2019年7月11日(木)、大手町の日経ホールで「システム管理者感謝の日イベント」(主催:システム管理者の会、運営委託:ユニリタ)が開催された。 毎年7月最終金曜日の「システム管理者感謝の日」を記念して実施される本イベントも今回で第13回目。 今年は「圧倒的Live感!! 君たちはこのスピードについてこられるか?」をテーマに数々の発表が行われた。当日の模様をレポートする。
モノからコトへ変化する時代、重要なのは圧倒的Live感
モノからコトへ──。 消費者はモノの良さに満足するだけでなく、そこから得られる感動を求める時代になった。これはIT分野でも同様で、単なるシステム提供だけでなく、利用者にどういう感動を与えるかというサービス提供がカギとなる。
開会に先立ち登壇したシステム管理者の会 推進委員代表 NTTコムウェアの関 洋介氏は「その場で起こっていることを体感するビジネスモデルです。システム管理にかかわる人は、モノをつくって提供し安定稼働させるだけでなく、ユーザーと同時進行でLive感を共有してITを進化させることが重要です」とイベントのテーマを説明した。
また、推進委員の国分グループ本社 安村 俊祐氏は、システム管理者の会の活動紹介として、直近1年で個人会員が571名増の1万6,818名、賛同企業が42社増の207社にそれぞれ増加したことを報告。 システム管理者認定講座の合格者数は、上級、中級、初級あわせて2018年度は131名を輩出した。 アップデートミーティングやリーダーズミーティング、ポータルサイト/SNSを使った告知・広報、カレー「おつカレー様」の配布など、積極的に活動を行っていることを紹介した。
DevOpsの本質とは? DevOpsエバンジェリスト加藤 稔氏が解説
最初のゲスト講演に登壇したのは、NTTコムウェアのDevOpsエバンジェリストである加藤 稔氏だ。ビジネスを支える新しい技術をテーマに「えっ!? ウチとこのDevOpsズレてますの? ~アンチパターンから振り返るDevOpsの本質~」と題して講演した。
加藤氏は「開発と運用が仲良く協力することがDevOpsの本質ではなく、サービスライフを通したバリューストリームの反復が重要です。『1日10回デプロイ』という言葉も『どこへデプロイするか』という視点でみると、開発と運用で意味が真逆になる。ユーザー企業がDevOps人材をつくろうとして協力会社の社員のアジァイル養成所になることも」などDevOpsへの誤解や失敗をユーモラスな語り口で解説した。そのうえで「これから先のシステム運用(Ops)はイノベーション創出の中核になります。
運用コストの削減や上からの一方的な『何かやれ』に負けることなく、自分たちにとってのDevOpsの重要性を理解し実践することが大事」とアドバイスした。
ヒト、モノ、カネが集まるeスポーツの世界をRIZeST古澤 明仁氏が解説
2つめのゲスト講演には、eスポーツの大会運営などを行うRIZeSTの代表取締役 古澤 明仁氏が登壇。「eスポーツ運営を裏で支えるシステムと、放送価値を付加するサービスとは」と題し、世界的に盛り上がるeスポーツの現場を解説した。
「eスポーツの競技人口は現在4億5,400万人で、2022年には6億人を超える見込み。これはバスケの4.5億人、サッカーの2.6億人を超える規模です。eスポーツは、性別、国籍、人種、言語、宗教、身体能力のカベを超え、世界でもっとも多くの人に楽しまれるスポーツジャンルです」(古澤氏)
大会はリアルなスポーツさながらの興奮があり、世界中からヒト、モノ、カネが集まっているという。古澤氏は、大会運営の舞台裏をビデオで紹介しながら、3D映像のリアルタイム編集やプログラムと連動させた映像化、VR/ARへの対応など、システムが日進月歩で高度化していると説明。その一方で「高度なシステムを支えるために、高いゲーム知識力、解析力、判断力、コミュニケーション力を持った人材が重要です」と指摘し、eスポーツの現場で起こっている興奮をLive感もって会場に伝えた。
アワード受賞企業 シーエーシー ~ 4つの活動でモチベーションアップ
システム管理者アワードは、3社が受賞した。
