新卒・転職・アルバイトをはじめとする人材情報サービスに加え、ウェディングや農業などさまざまな情報サービスにも事業を展開している株式会社マイナビ。同社は、「コスト」「業務効率」「ヒューマンリソース」の最適化を全社的な目標に掲げ、RPAの導入により、年間35,356時間、1億607万円分の最適化に成功した。今後は組織戦略にRPAを組み込むことによって、さらなる成長を目指していく。
【課題】事業拡大の裏で、非効率な業務や横展開の不十分さがあった
1973年に創業した株式会社マイナビ(以下、マイナビ)は、主力である人材情報サービスに加え、生活情報サービス分野にも力を入れており、グループ全体の社員は約1万人を数えるまでになった。新卒採用や転職、アルバイト、人材紹介、進学、ウェディング、農業など、その事業は多岐に渡る。
しかし、あらゆる分野へと事業が拡大したことで問題となっていたことがあった。各事業部で提供するサービス内容の違い、そこから派生した「仕事のやり方」の違いである。そのため、本来であれば部門間で共有できるようなナレッジであっても、それを横断展開することが難しくなってしまっていた。
こうした状況の下、2017年4月に発足されたのが経営・業務改革推進室だ。ここでは「コスト」「業務効率」「ヒューマンリソース」の3つを、全社的に最適化することを目標とし、さまざまな改革に取り組んでいる。その中で着目したのがRPA(Robotic Process Automation)だった。ルーチン化しているデスクワークにRPAを採用することで、大幅な業務改善を図ろうというわけだ。
【ソリューション】高い管理性を持つUiPathを選定し、自社内でもロボットの開発・保守を可能に
システム統括本部 ITソリューション統括部 業務ソリューション部 部長 中村 健二氏は、「RPAのマイナス面」に着目して選定作業を進めていったと語る。RPAだけに限らず、サービス・ソリューションの良いところだけを見てしまうと、問題点が隠れてしまうというのが中村氏の考えだ。セミナーへ赴き、ロボットを試作し、検討を重ねる中で見えてきた最大のポイントは「セキュリティ」と「管理性」だった。
マイナビは事業の特性上、個人情報や取引先企業の秘匿情報を扱う。その仕事の一部をロボット化するならば、セキュリティの強化は必須である。また、RPAの導入が進むと現れるのが「野良ロボット」の問題だ。特にマイナビのように事業部ごとに仕事が分かれている企業にとっては、全社の情シスが把握しきれないロボットが増え、管理不能になる恐れがあった。こうした前提条件の下、まず候補として挙がったのは、十分な管理性を持つUiPathであった。
最終的に「コストパフォーマンス」「機能性」「開発の容易さ」「導入の容易さ/拡張性」「管理性」の観点からの比較も行われ、いずれの点においてもUiPathに優位性があると判断し2018年2月、採用が決定した。
マイナビにおけるUiPathの導入は、業務のヒアリングから始まった。日々のルーティンワークを責任者から聞き取り、RPAによる自動化に適した業務を判断する。たとえば、企業審査部門における「反社チェック」業務だ。取引先や協力会社が反社会的勢力に関わりが無いか、データベースにアクセスして確認する。これにUiPathを導入することで、承認におけるルールベースのフローを自動化し、処理のスピードを速めることができた。
導入初期は、すべてが順調というわけにはいかなかった。思いがけないエラーが生じることもあれば、予期せぬ事態に陥ってしまうこともあった。バックオフィス業務ならまだしも、顧客が関係する事業部の仕事は即時対応を求められることも多い。そこでマイナビは、ロボットの製作を開発会社にアウトソースするだけでなく、自社でも内製ができるように、無料オンライントレーニング「UiPathアカデミー」を受講した社員を中心に保守・開発チームを結成。今後UiPathを全社的に展開する上での土台作りに取り組んでいる。
UiPath導入前後の課題と効果
導入前 | 導入後 |
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急成長によって生じている業務の非効率化 サービス間の連携不足による機会損失の発生 |
