2019年9月18日 東京紀尾井カンファレンスで開催された「Actifio Data Driven 2019東京」。ここではバックアップやDR(ディザスタリカバリ)から一歩進んだアクティフィオソリューションの活用術が数多く紹介された。本稿では、当日開催された講演とセッションの模様をダイジェストでお伝えする。
アクティフィオはデータタイムマシン
冒頭の挨拶では、Actifio Japan株式会社 代表社長である勝俣正起氏による、関係者への感謝の言葉と、アクティフィオの歩みについての紹介が行われた。2009年にボストンの郊外で設立されたアクティフィオは、2017年から2019年の3年間でグローバルの実績が1.8倍、日本国内の実績が2.7倍と、急速な成長を遂げている。特徴的なのは、顧客の7割がリピーターである点だ。
「アクティフィオを導入していただいたお客様は、その後、規模を拡張されたり、バックアップ以外の用途へと多目的に展開されたりするケースが多いです。アクティフィオのコンテンツは盛りだくさんです。これから行われるセッションでは、パートナーの皆様から様々なアクティフィオの活用事例が紹介されます。是非、それらを参考に、データ・ドリブンの未来へと踏み出してください」と勝俣氏はあいさつを締めくくり、Actifio Inc. 上級副社長 共同創業者であるデビッド・チャン氏を招き入れた。
登壇したチャン氏は、「アクティフィオを一言で言えば、それはデータタイムマシンです」と語る。例えば、ハードディスクに障害が発生したり外部からの侵入が発覚したりすると、データを「過去」の状態に戻さなければならなくなる。一方、データを分析や開発に利用する場合、それは「未来」に向けたチャレンジへと繋がる。
「トラブルが発生しても過去に戻れること。そして未来の成功に向けたチャレンジができること。それがアクティフィオのソリューションなのです」(チャン氏)
アクティフィオの仮想化技術を活用すれば、「単一の仕組みで管理することが可能」となり、データマネジメントやガバナンスの強化が可能となる。さらに、仮想化した本番データを提供することで、開発チームにも貢献できる。
アクティフィオは世界の主要なデータベースの75%を網羅している。例えば「ドイツのソフトウェア企業であるSAPでは、データ保護のソリューションとしてアクティフィオを利用しており、すべてのパブリッククラウドでTB規模のデータを短時間で復旧するソリューションを設計している」とのことだ。
「アクティフィオは、オンプレミス、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドなど、さまざまな環境でサービスを提供します。2019年からはSaaS型のサービスの提供も開始しました。私たちはこれからも、フルスタックのデータ管理サービスを提供し続けていきます」(チャン氏)
新たなコピーデータ利活用への挑戦〜アクティフィオユーザー3社によるパネルディスカッション〜
本イベントの目玉とも言えるアクティフィオユーザーによるパネルディスカッションは、活発な意見が飛び交う非常に熱気あふれるものとなった。ここでは、その内容の一部をダイジェストでお伝えする。
【モデレーター】
アイテイメディア株式会社
エクゼクティブ・エディター
三木 泉 氏
【パネリスト】
NRIシステムテクノ株式会社
CSプロジェクト部 第2グループ 専任課長
本間 稔 氏
NECソリューションイノベータ株式会社
グループICT事業本部
プラットフォームサービス事業部 プロフェッショナル
山本 龍也 氏
三井住友海上プライマリー生命保険株式会社
IT推進部 次長
岩中 雄次 氏
三木氏:個人的に、アクティフィオには「いろんなことができる面白いもの」という印象を持っています。今回は、アクティフィオの先進的な活用をしている方々にお集まりいただきました。まずは、具体的にどのような活用をしているのかをお教えください。
本間氏:当社は、グループ共通のインフラ環境としてVMwareを基盤としています。データ量は2TBくらいになりますが、そのバックアップシステムとしてアクティフィオを利用しています。現在、使用しているストレージのメーカーは4社になります。また、VMwareの物理基盤も3社使用しています。これらをアクティフィオで一括管理しています。6台平行でバックアップをとっているのですが、すべてを一人で管理しています。導入して4年になりますが、現状はまったく問題なく利用できています。
山本氏:私たちは、NECグループに社内クラウドを提供するという業務を請け負っています。NECグループには全部で1万台のサーバーマシンがあるのですが、その半分にあたる5,000台のバックアップをアクティフィオで行なっています。5,000台もあるとメーカーもさまざまなので管理も大変だったのですが、アクティフィオで統合管理することで、その問題も解消されました。
三木氏:バックアップを統合することについての必要性は昔から言われていましたが、それをアクティフィオで行なっているのがお二人の事例になります。一方、データ活用という観点では、開発への利用というのもありますが、そこに取り組んでいるのが岩中さんになります。その経緯について教えてください。
岩中氏:当社では、6年ごとにサーバーを総入れ替えすることになっていて、ちょうど2019年の1月が入れ替えのタイミングでした。そのタイミングで、バックアップソリューションについても検討しようということで、いろんな製品を検討した結果、アクティフィオの導入に踏み切りました。
最近は競争が激化しているので、新しい特徴ある製品をいち早く代理店に届け、それをカスタマイズし続けていかなければなりません。現在、アクティフィオの仮想化技術を使って、本番環境、開発環境、災対環境、検証環境の4つの環境を同じ構成で整備しています。開発環境については、ホスト名やネットワーク構成、IPアドレスなどまるごとコピーできるので、以前と比べるとコストベースで1/3から1/4、期間も1ヶ月半程度で、開発用と検証用の環境が構築できました。
三木氏:今後、アクティフィオはどのような使い方ができるとお考えですか?
