目前に迫ったAI・IoT時代の到来。米国の大手IT企業「GAFA」の例を見るまでもなく、今後はデータを有効活用した企業が、ビジネスを拡大し、企業価値を高めていくことは疑う余地もない。しかし、いかに大量のデータを集め有効な分析ツールを導入したとしても、組織の「データリテラシー」が低ければ、それを十分に活用することはできない。
2019年6月4日、ベルサール六本木で開催された「データ活用セミナー」では、「組織が備えるべきデータリテラシー」をテーマに、様々な調査結果や事例に基づいた提案が行われた。本稿では、当日のセッションの中からデータリテラシーに関する調査結果の報告がなされたセッション1と、データリテラシー向上を推進するための第三世代BIソリューションに関する紹介が行われたセッション2について紹介する。
データリテラシーは、企業価値にも影響する
セッション1に登壇したのは、クリックテック・ジャパン ソリューション技術部 部長の濱野正樹氏だ。
Qlik Technologies(以下 Qlik)では、「データリテラシー・プロジェクト」の一環として、様々な調査・研究を実施している。その中の一つ、データリテラシー指数に関する研究結果(*1)によると、調査対象の平均的な組織規模(企業価値1,070億ドル)と比較して、データリテラシー指数が高い大企業は企業価値が最大で5億3,400万ドル高いことが判明した。また、データリテラシー指標が上位3分の1に入っている企業は、企業価値が3〜5%高くなっている。さらに高いデータリテラシーは粗利益、資産収益率、配当、利益率など、他の業績指標に対してもプラスの相関を持つことが明らかになった。
(*1)Qlik Technologies Inc. が進める「データリテラシー・プロジェクト」の一環として、ペンシルベニア大学ウォートンスクールと米国大手調査会社であるIHS Markitによって実施された学術研究
データリテラシーに自信がない日本
世界各国のデータリテラシー指標はシンガポールが最も高く(企業データリテラシースコア84.1)、英国(81.3)や米国(72.6)を上回っている。アジア太平洋地域では、インド(76.2)やオーストラリア(72.4)が比較的高いスコアを記録している一方、日本のスコアは54.9と他の先進国と比較して決して高いとは言えない結果となっている。
また、Qlikが発表した独自調査結果によると、アジア太平洋地域5か国(日本、インド、オーストラリア、シンガポール、中国)において、「データリテラシーに自信がある」と回答したのはインドが最高で45%。一方で日本はわずか6%と、5か国中最低の結果となった。さらに、「業務での高パフォーマンス発揮に必要なデータにアクセスできる」と回答したのは日本では28%となり、こちらも対象地域内で最も低い結果となった。このことから日本のデータリテラシーを阻害する要因の一つとして「データアクセス権限の低さ」があるものと考えられる。
データにアクセスできる環境と企業文化の醸成が必要
リテラシーとは、それが個人のレベルであれば、使いこなすための知識や技術を意味する。例えばデーサイエンティストであれば、十分なデータリテラシーを持っている、と言ってもいいだろう。しかし、組織のデータリテラシーは、単に知識や技術を持つ人が社内にいればいいというものではない。
「たとえ、組織に優秀なデータサイエンティストがいたとしても、それだけでは組織のデータリテラシーが向上したとは言えません。また前述した調査結果にもあるように、データへのアクセス権限が低ければ、データリテラシーが高い人がいても、組織全体としてのデータリテラシーは低くなります。なにより、組織にデータを活用しようという文化がなければ、データリテラシーが高くなるはずがありません」(濱野氏)
つまり、組織のデータリテラシーとは、自由にデータへアクセスできる環境と、データから得られた分析結果を活かす企業文化の醸造が必要となる。そしてQlikでは、データリテラシーを向上させるために必要な知識と技術、そして文化を贈乗するためのプログラムを提供している。なお、詳細については以下を参照いただきたい。
Qlik データ リテラシー プログラム
https://www.qlik.com/ja-jp/services/training/data-literacy-program
データリテラシー向上を実現する第三世代BI
セッション2に登壇したのは、クリックテック・ジャパン ソリューション技術部 ソリューション・アーキテクトの鈴木由紀氏だ。
企業としてデータリテラシーを上げるポイントとして、従業員のスキル向上、必要なデータに誰もがアクセスできる環境、すべての部門でのデータ活用があげられる。そして、それを実現するものこそ、Qlikが第3世代BIと呼ぶ様々なソリューションである。なおQlikでは、第3世代BIへのアプローチとして以下の3つをあげている。
1.データの民主化
すべてのユーザーが、統制されたアナリティクス対応の全社的な情報カタログを通じて、あらゆるデータやデータの組み合わせにアクセスできる。
2.拡張知能
機械学習の能力と人間の直観を組み合わせ、新しいインサイトを推奨してユーザーのさらなる調査を促すことで、スピーディな探索を可能にし、データリテラシーと信頼性を強化。
3.あらゆる領域へのアナリティクスの組み込み
エッジデバイスからコアアプリまで、アナリティクスを組み込み意思決定の一部とする。
セッションでは、同社が提供するBIソリューションの導入事例についても紹介された。
【事例 1】グローバルでの活用に向けてユーザー数を3倍に
米国の某ソフトウェア開発会社では、グローバルでのBI活用を進めるためにユーザー数の倍増を検討していた。だが、それまで使用していたBIはクエリの実行に時間が掛かり、データの抽出には事前の依頼が必要だったため、大幅なユーザー数の増加(700から1500以上を想定)には対応できなかった。Qlik製品の導入により、統制された一つのデータソースに多くのユーザーが同時に参照できる環境が実現。なお、現在のユーザー数は2000人以上となり、それを2名で管理運用(以前は6人)している。
【事例 2】大規模合併によるユーザー数増とデータの多様化に対応
某大手製薬会社では、社会の絶え間ない変化に対応するために買収や合併を繰り返しており、従業員数が急増していた。また、様々なチームが多種多様なデータを大量に排出していたため、それらを統合することもままならない状況だった。そこで、企業データ・営業データ・製造データ・R&Dデータを集約して意思決定を行うためにQlik製品の導入を決定。現在では全従業員の約40%(1万人)がBIを活用。開発されたアプリケーションも740あるとのことだ。
【事例 3】現場からの布教活動によって組織データリテラシーが向上
とある製造業の工場において、現場の細かいニーズに対応できるようにしたいとの想いから、工場の現場担当者がQlik製品の採用を決意。その後、社内においてデータ分析の重要性を伝え徐々にメンバーを増やし、全社的な活動へと広げる。一般ユーザー向け、パワーユーザー向けなどの研修に加え、意思決定を行う立場の人に向けたエグゼクティブ向け研修も実施中。
なお、当日の講演で紹介された各種調査結果、およびQlikが提供する第3世代BIの詳細については以下を参照いただいきたい。また、同社ではハンズオンセミナーやオンラインセミナーなども定期的に実施しているとのことなので、もしデータリテラシー向上の必要性を感じているのであれば参加してみることをおすすめする。
Qlik データ リテラシー プログラム
https://www.qlik.com/ja-jp/services/training/data-literacy-program
「Qlik、世界初となる「データリテラシー指数(Data Literacy Index)」を発表、データリテラシーが5億ドルの企業価値増につながることが明らかに」
「Qlik、日本およびアジア太平洋地域の データリテラシーに関する独自調査結果を発表 日本企業のデータリテラシーの欠如が明らかに」
「Qlik 演習で学ぶ、初めてのセルフサービスBI」
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