1社めは、システム構築サービスやシステム運用管理サービス、BPOサービスを展開するシーエーシーだ。「世界をフィールドに先進のICTをもって新しい価値を創造する」を目指す同社は、「MVP表彰制度」「QC活動発表会」「月間MVP」「ぐっじょぶメール」の4つの活動で、メンバーのモチベーションアップにつなげる取り組みが評価された。
登壇した徳岡 悠史氏は「組織としての一体感が強まり、お客様に対してより高いサービスの提供ができるようになったと考えています。QC活動発表会など特別な成果と、メールやSNSでメンバーを褒めるぐっじょぶメールのような日常的な成果を組み合わせることが大切です」と活動のポイントを紹介した。
また、注意点として「これらの活動にパワーをかけすぎてメンバーの負荷を上げると本末転倒です。日々コミュニケーションを重ね、適正なラインを見つけること。しっかり話し合って状況にあわせるDevOps的な活動がポイントです」とアドバイスした。
アワード受賞企業 リコーITソリューションズ ~ 感謝を伝えるエンジェルレポートを設置
2社めのアワード受賞企業は、リコーITソリューションズだ。「人・情報・信頼を技術でつなぐ イノベーション企業へ」を経営理念に、リコーの製品やサービス向け制御ソフトの開発や、リコーグループの社内ITインフラの構築・運用を担当する同社。アワードでは「エンジェルレポート」で褒めたたえあうカルチャーづくりの取り組みが評価された。
エンジェルレポートは、目に付きやすい箇所に配置したホワイトボードに、誰でも簡単にメモやメッセージを貼ることで気軽に感謝の意を伝えるもの。多数投稿した人に贈られるベストフォロワー賞、もっとも多くの人から感謝を受けた人に贈られるベストフォロー賞、褒めたたえる文化を推進した人に贈られる北條賞などの表彰がある。
2019年3月から活動を開始し、現在の参加者は本社勤務500名ほど。本社以外の拠点へ広げている最中だ。中村氏は「システム運用の業務そのものの雰囲気をさらに明るく活性化することで運用品質も向上すると考えています。マネジメント技術やITは必要ですが、良いカルチャー作りも大変重要。褒めたたえる、感謝し合うというカルチャーづくりを今後も進めていきます」と述べた。
アワード受賞企業 フェス ~ 日頃の頑張りに対する表彰制度を開始
3社めのアワード受賞企業は、インフォメーション・ディベロプメント(ID)グループでシステムマネジメントやヘルプデスク、教育サービス、コンサルティングなどを手がけるフェスだ。同社は今年から「社員の日頃の頑張りを表彰したい」「表彰が社員の励みの一助になれば」との思いから、表彰会の実施をはじめた。
表彰は、事業部内の4グループを対象に4半期ごとに1名。今回受賞した4人は「顧客業務に関するスキルが必要な環境で顧客事業に貢献」「顧客のインフラ行動化に向けた取り組みとユーザー向けインフラ構築に貢献」「医療系システムのオペレーション業務改善・自動化を推進し、コスト削減と負担軽減に貢献」「業務分担の見直し、開発対象の絞り込みで生産性向上に貢献」したことが高く評価された。
東郷氏は「お客様や事業部門に価値あるシステムを提供するうえで、DXやIoTなどの技術に挑戦する人、旧来のシステムを粘り強く管理する人の両方が必要です。前向きに業務に取り組むエンジニアを今後も応援していきます」と意気込みを語った。
システム管理者の役割も変化、DXのアクセラレーターにも
閉会の挨拶には、ユニリタ 代表取締役社長の北野 裕行氏が登壇。セッションや展示を振り返りながら「デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みでは、システムの管理や運用、サービスマネジメントが重要です。今までの役割よりも高いものが求められる時代です。システム管理者は、単に作られたものを運用管理するというのではなく、DXのアクセラレーターになってほしいと思います」とメッセージを贈った。
本会の終了後には、講演者やアワード受賞企業を交えた情報交換会も行われた。ブースにはアワード受賞企業の取り組みを紹介したパネルのほか、「シス管系女子」の書籍販売や「システム管理者認定講座」を紹介するブースも設けられた。Live感が伝わる数々のセッションや展示により、例年にもまして盛り上がったイベントとなった。
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