デジタルテクノロジーの浸透と、それに伴った店舗に対する顧客の期待も変化し、デジタル化による変革の波が小売業界に押し寄せてきている。店舗は、単に商品やサービスを購入する場所ではなく、顧客体験を提供する場所であり、顧客ニーズ把握と、それに合わせた品揃え、店舗レイアウト、接客の向上が求められ、店員管理等を含めた店舗業務が見直され、テクノロジーによる変革を余儀なくされているのだ。
業界でビジネスを展開する小売企業は、これまでも市場の動向に合わせて店舗業務を変化させてきた。ところが近年、テックジャイアントの台頭により、デジタルテクノロジーを活用したサービス提供が、これまでにない劇的な変化を小売業界に巻き起こしている。IT企業としてリテール業務を行う、リテールテックを標榜する企業は、従来の大手スーパーチェーン、コンビニエンスストアにも、テクノロジー投資を煽り、対応が遅れる企業も出始めている。
現状のままに甘んじていては、店舗を維持していくことすら難しい時代が迫っている。小売業界のソリューション領域を考慮すると、3つの領域に分けられる。1つ目は店舗業務、2つ目はサプライチェーン、3つ目は顧客接点創出。その中で、特に今、顧客のニーズに対応するためには、店舗業務、テクノロジーをベースとした『店舗のあり方の再定義』が重要といえる。商品・サービスを体験してもらうための場として店舗をデザインし、AIによる自動化を進め、店舗業務プロセスのムダを削減する店舗改革推進が不可欠だ。それが、顧客の満足度をあげ、収益性確保につながるのである。以下では店舗業務における課題と課題解決に動き出した小売企業の成功体験を見ていく。
店舗業務における品揃え改革をデジタルテクノロジーが後押し
小売店舗にとって過剰在庫による廃棄ロスや欠品による機会損失は解決が急がれる緊急課題といえる。商品の在庫管理は店長やベテランスタッフの勘や経験に依存する属人的な業務で、特定の人員にかなりの負荷がかかっている。業務に対応できるスタッフが少ないことがビジネス拡大のボトルネックになっているケースも多い。それでも廃棄ロスや欠品は日常的に発生し、デジタルテクノロジーによる課題解決に期待を抱く企業は少なくない。
在庫管理に欠かせない商品発注業務は各店舗に任されるケースと本部で一括発注するケースがある。各店舗に任されるケースでは、発注担当者の経験や勘に任される属人的作業で、他の人材での応用が難しくなる。一方、本部での一括発注は店舗エリアの特徴を考慮することが難しく、結果売上にバラツキが発生し欠品や過剰在庫を発生させてしまう。店舗の意見を加味するには情報収集に時間を要し、本部、店舗ともに業務負荷がかかる。お客様の導線やパーソナライズ化された最適なサービス提供を考慮した品揃えとそれに伴う棚割作業を実施するのは難しい。
一方、デジタルテクノロジーによる店舗の品揃え改革は既に始まっている。あるチェーンストアでは、店舗の周辺環境やイベント情報、店舗の特性や、曜日や時間、天候情報までをビッグデータ化して活用することで、店舗ごとの特性を解析。各店舗における精度の高い需要予測を実現し、店舗それぞれに最適な品揃えが可能となったという。
さらに、顧客の個人データや購買データを組み合わせたデータをAIに分析させることで、より高度なデータを抽出し、販売戦略に活用することができる。商品発注、導線の最適化、店舗の棚割業務を高い精度で自動化し、欠品による機会損失が減少した。また、店舗バックヤードで過剰在庫が溢れることもなく、商品の廃棄率が軽減している。
AIがデータを分析することで属人的な業務が減り、特定のスタッフに業務が偏ることもなくなった。店舗業務に追われ、接客に時間を取れなかった店員が接客に焦点を置くことで、お客様の満足度は向上し、購買行動に繋がっている。また、人手不足が深刻な小売業界において、店員の働き方改革の兆しも見えている。店員に変わってAIによる接客も活用が拡大し始めているのだ。ある店舗では、AIが分析した情報をもとに、各顧客に合わせパーソナライズ化された接客を始め、売上向上に繋げた。
テクノロジーによって収益性向上が実現されている。『店舗のあり方の再定義』にデジタルテクノロジーを活用した事例は徐々に増えている。お客様にとっても店員にとってもWin-Winな改革は既に始まっている。他社との差別化を図るにはチャンスを逃さず、テクノロジーによる店舗改革を加速させなければいけない。
AIを活用し、個店個品レベルの需要予測で店舗改革を加速する
店舗・商品・地域に関わる多様なオープンデータのデータレイクと、IBMのAIエンジンにより、発注・品揃えなど店舗業務最適化のための売れ行き予測自動化を実現します。
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デジタルで店舗改革を加速する
デジタル化による店舗の業務を再定義し、大幅な業務の効率化を図りながら店舗変革を支援します。
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テクノロジー投資の成否が今後の改革を進めるうえでの鍵
今後、小売企業にとってデジタルテクノロジーへの投資をドライブさせることは必然といえる。しかし、慣れていないテクノロジーへの投資にリスクを感じるケースもめずらしくない。特に、企業のテクノロジーリテラシーが低い場合は尚更だ。 また、既に取り組みが進んでいる場合でも、日進月歩でデジタルテクノロジーが進化する状況において、効果的な投資を行うのは容易ではない。
テクノロジー企業とのパートナーシップ、メーカー、卸売業者、流通業者を巻き込んだエコシステムの構築、「テクノロジーを理解して活用できているか否か」が、今後、勝ち組と負け組を分ける鍵となる。そのためには、豊富なノウハウと、適切なソリューションを提供してくれるテクノロジー企業とつながり、自らソリューションやサービスを開発・導入していく道筋がある。そうすることで、実績が証明されているテクノロジーやソリューションをいち早く見つけられるようになり、効果的な投資で同業他社との差別化が図れる。
一方、自社のみならず、テクノロジー企業やエコシステム内のパートナー企業との共同投資をする道筋もありそうだ。自社が保有するデータや店舗をこれらのパートナー企業も活用することで、実験的な取り組みにおける成果を共有していくやり方だ。これが、より業界標準に近いプラットフォーム型ソリューションとして、新たな収益源とできる可能性を秘めている。
テクノロジーを活用した改革を進めるにあたって、遅きに失していることはない。今後の投資のやり方次第である。
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