2020年1月14日、Windows 7のサポートが終了する。その後もWindows 7を使い続けることには大きなセキュリティーリスクがあるため、個人法人問わずWindows 10への移行が急務となっている。
もっとも、法人の場合は「明日からサクッとWindows 10へ移行しよう!」というわけにはいかない。データの移行や、アップデートに失敗した際のリカバリー、そもそも現在のPCが新OSに対応しているのかなど、さまざまな検証と準備が必要になるからだ。
5月22日に開催された「迫るサポート終了!!事例で学ぶ Windows 10 移行セミナー」では、横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 ソフトウエア&サービス事業部 事業部長・松尾 太輔 氏が登壇。Windows 10移行と運用のポイントについて講演を行った。
PCは“所有する”から“レンタルする”へ
横河レンタ・リースは法人向けPCやタブレット、計測器・測定器などのレンタルを主に行うレンタル会社だ。また、データレスPCTMソリューション「Flex Work Place」、PCデバイス管理「Simplit Manager」や、Windows 10 運用ソリューション「Unifier Cast」などの自社開発ソリューションも提供している。
レンタル会社がソフトウエアを開発していると聞くと意外に感じるかもしれないが、実は株主である横河電機がヒューレット・パッカードと合弁で横河ヒューレット・パッカードを立ち上げた経緯があり、現在は資本関係こそないものの人材や技術交流は続いているのだという。
さらに松尾氏は、横河レンタ・リースの強みとして「レンタル会社だからこそPCのリフレッシュや再設定に長けている」ことを挙げる。同社はWindows 10への移行に関する業界のオピニオンリーダーだが、“開発体制を持つレンタル会社”であることがその背景にあるわけだ。
そんな松尾氏によると、「Windows 10は導入してからが大変」なのだという。どういうことなのか。
「Windows XPからWindows 7への移行の際はアプリケーションの互換性が問題となり、改修するのが大変でした。一方でWindows 7からWindows 10への移行ではアプリケーションの互換性はそれほど問題になりません。しかし、今度は運用を見直す必要が出てきたのです」(松尾氏)
運用の見直しを迫られる原因は、AppleやGoogleが提供するスマートフォンデバイスとの競争力を維持するためだろうと松尾氏は分析。今後はOSの技術革新と共にハードウエアの陳腐化も早くなると予想する。
そうなれば、PCは平均2.4年程度でリフレッシュすることになり、これまでのように4年ほどかけて減価償却するのが難しくなる。その結果、PCは“所有する”のではなく“レンタルする”のがデファクトスタンダードになっていくのだ。
PCにデータを保存しない、が正解!?
では、Windows 10への移行で具体的にどんな問題が生じる可能性があるのか。最大の難関はデータの移行だ。Windows 10ではかつて移行によってデータが消えるというバグが発生したことがあり、急遽配信を停止する事態に至った。さすがにこれは稀な例だが、それ以外にもデータ移行は何かとトラブルのもとになる。
たとえば移行元のPCがHDDで、移行先のPCがSSDだった場合、コストの兼ね合いから同容量のSSDを用意することは難しい(256GB以上になるとSSDの方がコストは高い)。もし、HDDの容量をフルに使っているような場合は、追加コストが発生することになる。しかも、アップデートには容量が30GBほど必要になるため、その分も確保する必要がある。苦肉の策で自社のファイルサーバーにデータを逃がす企業もあるが、そこでも容量が足りず、行き詰まることも珍しくないという。
そこで松尾氏が推奨するのが、そもそもPCにデータを保存しないデータレスPCソリューション「Flex Work Place Passage Drive」(以降、Passage Drive)だ。
たとえば会社でMicrosoft Office 365を契約している場合、同時に「OneDrive for Business(以降、OneDrive)」が提供されるが、こうしたクラウドストレージをデータの保存先として活用するわけだ。「Passage Drive」を導入すると、PCのユーザー領域がストレージにリダイレクトされるようになり、データは自動的にOneDriveにアップロードされる。つまり、PC本体にはデータが存在しないわけだが、見た目上は普通のPCと同じくローカルにデータがあるかのように扱えるため、普段の利用にも違和感が出ないのだ。
