺氏)
さらに渡辺 氏は、生産性向上のより具体的な例として、エフアンドエム社における実例を提示。2019年4月中に発生した232件の社会保険・雇用保険申請手続きにおいて、オフィスステーションの活用により労働生産性が6.5倍にまで向上したという。
講演の終わりに渡辺氏は、「電子政府への取り組みで知られるエストニアでは、デジタル化の進展により会計事務所の業態変更が余儀なくされました。税金の確定業務などが必要なくなったことが要因です。しかし彼らは、顧問先企業へのITアドバイザリー業務に活路を見出し、現在はこれが本業に近い業務となっています。これは業務の効率化と合わせて割り当てるべきリソースを転換したことが、事業・経営・利益の構造を変えた好例だと言えるでしょう。」と述べ、これからの働き方改革時代は経営そのものの在り方を問う時代となると強調。その改革の中心を担う管理部門の皆様が主体となって、本業や人でしかできない業務に集中できる環境づくりを進めてほしいと訴えた。
[PR]提供:エフアンドエム