第5世代移動通信システムである「5G」の商用化が海外で始まるなど、世界規模でネットワークの新たな時代が幕を開けようとしている。こうした時代に求められる、高性能なデータセンター基盤や、広帯域なインターネットバックボーンを提供するための環境づくりに注力しているのが、日本ではじめての専業型インターネット・データセンター事業者として2000年に設立された株式会社ブロードバンドタワー(以下、ブロードバンドタワー)だ。
そんな同社が新たな時代に適した環境づくりの一環として取り組んだのが、既設インターネットバックボーンの全面的な更改だ。
【背景】100Gbps化に必要な自由度とコスト圧縮を可能にする“Third Party Optics”
2018年8月、ブロードバンドタワーは日本におけるインターネットの中心地である東京都千代田区(大手町地区)に、5G時代のデータセンターを標榜する「新大手町サイト」を新設、同時期にインターネットバックボーンの刷新を行った。この背景について、同社 テクニカルデザイン本部 システムデザイングループ 兼 ネットワークデザイングループ ディレクター 水落 明宏氏は、次のように語る。
「新大手町サイトの新設計画が進むころ、既設のインターネットバックボーンも耐用年数に達するタイミングを迎えていました。そこで、5Gの環境にも対応できる、広帯域かつ低遅延なネットワーク環境の整備に向けて、スイッチやルーターなども含めた全面的なネットワーク刷新を行ったのです」
特に今回の刷新では、100Gbps・10Gbps双方に対応できる小型のルーターやスイッチを多数導入することで、顧客企業の要望や環境の変化へ柔軟に対応が可能な「モジュラー型バックボーン」を目指したという。そのインターネットバックボーンをはじめとするネットワークの一部に、マクニカが提供する米Finisar Corporation製の光トランシーバー(以下、Finisar)が採用されている。同社がFinisarを採用したのは、メーカー純正品では新たなネットワーク整備における必要要件を満たすことが難しかったためだという。
「我々が目指したモジュラー型のネットワークは、スケールアウト/アップが柔軟に行えるような自由度の高いものです。例えば、お客さまの要望に応じて10Gbpsから100Gbpsにアップグレードするといった変更を柔軟に行えることが1つのテーマにあったのです。そこで検討したのが、我々でコントロールしやすい“Third Party Optics”でした」(水落氏)
また、今回のネットワーク更改において、社内提案からRFP作成までを手掛けたブロードバンドタワー Cloud & SDN研究所 プロフェッショナルの加藤 良輔氏は、「限られた予算のなかで最適なネットワークを作るためには、“Third Party Optics”が最適だと考えたのです」と、コスト面での採用理由を補足する。
【導入】適切なOptics選びが可能に、技術の底上げにも大きく貢献
そうした中、同社が注目したのがFinisarにおいて国内で豊富な経験と実績を持つマクニカだった。
「Finisarは、低速から高速まで豊富なバリエーションがラインナップされている点をはじめとして、製品検査の情報提供や品質基準の提示などによって、安心感が得られる部分も高く評価しました。また初期の調達だけでなく、今後追加してく際の調達コストが維持できるかどうかも重要視しており、その要求に応えてくれたのがマクニカだったのです」(水落氏)
さらに、Opticsに対する豊富な知見を持ち、製品選定のアドバイザーとして関わった、同本部 テクニカルセールスグループ シニアコンサルタント 佐伯 尊子氏は、「今回統一したルーター製品との相性や実績についてもFinisarを高く評価していました。以前から、スイッチメーカー純正品における光トランシーバーとしてもFinisarの名前はよく見かけており、その実績については十分把握していました」と語る。
マクニカについては、以前からデータセンター間接続における高速化プロジェクトで利用するための複数波長の光信号を合波・分波する機器に関して情報提供を受けていた経緯もあり、光学分野での広い知見についても高く評価していたという。
「技術的な側面はもちろん、柔軟に対応いただける点を評価しました。また、海外のFinisarの技術者も積極的にお呼びいただき、最新の技術動向や新規格の留意点なども詳しく伺うことができるなど、メーカーと緊密に連携している点も大きな魅力の1つです」と、佐伯氏はFinisarとマクニカの組み合わせのメリットを強調する。
