クラウドを活用するメリットのひとつは、業務システム基盤を統合できることだ。また、最新データの共有や、部門ごとのシステムにまたがった業務フローを一本化することも容易になる。
体外診断用医薬品(※)の輸入・販売を手がける株式会社コスミックコーポレーションも、クラウド型ERP「GLOVIA OM」を導入することで、データ管理やシステム連携などの課題を解決した企業のひとつだ。本稿では同社が行っている取り組みや、その効果について紹介する。
※体外診断用医薬品:疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人または動物の身体に直接使用されることのないもの
スクラッチ + オンプレミスの旧システムが抱える課題
コスミックコーポレーションは、主に海外の製薬会社から体外診断用医薬品を輸入し、国内の病院や臨床検査機関に販売する、医薬品の輸入販売業を営んでいる。その業務運用には、2000年代初頭にスクラッチで開発したシステムが利用されていた。
「製品の安定供給の観点から、在庫管理を中心に販売および購買機能を開発したシステムであったため、想定されるシステム利用対象者は在庫管理業務従事者に最適化されていました。データを全社利用する際には、システムからデータを書き出して、他の業務に利用するというかたちとなり手作業が多く残る運用をしていました」と、同社 製品管理部 ロジスティクス課 マネージャーの櫻井 英弥氏は説明する。
同社が業務システムの入れ替えを検討し始めたのは2016年。企業として成長するにつれ、旧システムでは、正確な利益管理や、それに伴う経営状況の迅速な把握が難しくなっていたことが最大の理由だ。従来、顧客にどういう見積を提出し、売上や利益がどのくらい出たのかを調べるには、営業や営業サポートの担当者が、Excelを利用して分析を行う必要があり、経営判断もその結果を待つかたちとなっていた。しかしこの作業には、いくつかの課題があったと同社 営業部 戦略情報システム課 マネージャーの早川 龍一氏は言う。
「Excelで作成したデータはファイル共有サーバに置き、利用にあたってのルールも決めていましたが、必要に迫られてそのファイルをコピーしたり、メールで送ったりしているうちに整合性が取れなくなり、売上分析の結果にも影響してしまうことがありました。また、担当者の異動があった際には、以前提出した見積書の所在がすぐに分からず、システム内を探し回らなければならないこともありました。最も課題とされたのは、それら作業に時間がとられることで本来の業務に支障をきたしていたことでした」
その他、旧システムと会計システムの連携の煩雑さなども課題となっていた。以前は旧システムで書き出した帳票を見ながら、会計システムに手作業で入力するというプロセスを採っていたが、時間もかかるうえ、ミスも生じやすかったという。
システム連携と拡張性を考慮し、クラウド移行を決定
これらの課題を解決する手段として、同社ではシステムの統一プラットフォームをクラウドにすることを選んだ。当時は社会的にもクラウド移行が進み始めた時期で、同社でも勤怠管理には「Salesforce」をプラットフォームにした「TeamSpirit」を利用し始めたところだった。
「販売システムをSalesforceで構築すれば運用コストも下がるでしょうし、アプリケーションの追加や組み合わせも柔軟に行えます。今後も企業の成長を継続していくためには、営業支援機能との連携が必要と考え、新システムはSalesforceで動かせるものを探しました。その条件に合うのが『GLOVIA OM』だったのです」(早川氏)
富士通が提供する「GLOVIA」シリーズは、企業情報の一元化や一貫した業務体制づくりを可能にする統合業務ソリューションだ。そのラインナップのひとつであるGLOVIA OMは、Salesforceプラットフォームでの利用を目的に提供されているもので、販売・在庫・購買・生産・フィールドサービスなどの基幹系業務機能を備えている。
テラスカイの「要件の趣旨を理解した提案」に信頼感
コスミックコーポレーションでは将来的にSalesforce活用の幅を拡げていくことを視野に入れ、Salesforce関連のSIに経験豊富な企業である株式会社テラスカイをシステム構築のパートナーに選んだ。テラスカイは、クラウドとシステム連携をキーワードに、Salesforceを中心とした各種ソリューションの開発から、運用サポートまでを手がける国内企業だ。テラスカイとの本格的な構築作業は2017年から始まった。
「スクラッチからパッケージへのシステム移行は、当社にとって経験のないものでした。テラスカイさんは当社の希望を汲み取りながら、GLOVIA OMに何ができて何ができないのかをすばやく見極め、標準仕様でできないことについては、それを実現するための代替策提案を行ってくれました。当社から示す要件を表面的に受け止めるだけでなく、要件の趣旨をきちんと理解したうえで、それに沿った提案を持ってきてくれるので、信頼できるパートナーだと実感しました」(早川氏)
新システムは2018年4月に部分的な運用が開始され、8月には販売管理・在庫管理・購買管理のほぼすべてをGLOVIA OM上で処理できるようになった。これによって大幅な効率化が期待できるようになったという。
様々な業務シーンでの効率化を実現
営業および営業サポート部門では、以前、担当者が個々にExcelで作成していた見積書を、GLOVIA OMのフォームに必要事項を入力していくだけで作成できるようになった。担当者によって記述方法がまちまちだった「製品名」や「コード番号」は、予め設定したリストから選択する方法にしたことで、記述の統一化、入力時間の短縮だけでなく、ミスの削減にも効果を上げている。さらに、データはGLOVIA OMで一括管理されるので、過去に作成したデータが必要となった時にも、検索をかければすぐに見つけられるようになった。
GLOVIA OMでは、一度入力したデータは、その後の工程でも簡単に再利用することができる。例えば、見積案件が受注できた場合には、見積データを受注工程用の画面に読み込み、必要事項だけを追加していけばいいので、再入力の手間が省ける。売上分析用のデータもGLOVIA OMに登録されているものを利用することで、「営業担当者ごとに見ている数字が違う」という事態を防ぐのにも役立っている。
受発注や日々の在庫管理を行うロジスティクス課では、テラスカイに依頼して輸入経費の管理機能を追加し、正確な原価と利益の把握に活用している。
「医薬品の生産スケジュールの把握、過去売上実績のトレンドに鑑み、輸入する時期・個数を決める際の判断材料として、為替レートや運送費・税金などの輸入原価をしっかり管理し、正確な利益を把握することが重要となります。以前は過去の経験や知見で行っていた部分もありましたが、今は細かいところまで数字を追えるようになっています」(櫻井氏)
また、会計システムとのデータ連携も、スピーディになった。販売システムで書き出したデータを、そのまま会計システムに読み込ませるだけなので、帳票を見ながら手作業で入力し直していた時のような時間もかからず、入力ミスのリスクも削減できている。なお、これまでの効果を1か月あたりに削減された作業時間の一例として、見積作成で10時間、会計業務で23時間、分析業務で8時間という結果が出ているという。
システム部門の負荷も軽減、モバイル活用にも意欲
SalesforceをプラットフォームにしたGLOVIA OMを採用したことで、システム管理側の負担も軽減したという。
「スクラッチで開発したシステムをオンプレミスで使うことには、事業継続計画の観点からも限界を感じていたところでした。その点、現在のクラウドとパッケージシステムの組み合わせは、冗長性に優れているのが大きなメリットだと言えます」(早川氏)
今後、同社ではGLOVIA OMに標準搭載されているモバイル機能を活用し、外出先からでも社内システムにアクセスできるようにし、さらなる営業力の強化を図っていこうとしている。
「そのためにもテラスカイさんには、これからもSalesforce環境で活用できる使いやすいソリューションを、いろいろと提案していただきたいと思っています」(早川氏)
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