先進運転支援システム(ADAS)と自動運転車(AV)における劇的な技術の進化は、自動車業界だけでなく、今までクルマとは関係が希薄だった業界からも注目を集め、未来に向けた明るい想像力をかき立てる存在となってきている。真の意味での自律走行の実現には、いまだ相当数の年月が必要となるにしても、運転支援システムを段階的かつ確実に進歩させていくことは、自動車OEMからIC設計者にいたる自動車サプライチェーン全体にとって差し迫った大きな関心事であることは間違いない。
車載半導体(IC)市場の急速な成長は、車載システムで使用されるセンサが収集する膨大な量のデータを処理するのに必要となる大量の計算能力に対する需要から生じている。この車載半導体が、新たな要件を設計者に突き付けてくるのだ。特に、複雑で安全性が最重要視される部品では、非常に高い品質と長期間における信頼性を確保するという難題をクリアしなければならない。
車載ICの性能、品質および信頼性に対する要求も、著しい技術革新の一翼を担っている。例えば、課された性能要求を満たすために、先端技術ノードの採用が加速度的に進んでいる。かつてはレガシーノードで問題なく設計されていた車載ICであったが、新規デザインにおいては最先端のプロセスノードをターゲットとすることも珍しくない。しかし新しいプロセス技術には、今までよりも複雑で新しい欠陥と信頼性におけるリスクが伴う。
米国電気電子学会IEEE 終身フェローであり、メンターにおいてTessentテストグループのエンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるJanusz Rajskiは、DFTの世界的エキスパートである。DFT(Design-for-Test)はテスト容易化設計とも呼ばれ、集積回路、すなわちICの論理設計の検証や実チップの動作検証をテストする際に欠かせない技術である。
昨年ドイツのベルリンにて開催されたIEEE European Test Symposiumでの基調講演の中で、Rajiskiは、以下の項目が車載要件を満たすために必要となるICテスト分野における技術イノベーションに含まれるとした。
- 最高のIC品質要件を満たす製造テスト技術
- 車両寿命が続く期間における電源オン・オフ時向けインシステムテストとオンラインテストでそれぞれ異なるモードを満たすこと
- IC製造時に未検知だった欠陥への対処
- 別用途向けに設計されていた高性能コアをセイフティクリティカルな車載システム用途に適合させること
より小さなプロセスジオメトリへの移行と設計の大規模化により、車載ICの高品質製造テストは新たな課題に直面している。そこで、インターコネクト内であれトランジスタ内であれ、デバイス内すべての欠陥を見つけるのに実に効果的な新手法が開発された。Cell-Awere診断と呼ばれるこの手法を用いると欠陥検出を大幅に向上できる。これは、FinFETトランジスタを使用するデバイスにとって大きな違いを生み出す。また、特に既存するアナログテストの評価を自動化する分野において、アナログ/ミックスシグナル(AMS)のテストを改善する革新的な手法も出てきており、有効でないテストを排除し、有効なものを生成できるようになる。
車載ICは、自動車の中で20年は動作することが想定されている。この長い製品寿命を通した機能安全を確実のものとするには、チップ内に故障や欠陥がないことを確認するために、動作中に定期的にテストを実施する必要がある。現実的に想定される欠陥をより高い割合で検出することが義務化される日も訪れるかもしれない。また、もともと民生品向けに設計された多くの高性能チップやコアが、車載アプリケーションに使用されることも想像に難くないが、製造テストの品質や機能安全に求められる厳密な要件を満たしていない恐れがある。手直しなしでは、オートモーティブグレードのテスト品質はもちろん、故障モデルで十分なカバレッジが得られない可能性がある。もっと難しいのは、リアルタイム制約が追加されたときに定期的なオンラインテストで十分なレベルを達成することだ。
半導体業界とEDAベンダは、品質と機能安全に関する規格の継続的な進化を見越して技術イノベーションに取り組むべきだろう。
その取り組みの一環として、車載ICのテスト技術について紹介するメンターの技術文献「車載半導体向けICテストソリューション」は以下からダウンロードできる。
※こちらはメンターグラフィックスからの寄稿記事となります。
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