2019年5月23日、ザ・プリンス パークタワー東京で、JBグループ主催「JB Groupと創るITの未来展2019」が開催された。会場には1,600名近い参加者が訪れ、ITの各分野でリーダーシップを持つ協賛パートナーと共に「DX」「働き方改革」「クラウド」といったさまざまなテーマのセッションや、60を超える多彩なITサービス・ソリューションを展示。ジャーナリスト・池上彰氏による基調講演も行われ、参加者たちは幅広い情報に熱心に耳を傾けていた。

基調講演前の冒頭あいさつでは、4月より新たにJBCCホールディングスの社長となった東上征司氏が「技術力をベースに顧客が抱える課題を解決し、次の仕事も一緒にやりたいと言っていただける会社になることを目指している」と意気込みを語った。

DX」を中心に扱った前回に続き、今回は「働き方改革」をテーマにした講演・展示をピックアップして紹介しよう。

当たり前と思われているものを「止める」ことから始める

「働き方改革とセキュリティの仁義なき戦い~両立するためには何が必要なのか?~」と題した講演を行った日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤円氏

「働き方改革とセキュリティの仁義なき戦い~両立するためには何が必要なのか?~」と題した講演を行った日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤円氏

「働き方改革とセキュリティの仁義なき戦い~両立するためには何が必要なのか?~」と題した講演を行ったのは、日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長の澤円氏だ。

澤氏は世の中のデータ量が増え続けている背景を説明し、「働き方改革を語る前に理解しておくべきなのは、世界はデータで動いていて、データを活用してはじめて働き方も変えられるということです。そして“データとして存在する”ということは、それを守る必要が出てくるということです」と語る。

セキュリティ確保のためには、「運用でカバーする」という考えを止めることが重要だ。 「運用で人の手を介すことがリスクになるため、セキュリティを担保するには『いかに自動化するか』が重要です。セキュリティツールを入れるとか、セキュリティのために自由度を下げるとかいうことではありません」と澤氏は強調した。

自由を奪われた社員は、抜け道を探してリスキーな行為に及んでしまう。これを防ぐには個人の責任を明確化したうえで、自由を与えることが重要だという。

また惰性でやっていることは、すべて止めるべきだと澤氏は力説する。「とりあえず」印刷する、「とりあえず」会議をする……、それが惰性かどうかは「とりあえず」という言葉が指標になる。

こうした「止める」という取り組みによって、同社で消費される紙は10年で80%削減、業務時間は13%の削減につながったという。 澤氏は「当然と思われているものを止めてみてください。そうすれば時間が生まれます。そして自分はどうなりたいのかを見つめ直し、自分なりの働き方をデザインしていただきたいと思います」と強調した。

AIチャットボットで「確認作業」の手間と時間を圧縮

USEN-NEXT GROUPからは、企業の働き方改革支援を主な事業とする株式会社USEN Smart Worksの代表取締役社長 大下幸一郎氏が登壇し、「USEN-NEXT GROUPが取り組むWork Style InnovationとAIチャットボット活用について」というテーマで語った。

USEN Smart Works 代表取締役社長 大下幸一郎氏による講演「USEN-NEXT GROUPが取り組むWork Style InnovationとAIチャットボット活用について」

株式会社USEN Smart Works 代表取締役社長 大下幸一郎氏による講演「USEN-NEXT GROUPが取り組むWork Style InnovationとAIチャットボット活用について」

2017年12月に発足した同グループでは、さらなる生産性の向上と、社員が生き生きと働ける環境づくりを目指して、働き方改革に取り組み始めた。施策としては「時間と場所からの解放」を念頭に、フレックスタイム制度、テレワーク勤務制度、業務改善案を社内から募る「Innovationコンテスト」、個性を重視した服装を認める取り組み「Cool & Smart Biz!」の4つが実施され、社員からはおおむね肯定的な意見が寄せられているという。

また同グループのUSEN ICT Solutionsでは、限りある時間を有効に活かすための手段として、AIチャットボットを導入している。これはJBCCが提供している「Cloud AI」を「Hangouts chat」や「kintone」などと連携させたものだ。

具体的な活用方法としては「FAQ人事総務検索」がある。たとえば「結婚したら、どのような手続きが必要ですか」と口語体でチャットツールに入力すると、AIがその意味を認識して回答を検索し、必要な申請や手続き方法を返答してくれるというものだ。

