北海道でのワーケーションを通じて、リモートワークをする上で大切なことが見えてきました。
世界的なPCメーカー、デル株式会社 広域営業統括本部プレゼンツの同社上席執行役員の清水博さんによる、北海道にて行ったリモートワークの体験記をお届けします。極寒の地で清水さんが感じた、リモートワークに必要な"組織のあり方"とは?
何故、北海道?
昨年の夏、宮崎県でリモートワークをやってみて、リモートワークという働き方にはいろいろな課題があることに気がつきました。同時に、いつもいる会社を遠くからぼんやり見直すことによって、組織の現状、強い点・弱い点などを考えることができて有意義なものでした。
(その時の記事はこちら)
あれから半年が経った今、またリモートワークにチャレンジすることにしました。今度は厳冬の北海道です。
私が担当しているDELL広域営業統括本部は、従業員100名から1000名未満の大・中堅企業のお客様にITインフラソリューションを提案している部門で、過去2年、お客様にご評価いただき、北海道で堅調にビジネスを伸ばさせていただくことが出来ました。今後さらに北海道でのビジネスを強化していくこともあり、顧客訪問や関係者との打ち合わせを兼ね、年末の休暇を利用して北海道でワーケーションを実施してみました。
今、またザッポスから学ぶ
昨年は、私の担当する部門が、川崎の本社から他拠点へ進出した記念すべき年でした。東日本のお客様には東京都港区三田、大阪のお客様は大阪市北区堂島の2拠点に展開したこともあり、マルチサイトのオペレーションが実現するようになりました。
また、働き方改革の一部としてリモートワークでの在宅勤務も推奨していますので、今までは会社で顔を合わせるので当たり前だったことも、一部ではコミュニケーションが希薄になり、議論が噛みあわないことなどが起きるようになってしまい、いろいろな部分で見える化も不十分であると感じるようになりました。
その時に頭に浮かんだのがザッポスの事例です。ザッポスとはアメリカのラスベガスに本社を構える、靴のネット通販会社であり、他社が真似できないような独自の企業文化を築いていることでもよく知られている企業です。
私たちは、メンバーとの以心伝心で戦略の方向が自然と揃っている時や、さらに一歩踏み込んでサプライズな施策をした場合など、「ザッポス!」と言ったりして盛り上がることがあります。
リモートワークの根底にあるべきなのは、地域や場所に関係なく、事業理念が指し示す方向へ、社員が邁進している状態であると強く感じるようになりました。そして、主要メンバーでザッポスの書籍を読み直し、①コアバリュー、②仕事の結果やプロセス上の重要な指標を見える化と共有化、③ホラクラシー組織、などの3点の重要性を再確認しました。
『HOLACRACY 役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント』(2016年1月)や、『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』でザッポスは再脚光を浴びたものの、ザッポスに関しての本は、早いものでは2009年に書かれているので、もう10年前のものになります。
ホラクラシー組織を目指す
『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』は、日本では2018年の1月に出版されたものですが、英語版の出版は2014年でタイトルも「Reinventing Organizations(英語版)」であり、直訳すると「再開発する組織」ということになるかと思います。
私は2018年にこの本でホラクラシーを再認識するようになりました。そして、2015年から自主管理の仕組みとしてザッポスが導入したことを知りました。このことが、再度ザッポスの本を読み直すきっかけになりました。
リモートワークをしていると、本来ゆったり仕事をすべきなのでしょうが、逆にチームメンバーのプロジェクトの進行状況などが気になるようになります。遠隔地にいるからこそ小さい部分が見えにくくなり、自分でもマイクロマネジメント傾向が強くなる瞬間がたびたびあります。そのような背景をふまえ、リモートワークでは会議も増えてしまう傾向があります。
組織の根本から見直して臨まないといけないと考えていたところ、巡り合ったのがホラクラシー組織です。
ホラクラシー組織では、「人々は仕事を持つのではなく、多くのきめ細かな役割を果たそうとする」と表現されます。仕事という単位で見ているので、タスク管理ばかり目にいってしまうのです。
ホラクラシー組織は、「組織のOSをアップグレードする」ことを目指します。具体的には、「ヒエラルキーからフラットな組織」、「細分化したチームへの権限と機能の分散」、そして「自律・自走」を目指すものです。