年間35,356時間の工数削減 RPAを前提としたさらなる成長戦略の展開 |
【導入効果】大幅な作業スピードの向上によって社内に感動!? をもたらす
2019年9月時点で、マイナビが活用しているロボットの数は71に上る。最も大きな成果を遂げたのは「新卒紹介事業部」への導入だ。
一般的な新卒向け就職情報サイトは、学生が掲載されている企業の求人情報を見てエントリーするが、「新卒紹介」は、専属のキャリアアドバイザーが学生の志向にマッチした企業を紹介する。年間約90万人が登録する新卒情報サイト『マイナビ』のユーザーのうち、希望者は新卒紹介のサービスを受けることができる。しかし、『マイナビ』と『新卒紹介』は別のシステムで動作している。そのため、希望者の情報データを移行するには相当な作業工数を必要としていたため、更新作業の頻度に限界があった。ここにUiPathを取り入れることで、一部の操作を自動化、更新の頻度を上げることでサービス品質の向上を試みた。
今では、RPAを導入したことにより毎朝データ連係が可能となっている。営業日ベースで言うと20倍以上のスピードだ。学生に対してすばやく企業を紹介することができるようになり、事務的工数の削減のみならず、サービス品質の向上へも寄与することができた。
加えて、マイナビの新卒向けのサイトは、学年をまたがって継続して使うサイトであることから、途中でシステムを改修することは容易ではない。この点においても、必要な領域に対し「後から繋ぐ」ことができるRPAは高いコストパフォーマンスを発揮した。
また、RPAの導入は、従業員からも高い評価を集めている。「手でやるより作業スピードが明らかに早い」「まるで小人が働いてくれているみたい」と、感動を持って受け入れられている。
71体のロボットによって、今後1年間で削減できると推定される時間は35,356時間。人件費にして1億607万円にも上る。さらに現在は、毎月約10体のペースで各現場にロボットが導入されている。
【今後の展開】RPAを組織戦略に組み込み、ビジネスのさらなる成長へ
マイナビの次のステップは"UiPath Orchestrator"の導入だ。このツールを使えば、各端末で稼働しているロボットのエラー検知やジョブ管理、権限管理といった統合的な運用管理が可能になる。RPAは、その特性上、各業務に対しロボットが完全に独立して動いている環境では、エラーが起きた場合でも現場からの報告が無いと管理者がそのエラーに気付くことができない。自動検知が可能になれば、より早く対応できるようになる。今後は、自動検知をはじめとした統合的な運用管理の実現に向け、そのための環境構築を進めていく計画だ。
ロボットの開発体制も強化していく。コーディングルールやソース管理の徹底はもちろん、転用可能な「部品」を複数用意しておくことで、開発の生産性を向上させる。開発者を育成する研修部門の立ち上げも構想中だ。現場の担当者が「部品」を組み合わせることによって、必要なロボットを自ら製作することができるようになれば、さらに生産性が向上する。
マイナビにおけるUiPathによる自動化の反響は大きい。それは小規模な組織単位で要望を受け付けていてはキリが無いほどだ。現在は事業部単位で管理職への説明会とヒアリングを実施し、優先度の高いものから取り組んでいる。その場で中村氏が説明するポイントは「組織戦略の一環としてRPAを捉える」ことだ。その業務をアウトソースするのか。社員を増やすのか。それともUiPathを使うのか。ロボットを「ルーティンワークに優れた働き手」として捉えることで、人間がするべき業務もまた明確になる。組織戦略にRPAを組み込むことによって、さらなる成長を促していく。
製品情報
本稿で取り上げたRPA製品の詳細は、下記UiPathのホームページよりご覧いただけます。
マンガで解説「UiPath RPA」
https://www.uipath.com/ja/rpa/robotic-process-automation
動画で解説「UiPath Orchestrator」
https://www.uipath.com/ja/product/orchestrator
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