同社では現在、コアネットワークは全て100Gbps、アグリゲーションネットワークは100Gbpsを中心に一部10Gbpsにて構成。100Gbpsについては対外接続でLR4、内部接続でCWDM4を採用している。また、アクセスネットワークは1Gbpsも含めて顧客の規模に応じて柔軟に組み替え可能な構成となっている。結果として1Gbpsで2種類、10Gbpsで3種類、100Gbpsで2種類の計7種類の光トランシーバーをトータルで500個ほど導入しているという。
【効果】純正品と比べ大幅なコストカットにて調達実現、資産管理業務も大幅削減
今回の調達では、スイッチベンダーの純正品に比べて驚くような価格で調達できた光トランシーバーもあるという。純正品とそん色のない品質でありながら低価格であることから、圧倒的なコスト削減につながったという。以前は調達費用が高額なために顧客提案前に固定資産化するための社内稟議が必要で、場合によっては受注制限が発生する可能性もあったというが、今では消耗品の扱いで予備の在庫も十分持てるようになり、営業活動にも支障がなくなっているとのことだ。
「固定資産管理から在庫管理という位置づけに変わったことで、資産管理という部分での手間は大幅に削減できています。コストの面で100Gbps化をあきらめている企業も多いと思いますが、“Third Party Optics”での調達であれば十分可能なはずです」(水落氏)
また、技術的な視点で見れば、「IEEEで規格化されたLR4とMSA (Multi-Source Agreement: メーカー間合意規格)のCWDM4を用途に応じて適切に選択できるようになりました」と加藤氏はその効果を述べる。
「データセンター内であれば2km以内でほぼ構内配線が終わるため、安価に調達できるCWDM4が選択できます。調達費用とのバランスを考えたうえで、適切なOpticsが選択できるようになったのは大きいですね。さらにeLR4といった従来の伝送距離以上の規格を網羅できる機器についても製品化されているため、今後の調達も考慮できると思います」(加藤氏)
また、適切なOpticsという視点を技術者が理解できるようになった点も大きいという。
「Opticsに対するロジック的な視点を技術者が理解できるようになり、自分たちでバリエーションの選択が正しくできるようになりました。技術の底上げにも大きく貢献しています」と佐伯氏は教育的な効果を語る。
今回はインターネットバックボーンにおいてFinisarを採用したが、同社では、提供するクラウド事業にて運用するスイッチやサーバーでの利用といった横展開も視野に入れながら、Finisarを積極的に活用していきたいという。
「今後は“Third Party Optics”を前提とした調達に切り替えていきたいと考えています。ネットワーク機器メーカーとの調整は必要ですが、当社内での情報システム部門への紹介も含めて、他事業への横展開を行っていきたいです。また、Cloud & SDN研究所を中心に検証を進めている400Gbpsといったさらなる広帯域化への取り組みに対するご協力についても、パートナーとしてのマクニカに期待を寄せています」(水落氏)
User Profile
株式会社ブロードバンドタワーURL:https://www.bbtower.co.jp/
日本初の専業型インターネット・データセンター事業者として2000年に設立。データセンターサービスを中核に、クラウドサービスの「c9」や、Dell EMC Isilon(アイシロン)・Scality RINGなどのストレージソリューション、情報セキュリティソリューションといったコンピュータプラットフォーム事業、IoT/AIソリューション事業、メディアソリューション事業を展開している。新たなデジタル変革時代の到来に対応すべく2018年8月に東京都千代田区(大手町地区)に開設した「5G」時代のデータセンター『新大手町サイト』では、日本を代表する3大IX (JPIX, BBIX, JPNAP)や、代表的なメガクラウドとの直接接続を実現、キャリアニュートラルな環境の提供とも相まって、重要ビジネスの基盤として、多数の企業や組織から高い信頼と注目を得ている。
Finisarの詳細はこちら
https://www.macnica.net/finisar/
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