山本氏:今、やろうと考えているのは、クラウドのバックアップデータを遠隔で操作することです。これができれば、有事にはバックアップデータをそのまま使えるようになるので、災害対策のコストを下げることができるはずです。
本間氏:業務データと、市場にあるビックデータを組み合わせて、いろいろなサービスや分析を行おうと検討しています。業務データをそのまま使用するのは問題があるので、業務データを気軽に使うための環境構築に利用ができるのではないかと考えています。
岩中氏:これからはもっとシステム開発の上流に遡ったテスト環境にも利用していきたいと考えています。将来的には、開発者一人一人がアクティフィオのデータを使うようになれば、より効率のよい開発が進むことでしょう。それと、将来的にはアクティフィオを使って、色々な企業がデータを持ち寄って、新しいことをしていく。そんなことをしていきたいですね。
セッションダイジェスト
ここからは当日開催された8つのセッションのうち、アクティフィオのパートナーが登壇したセッションをダイジェストで紹介する。
グローバル企業(製造業)におけるデータ仮想化事例と今後のITインフラ展望
現在、多くの企業が抱えている悩みとしては、「DXに対応して新しい製品を開発しなければならないにも関わらず、既存システムを動かすことに予算の大半を使ってしまっている」というものがある。
レノボではこのような課題を解消するための手段として、複雑化する仮想化環境をシンプルに運用管理できるハイパーコンバージド・ソリューション 「ThinkAgileシリーズ」を提供している。
「ハイパーコンバージドは、データの管理の面でいくつかの課題があります。弊社では、その課題を解消する手段としてソリューションを提供しており、その中で本番データの活用やハイブリッドクラウドへの移行などについてアクティフィオのソリューションを組み合わせてお客様に提供しています」(廣川氏)
セッションの後半では、レノボのサーバーとActifio Skyを組み合わせた製造業における「統合バックアップ・災害対策の環境の刷新」事例について、提案から構築までを担当したNSDの松本 健氏によって紹介された。
とある製造業のグローバル企業においては、2014年よりバックアップやBCP対策用のソリューションとしてアクティフィオを利用していた。だがしばらくして、その企業から「今のストレージにはインライン重複排除の機能が搭載されているので、バックアップのソリューションは不要」との連絡があったそうだ。しかし、またしばらくした後に「もう一度、アクティフィオにリプレイスしたい」との連絡が入った。
「インライン重複排除の機能があったとしても、数々の物理サーバー、国内と海外のクラウド、それぞれの環境がバラバラで非常に使いにくかったそうです。すべてを同じ環境で運用したい。それがアクティフィオに回帰した理由とのことです」(松本氏)
リプレイスは2019年8月に完了。現在、すでに運用が進んでいるとのことだ。
セルフサービスを完結させるIBMのデータ活用ジャーニー
経験と勘に頼った経営から、データ分析に基づいたデータ・ドリブン経営へと移行する際には、皆が共創できるデータ統合プラットフォームの構築が不可欠となる。
「データから価値を導き出せている企業の割合は、わずか15%と言われています。その最大の要因は、データ利用者とデータ提供者で、用途ごとに異なるツールや仕組みを使っているからです」
このような課題を解決する手段として、IBMではデータの価値を最大化するクラウド向けの統合データプラットフォーム「IBM Cloud Pak for Data」を提供している。「IBM Cloud Pak for Data」は、「シングル・アプリケーション」「エンタープライズカタログ」「データ仮想化」「アドオン機能」の4つの機能と、「クラウドネイティブ環境」「マルチクラウド対応」という技術によって、ユーザーが用途や違いを意識せず自由にデータ活用を行う環境を提供する。
なお。IBMは2019年2月にアクティフィオ社の技術をベースとするIBM InfoSphere Virtual Data Pipeline (以下、VDP)の提供を開始している。迅速・効率的なデータ活用を実現するVDPと、データ統合やガバナンスなどデジタル整備を担う「IBM Cloud Pak for Data」を組み合わせることで、データを活用したデジタル変革やイノベーションを加速させていくことが可能になる。
データベース仮想化による開発効率化ソリューション
日立製作所では、バックアップとリカバリーのみならず、「データを集めてデータレイク化して、集めたデータをハイブリッドクラウド環境や開発環境と綺麗につなぎ、最終的にはビッグデータや分析、AIなどにデータを活用することで、データを価値あるものにしていく。そのためのソリューションの提供に努めています」とのことだ。