なおユーザー領域以外のリダイレクトされない場所にデータを保存されてしまうと困るのだが、Passage Driveではこうしたローカル領域は自動的に書き込み禁止になるため安心だ。どうしてもオフラインで使用したい場合は、RAMDiskを用いることになる。
Passage Driveのメリットは運用が簡単で、なおかつPC1台あたり月額500円から利用できること。ここがレンタル会社としての強みだと松尾氏は胸を張る。
さらに、データをローカル環境に保存しないということは、どこからでもデータにアクセスできるということでもあり、マルチデバイスによるリモートワークなど多様な働き方にもつながる。生産性を高める上でもデータレスPCは非常に有効なソリューションなのだ。
“Windows 10のアップデート”という落とし穴
Windows 10のアップデートにはもう一つの大きな課題がある。それは、“アップデートサイクルが非常に短い”ということだ。頻繁なアップデートに対応するためには、検証環境での確認は最低限のものとし、なるべく早く本番環境へ展開して問題を抽出するパイロット運用がおすすめだと松尾氏は述べる。
横河レンタ・リースでは、パイロット運用をより簡単に行うためのダッシュボード機能を提供。進捗状況やPC一覧などを可視化できる他、アップデートが失敗した際には同社が持つトラブルデータベースを参照することでエラーコードを分析。原因を予測してトラブルシューティングを行ってくれるという。
また、アップデートでは約8GBものデータをダウンロードすることになり、会社のネットワークにかかる負荷もばかにならない。そこで横河レンタ・リースはアップデータを取得して小さなデータブロックに分割、それを少しずつ流すことで帯域に負担をかけないというソリューションを開発、「Flex Work Place Unifier Cast」(月額200円)(以降、Unifier Cast)として提供している。大きなファイルをそのままコピーすると、途中で接続が切れた際に一からやり直しになってしまうが、Unifier Castで分割すれば途中から再開できるというメリットもあるのだ。
さらにデータブロックの受信は全拠点共通で行えるため、たとえば東京本社のPCで途中まで移行作業を行い、その後、大阪支社に移動してアップデートを再開するということも可能である。他にもサインイン不要でアップデートがかけられたり、急なアップデートが始まらないようアクションセンターで通知が出せたり、管理者側で強制的に実行する期間を設定できたりなど、国内開発製品だからこそのかゆいところに手が届くソリューションである。
Windows 10環境ではクローニング運用にもリスクがある。これまでは約半年に一度、新しい機種が出るたびにマスターPCを作成し、出荷したPCに障害が発生した場合は過去のマスターイメージから復元が可能だった。
しかし、Windows 10では新しい機種が出るだけでなく、OSのバージョンもアップデートされる。そのため、約半年ごとにすべての保有機種のイメージを再作成することになってしまうのだ。そもそもクローニングに必須のシステム準備ツール「Sysprep」の仕様自体が公開されていない。Windows XPやWindows 7ではそれでも長らく仕様が変わらなかったので把握することが可能だったが、仕様がころころ変わるWindows 10では確認の手間も増えてしまうことになる。
こうした問題を解決するのが横河レンタ・リースの「Simplit プロビジョニング」である。設定とアプリを最初に一回だけ同社にデポジットすれば、プロビジョニングパッケージを作成し、ユーザーの標準環境にセットアップされた最新のWindows 10が手元に届くというソリューションである。バージョンアップされていくWindows 10の再セットアップまで見越して初期セットアップを設計するため、OSの更新に合わせてマスターイメージをつくる作業から解放されるのである。
松尾氏は「Windows 7のサポートが終了する来年、アップデート難民であふれかえるだろう」と予測する。
その上で、「今後は『Device as a Service』が主流となります。Windows 10への移行は新しいPCのあり方を考える良い機会。当社は月額で小さく始められる手軽なソリューションをそろえているので、ぜひご検討ください」と述べて講演を締めくくった。
なお本稿では、セミナーにて使用されたスライド「全て見せます 横河レンタ・リースのWindows 10 の移行と運用」のPDFを提供している。興味を持った方は、ぜひダウンロードして、その内容を確認していただきたい。
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