普段から組織をホラクラシー組織化することが、リモートワークへの"急がば回れ"であると痛感しました。
PCは大丈夫だが手が動かない
DELLには、「堅牢」という言葉の意味の "Rugged(ラグド)" という製品があります。北海道では滑ることもあるかと思い、強固なコンポーネントが使用されており、衝撃、落下、振動に対する優れた耐久性を有します。雪や水にも対応させたいということで、MIL-STD-810G認定およびIP-52等級の耐落下性能や防塵防水、マイナス29度~60度までの耐低温・高温性能を備えています。IP-52等級は、機器の正常な作動に支障をきたさず、安全を損なうほどの量の粉塵が内部に侵入しないように保護され、垂直より左右15°以内からの降雨によって動作に影響を受けないスペックです。
しかも、私が訪れた厳冬の地の旭川は、日本で最も寒い場所とされています。1902年1月25日に旭川地方気象台で観測されたのがマイナス41.0度です。私が持参したNew Latitude 5420 Ruggedは、「温度範囲(動作時):マイナス29℃~60℃」とあるので、マイナス29度未満になったら製品仕様上は使えないことになります。しかし、この日は、マイナス18度なので、製品上は問題ないのですが、寒すぎます。PCは大丈夫ですが、手がかじかんで打ちにくいことに気がつきました。よく考えればわかることですね。
小集団 - Span of Control
『ティール組織』の中にも小集団の記述があります。「人々は家族などの血縁関係という小さな集団で暮らしていた。この集団の規模はせいぜい十数人だ」
複雑な人間関係には限界があるとしています。しかも、この段階では、「組織モデルのようなものはまだ何もない。実際、一族の中には階層が存在せず、リーダーシップを発揮する長もいない」とされています。
これに似たお話をお客様と最近よくします。スパン・オブ・コントロールのことです。マネージャー1人に対して、何人のスタッフが最適なのかという議論です。一般的には、5~7人とも10人とも言われますが、昨今はマネージャーを減らそうという動きもあり、スパンは拡大化してきた傾向にあります。
さらに、今の10人の部下と昔の10人の部下は、人数は同じであってもバックグラウンドの多様性が進み、質・両共にまったく異なるものだと思います。必然的に、一人一人と対話し、キャリアパスを一緒に考える、直面している壁について一緒に考えるなど、以前より一人一人と向き合う時間が必要になっているものと思います。今後もこの時間は増えると思いますので、リモートワークをする上での前提条件としての難易度は上がってきています。
タスクバーは上部に表示せよ
スキー場では、雪は舞うもののそこまで寒くなく、外に出ていると気持ちがいいので、携帯椅子に座り外でメールをチェックしました。久しぶりの雪景色なので、気持ちが和むものでした。しかし、雪は舞っています。数分もすると、PCの画面の段差に雪が積もってきます。画面上のタスクバーが標準の位置で使っていますと、数分で見えなくなります。タスクバーを左や上部に変更すればいいのですが、どこにそんな機能があるのかモタモタしてしまいます。天気予報で雪の場合は、事前に変更していくといいと思いました。
TQCをルーツにする
スパン・オブ・コントロールの話を踏まえ、私は小集団化のチームの形成を目指しました。深いコミュニケーションや、お互いのメンバーで細かく協力し合えること、自主的に問題を発見し解決することを目指し、5人を最小単位にしました。リモートワークを追求していくことで、ザッポス ティール組織 ホラクラシー 小集団 TQC(Total Quality Control)活動と、個人的なマネジメントジャーニーが進んできました。
実は、かなり昔の話ですが、私はTQC活動に積極的に参加しました。自分のマネジメントの原点にもなっているものです。このTQC活動は、日本の高度経済成長を支えた生産性向上活動ですが、お客様や識者の方より現在でも使える手法と伺います。市場やビジネスが拡大して、組織の成長を完全に超えている状況の時に有効な手法とされます。そのTQC活動のすべてに共通するのが小集団です。
「なかなか採用が難しくて・・・」「マネージャーになる人材がいないんですよ・・・」と日本全国どちらのお客様でも同じ話になります。やはり、マネージャー人材が少ない中、十分なコミュニケーションがある組織で、相互に協力し合える仲間、自主的に問題発見・解決・運営される組織は何だ?となると、TQCが進めてきたことがフィットすると思えます。
