データセンター事業を展開するアット東京は、同社の設備やサービスを1日から数日単位の短期間で利用できる「アット東京Cloud Lab」を発表した。通常、データセンターの利用にあたっては、機器を設置するラックスペースや電源、ネットワーク回線などを年単位で契約するのが一般的だ。しかし、「アット東京Cloud Lab」では、数日単位で設備を提供する。これは、特に大規模なライブ配信イベントやクラウド接続の検証などでデータセンターを利用したいというニーズへのソリューションだという。なお、一部のオプション機能を除いて、原則3日間までは「お試し」として無料で利用できるとのこと。同サービスの概要や提供の意図について、アット東京の担当者に話を聞いた。
ユーザーの利用実態に適したデータセンターを提供
アット東京 営業本部ソリューション営業部 課長の新妻大輔氏は、「アット東京Cloud Lab」を企画した理由として、近年、メディア業界をはじめとするさまざまな領域で、クラウドサービスを活用するケースが増加していることを挙げる。
「利用量に応じてコストが発生するクラウドサービスの活用が進む中、特にセキュリティや回線スピードが求められる利用シーンで、データセンターとクラウドを接続して使いたいというニーズが出てきています。その際、年単位でしか契約ができない通常のデータセンターの利用スタイルではなく、よりユーザーの利用実態に合ったサービスの提供が必要だと考えたのです」(新妻氏)
こうしたニーズが特に大きいのが、イベントのライブ配信などを行うメディア、エンターテインメント業界だという。アット東京では、2018年12月31日に行われたNTTドコモとPerfumeとのコラボレーションプロジェクト「FUTURE-EXPERIMENT VOL.04 その瞬間を共有せよ。」において、横浜のライブ会場で行われているカウントダウンを、渋谷のスクランブル交差点周辺の街頭モニタ群へ、リアルタイムに配信するネットワークインフラの一部を提案した。このプロジェクトでは、アット東京の、AWSのクラウドとのダイレクト接続のサービスを活用したそうだ。
「特に通信のリアルタイム性や安定性が必須で、そこに高い価値があるようなイベント配信などでは、クラウドを高速なネットワークを通じて使いたいというニーズがあります。『アット東京Cloud Lab』を通じて、こうした利用ニーズを見きわめるのと同時に、データセンターとクラウドとの組み合わせによる、新たなビジネスの可能性も検証していきたいと思います」(新妻氏)
AT Linkage 代表取締役 福谷亮氏の声
AT Linkageは、イベント・映像制作から各種映像・ビジュアル技術の設計・運用を業務としています。NTTドコモのプロジェクト「FUTURE-EXPERIMENT」では映像の配信・伝送と全体のインフラを支えるNW設計・運用を主業務としてジョインしています。
毎回、新規性・独自性が高い要素技術の組み合わせで、新しい体験をイベント参加者・視聴者に提供することをサポートしていますが、新規性が高い面もあって、要素技術の連携・組み合わせの部分はイベントの都度実施内容も変わってくるため、求められる知見は多岐にわたり複雑になってきます。
今回の件においては、Web/アプリケーションサーバーの構築について、当初からかなりの台数が必要になることが想定されており、オンプレミスではなく、クラウド上での環境の構築が最適であることは関係各位が早期に合意できた点でした。しかし、クラウドにサーバーを構築するとしても、横浜アリーナ現地との接続帯域やセキュリティをどのようにして担保するかという課題が残りました。
そこで弊社よりAWS Direct Connectの採用を提案しました。アット東京のDCまでフレッツIPv6網を使ったVPNで接続し、アット東京からAWSまでは「プレミアムコネクト for AWS」を使用して接続するというものです。
アット東京さんにおかれましては、短い期間の中で契約作業や開通に至る面で迅速な対応をいただいたほか、構築・運用面でも手厚いサポートをしていただきました。
「クラウド&データセンター」で生まれるメリットとは