ほかには、顧客からの問い合わせに迅速に回答できるよう、同グループが取り扱っている多彩なサービスメニューの内容を表示する「サービス情報検索」や、ミーティングを行いたいスタッフのスケジュールや会議室をチャットボットに押さえさせる「スケジュール検索」に、このシステムが活用されているとのことだ。同社では、こうした自グループでの活用経験を、今後さまざまな企業の働き方改革の支援に活かしていくという。

クラウド活用によって効率化された時間で「共感」を生む地域活動を

サイボウズ株式会社 社長室フェロー 野水克也氏は「働き方改革とクラウド活用で蘇った企業事例」と題した講演を行った。野水氏はクラウドを利用することで、どこにいても仕事に必要な知識・ノウハウが得られるナレッジシェアリングや、「高度な仕事」と「それができる人」のマッチングが容易になり、ワークシェアリングと仕事のリモート化が進むと説明する。

  • サイボウズ株式会社 社長室フェロー 野水克也氏。「働き方改革とクラウド活用で蘇った企業事例」と題した講演を行った

    サイボウズ株式会社 社長室フェロー 野水克也氏。「働き方改革とクラウド活用で蘇った企業事例」と題した講演を行った

労働の負荷が分散され、社員がさまざまな地域活動に参加できるようになれば、そのコミュニティの中に「●●さんが勤めている会社」という共感をつくり出すこともできると、野水氏は語る。

「消費者は企業への共感度で製品やサービスを選ぶため、企業は社員を通じて地域社会に“顔を売る”機会を増やした方が利益につながると言えます」と述べた。

同社では「cybozu.com」や「kintone」など多彩なクラウド型ソリューションにより、こうした働き方改革やビジネスモデルの変革をサポートしている。講演では「全国のワーキングマザーとスマホで連絡を取り合いながら、マンションなどの清掃を請け負う企業」「患者の情報を共有することで医師・看護師の担当制を廃止し、赤字を解消した診療所」など、同社のソリューションを組み合わせ、効果を上げている事例が紹介された。

野水氏は「自社の個性を活かすこと、地域の幸せを考えること、時間よりスキルを重視した人材活用、クラウドによる情報共有・マッチング――これらを実践する会社が、今後はどんどん業績を伸ばすようになっていくでしょう」と強調した。

AIが音声をリアルタイムにテキストデータ化、議事録作成の労力を省く

IT製品の販売、サポートなどを幅広く手がける株式会社イグアスは、会議支援ソリューション「AI Minutes for Enterprise」を展示し、来場者の注目を集めていた。これはIBMのAIである「IBM Watson」を利用し、音声をリアルタイムにテキストデータ化するクラウドサービスだ。会場ではその場で喋った言葉を文字起こしするデモも実施されていた。

議事録作成の際、録音データの文字起こしには時間と手間がかかるものだが、このソリューションを利用すれば、マイクから入力された音声がすぐにテキストデータとして出力される。入力言語は10言語に対応しており、さらにそれを21言語にリアルタイム翻訳することもできる。議事録作成以外に、コールセンターでの通話ログ作成や、国際的なミーティングでの意思疎通などに活用できる。

「専門の用語や出席者の音声を事前にAIに学ばせれば、より精度の高い文字起こしが可能です。販売開始から1年ほどになりますが、導入いただいているお客様は増えてきています」と、同社製品&ソリューション事業部 ソリューション営業部の西出貴司氏は説明する。

  • 展示では、その場で話した言葉をリアルタイムにテキスト化するデモが行われていた

    展示では、その場で話した言葉をリアルタイムにテキスト化するデモが行われていた

あわせて「AI Minutes for Enterprise」で作成したテキストデータをAIが分析し、自動で要点を抽出、サマリーをつくる「Meeting Activator for AI Minutes」のプロトタイプも紹介されていた。

働き方改革を扱った展示・講演は、どこも賑わいを見せており、この問題への関心の高さをあらためて感じさせられた。多くの来場者が、改革へのヒントを持ち帰ることができたのではないだろうか。

「JB Groupと創るITの未来展2019」は、この後、名古屋、大阪でも開催され、来場者は2,800名を越えた。働き方改革に限らずDXクラウドに取り組んでいる企業にとって、JBグループが提供するソリューションは見逃せない選択肢となるはずだ。

[PR]提供:JBCCホールディングス