もちろん、TQC活動の弊害やホラクラシー組織の光と影など、様々な議論が起きています。何かひとつを教条的に信じることではなく、自身の組織に適合できるか、ということを考えていると、別の視点で見えてくることもあります。何かを始めないと、何も始まらないことがよくわかりました。
動物を見ながら仕事をする
北海道で仕事をするにあたって、急に動物園に行きたくなりました。目指すは旭山動物園です。
小学生の頃からいろいろな動物を飼っていて動物は好きで、ひと昔前は、デジカメを購入すると動物園で試し撮りをしていたのですが、最近はご無沙汰してしまっています。YouTubeで猫や犬の動画を見ているので満足してしまっているのかもしれませんが、今回はリアルな、生きた動物が見たくなりました。
「これって、もしかしてリモートワークに関係のない自分のためのアニマルセラピー?」という考えが一瞬よぎりましたが、動物と触れ合うことによりリラックスする癒し効果があると言われていますので、ワーケーションの中でもリラックスできればいいと思いました。
しかし、組織の自主運営はあくまで遠い目標ですので、ワーケーション期間中でも、メールで伝わりにくい内容などは、メンバーと少しだけ話をしたい時があります。私たちのコアのビジネスモデルである、お客様が聞きたい時にすぐ電話をいただき、すぐ対応するモデル、"インサイドセールス"と同じことです。結果的には早く、短時間で済みます。
そのような状況は、旭山動物園でも起きる訳で、電話をしている時に、後ろで動物の鳴き声がすると、「あれ、今どこにいるのですか?」などとたずねられますが、その驚く反応が面白く、心地良いです。
教訓として
久しぶりの冬の北海道はとても綺麗で気持ちの良いものでした。言わずもがなですが、食べ物はおいしいものばかりです。「北海道は冬に限る」との北海道の友人のアドバイスも納得でした。
短時間ではありましたが、厳冬の中ワーケーションすると、普段は思いつかないようなアイデアをいくつも思いつきました。私のライフハックの一つになれればと思います。
今回私が訪問した北海道では、中小・中堅企業(お客様従業員50名から1000名未満)にお勤めの方を対象として、2種類のセミナーの開催を予定しています。
1つ目は、情報システムのご担当者様を対象とした、「働き方改革」や「コミュニケーション改革」をテーマに行うセミナーです。
詳しくはこちらをご覧ください。
- 函館開催:2019年2月20日(水) 14:30 - 17:30 (受付開始 14:00)
- 旭川開催:2019年2月20日(水) 14:30 - 17:30 (受付開始 14:00)
- 札幌開催:2019年2月21日(木) 14:30 - 17:30 (受付開始 14:00)
- 札幌開催:2019年2月22日(金) 9:30 - 12:30 (受付開始 9:00)
2つ目は、セキュリティ分野の第一線で活躍しているゲスト登壇者スピーカーをお招きし、徹底解説していただくセミナーです。こちらのセミナーでは、IT投資動向調査の結果のご説明や、デル テクノロジーズとしての中堅企業向けソリューションについてのご説明も行う予定です。
詳しくはこちらをご覧ください。
以上のように開催いたしますので、ぜひともご参加をご検討下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました。デル株式会社広域営業統括本部の活動状況についてはこちら、採用情報・社員ブログについてはこちらにて公開しております。
デル株式会社
広域営業統括本部 上席執行役員 清水 博
横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス、本社出向)においてセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のダイレクターを歴任する。2015年、デルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手がけた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在、従業員100名から1000名までの大企業、中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。
※本記事は「ハフポスト」の記事を転載したものです。
清水博氏が駅伝監督とチームマネジメントを語る!
「エースの役割を担う選手は分散したほうが、継続して強さを発揮できる組織になっていく」と語る、東洋大学の酒井俊幸氏。駅伝と情シス部門のチームマネジメントに共通性を見出した、デルの清水博氏。何がチームを強くするのか……互いの組織論を語り合った対談記事は、こちらで読めます。
[PR]提供:デル