こうしたサービスの提供が可能な背景には、アット東京が昨年より注力してきた各社クラウドサービスとの接続環境の充実がある。アット東京では「IBM Cloud」「Amazon Web Services(AWS)」「Google Cloud Platform™(GCP)」「Microsoft Azure」といった主要なメガクラウドとの接続サービスを提供している。また、IBM Cloud、AWS、GCPについては、各サービスの接続口とユーザーのシステムを光ファイバーでダイレクトに接続し、最高10Gbpsの広帯域で低遅延なデータ通信が可能なサービスを「プレミアムコネクト」として提供している(Azureについては現在「ATBeX ServiceLink」を介した接続のみ提供)。
メガクラウドとアット東京の接続サービスを組み合わせて利用する際のメリットとして、同社、営業本部ソリューション営業部の石川亮祐氏は「セキュリティ」「ネットワークのスピード」「より高いリアルタイム性」そして「コスト」を挙げる。
「専用線での接続になるので、一般のインターネットを経由する場合と比べて、高いセキュリティとスピードを確保できます。また、利用形態にもよりますが、特に大容量のデータを送受信する場合、専用線を用いた方が全体での利用コストを下げられるケースも出てきます。クラウドを活用する際に、広帯域でのダイレクト接続が可能なデータセンターを組み合わせたいというニーズはその部分にもあると見ています」(石川氏)
「セキュリティ」や「数日単位での利用が可能」という「アット東京Cloud Lab」の特長は、メディア、エンターテインメント業界に限らず、他業界の多くの企業におけるクラウドサービスの検証ニーズにも適しているという。
「現在、オンプレミスで稼働しているシステムに対し、メガクラウドへの移行が可能かどうかをテストするといった用途に加え、より先進的なAIのビジネス活用などを検討する際の環境構築などにも利用しやすいと考えています。特に短期間での検証には、無料で提供しているサービス群をフル活用し、データセンターとクラウドの組み合わせで、どのようなことが可能かを存分に試してみてほしいです」(石川氏)
「アット東京Cloud Lab」の「お試し利用」では、「各クラウドとのプレミアムコネクト」「Microsoft Azure接続」「ATBexでの10Gbps接続」といった有料オプションを除く、基本的なデータセンターの設備と機能が、3日間を上限として無料で提供される。無料提供の範囲については、下図を参照してほしい。
ユーザーによるビジネスコミュニティの活性化を目指す
もともと、アット東京は東京電力グループでデータセンター事業を行う会社として2000年に設立され、2012年にセコムグループの傘下となった。業界最高水準の設備群と24時間365日を通じたシステムの安定稼働を支える運用サポート体制は、グローバル企業、金融、証券関連企業といったミッションクリティカルな要件を求めるユーザーをはじめ、多種多様な業界の企業に高く評価されている。いわゆる「通信系」の特定企業グループに属さないデータセンターとして、さまざまなユーザーニーズに合ったサービスを柔軟に提供できるというのも同社の強みのひとつだ。
アット東京では、その特性を生かし、データセンターを利用する顧客同士のコラボレーションを促進するための試みを行ってきた。例えば、顧客同士のコミュニケーションやビジネスマッチングを実現するための「AT TOKYO Business Portal」、アット東京内にある顧客間のシステムを容易に相互接続できる「ATBeX PartnerLink」などは、その取り組みの一例だ。
今回新たにスタートする「アット東京Cloud Lab」も、こうしたビジネスコミュニティ育成を目指す取り組みの一環であるという。「アット東京Cloud Lab」では、イベントや検証用途で作業にあたるクリエイターやエンジニアが、快適に過ごすための作業空間として「イノベーションスペース」の提供も行う。このスペースは、同社のデータセンター内に設けられ、作業に必要な機材の設置スペースだけでなく、くつろいで休憩や議論を行うためのカジュアルな空間も用意される。イベント配信用の編集スタジオ、あるいは数社共同での実証実験などでの利用を想定しており、「長時間滞在した場合でもストレスが少なく、コラボレーションを促進するような環境を提供したい」としている。
お問い合せ
「アット東京Cloud Lab」の詳細や利用に関する問い合わせは、同社のWebサイトを通じて受け付けている。
https://www.attokyo.co.jp/contact/info/
電話: 03-6372-3500 アット東京営業本部
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