「弊社ではこれから、アクティフィオの技術を用いて、データを守る・集める・貯める・繋げる・活用するためのデータマネジメントソリューションを、提供していきたいと考えています。また、アクティフィオはさまざまなことができるので、何に使っていけばいいのかわかりにくいところがあります。そこで弊社では、アクティフィオのユースケースを細分化したテンプレートを提供しています」
セッションの後半では、アクティフィオを用いたDBデータの再利用ソリューションとして「三井住友トラストシステム&サービス」の適用事例が紹介された。アプリケーションの開発効率をあげるには、できるだけ本番に近く、できるだけ新しいデータを使わなければならない。しかし、一般的な課題として、本番環境を開発環境に移行する際には、非常に煩雑な作業が必要となる。また、開発環境内で限られたリソースを調整するのも大変だった。
「これらの課題を解消するためには、運用の考え方そのものを変えなければなりません。そこで弊社がお客様と一緒に取り組んでいる方法が、アクティフィオの技術を使ってマスキングからマウントまでの手順などで、全自動化を進めることです」
可能な限り自動化することで、煩雑な手続きや承認作業を減らし、その上でセキュリティを担保する。それが、日立製作所が提供を目指すデータマネジメントソリューションである。
富士通とニフクラが目指すクラウド推進を加速する次世代データプラットフォーム
冒頭では、富士通が実践する「システムデータの活用によるDXへの貢献」についての解説が行われた。DXを実現するためには情報システム自体の高度化も求められるため、システムデータを活用することで、情報システム自体の進化の加速をめざすとのこと。また、富士通のサーバー・ストレージのテクノロジーと運用ノウハウに、アクティフィオのコピーデータテクノロジーを組み合わせ、同時並行の環境を実現した東北電力の事例などが紹介された。
富士通では、DXを実現するための次世代プラットフォームの形として「①システム開発のスピードアップ」「②(アクティフィオのコピー技術をフル活用した)ユニークなデータマネジメント機能による迅速な利活用」「③クラウド連携によるデータ活用の可能性拡大」を掲げている。そして、③のクラウド連携の役割を担うのが、国産クラウドコンピューティングサービスであるニフクラ(旧ニフティクラウド)だ。
富士通クラウドテクノロジーズの上野 貴也氏は「ニフクラはクラウドサービスに移行する際の障壁を取り除く、きめ細やかなサービスを提供します」と語る。ニフクラでは、オブジェクトストレージの中にアクティフィオによる仮想コピーを置くことで、クラウドならではの安価かつ柔軟性のある環境が提供されている。遠隔バックアップや長期保存の選択肢として、そして開発や検証などの分野への活用手段として、利用が可能となっている。
SAP S/4 HANA のデータベース仮想化、マルチクラウド活用
1990年代後半からSAPソリューションを提供している日立ソリューションズ。同社が考えるアクティフィオ利用の利点として中山氏は「システム基盤の疑似本番環境を仮装展開してビジネスの拡大と安定に貢献」できることを挙げた。
「アクティフィオの利点は、SAPシステムでもそのまま活用することができる点です」
「SAP ERP」は2025年にサポートが終了し、企業は「SAP S/4HANA」への移行を余儀なくされる。特にデータベースは、「SAP HANA」しか使えなくなるため、データ保護やDRの仕組みをどうするか、テストや開発環境向けのデータをどう用意するか、クラウドとどう連携するかなど、基盤の設計や運用の再検討が必要となる。なお、SAPのデータベースである「SAP HANA」には大きく以下の3つの課題がある。
1.データ量が大量であるため、大容量のストレージが必要であり、バックアップにも復旧にも時間がかかる。 2.SAPには標準で本番機からテスト機へデータコピーを行う機能があるが、コピーに大変な時間がかかってしまうので、精度の高いデータが取れない可能性がある。 3.「SAP HANA」は年に1回行われるマイナーバージョンアップはサポートが2年までとなっており、それ以降にバッチの配布などは行われない。
これらの課題を解決するために、日立ソリューションズではSAPとアクティフィオを連携したサービスを提供している。
「例えば、HANAデータベースのコピーデータを取ってテスト環境でマウントをしても、そのバックアップデータをSAP S/4HANAで使うためには、少々ややこしい作業が発生します。そこで弊社では、SAP S/4HANAのコピー環境の起動までを自動化するソリューションを用意しています」
大盛況だった「Actifio Data Driven 2019東京」。会場は常に熱気にあふれていた。
さらに詳しい情報は以下のページへ
データ仮想化がもたらす、 新たな潮流
[PR]提供:アクティフィオ